結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2011年03月31日(木曜日)

「売上げ・利益を超えた何か」を求めて「個人も企業も覚悟を決める」

横浜の桜、いよいよです。
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商人舎オフィス、
私のデスクの後ろの桜。
このあたりでは、毎年、
いちばん先に咲きます。

それが花を開かせはじめた。
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今日で2011年3月が終わります。

この1カ月は、
長かったか、
短かったか。

私は、ひどく長く感じた。

被災された人たちは、
地震が来て津波に襲われたのは、
「つい二日三日前のようだ」と、
述懐します。

時間が短かった。

それだけ、実際の「被災者」と、
あえて言えば「傍観者」との間に、
意識や感覚の違いがあるのでしょう。

それでも明日から、
新しい4月に入ります。

「ひとつずつ、
すこしずつ、
一歩ずつ」

元気を出そうよ、
それがあなたの仕事です。
それが私の仕事です。

朝日新聞の最終面に、
瀬戸内寂聴さんが寄稿。
「東北人は不言実行の辛抱強い性質である。
一度心を許しあったら決して裏切らない」

「私は『無常』を、
この世のはかなさを示す語と考えず、
『この世は常ならず』と
自分流に判断してきた。

この世では同じ状態は決して続かない」

「私の『無常観』によれば、
現在のこの世の地獄も、
必ずどん底からの反動として、今に立ちあがり、
希望の見える世の中に変わると信じて疑わないのである」

「私たちはどんな不幸の中でも
決して絶望してはならない。
暗闇の空に希望の星を見出す力を
人間は与えられてこれまで生きてきた」

「無常――どん底は続かない」
タイトルが物語るように、
寂聴さんの言葉が心にしみる。

日経新聞一面の「東日本大震災 今何をすべきか」
編集委員の西條都夫さんが、「今後の課題」を整理する。
「個別企業、個別工場の『点』の復旧をつなぎあわせ、
サプライチェーンという『線』の復興に持って行くということだ」

「ものづくりの力」を発揮し、
「日本ブランド」を立て直すことの提案。

しかし、私は、
日本の「サプライ&ディマンド・チェーン」の力を信じたい。
日本の流通小売業の目覚ましい活躍こそ、
製造業の「ものづくりの力」を活かすものだ。

これから、東北関東で、
ものすごい需要が生まれる。
それを信じて、仕事に臨みたい。

「企業も個人も、
覚悟を決めて向き合うしかない」

西條さんの言うとおりだ。

この提案記事の最後に出てくる話。
「トヨタグループの創始者、豊田佐吉が、
自動車事業に興味をもったのは、
関東大震災がきっかけだった。

復興の進む東京の街で、
米国製のトラックが活躍する姿を目にして、
『自動車はすごい』『いつか国産化を』と、
気持ちを固めたという」

さてその日経新聞スポーツ欄のコラム。
「豊田泰光のチェンジアップ」
考えてみると私は、
このコラムがほんとうに好きだ。

「野球とともにあった人生のなかで、
これほど白けた気分になったのは初めてだ」

今日のコラムは、こう始まる。

セ・リーグの「開幕強硬騒動」のこと。

豊田は「何か違う」と感じる。それは、
「プロ野球が勝ち負けのみにとらわれているという『違和感』」

「選手をかき集めてでも、とにかく勝てばいい」
そんな色が濃くなり始めた。

「見る側もどこか勝ち負けのみに目を奪われてきた」

「セ・リーグが開幕を強行しようとしたのもその流れで、
144試合をこなし、勝ち負けを決めて、
ビールかけをしておしまいというサイクルに
とらわれていたのかもしれない」

「そういう惰性の世界から脱し、
今こそプロ野球は、
勝ち負けを超えた何かを
持たなくてはならない」

私が感動したのは、
プロ野球の「勝ち負けを超えた何か」。

小売流通業・サービス業でいえば、
「売上高・利益の増減を超えた何か」

そのために「惰性の世界から脱する」。
その機会を私たちは与えられた。

寂聴さんの「この世は常ならず」
豊田佐吉の「ひらめきと決意」
そして豊田泰光の「勝ち負けを超えた何か」

滋賀県彦根市に本部をもつ㈱平和堂は、
売上げを『ご奉仕高』、
利益を『創造高』
と考えて、
地域と顧客への奉仕に励む。

これは、売上高や利益に関して、
それを「超えた何か」を表現したものだ。

短かったか、長かったかにかかわらず、
2011年の3月が終わる。

堺屋太一さん言うところの第1段階の「救助」と、
第2段階の「救済」が一段落し、
第3段階の「復旧」から、
第4段階「復興」への新しい日々が、
本格化する。

「ひとつずつ、すこしずつ、一歩ずつ」
「希望の見える世の中になると信じて」

<結城義晴>

2011年03月30日(水曜日)

「エレガントな日本社会」は「艱難と忍耐」を経て誕生する!

街が優しくなった気がする。
私の住む横浜の街。

横浜に限らない。
日本の街が、
優しくなっている。

東北関東の大震災と大津波を体験して、
人々が優しくなったから、
街が優しく感じられるのだと思う。

今日も一日、優しく、強く。

東京・横浜は今週の月曜日28日に開花宣言。
でも、横浜駅のそばを流れる新田間川の桜は、
まだつぼみ。
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ほんとうに、もう少し。
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商人舎オフィスの私のデスク。
回転椅子をぐるっと回すと、
桜の枝に手が届きそう。

