街が優しくなった気がする。
私の住む横浜の街。
横浜に限らない。
日本の街が、
優しくなっている。
東北関東の大震災と大津波を体験して、
人々が優しくなったから、
街が優しく感じられるのだと思う。
今日も一日、優しく、強く。
東京・横浜は今週の月曜日28日に開花宣言。
でも、横浜駅のそばを流れる新田間川の桜は、
まだつぼみ。
ほんとうに、もう少し。
商人舎オフィスの私のデスク。
回転椅子をぐるっと回すと、
桜の枝に手が届きそう。
その花はちょっとだけ開いた。
もう少しです。
来週には、北関東や東北にも、
桜の優しさが届けられるに違いない。
街の優しさは、
人々の優しさと自然の優しさとによって、
生み出される。
ときとして、人間も自然も、
ひどく恐ろしいことをするが。
今朝の朝日新聞「オピニオン」欄。
原子力安全性専門家のウォルト・パターソンさんが、
「原発ルネサンスの逆風に」と題してコメント。
ここ数年、ヨーロッパは、
「原子力ルネサンス」ともいうべき状況を迎えていた。
その理由は地球温暖化にある。
原発推進側が、
「二酸化炭素を出さないクリーンなエネルギー」を訴求し、
押し気味だった。
そのヨーロッパにも、4つの考え方がある。
第1は、フランスに代表される「積極派」の国。
明日、サルコジ大統領が来日する。
第2は、ドイツに代表される「推進・反対二分」の国。
第3は、イギリスに代表される「懐疑派」の国。
チェルノブイリ事故以後、新しい原発をつくっていない。
今回の福島原発事故で、ドイツの判断が大勢を占める。
メルケル首相は「脱原発」を打ち出した。
しかし第4の考え方がある。スペインだ。
「以前は原発に頼っていたが、主力を風力発電に改めた」
「かなり急激な改革だったが、
今では国内需要をまかない、
電力が余ってタービンの一部を止めるほどだ」
もちろん日本の人口、消費力、経済力とスペインのそれとは、
比較にならないほどの差があるが、
パターソンさんは、薦める。
「風力、太陽光、海洋エネルギー」
「小さな施設を網の目状に造れば送電コストを減らせる」
「日本には風と太陽など無限の資源がある。
有限な資源である石油やウランに頼らなくて済むエレガントな社会」
「エレガントな日本」
私は、いいと思う。
私たちにあっていると感じる。
もちろん現下の福島第一原発問題を、
解決してからの話ではあるが。
さて日経新聞「企業欄」には、
「大震災 企業はどう動いた」で、
「コンビニ 近隣も負債、広域調達」の見出し。
コンビニのセブン-イレブン、ローソン、
ファミリーマート、サークルKサンクス、ミニストップの記事。
この5社は、東北・茨城に約4000店を展開している。
そのうちの約1650店が営業中止となった。
セブン-イレブン 1454店 現在の休業店 約60店
ローソン 911店 同67店
ファミリーマート 755店 同51店
サークルKサンクス 596店 同27店
ミニストップ 288店 同14店
26日現在、休業店は152店と1割弱まで回復。
凄い復旧ぶりだった。
ただし、商品不足は共通の悩み。
この中で、ファミリーマートの上田準二社長(64歳)は、
仙台で震災に直撃された。
3月11日、仙台市内で、
加盟店への政策発表会を開催していた。
東北地区の約600店の加盟店オーナーが参集していた。
会合を中断し、
オーナーたちには自店に帰ってもらい、
緊急態勢を組んだ。
ローソン新浪剛史社長(52歳)は、
NHKテレビにも出たが、
「情報収集を急げ」と指令。
「コストは考えるな」。
第1陣はトラックなど車両5台と社員7人、
第2陣・第3陣は30人以上の社員が次々に現地入りした。
セブン-イレブン井阪隆一社長は、
東北には関東の専用工場、
北関東には関西の商品を回して、
「商品の充足力」を維持した。
「コンビニの存在価値が問われる正念場」
日経の記事も、こう表現する。
