避難所の少女猫の仔しかと抱き
〈織田美奈子・日経俳壇より〉
ジジです。
春らんまん。
ボクにも、
こんなときが、
ありました。
だっこしてくれているのは、
ボクのかあさん。
なまえはミント。
ユウキヨシハルのおとうさんは、
新幹線にのって、西へ。
フジがきれいです。
まだまだ西へ。
ふたつのヒコーキ雲。
どこまでいくのか、
ボクはしりません。
でも、まってます。
まつときには、
ねる。
春らんまんの桜の夢でも、
みながら。
桜の花のいのちは、
みじかい。
さみしいものです。
だから、せいいっぱい、
さいてください。
せいいっぱい、
主張してください。
ボクも、おうえんします。
でも、ことしの桜は、
みじかかったでしょうか、
ながかったのでしょうか。
ボクには、
あっというまにおわったように、
おもえます。
それも、
おおきな地震と、
おおきな津波の、
せいでしょうか。
まだまだ、これから、
桜がさくところも、
たくさんあります。
それに桜のあとには、
ツツジがまっています。
そしてなにより、
新緑がやってきます。
ちいさな喜び、
ささやかな幸せ、
あすへの希望。
おとうさんがいつも、
いいます。
とてもだいじなことだと、
おもいます。
こんやも、
被災されたみなさんが、
こころやすらかにねむれますように。
<『ジジの気分』(未刊)より>