その花はちょっとだけ開いた。
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もう少しです。

来週には、北関東や東北にも、
桜の優しさが届けられるに違いない。

街の優しさは、
人々の優しさと自然の優しさとによって、
生み出される。

ときとして、人間も自然も、
ひどく恐ろしいことをするが。

今朝の朝日新聞「オピニオン」欄。
原子力安全性専門家のウォルト・パターソンさんが、
「原発ルネサンスの逆風に」と題してコメント。

ここ数年、ヨーロッパは、
「原子力ルネサンス」ともいうべき状況を迎えていた。

その理由は地球温暖化にある。

原発推進側が、
「二酸化炭素を出さないクリーンなエネルギー」を訴求し、
押し気味だった。

そのヨーロッパにも、4つの考え方がある。
第1は、フランスに代表される「積極派」の国。
明日、サルコジ大統領が来日する。

第2は、ドイツに代表される「推進・反対二分」の国。

第3は、イギリスに代表される「懐疑派」の国。
チェルノブイリ事故以後、新しい原発をつくっていない。

今回の福島原発事故で、ドイツの判断が大勢を占める。
メルケル首相は「脱原発」を打ち出した。

しかし第4の考え方がある。スペインだ。
「以前は原発に頼っていたが、主力を風力発電に改めた」

「かなり急激な改革だったが、
今では国内需要をまかない、
電力が余ってタービンの一部を止めるほどだ」

もちろん日本の人口、消費力、経済力とスペインのそれとは、
比較にならないほどの差があるが、
パターソンさんは、薦める。
「風力、太陽光、海洋エネルギー」

「小さな施設を網の目状に造れば送電コストを減らせる」

「日本には風と太陽など無限の資源がある。
有限な資源である石油やウランに頼らなくて済むエレガントな社会」

「エレガントな日本」
私は、いいと思う。
私たちにあっていると感じる。

もちろん現下の福島第一原発問題を、
解決してからの話ではあるが。

さて日経新聞「企業欄」には、
「大震災 企業はどう動いた」で、
「コンビニ 近隣も負債、広域調達」の見出し。
コンビニのセブン-イレブン、ローソン、
ファミリーマート、サークルKサンクス、ミニストップの記事。

この5社は、東北・茨城に約4000店を展開している。
そのうちの約1650店が営業中止となった。
セブン-イレブン 1454店 現在の休業店 約60店
ローソン 911店 同67店
ファミリーマート 755店 同51店
サークルKサンクス 596店 同27店
ミニストップ 288店 同14店

26日現在、休業店は152店と1割弱まで回復。
凄い復旧ぶりだった。
ただし、商品不足は共通の悩み。

この中で、ファミリーマートの上田準二社長(64歳)は、
仙台で震災に直撃された。
3月11日、仙台市内で、
加盟店への政策発表会を開催していた。
東北地区の約600店の加盟店オーナーが参集していた。

会合を中断し、
オーナーたちには自店に帰ってもらい、
緊急態勢を組んだ。

ローソン新浪剛史社長(52歳)は、
NHKテレビにも出たが、
「情報収集を急げ」と指令。
「コストは考えるな」。
第1陣はトラックなど車両5台と社員7人、
第2陣・第3陣は30人以上の社員が次々に現地入りした。

セブン-イレブン井阪隆一社長は、
東北には関東の専用工場、
北関東には関西の商品を回して、
「商品の充足力」を維持した。

「コンビニの存在価値が問われる正念場」

日経の記事も、こう表現する。

「一日も早い日常の回復のため、
有事のインフラとしての役割も果たす」

53歳の井阪社長の言葉が、
コンビニ業態の役割と機能を端的に表す。

私は2004年の新潟県中越地震の時に、
「凡事徹底、有事活躍」と表現した。
小売業・流通業の本来のあり方。

1995年の阪神大震災の時には、
以下のように書いた。

スーパーマーケットは、
生存のための配給基地となった。
コンビニは、
余震の続く闇のなかの街の灯台に変わった。
フードサービスは、
温かい食べ物の炊き出し係に徹した。
メーカーや問屋は、
補給部隊の役を担った。

今回も同じだった。
いや、それ以上だった。

さらに、私は続けた。

小さな店も、大きな企業も、
皆が、このときこそと、
日ごろの仕事の腕を発揮した。
いつもよりも素早く、力強く、黙々と。

そのそばで、
瓦礫のなかに埋まったままの人たちも、
また、いた。

雨ニモ負ケズ、風ニモ負ケズ、
商業は働き続けねばならない。

店は客のために、是が非にも、
開けておかねばならない。

有事のときにこそ、頭を柔らかくし、
冷静に、活躍せねばならない。

人びとが立ち上がる礎に
ならねばならない。

商業人はどんなときにも、
明日を見つめていなければならない。

東北関東大震災でも、
まったく同じだった。
いや、それ以上だった。

昨夜は、大阪・長居陸上競技場で、
大震災復興目的のサッカー慈善試合。

日本代表対Jリーグ選抜。
ゲームそのものは絵に描いたような慈善試合だったが、
44歳の最年長Jリーガー三浦和良が千両役者の得点。
ゴールに向かう三浦を追うディフェンダーの足が、
スローモーションのように見えた。

しかし、とても良い慈善ゲームだった。

プロスポーツ選手も、
有事の時にこそ、
頭を柔らかくし、冷静に活躍する。
人々が立ちあがる礎になる。
明日を見つめている。

私たち日本人全員が、
「凡事徹底、有事活躍」に邁進したいものだ。

「エレガントな日本」の明日を、
見つめていたいものだ。

さて、一昨日、昨日と、
私のスケジュールは埋まっていた。

なぜか長編になってしまうブログを、
まず、書く。
それから単行本の校正に没頭する。
いま、3冊分、手元にある。

その前後に、会議や会合。

一昨日は、商人舎オフィスに、
顧問税理士の宮田昇先生と、
税理士の後藤周太郎さんに来ていただいて、
昨年度決算の結果報告を受け、懇談。
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お陰様で㈱商人舎3年目、
わずかですが、増収増益。

