東北関東大震災から11日目。
次から次から難題が降りかかる。
しかし、横浜の桜も、
準備を始めている。
商人舎オフィス横の新田間川の桜の木。
桜の木全体が桜色になってきた。
そして芽吹き始めた。
自然は、ひとつずつ、すこしずつ、
段階を踏んで、前に進む。
今朝の日経新聞『経済教室』。
経済評論家の堺屋太一さんが、
実によく整理された考え方を提示。
民間企業の非常時対策にも、
大いに役に立つ。
まず非常時対策には、5段階がある。
①救助
②救済
③復旧
④復興
⑤振興
「長期的な視野を持つ必要があり、
決して方向を誤ってはいけない」
短期的・短絡的な救助・救済の視点だけで、
長期的な復興・振興を間違わせてはいけない。
この非常時の5段階の原則。
「軽いものから先に」
第1に、最も急ぐ軽いものは「情報」。
「携帯電話やインターネットで情報が簡単に入る世の中で、
非常時の情報収集がいかに難しいかという視点が忘れられていた」
第2は、「生活物資」。
まず「飲料と医薬の配布」。
その次が「緊急の食料」。
そしてその次が「燃料と衣料」。
第3は、「安全な生活空間の準備とそこへの搬送、
そして仮設住宅の提供」
この第3までが、「①救助」であるという。
震災から10日間が救助活動の段階。
石巻の阿部寿美さん(80歳)とその孫の任さん(16歳)。
9日ぶり、217時間後の救出。
父親の明さんの息子・任さんに対する言葉が、いい。
「口数は少ないが、
たいしたやつだと思っていたので、
それを証明してくれた。
頼もしく思っている」
この救出劇も、第1の救助の段階。
今日から第2段階の「救済」に入る。
「道路、水道、衛生、電力、ガスなどの
ライフラインの応急処置を急がなければならない」
堺屋さんは指摘する。
「大事なのは速度。
最低限のライフラインをつなげるリミットは1カ月以内」
現時点は、
「最低限のライフラインをつなぐ」ときなのだ。
第3段階の「復旧」に入るのは、
「被災後1カ月」。
「水道、道路、電力、鉄道などを旧(もと)に復すとともに、
店舗や飲食店を再開させ、日常生活を復元させる」。
この段階で「精神的安定やコミュニティの再建創造」が始まる。
プロ野球パシフィック・リーグの開幕が4月12日というのは、
まさにこの1カ月後の第3段階を目途にしている。
パ・リーグ首脳の見識というほかない。
堺屋さんも書いている。
「それには楽しみと希望を創る視点も必要だ」。
楽天監督・星野仙一の「平和ボケしとる」の指摘も、
ビートたけしの「『被災地に笑いを』なんて戯れ言だ」の発言も、
「最低限のライフライン」を死守しようとしている今の状況判断である。
このたびの東北関東大震災では、
福島第一原子力発電所の問題が重なった。
首都圏の電力を支え続けた福島第一原発である。
「最低限のライフライン死守」の時だと、自覚したい。
だから今、被災地や関東圏の店舗は、
配給所・供給所に徹するべきだ。
昨日、日本マクドナルド㈱が営業時間を延長し、
さらに24時間営業店を増やすと発表。
「東京電力供給エリアのマクドナルド店舗
営業時間に関する運用変更のお知らせ」。
1.東京電力供給エリアの店舗営業時間変更
3月21日(月)までの営業時間5:30~21:00
→3月22日(火)より5:30~23:00
2.東京電力供給エリアの24時間営業店舗の一部再開
3月21日(月)までの24時間営業店舗20店舗
→3月22日(火)から順次 計205店舗
この第2段階の救済時期のこの判断は、
間違っていると思う。
1カ月後の復旧段階ならまだしも。
外食産業、ことにファストフード業界は、
競争意識が激しい。
トップ企業が他に先駆けて走り出すと、
フォロワーたちも走り始める危険性がある。
堺屋さんは重要な指摘をしている。
「利にこだわらず情に流されず、
経済社会の総合判断が必要だ」
「利にこだわらず情に流されず」
マクドナルドの判断は、
「利」にこだわってはいまいか。
堺屋さんは続ける。
「日本の財政・経済はもちろん、
国民の士気やこの国の多様な文化性をも考えねばならない」
「この順序をどう選択し、
その合理性を国民に説得することこそ、
復旧から復興へ、
そしてさらなる振興・発展へと展開していく過程で、
最も重要かつ困難な仕事である」
民間企業も商業・サービス業も、
順序の選択と顧客や社会への説得は不可欠だ。
堺屋さんはそのために国に対して、
「復興院」的機関の設置を提案する。
「すべての枠を超えた総合的で強力な勧告機関」
1923年の関東大震災の時には、
「帝都復興院」という強力な機関ができて、
「土地交換による市街地整備計画などを断行」し、
東京の近代的復興と振興に貢献した。
1995年の阪神大震災の時には、
堺屋さん自身、「復興院」創設を「進言」したが、
『復興委員会』なる「調整機関に縮小」されてしまった。
堺屋さんはこの委員会の委員の一人となったが、
「日時を経るに従って熱は冷め、
政府各省の権限意識が強まった」。
だからこそ今回、「復興院」的機関の創設を主張する。
その3つの条件。
第1に、「既存の枠組みを超えること」。
第2に、「時間の長短を超え、目前のことと遠い先のことを、
等しい尺度で考えること」。
第3に、「これまでの経緯や利害にとらわれないこと」。
昨年10月に堺屋さんに会った。
その時に強調していたのは、何事も、
「本気のプロデューサー」が必須だということ。
「復興院」には本気のプロデューサーが、
1ダースくらいは参画しなければならないだろう。
今日の日経新聞『経済教室』。
ご一読をお勧めしたい。
堺屋太一さんに感謝しつつ、
「利にこだわらず情に流されず」
「ひとつずつ、すこしずつ」
「ずっと、いつも」を、
私たちの信条としたい。
<結城義晴>