結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2011年03月09日(水曜日)

アメリカ報告・その③全米第2位年商4兆円1725店「セーフウェイ」の生死をかけた「フォーマット転換」を見てもらおう!

御心配おかけしました。
今朝の体温は36度4分。
下がってきました。

それでも咽の痛みはまったくない。
だからいつもの風邪ではない。

疲労から来たものと断定。

日経新聞の白鳥和生さんへのメールにも書いた。

「無理はするけど無茶をしないテクニックは、
ハードスケジュールの中で、
小刻みにでも冷静に休養の時間をとることにあります」

今回はそれができなかった。

おおいに反省。

さて商人舎「発足の会」発起人の一人に名を連ねていただいている松崎靖さん。
同い年の知識商人同志で、ブログ仲間でもある。
その松崎さんのブログ『あなたへの手紙・月水金』は、
しっとりとしていて、いつも読み手に考えさせる。

モーレツ・モーレツのブログが多い中、
特異の存在感をもっている。

その最新版「丁稚のすすめ」
「祈れ 働け」 と、松崎さんが若かりし頃に丁稚に行った先の社長さんが、
書いてくれた言葉がいい。

「毎日の仕事は祈りの翼によって神様に運ばれて行く 働くことは祈りである」
ブログのご一読をお勧めます。

昨日は、横浜の商人舎オフィスに訪問者あり。
まず午前中に、MDD会のご一行様。
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私の隣が、㈱万代の吉川英樹さん、
いちばん右が㈱エクゼの前田仁さん、
いちばん左は㈱JTB西日本の小阪裕介さん。

この春、この秋、さらに来年の視察研修会の打ち合わせ。
万代の取引先のメーカー・卸売業の勉強会。
万代からは1人だけ参加して、口は出さない。

私は、食品製造業・卸売業向けのアメリカ研修と考えて、
テキストなどもそちら向けにアレンジする。

メーカー、卸売業の営業スタッフのエース級が集う研修会で、
そのつど、解説しつつ、私自身が気づかされることも多い。

楽しみな研修会だ。

夕方の訪問者は二人。
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右から常盤勝美さん、猪股信吾さん。
常盤さんは商人舎ホームページの人気ブログの著者。
「2週間天気予報」
㈱ライフビジネスウェザーの常務取締役情報制作部長で、
気象予報士・流通気象コンサルタント。

猪股さんは、今年度の立教大学大学院結城ゼミ生で、
インターネット・サイト運営の専門家。

商人舎ホームページの今後の展望や、
そのための様々なコラボレーションの可能性など、
話題は多岐にわたった。

常盤さんは、
気象とマーチャンダイジングの融合という本業のほかに、
気象と52週マーチャンダイジング、
POSデータとウェザー・マーチャンダイジングの接続、
さらに進めてID-POSとの接点などを追い求めて、
発展・成長中。

コンサルティングや調査研究など、
ご要望があれば、お寄せください。

ブログもご愛読のほど。

さて、アメリカ帰国後レポート第3弾は、
セーフウェイの
「ニューライフスタイルストア」編。

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セーフウェイは1926年発足の老舗小売業。

1980年代には、米国スーパーマーケット業界第1位の企業となり、
現在は、クローガーに次いで第2位。

2009年度の売上高は408億5100万ドル。
いつものように1ドル100円換算すると4兆0851億円。
残念ながら、その伸び率はマイナス7.4%で、
純利益も10億9800万ドルの赤字。
期末店舗数1725店だが、
この9割近くの店舗が改装中。

この店舗リニューアル作戦は、2005年に始まった。
1億ドルの規模で、セーフウェイはブランド再建キャンペーンを開始。
キャッチフレーズは“Ingredients for life” (イングリーディエンツ・フォー・ライフ)。
「生活にとってなくてはならないもの」といったニュアンス。

要は店づくり、品揃え、商品展開に、
新しい「ライフスタイル」提案をふんだんに盛り込もうという考え方。

これを称して「セーフウェイのニューライフスタイルストア」という。

従来型のスーパーマーケットは、
市場のど真ん中に存在するものの、
四方を囲まれて、四隅から顧客と消費を奪い取られていった。

ハードディスカウンター、スーパーセンター、コンビニ、
そしてスペシャルティ・スーパーマーケット。
そこで、専門スーパーマーケットの方向にシフトして、
セーフウェイのポジショニングの再確立を図ろうという試みだった。

専門スーパーマーケットの方向性とは、
ホールフーズやウェグマンズに近づくということ。

当時でいえば4兆円の企業が、
その10分の1の年商の企業群に学ぶということ。

それから6年。

決算数値にこそ、まだ改善効果が出ていないが、
セーフウェイは確実に変わろうとしている。

その「ニューライフスタイル・ストア」の中で、
とびきりの繁盛店をご覧に入れよう。

店舗左手をはいると、花売り場からベーカリー。
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床は木目調でシックに出来上がっている。