伊那食品工業会長の塚越寛さんの言葉のごとく、
「年輪のような経営」。

すべての皆さんに、心から感謝。

昨日は、午前中、
カスタマー・コミュニケーションズ㈱の役員会。
こちらも、イノベーションを果たしつつ、
新年度に臨む。

午後は、ワンアジア財団の理事会・評議員会。
私は、この一般財団法人の評議員。

今年度の活動報告。
講座開設大学に対する助成は、
日本大学国際関係学部、日本大学芸術学部、高麗大学など7件。
研究機関・研究者に対する助成は、
スタンフォード大学フーヴァー研究所、高麗大学金融リスク研究室など6件。
国際交流に関する助成は、
東京大学大学院情報学環をはじめ4件。

来年度にも、日本では日本大学、東京大学、京都大学、筑波大学など、
韓国では高麗大学、建国大学、又石大学、湖南大学など、
そして中国では北京大学、同済大学、河南大学など目白押しの状況。

ワンアジアクラブは現在、9都市に発足し、
新年度には少なくとも4都市に誕生する。

これもエレガントな社会づくりに寄与する。

エレガント〈elegant〉とは、
「落ち着いて気品のあるさま。優美なさま」

「練達」に通じる言葉だ。

その「練達」は、
「艱難」と「忍耐」から生れる。
「練達」から導き出された「希望」は、
決して「失望」に終わることがない。

すなわち「エレガントな社会」は、
「艱難と忍耐」を経て誕生する。

私はこのことを信じている。

<結城義晴>

2011年03月29日(火曜日)

被災地・陸前高田に入った看護師日記、および小売業の震災への対応と「共益」コンセプト

「JKTS」というタイトルのブログ。
東北関東大震災で被災した陸前高田に、
医療スタッフとして入ったひとりの女性看護師さん。
3月13日から23日までの10日間の日記。

昨夜2時ごろに読み始めて、
止められなくなって、
一気に最後まで読んだ。

「1、被災地へ。」から、
「14、From TOKYO」までの長編。

最後の章には29日13時現在で、
1589のコメントが寄せられている。

全国に感動を呼び起こし、
多くの人々に深く考えさせる。

是非、みなさんにも、
最後まで読んでほしい。

現地に入る前にリーダーナースの注意がある。
『想像以上に現場は壮絶。
甘い考えやボランティア精神の人はここでリタイアしてください。
現場ではどんな状況下においても絶対に泣かないこと。
私達は同情しに行くんじゃない。
看護、医療を提供しに行く』

そして被災地の真っただ中で、
時間を忘れて看護の仕事に従事。
その中で人々と交流。

仕事に打ち込み、
仕事を超える。

看護師さんの最後の言葉。

「お金を動かす人、
人々を活気づける人、
目の前の仕事を精一杯する人、
支援の形はそれぞれです」

「そして今だけでなく、
このトンネルを抜けるのは
長期戦であるということを念頭に」

「現実社会と非現実社会はいつだって隣り合わせ」

「いつかみんなの努力と流した涙が
報われるときが必ず来ますように」

是非是非、
最後まで読んでほしい。

今朝の日経新聞の国際欄。
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス教授J. ハンターさん。
日本経済史が専門で、
過去の災害と経済の関係を研究している。

「歴史を振り返ると、
大きな自然災害や敗戦などに直面した日本は
強い復元力を示してきた。
数年内には、日本経済は、
もとの成長軌道にもどると確信している」

心強い「確信」だ。

日経新聞のコラム「一目均衡」。
編集委員の西條都夫さん。
コマツの野路国夫社長の社員に向けた言葉を紹介。
「震災の復旧、復興支援が
売上げや利益に優先します」

故倉本長治商業界主幹の『商売十訓』第一訓に通じる。
「損得より先に善悪を考えよう」

朝日新聞経済欄。
「被災地スーパー総力かけ再開」
ダイエー仙台店が被災2日後に店を開けた話。

震災後2週間の3月27日には、
ダイエー仙台店の前には買い物客の長い行列。

1995年の阪神大震災を経験したダイエーの動きが素早かった。
創業者の中内功さんが存命で、陣頭指揮を執った。
その時の経験で翌1996年にできた「地震対策マニュアル」。
それが今回、大いに活きた。

3月11日、東京江東区のダイエー本社。
「震災発生から約40分後、4階の食堂に対策本部ができた」

被災状況の報告が入ると、
対策本部スタッフはA4判のマニュアルに聞き取り情報を書き込む。

「スーパーはライフライン」として営業再開の方針が決まる。

12日夕方、人事部の3人が名古屋へ。
翌朝、飛行機で新潟に入り、
レンタカーで仙台へ。

13日中にチャーターバスで60人の応援社員が到着。
店内で寝泊まりしながら売場づくりし、顧客の誘導をした。

商品に関しては12日に千葉のセンターから、
まず水やカップめんなどをトラック配送。
13日には、食品と日用雑貨売り場をオープンさせた。

ダイエーに限らないと思う。

イオンもセブン&アイ・ホールディングスも、
ヨークベニマルも、
マルトやマイヤも、
そして中小の小売業も、
こういった店舗を開ける努力を、
素早く始め、遂行した。

仕事に打ち込む。
そしてその仕事の領域を超えて、
人間としてのあり方を知る。

女性看護師さんも、
ダイエー仙台店の人々も、
大きなものを得た。

これこそ、生きる糧となるものだと思う。

さて東北関東大震災前の2月の業態別販売実績が、
次々に発表されている。

日本百貨店協会からは、
2月の「全国百貨店売上高概況」
調査対象90社・258店舗。
売上総額は前年同月比0.7%増の約4332億円。
これは4カ月ぶりのプラス。

商品別の売上高伸び率を高い順に見ると、
家庭用品 229億 前年同月比プラス3.2%、
身のまわり品 513億 プラス2.5%、
雑貨 627億 マイナス2.2%、
食料品 1277億 プラス0.9%、
衣料品 1418億 プラス0.5%。

