結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2011年03月10日(木曜日)

アメリカ報告・その④閑話休題のボーダーズ「STORE CLOSING」と「昨日の自分を捨てる」

「三寒四温」か「二寒三温」か。
そんな日々です。

なんとか6度5分くらいまで熱は下がったものの、
今年の風邪はほんとうに粘り強い。
そこから平熱までが、なかなか下がらない。

やはり寒くなったり、温かくなったりの気温の変化が、
体に影響を与えているのかも知れません。

昨日、84歳になる父に電話で様子を聞いたら、
「お前こそそろそろ還暦なんだから無理するな!」
逆に、注意されてしまった。

「まだまだ2年ありますよ」
反論したが、父の言うことも一理ある。

「無理が過ぎたら無茶になる」
その無理の「許容範囲」が狭くなりつつある。
それが2011年春の結城義晴の肉体。

精神は「わざわざの負荷」に耐えられたり、
あるいは「わざわざの負荷」を待ち望んだりしているのに、
肉体は精神に、ついてこられない。

そんなところでしょうか。

今朝の日経新聞「スポーツ欄」の連載コラム。
「豊田泰光のチェンジアップ」
いつもこのブログで取り上げるので、
ご存知の方も多いでしょう。

ほんとうに、いいことを言う。

プロというのは豊田さんのような人のことだ。
私は福岡生まれの「西鉄ライオンズファン」
チームがなくなってしまった今でも、生粋の西鉄ファン。

その全盛期のショート・ストップ豊田泰光。
今日のコラムのタイトルは、
「昨日の自分を捨てる」

「日本ハムの新人、斎藤佑樹が
オープン戦のウィニングボールの受け取りを辞退した」

「大体において記念のボールや商品をこまめに収集している選手に、
記録を作る人や、ここぞで強いという選手はあまりいない」

「もし役立つ記念球というものがあるとすれば、
私にとってはプロ1年目に“サヨナラ失策”を犯したときの球」

失敗の経験は捨ててはならない。

「成功体験に酔っていたら、
たちまち打てなくなる」

「勝負の世界で大切なのは日々、
昨日の自分を捨て、
今日の自分になることだ」

まさに商売そのもの、日々の商売と同じ。

㈱セブン&アイ・ホールディングス会長の鈴木敏文さんの口癖は、
「過去の成功体験を捨てよ」

㈱ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正さんの二冊目の著書は、
『成功は一日で捨て去れ』(新潮社刊)

柳井さんはこの本の第1章で、
2001年1月1日付で発した社員への20の「問い」を書いている。

毎日、誰よりも真剣に自分の商売をしていますか?
あなたの仕事の受益者はあなたの仕事を高く評価していますか?

現場を誰よりも熟知していますか?
問題や回答を現場で見つけていますか?

現物を手にとって、自分の目の前で商売していますか?
現物をあらゆる角度から見ていますか?

最悪の現実を理解しながら、最適な解を考えていますか?
世の中の誰よりも自分の職務に忠実に仕事をしていますか?

お客様の要望について誰よりも熟知していますか?
お客様の為に今日何をしましたか?
今日の我が店舗でのお買物に、すべてのお客様が満足されましたか?

現在の市場の状況と競合店の打ち手を、誰よりも本質的に理解していますか?
競合店の次の打ち手に勝てる戦略がありますか?

自分の仕事に理想を持っていますか?
理想を誰よりも大事にしていますか?

あなたの仕事は、世界の誰よりも革新的ですか?
その仕事で本当に世界一になれますか?

そのスピードで目の前の先行企業を追いぬけますか?
あなたの仕事の基盤と発想の源は、現場、現物、現実ですか?

あなたは誰よりも世界一になるために努力していますか?

「世界一」になるためには、
世界一がどんなものか知らねばならない。
世界一がどれだけ凄いかを知るからこそ、
努力は限りなく続けられる。

故川崎進一先生の言葉を借りれば、
「一心不怠 成長無限」

そのために「今日の自分になる」

さて昨日午後、横浜の商人舎オフィスを訪ねてくれたのは、
朝日新聞社の編集委員・多賀谷克彦さん。
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多賀谷さんは東京本社で経済分野や流通業界などの取材経験を重ね、
大阪に移って、現在、大阪本社経済グループの編集委員。

今回は「プライベートブランドの今後」についてのインタビュー。
私は、楽しい90分ほどを過ごした。
流通小売業のことを知っているジャーナリストと、
過去、現在、未来について語り合う。

多賀谷さんは速記文字を駆使する。
それを、こちらから眺めながらのインタビューは、
とても心地よかった。

さて、アメリカ帰国後報告・その④は、
ちょっと閑話休題。
今週月曜日から水曜日まで、
これでもかこれでもかと詰め込んだが、
ここらで一休み。

2月17日にこのブログで書いた件を、見てきた。
紙(カミ)が網(アミ)に乗っ取られる話。
すなわち「米国第2位の書店チェーン・ボーダーズ破産」の話題。
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今回の旅で、3か所のショッピングセンターのボーダーズを覗いた。
3店とも、「閉店セール」を展開中。
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「STORE CLOSING」
「EVERYTHING ON SALE!」

いつもよりも、客数は多かった。

ボーダーズ・グループは2月16日、
米国連邦破産法11条の適用を申請した。
負債総額12億9000万ドル(約1290億円)」
そして674店のうちの約3割、200店を4月末までに閉鎖する。

閉鎖するのはほとんど郊外ショッピングセンター内の店舗。
この店もコミュニティ型ショッピングセンターにあり、
スーパーマーケットのセーフウェイと隣り合っている。
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ガラス窓にも外側に向けて、閉店セールのポスター。
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これが良く目立つ。

ボーダーズは1971年に設立。
ニューヨーク証券取引所に上場し、
イギリス、オーストラリア、シンガポールなどにも進出。

しかし、「ネットとペーパーの戦争」に負けた。
その結果、1万9500人の従業員は職を失う。

店内に入ってみる。
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壁にはデカデカと、
「STORE CLOSING SALE!」
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「言わなくとも分かっとるワイ」てな気分になる。

店全体が整然としていて、
顧客にも暗い感じがないのが救いだ。
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ボーダーズは、2001年に、
オンライン販売をアマゾンに委託した。
さらに海外店舗出店経費や株式買い戻し費用のために、
5億5400万ドルに負債が増加していた。

さらに、長期リースの店舗を大量に抱えていた。
リース期間は15年から20年に及ぶ。

これらが足かせとなって、資金繰りが詰まった。

アメリカ書店チェーン第1位のバーンズ・アンド・ノーブルも、
2010年8~10月期の最終損益は1200万ドルの赤字。

アメリカの書籍販売有店舗チェーンの未来図は、
いまだ描かれていない。

書籍店舗数は、今後5年で半減、
10年以内に9割減との過激な予測も出るほど。

私は「カミとアミの融合」には、
難しいけれど、大いに可能性があると思う。
どちらも補完関係を持つからだ。

その難題に挑戦せず、
有望なネット分野を、
アマゾンに委託してしまったボーダーズ。

その結果が、ここに出ている。

最後に日本の書店。
こちらも苦境のどん底。
2000年に2万1654店あった書店数、
2010年には1万5314店と、
10年間で3割減っている。

昨日の自分を捨てられない者は、
業界第1、第2の企業といえども、
容赦なく、社会から退場させられる。

簡単なことだ。
「今日の自分になればいい」
<結城義晴>

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