「一日も早い日常の回復のため、
有事のインフラとしての役割も果たす」
53歳の井阪社長の言葉が、
コンビニ業態の役割と機能を端的に表す。
私は2004年の新潟県中越地震の時に、
「凡事徹底、有事活躍」と表現した。
小売業・流通業の本来のあり方。
1995年の阪神大震災の時には、
以下のように書いた。
スーパーマーケットは、
生存のための配給基地となった。
コンビニは、
余震の続く闇のなかの街の灯台に変わった。
フードサービスは、
温かい食べ物の炊き出し係に徹した。
メーカーや問屋は、
補給部隊の役を担った。
今回も同じだった。
いや、それ以上だった。
さらに、私は続けた。
小さな店も、大きな企業も、
皆が、このときこそと、
日ごろの仕事の腕を発揮した。
いつもよりも素早く、力強く、黙々と。
そのそばで、
瓦礫のなかに埋まったままの人たちも、
また、いた。
雨ニモ負ケズ、風ニモ負ケズ、
商業は働き続けねばならない。
店は客のために、是が非にも、
開けておかねばならない。
有事のときにこそ、頭を柔らかくし、
冷静に、活躍せねばならない。
人びとが立ち上がる礎に
ならねばならない。
商業人はどんなときにも、
明日を見つめていなければならない。
東北関東大震災でも、
まったく同じだった。
いや、それ以上だった。
昨夜は、大阪・長居陸上競技場で、
大震災復興目的のサッカー慈善試合。
日本代表対Jリーグ選抜。
ゲームそのものは絵に描いたような慈善試合だったが、
44歳の最年長Jリーガー三浦和良が千両役者の得点。
ゴールに向かう三浦を追うディフェンダーの足が、
スローモーションのように見えた。
しかし、とても良い慈善ゲームだった。
プロスポーツ選手も、
有事の時にこそ、
頭を柔らかくし、冷静に活躍する。
人々が立ちあがる礎になる。
明日を見つめている。
私たち日本人全員が、
「凡事徹底、有事活躍」に邁進したいものだ。
「エレガントな日本」の明日を、
見つめていたいものだ。
さて、一昨日、昨日と、
私のスケジュールは埋まっていた。
なぜか長編になってしまうブログを、
まず、書く。
それから単行本の校正に没頭する。
いま、3冊分、手元にある。
その前後に、会議や会合。
一昨日は、商人舎オフィスに、
顧問税理士の宮田昇先生と、
税理士の後藤周太郎さんに来ていただいて、
昨年度決算の結果報告を受け、懇談。
お陰様で㈱商人舎3年目、
わずかですが、増収増益。
伊那食品工業会長の塚越寛さんの言葉のごとく、
「年輪のような経営」。
すべての皆さんに、心から感謝。
昨日は、午前中、
カスタマー・コミュニケーションズ㈱の役員会。
こちらも、イノベーションを果たしつつ、
新年度に臨む。
午後は、ワンアジア財団の理事会・評議員会。
私は、この一般財団法人の評議員。
今年度の活動報告。
講座開設大学に対する助成は、
日本大学国際関係学部、日本大学芸術学部、高麗大学など7件。
研究機関・研究者に対する助成は、
スタンフォード大学フーヴァー研究所、高麗大学金融リスク研究室など6件。
国際交流に関する助成は、
東京大学大学院情報学環をはじめ4件。
来年度にも、日本では日本大学、東京大学、京都大学、筑波大学など、
韓国では高麗大学、建国大学、又石大学、湖南大学など、
そして中国では北京大学、同済大学、河南大学など目白押しの状況。
ワンアジアクラブは現在、9都市に発足し、
新年度には少なくとも4都市に誕生する。
これもエレガントな社会づくりに寄与する。
エレガント〈elegant〉とは、
「落ち着いて気品のあるさま。優美なさま」
「練達」に通じる言葉だ。
その「練達」は、
「艱難」と「忍耐」から生れる。
「練達」から導き出された「希望」は、
決して「失望」に終わることがない。
すなわち「エレガントな社会」は、
「艱難と忍耐」を経て誕生する。
私はこのことを信じている。
<結城義晴>