一方、日本フランチャイズチェーン協会からは、
「コンビニエンスストア統計調査月報」。
調査対象は大手コンビニチェーン10社。

2月の既存店売上高は5699億円で、
前年同月比プラス6.5%。
こちらは相変わらず好調を維持。
来店客数は9億5891万人で、プラス2.0%。
売上高、客数ともに4カ月連続のプラス。

平均客単価は594.4円で、プラス4.3%。
これも3カ月連続のプラスとなった。

全店の売上高は6207億で、プラス8.7%、
来店客数は10億3257万人で、プラス3.6%増、
平均客単価は601.2円で、プラス4.9%。

引き続き、たばこが金額ベースで前年を大きく上回るほか、
デザートや惣菜など日配食品も好調だった。

そして、3協会合同のスーパーマーケット販売統計発表。
先週3月25日、日本橋の日本スーパーマーケット協会で行われた。

まずはじめに、震災の被害にあわれた方々へ、
会場内の全員で黙とうを捧げた。
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通常は統計発表の後に、
ゲストスピーカーによる販売動向の発表があるが、
今月は東北関東大震災の発生を受け、
3協会の副会長、専務理事が一同に集結。
新日本スーパーマーケット協会の増井徳太郎副会長(真ん中)、
日本スーパーマーケット協会の大塚明専務理事(右)、
オール日本スーパーマーケット協会の松本光雄専務理事(左)。
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日本スーパーマーケット協会の大塚明専務理事から、
2月の販売実績速報値が発表された。

総売上高は昨対プラス2.7%
7058億3924万円。

食品合計はプラス3.1%の6119億2767万円、
生鮮3部門はプラス3.1%、2235億6452万円。
青果は良かった。プラス5.7%で905億5754万円。
水産はプラス0.7%で、632億1619万円、
畜産はプラス2.2%の697億9079万円、
惣菜はプラス4.3%で622億5815万円、
一般食品・他はプラス2.9%で、3261億0500万円。

そして非食品合計はプラス1.0%で、939億1157万円。

「2月の雪が売上げに貢献した。
雪と台風は食品スーパーマーケットに強く、
その前後に必ず山ができる」

「寒くなったため、鍋商材は価格の張るものが動いた。
節分やバレンタインなどのイベントへの取組み、
とくに節分の恵方巻が前年を大きく上回った」

「また、新興国の需要増加による、
コーヒー、小麦などの値上げも売上げを後押しした。
結果、2月度はたいへん良い成績を残すことができた」

「ただ、正直なところ、
この2月度の263社の実績数値を集計するのに、
非常に苦労をした。
(地震のあった)3月11日以降、
連絡がなかなか取れない企業もあった。
昨日やっと最後の1社と連絡が取れ、
なんとか、一通りの情報を入手することができた」

景況感調査については、
震災前と震災後の回収サンプルの反応が異なるため、
前後での数値の比較を行った。

今後2~3カ月の売上判断の見通しは、
北海道・東北地方以外、すべての地域で、
震災被災企業の数値が下がる。
客単価に関しては、
北海道・東北、関東は上がる。

次に震災発生後の各協会の対応について、
それぞれの協会から発表があった。

まず大塚専務理事。
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日本スーパーマーケット協会の
会員企業1社を例に挙げて説明。

期末を前に3月1日からチラシや還元セールを行っていたので、
既存昨比は101.2%と伸ばしていた。
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しかし震災の日は、売上げがガクンと落ち込んだ。
翌12~14日はいわゆる、「震災特需」。
15日以降は、商品がなくなったのか、
落ち着きを取り戻したのか、
いつもとあまり変わらず推移するようになった。

震災後4日間の動向として、
一番売れたのが乾電池や、
トイレットペーパー、ティッシュなどの住居関連商品。
また、加工食品・菓子類などの保存食。
日配品に関しては、パンや乳製品、納豆、豆腐などは、
ずっと欠品状態が続いているため、
POSデータ上のズレがあり、正確ではない。

放射能問題がでてきた、ここ数日の状況としては、
野菜部門は売上げは変わっていない。
葉物の売上げは半分くらいになっているが、
他の野菜にシフトしている。

水に関しては現場でも混乱が続いている。
通常8万ケース在庫している企業(中堅より少し小さいクラス)は
一晩にしてすべての在庫が動いてしまった。
あるスーパーマーケットは通常1カ月2000ケースなのに、
昨日いきなり2万ケースの発注があった。

関東は東北からの物流が多いので、
しばらくはタイトな状況が続くだろう。

特に牛乳は北海道からの生乳が日立港に入港できないため、
まず関東に入れてから、製造工場に戻すなど、
時間がかかっている。
さらには計画停電のため、
殺菌に通常より時間がかかってしまっていることも、
牛乳の品薄状態が続いている原因のようだ。

3月17日、流通3団体で、
「スーパーマーケット東日本大震災対策本部」を設置。
当面の活動として、まずは会員企業に対する募金活動を、
それぞれの協会を通して要請した。
また会員企業の負担を減らすため、
情報や行政への要望をとりまとめ、
3協会で足並みをそろえる。

オール日本スーパーマーケット協会の松本光雄専務理事。
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「震災後、どの企業も即営業を再開するために、
どんな状況下でも可能な限り最大限の努力をしていた。
スーパーマーケットの本来の役割を自覚して、行動していた。
これには改めて、各企業とも、すごいと思った」

先日、状況把握のため、
AJSのメンバーで気仙沼に入った。
実質滞在したのは3時間くらいだったが、
意外とスムーズに入ることができた。

津波が来た場所と来なかった場所で、
被害の差が目に見えて大きかった。
地元のスーパーマーケットで、
2店舗ともやられてしまったところもある。

会員企業では、本部が流されてしまったり、
店舗が損壊してしまった企業もあるが、
営業している店舗では、
精肉や青果がだいぶ揃っていた。
パンも納品されていた。

ただ、カップ麺、水、生理用品、コンロは不足していた。

コプロでは被害状況を3区分に別け、
優先順位をつけて配給している。

新日本スーパーマーケット協会からは、
増井徳太郎副会長。

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15日に行われた新日本スーパーマーケット協会の通常総会で、
流通3団体のトップ会議をした。
3団体で協力できることがあるのではないかという話し合い。