生花が鮮度と季節感を表現する。
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そして青果部門のトップにはバナナ。
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ブドウのプレゼンテーションも、美しい島陳列。
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もちろんリンゴも青果部門の主役。
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オレンジなど柑橘系の果物も豊富な品ぞろえ。
ニューライフスタイル提案とは多様性に対応するという意味でもある。
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そして青果部門のど真ん中に君臨するのが、
オーガニックのアイランド。
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アイランドの左手にはカゴ盛り陳列。
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真ん中はオーガニックリンゴ。
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形の悪いトマトなども並べられている。
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青果が映える店づくり。

壁面沿いの葉物の鮮度感も高い。
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壁面青果部門の陳列線は長い。
すなわち客数が多い店であることを示している。
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そして適度な突き出し陳列。
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青果部門の中島陳列は、
滑車のついた丸い陳列台に、
マッシュルームの缶詰・瓶詰が並べられている。
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セーフウェイは伝統的に肉が強い。
グロサリーストアから発祥して、
スーパーマーケットに業態転換した時に、
最大の課題だったのが、食肉産業と一体化して、
精肉部門を確立することだった。
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奥壁面は対面の精肉売り場、セルフ売り場からドラッグ部門につながる。
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フード&ドラッグは、ニューライフスタイル店舗でも必須の条件。

最後に店舗右翼に至る曲がり角にワイン売り場。
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ワインの品ぞろえをバラエティ豊かにすることも、
ナショナルチェーンのスぺシャルティ化には欠かせない。
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ただし、私は「セーフウェイ」のクラブカードが気に入らない。
黄色く見えるカードがほとんどの棚に張ってあるが、
会員カードをもっている顧客を囲い込もうという作戦。

しかし日本のビジネスマンならだれでも、
JALとANAのカードをもっているのと同じで、
クローガ―とセーフウェイのカードはアメリカ人の常識。
だからそのカード手数料やオペレーションコスト分、割高感が出ていて、
私はこれがウォルマートのエブリデーロープライスを、
助けることになっていると考えている。

店舗右翼はサービスデリとミールソリューションのコーナー。
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こちらは対面コーナー。
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「ready meals」(レディ・ミール)コーナーは、
持ち帰ってすぐに食べられる商品群を品揃え。
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こちらは対面方式。

「meals to go」コーナーは逆に、
セルフサービスのミールソリューション商品売り場。
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広大なグロサリーの売場が店舗中央を占めていて、
そこは明るいが、両右翼は照明を落とし、
商品にスポットライトが当たるように細工されている。
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これが店にスペシャルティ感を与えている。

2005年からスタートしたプライベートブランド「O Organics」。
写真の真ん中あたりに見える。
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HORIZONはオーガニックのナショナルブランド。
「O」がセーフウェイのブランド。
2008年にBetter Living Brands Allianceを組織して、
「O」ブランドを他の小売業者や海外向けに卸販売し始めている。
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パンのエンド陳列。
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ゴンドラアイルは長い。
中通路は切らない。
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この考え方は従来型のスーパーマーケットで、
ホールフーズなどはどんどん中通路を入れる。

ドライグロサリーは従来型とあまり変わらない。
それがこのタイプの店の問題かもしれないが、
この店はよく売れている。
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レジ前のゴンドラエンド。
ちょうど陳列作業まえだった。
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朝のエンド陳列作業。
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冷蔵ケースにも直置きしたダンボールから陳列。
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駐車場には配送車。
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パンが店内に運び込まれている。
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ニューライフスタイル店舗として、良く売れる店である。
セーフウェイはこのアップスケールタイプへの転換に、
企業の生死をかけている。

1725店の大転換。

では従来型の店とはどんな店か。
その青果部門。
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コンベンショナル型の精肉部門。
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床、天井、壁面装飾、照明。
そして商品と提案性。

新型は天井もホールフーズと同様に、
高くて、むき出しの木目。
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床もウッディ感覚。

格段の違いを見せる「ニューライフスタイル型」。
この違いをアメリカ中のスーパーマーケット企業が、
追い求めている。

セーフウェイのフォーマット転換は、
日本のスーパーマーケット経営者にも、
鋭く突き付けられている課題である。

これは、もう、間違いない。

そのためにいかに自らをポジショニングし、
いかにフォーマットをつくるか。

解答は「現場にしかない」。
Keep your ear to the ground!

(つづきます)

<結城義晴>

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