これから復興に何年かかるか想像もできないが、最後まで、
被害を受けた方たちに目を向けて行こうと決意した。

福島の原発問題によって夏場の電力問題や計画停電が危惧される。
これらに関する要望を3団体でまとめて、行政に出していく。

計画停電に関し、現場から上がっている声は、
・予定が立たない
・毎日時間が変わる
・計画されていても、やらないこともある
(停電が行われないと、急きょパートさんなどを呼ばなくてはいけない)
・日中の時間帯の停電が一番つらい
(受発注のトラブル、納品伝票の訂正、
POSの起動に時間がかかる、温度管理が大変)

これらをまとめ、
とにかく予定をしっかり立てられるように、
停電を行ってほしいという要望を東京電力に出していく。

以上がスーパーマーケット3協会からの現場報告と対応策。

ハーバード大学のマイケル・ポーター教授。
最近、提唱しているのが「共益」。
英語で「Shared Value」。
先述の「一目均衡」で西條さんが触れている。

「企業は社会から遊離したまま、
利益を生み出すことはできない」
社会問題の解決に、
「企業自ら取り組むことで、
持続的な富の創造やイノベーションが可能になる」

スーパーマーケットは社会的存在である。
ライフラインを守る役割を有する。

そのうえで、いま、社会のために、
企業を超えて協力し合うことが必須である。

「共益」の意義が、
ビンビンと感じられる。

<結城義晴>

2011年03月28日(月曜日)

がんばろう、マイヤ! 負けるな、びはん! 桜前線北上と九州新幹線開通の歓喜!

Everybody! Good Monday!
[vol13]

2011年第13週です。
3月最終にして、4月が始まる週。

大地震津波の前に詠みし歌
春は近くて脳天気なり

〈夏目たかし、朝日歌壇より〉

「平穏平和に馴れきって、自然や原子力をコントロールできると
過信していた私たちの現実が照らし出されたショック」
撰者・佐々木幸綱さんがコメントしている。

昨夜、3月27日22時31分13秒、
㈱マイヤ社長の米谷春夫さんより、
このブログにコメント。

「掲載してくださって感謝申し上げます」
3月19日のこのブログへの投稿。
「とにかく大船渡と陸前高田市6万人の
ライフラインを守るため必死です」

「まだまだ商品が足りません。
防災協定を締結している3市1町にも
まだまだ供給をしなければなりません。
調味料や日配品などまったく不足しています」

「家族を失い自宅を失いながらも
避難所から通勤している従業員も多数ですが
皆んな前途に眼を向けて明るくたくましく頑張っています。
ファイティングスピリッツも健在です」

「いまこそSMの社会的地位を高める機会でもあります。
宜しくご支援くださいませ。」

「ライフラインを守る。
スーパーマーケットの社会的地位を高める」
その志がいちばん大切です。

「前途に目を向けて明るくたくましく。
ファイティングスピリッツも健在」
その心構えが一番の力です。

被災された人々からの元気な声。
これこそ私たち日本人全員に、
勇気を与えてくれます。

ありがとう。
そして、ともに、
がんばりつづけたい。

がんばれ、マイヤ。
負けるな、マイヤ。

メーカーの皆さん、
問屋の皆さん。
マイヤに商品を。
お願いします。

朝日新聞社会面に「店はなくても青空市」の記事。
岩手県山田町のスーパーマーケット「びはん」。
その8代目の間瀬慶蔵さん(33歳)。
2店舗を構えていたが、いずれも津波と火事で失った。

「店ががれきとともに押し流されていく様子を、
ただ見つめるしかなかった」

「近くの寺に避難したが、
悔しくて眠れなかった」

「4日後に商品が届き始めた。
店があった場所でさっそく販売を始めた」

「車2台で声をかけながら町内を回り、
自宅にいる人にも販売した」

「口コミで広まり、開店前には
行列ができるようになった」

間瀬さんは語る。
「街に根を張り、
支えていける存在になりたい」

がんばろう、びはん。
負けるな、びはん。

まだまだほかにも、
全力を尽くして、
人々に貢献している同志がいる。

私はそんな同志たちのことを、
心から誇りに思う。
ともに、がんばろうと考える。

「ひとつずつ、すこしずつ」
いまこそ、
商業人の肝っ玉をご覧に入れよう。

さて今週は、3月と4月が入れ替わる。
3月末決算の会社は、2010年度を〆る。

そして新年度へ。

世間も新年度に入る。
進学・入学、新学期。

東北関東大震災でそれもおぼつかない地域もある。
しかし心新たに、新しい年度を迎えたい。

今週は、明日火曜日の29日に、
サッカーの慈善試合「日本代表対Jリーグ選抜」。
目的は東日本大震災復興支援。

もちろん甲子園の選抜高校野球も、
被災地を熱く支援しつつ、盛り上がる。

すこしずつ、ひとつずつ、
明るい話題がひろがってゆく。

木曜日の4月1日は、
「3月の日銀短観」が発表される。
震災の影響が、経済や消費にどう出ているか。

そしてこの日、三越と伊勢丹が合併し、
「三越伊勢丹」がスタートする。
1673年 三井高利が創業した「越後屋」と、
1886年、神田旅籠町に始まった伊勢屋丹治呉服店。

その合併会社が日本の百貨店と小売業の歴史を、
また一歩、進める。

さてさて、週の初めの常盤勝美の2週間天気予報」に、
「桜開花宣言」の報。

すでに先週の3月20日には早々と静岡で開花。
そして21日は熊本、
22日は佐賀、福岡、高知、
3月23日には、鹿児島、宮崎、大分、
25日には、松山、
昨日の日曜日27日には和歌山、名古屋。

平年日の開花予想では、今週に次々開花の予定。
今日28日月曜日は、東京・横浜、
明日の火曜日29日は、徳島、下関、広島、甲府、
水曜日30日は、高松、神戸、大阪。
木曜日31日は、岡山、京都、熊谷、
そして金曜日4月1日は、奈良、津、銚子、前橋、
土曜日2日は鳥取、

日曜日の3日は松江、宇都宮。

いよいよ来週からは、
東北関東大震災の被災地でも、
桜が咲き始める。

何と言うか、元気が出てくる。
「早く、咲いてください、桜さん」。

そんな気分。

最後に元気の出る動画。
backroomのヤマモリさんが、
このブログの投稿欄で教えてくれる。

九州新幹線が3月12日に全線開通
東北関東大震災の翌日。
その開通を喜ぶ九州の人々の歓喜。

[youtubeID:UNbJzCFgjnU]
「ひとつになってくれて、ありがとう」

震災で不通となっている東北新幹線が復旧したら、
ぜひとも、こんな歓喜を、
東北の人々と共有したいものだ。

がんばろう、東北。
負けるな、不屈の日本人。

では今週も、「すこしずつ、ひとつずつ」
Everybody! Good Monday!

<結城義晴>

森下兼年さんのブログ「スーパーマーケットの省エネ環境戦略」が復活しました。
毎週月曜に更新します。ぜひ、こちらもご覧ください。< 事務局>

2011年03月27日(日曜日)

ジジの眠り[2011日曜版vol13]

ジジです。

ユウキヨシハルのおとうさんにかわって、
このブログの日曜版を、
たんとうしています。

日曜日はおとうさんを、
やすませてあげるためです。

もう180回になります。
20110326222351.JPG
おとうさんは、ちかごろ、
「どこか、つかれている」と、
いいます。

目に見える災害のかたちと、
目に見えないかたちがある。
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その目に見えないものが、
ひとびとを、
つかれさせているのだそうです。

ボクは、思います。
ならばまず、
目に見えるもので、
つかれをとりましょう。

いま、春です。

お花はうつくしい。
20110326231712.jpg
こぶしの花。

ツバキもまだまだ、
さいています。
20110326231729.jpg

甲子園球場からも、
元気をもらえます。
20110327064928.jpg

うつくしいものを見て、
元気をかんじとって、
うれしいことをおもって、
そうして、ゆっくり眠ると、
つかれはさってゆく。
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ボクは、眠るのがとくいです。

ボクのシゴトは、眠ること。
そのくらい、眠ることが、
とくいです。
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いっしんに眠っていると、
ジカンはすぎてゆく。
20110326231819.jpg

すこしずつ、ひとつずつ、
よいことがうまれてきます。

すこしずつ、ひとつずつ、
よいものにかわっていきます。
20110326231910.jpg

じぶんじしんは、
あくまでもリラックスして、
眠る。

目をつぶる。
まえの足も、リラックス。
(ニンゲンは「手」というのでしょうが)
20110326231945.jpg

うしろの足も、リラックス。
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全身が、リラックス。

公園のこの木はちょっと、
リラックスという感じには、
見えませんが。
20110326231929.jpg

みなさんは、
しばられたり、
かこまれたりすることが、
ないはずですから、
ちからをぬいて、
リラックス。

どうぞ。
20110326232049.jpg

こころが、ほっこりとしてくる。
きぶんが、おだやかになる。
20110326232031.jpg

からだが、
らくになる。
20110326232108.jpg
(目つきは、すきずき、ご自由に!)
しずかな世界。
20110326232128.jpg

そうすると、
「目に見えないつかれ」が、
とれていくのです。
20110326232145.jpg

こんやも、
震災にあわれたみなさんが、
こころやすらかに、
眠ることができますように。

お祈りします。

<『ジジの気分』(未刊)より>

2011年03月26日(土曜日)

「正常・日常」の尊さ・大切さを、私たちは今回の震災で知った!

東北関東大震災から2週間経った昨日。
私にとって、とてもうれしいニュースがあった。

大学時代の1年先輩。
石巻市田道町の阿部恵昭さんに連絡が取れた。

阿部さんの30年前と変わらない若々しい声が、
携帯電話の向こうから聞こえてきた。

阿部さんご自身も奥さんも、みんな元気。
ぐちゃぐちゃになったけれど家に住んでいて、
毎日、仕事しているそうだ。

ほんとうにうれしい。

石巻というと、今回の震災でも、
最も大きな被害を受けた地区のひとつ。
「石巻・女川の震災地区」というブログには、
被災状況の写真が、これでもかと掲載されている。

私は新聞で阿部さんの名前を探した。
インターネットに載っている手書きの避難所名簿を、
一つ一つ確認した。
どこにも名前は見当たらなかった。

しかし、阿部さんは無事だった。
無事な方が当たり前だった。

昨日も書いたけれど、
新聞やテレビなど、インターネットの情報も、
「異常」な情報ばかり取り上げる。
すると「正常」な情報は、
かき消されてしまう。

「異常」な情報だけが強調されて、
「正常」で有益な情報は表に出にくい。

だからみんな、
「異常」が「正常」だと思いこんでしまう。

マスコミ人が最初に教えられること。
犬が人間を噛んでもニュースにはならないが、
人間が犬を噛んだらニュースになる。

私自身もこれまで、ついつい、
そんなモノの見方、取り上げ方をしてきた。

人が知らないこと、
人が知っていることの中で、
ほんとうは違っていること。

そんなことを書く。

すると「面白い」「興味深い」などの、
評価を得ることができる。

しかし「正常」や「日常」の
尊さ・大切さを、
私たちは、
今回の震災で知った。

商売もビジネスも、
正常・日常の中で繁栄する。

ただし現在の報道の多くは、
日本中で人間が犬を噛んでいるかのごときもの。
それが海外での誤解と錯覚につながる。
風評被害を大きくする。

「東北地方太平洋沖地震・被災地情報地図」
3月25日12時段階の被害状況。
避難者 24万人超
・自衛隊 / 106,200人体制で活動中
・消防庁 / 緊急消防援助隊 約2,700人が活動中
・海外支援 / 130の国や地域、33の国際機関
・海外支援 / 14カ国、約800人の救助隊が活動中
・海外支援 / 米軍12,750人の隊員が活動中

宮城県全体の状況。
人口 / 2,347,300人
世帯 / 915,196戸
避難所数 / 652カ所
避難者数 / 88,619人
死亡者数 / 6,097人
不明者数 / 6,636人
建物、全壊・半壊の規模は甚大。

そして阿部さんの在住する石巻市。
人口 / 160,336人
世帯 / 60,905戸
津波被害甚大
死亡者数 / 1,946人
不明者数 / 2,797人

私自身、石巻は、
全滅に近いのではないかと錯覚し、
悲観していた。

しかし16万人のうち、
死亡者・不明者4743人。

実際、凄い数字だ。
でも無事な人の方が圧倒的に多かったし、
私の先輩の阿部さんは大丈夫だった。

亡くなられた皆さんのご冥福を祈りつつ、
阿部さんの無事を喜びたい。

さて、朝日新聞の『声』欄。
一般の人の投稿。
比企修一さん、62歳、無職。

10年ほど前の東京電力運営「電力館」での小さなやり取り。
「小学生が10人ほど見学に来てきた」

その中の1人が案内役の女性に質問した。
災害時の原発の多重の安全対策について。

小学生「これが壊れたら?」
女性「その場合はこれが働くので大丈夫です」
小学生「じゃあ、もしそれも壊れたらどうするんですか?」
女性「その場合にはこれが働くので大丈夫です」
小学生「それも壊れたら?」
女性「そんなことはありません!」

「説明に窮した女性はとうとう怒り出してしまった」という。
多分この女性、「イラ菅」状態だったに違いない。

いま、プロの書き手よりも一般の人々の文章やコメントが、
新鮮で面白い。

一般人は、「正常」「日常」に立脚している。
プロは、「異常」「非日常」しか頭にない。

もうみんな、
「人間が犬を噛む話」に、
うんざりしている。

もちろん重大で有益なニュースは不可欠。
それを報道することも、
それを知識として身につけ、
情報として知っておくことも。
これは誤解のないように。

「以って自戒とすべし」

今日も一日、優しく強く。
今日も一日、元気と勇気。

今週も、私のブログにやってきてくださって、
心から感謝。

良い週末を迎えてください。
ジジではないが、
みなさんが安らかに、
眠ることができますように。

<結城義晴>

2011年03月25日(金曜日)

「被災の目に見える形と見えないかたち」と過激な見出しや言葉づかい

どこか、疲れがたまっている気がする。

こぶしの花は、関係なく、
きれいに咲いているが。
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「ほぼ日」の巻頭言「今日のダーリン」に、
糸井重里さんが書いている。
「目に見える被災のかたちと、
見えない被災のかたち、

両方を乗越えるのが、
ぼくらの目的だと思います」

もちろん現地で被災した人々は、
想像できないくらいの「両方」を
全身に受けているのだろうが、
日本人全体が
「目に見えない被災」を受けている。

それが、この私の
「どこかにある疲れ」だと思う。

朝、目を覚ますと疲れを感じる。
「元気を出そうよ、
それが私の仕事です」
そう呟きながら、起き上がる。
そんな毎日だ。

糸井さんは、考える。
「自分の『好き』を見失わず、
つまり自分らしさを忘れることなく‥‥」

この「好き」がカギを握るんじゃないか。

一応、賛成です。

しかし、それよりも、
私は「自分の仕事」「自分の役目」が、
「目に見えない被災」や「どこかにたまった疲れ」を、
とりはらってくれる原動力だと思う。

「自分の仕事」
「自分の役目」

それがあるから生きている。
それがあるから元気が出る。
勇気が生れる。

元気を出そうよ、
それがあなたの仕事です。
元気を売ろうよ、
それがあなたの役目です。

今日も一日、元気と勇気。
今日も一日、優しく強く。

さてニュースキャスター池上彰さんの主張、
「原発事故報道、専門用語が不安を増幅する」。
朝日新聞「ななめ読み」の欄。

私も感じていたことを言ってくれた。

「被爆」と「被曝」。
耳で聞くと「ひばく」。

「被爆」は、「爆撃を受けること」
あるいは「原水爆による攻撃を受けること。
また、その放射能の害をこうむること」

対して「被曝」は、
「放射能に曝(さら)されること」

「ひばく、ヒバク」と聞いていると、
「爆発によって放射能の害をこうむる」と、
思い込んでしまったりする。

池上さんは言う。
「放射線を浴びた」と、
「平易に書いたほうが、誤解が少ない」

3月13日の朝刊各紙の一面トップ見出し、
「福島原発で爆発」
巨大な文字が並んだ。

池上さんの言。
「この見出しを見て、
原爆のような爆発が起きたと勘違いした人も
多かったようです」

さらに14日の夕刊各紙。
「3号機も水素爆発」

「今度は、
水爆が爆発したかのような誤解をする人も
現れました」

「専門家や新聞記者たちは・・・
見出しを安易に付けてしまいますが、
知識のない一般の人は、
不安をかきたてられてしまうのです」

私も30年間、
雑誌の編集に携わっていたから、
よくわかる。

見出しの功罪。

商売でいえば、
POPやショーカード、
エンドパネル、
その言葉づかい。

過激に過激に表現しがちだ。

特に今回の東北関東大震災などのときの、
新聞・雑誌、テレビの見出しやタイトル。

結果的に「不安をかきたてる」ことにだけはなってほしくない。
十二分に配慮しなければならない。

㈱チンギスハーン旅行のロブサンドルジ・ガルタ社長から、
一昨日、聞いた話。
同社は、モンゴルへの旅行代理業を主な業務にする会社。

この5日間に約2000人のモンゴル人が、
日本からモンゴルに帰国した。
日本に住んでいる人たちは、
そんなに危険を感じていないが、
本国の家族や親せきが心配して、
政府にまで帰国を要請するという。

モンゴルでも連日、
東北関東の震災のニュースが流れているが、
「福島原発で爆発」や「3号機も水素爆発」のような言葉づかいで、
日本中が震災に遭い、
放射能に汚染されているか、
のような風評が立っているらしい。

これはモンゴルに限らない。
アメリカでもヨーロッパでも、アジアでも。

日本国全体、日本人全員が、
風評被害に苛まれていることになる。

国内で風評に惑わされている時ではない。
日本人が自ら風評被害を起こしているその映像が、
海外に流れて、より大きな風評となる。
「風評」とは、
「世間であれこれ取りざたすること。
また、その内容。うわさ」

噂の広まるスピードは恐ろしい。
インターネットやツイッター、フェイスブック、は、
世界的で巨大な「風評拡散装置」である。

このブログを書いている2011年3月25日15時4分更新段階の、
ポータルサイト「yahoo! JAPAN」のトップニュースの見出し4本。

*1、2号機も高線量の水たまり
*被ばく 放射性物質どこから
*原発20-30km圏 自主避難促進
*大震災の死者 1万人超える

いかがだろうか。

昨日も書いたが、
「風評被害には、
知識と情報で対抗する」

それしかない。

しかしそれでもいいニュースはある。
朝日新聞の「国際」欄。
「中国の救援隊リーダー語る」
中国地震局国際協力部・徐志忠課長(47歳)。
「被災地で、秩序を守る住民たちの姿が、
『最も印象に残っている』」

「持ち込みが認められた機材や食料、飲料水は計4トン。
途中で尽き・・・現地で調達したが、
商店ではお願いしても料金を受け取ってくれず、
最後は買いに行けなくなった」

徐さんはパキスタンやハイチ大地震などに続いて、
5度目の海外派遣。
「ガソリンスタンドでの長蛇の列でもクラクションは鳴らされず、
横入りする車がないことにも感心した」

「被災地では『謝謝』『ありがとう』と声をかけられた」

徐さんには心から感謝したい。
「風評には負けないぞ」という気持ちになる。

一方、日経新聞の国際欄。
ジュネーブ発で「国連3機関 日本を支援」の見出し。
世界保健機構、国際原子力機関、国連食糧農業機関が、
福島第一原発の事故に伴う農産物放射能汚染に関して、
「日本政府への支援を表明する共同声明を発表」

3機関はこれまでの日本政府の対応を評価している。
「農産物の放射能を測定して結果を公表し、
消費者や生産者に安全対策を指導している」

さらに「日本以外の農産物が汚染されたという証拠は一切ない」

「証拠は一切ない」と、
きっぱり言いきっているところが、いい。
うれしくなる。

海外でも、
日本を正しく評価している人がいる、
正当に見てくれる機関がある。

私たち自身が、
私たち自身を、
疑ってはいけない。
貶めてはいけない。

さて、昨日、今日と、
横浜の商人舎オフィスに訪問者。
私がいなくてもいても、
来訪してくださることはうれしい。

昨日は鈴木國朗先生、
今日は常盤勝美さん。
20110325160630.jpg
常盤さんとは、イタリアンでランチ。
パスタとピザ。
おいしかった。

疲れがすこしとれた気がした。
ありがとう。

常盤さんは筑波大学大学院卒業の理科系。
気象予報士で、ブログ『2週間天気予報』でおなじみ。

理科系の人の震災への見方がわかって、
私には勉強になった。

小売業やサービス業にも理科系の人財が必要だ。
私がいつも、言っていること。
理科系と大雑把にくくるのも、
もう遅れているのかもしれない。

物事を論理的・科学的に観察し、判断できる人。
そのうえでひとつの専門を極めた人。

付和雷同しない人。

風評被害に立ち向かうには、
そんな人たちの知識と情報が必須だ。

最後に、一言、応援のメッセージ。
『日経MJ』 がんばれ。

私の専門分野をカバーしてくれているメディアの代表が日経MJ。
立教大学大学院ビジネスデザイン研究科の私の講座でも、
特別のテキストは指定していないが、
シラバスに掲載して、
このメディアは目を通しなさいと指導している。

その日経MJ、この震災以後、
ちょっと元気がない。

事情はよくわかっている。

専門紙誌はこんな時、
扱うネタが一般紙とかぶってしまう。
MJは日経本紙に完全に奪われてしまった。
しかしそれでも、私たちのメディア。
小売流通業・サービス業の専門紙。

その専門性を見せてほしい。

ひとつだけ、提案。
毎号、一面に「コラム」があった方がいいと思う。
コラムは社会全体を覆い尽くし、
問題を発見し、抽出し、解決の糸口を提示する。

朝日新聞の『天声人語』、
日経本紙の『春秋』、
読売の『編集手帳』・・・・・・。

幸いに日本経済新聞社には、
井本省吾さんや田中陽さんといった書き手がいる。
小売流通・サービス業への造詣が深く、
応援してくれるジャーナリストがいる。

そんな人たちが、一面コラムで、
応援を続けてくれたら、
他は日常の専門記事でよい。
たいていの場合、コラムは、
見出しで過激さを売るという愚は起こさない。

がんばれ、日経MJ。
小さな声で、応援しよう。

<結城義晴>

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