結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2011年05月31日(火曜日)

米国小売業視察報告「トレーダー・ジョーのトップパネルを虫の目で見るの巻」

アメリカから帰っても、
休む間もない。
いや、休まない。

昨日は夜、
立教のF&Bマーケティングの講義。
2時限・3時間。

講義は負担になったりしない。
講義していて、癒される。

この講座は7月までだが、
その前半のハイライト。
「コモディティとノンコモディティ」

午後は、商業問題研究協会(RMLC)の5月月例会と、
パチンコトラスティボード(PTB)有識者懇談会が重なった。

私はまず、PTBに出てから、その後、RMLCに合流。

PTB有識者懇談会は、
大阪万博を発案・企画した和田裕先生が新しい座長となって、
第三者機関としての性格に強い主張が加わりそうで、
まことに楽しみだ。

ところで、5月27日金曜日の午後、
「第6回学生懸賞アイディア・エッセイ」の表彰式が行われた。
主催はパチンコチェーンストア協会。

私は第1回から審査委員長を務めているが、
今年は昨年の2倍、46件の応募があった。

その中から最優秀賞に選ばれたのは、
南九州大学環境造園学部造園学科の小髙大喜さん。
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優秀賞は3論文4人が受賞。

本来ならば私がプレゼンターとならねばならないところだが、
渡米中ということで、
PCSA代表理事の加藤英則さんが賞状を読み上げた。

その加藤さんを囲んで記念撮影。
右から大阪経済大学経営学部第1部経営学科の前田真悟さん、
共作の一橋大学社会学部社会学科の菰田レイ也さんと水野一歩さん、
最優秀賞の小髙さん、
大阪商科大学経済学部経済学科の阿部竜作さん。
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今回の論文に共通していたのは、
高齢化、国際化、環境問題への対応。
ホール経営のサービスの向上と、
エンターテインメント産業としての課題を、
それぞれが学生ならではの新鮮な視点で考察している。

さらに、会場をうめつくした経営トップを前にして、
壇上にあがった5人のスピーチは堂々としていた。
20代の若者らしい真摯さがあった。
会場の皆が一様に感動した。

その後の経営勉強会では、
仙台市在住のほくとう通信社代表の友道学さんが、
東日本大震災の現地取材報告を行った。
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友道さんは、震災直後から、
宮城県から岩手県までの沿岸部の被災地を、
丁寧に取材し、3000枚に及ぶ写真を撮り続けてきた。
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(陸前高田市の津波で骨組みだけが残った建物)

「そこに居合わせた自分の使命」
友道さんはそう語り、
自分の記録の一端を75分にわたって報告した。

さて、アメリカ報告の続編。
今日は、トレーダー・ジョー。
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もうこのブログの常連で、
何度も紹介した企業だが、
現在のアメリカでもっとも元気な店。

2010年度年商85億ドル。
(1ドル100円換算で8500億円)
今年度の成長率6.3%。
1万平方フィート(280坪)の店舗が365店。

「リミテッドアソートメント」
というが、
2000~2500SKUに品揃えを絞り込んだスペシャルティストア型。
しかし店舗づくりはローコスト。
販売金額の25%が酒類、食品は75%。
プライベートブランドの比率は高く、
食品の80%はPB。

さらにオーガニックフーズと「安さ」が最大の特徴。
この二律背反を実現させたことで、
ホールフーズマーケットと並んで、
独壇場のポジショニングを確立した。

1958年にロサンゼルスでジョー・コロームによって創業された小売店。
コンビニエンスストアのような小型店を3店舗経営していたが、
1967年にセブン-イレブンが進出してきて、
生き残りをかけて新フォーマットを開発した。。
最初は輸入ワインやグルメフードを中心に扱ったが、
スーパーマーケットの品揃えへと広げていき、
現在最強のフォーマットとなった。

今回はその店づくりの特徴の一つを紹介しよう。
すなわち「トップ・パネル」

トレーダー・ジョーの各店には、
3人くらいずつパネルのライターがいる。
アーティストだったり、美術大学の学生だったり。
彼らが個店ごとにパネルをつくる。

木造りの什器とこのパネルやPOPが、
ことのほかマッチしていて、
トレーダージョーのポジショニングが出来上がっている。

エンド展開はダイナミック。
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そのトップパネル。
「オーツシリアル」
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黒板にチョークで、独特の文字とイラストを描く。

今回は、この店のトップパネルをすべて、
ご覧にいれよう。
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真ん中にオーガニック・ケチャップ。
あとはマスタードなど調味料。
私は今回、思わずケチャップを買って帰った。
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オーガニック・トルティーアのエンド。
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そしてパネル。
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チリのエンド。
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そしてパネル。
実にわかりやすいビーフとチキンとターキーのチリ。
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店舗の奥にはジョーズ・カフェと名づけられた試食コーナー。
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スナックのエンド。
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そしてカラフルなパネル。
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店の入り口のバケット。
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チーズ・コーナーのパネル。
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ミール・ソリューションのコーナーのパネル。
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ミート部門のパネル。
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ミルクのパネル。
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エッグ・コーナーのパネル。
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乳製品コーナー。
デアリ―という。
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ジュース・コーナーのパネル。
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ディップ各種のパネル。
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ワインショップのパネル。
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シャルドネのパネル。
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こちらはビール。
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天井からつるされたワインボトル。
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人気のオリジナルエコバッグのパネル。
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ギフト・カードのパネル。
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店舗入り口の花売り場とビネガー。
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そして最後にエクスプレスレーンのイラスト。
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ついでにトイレわき。
地域のプロスポーツチームの応援。
バスケットボールのホーネッツと
アメフトのジェッツ。
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いかがだろう。

マーケティングでいう「ポジショニング」とは、
(1)ターゲット顧客の心の中に独自の位置(ポジション)を占めるために、
企業が店舗と商品とサービスのイメージをデザインすること。
(2)ポジショニングは自店と競合店との差異を、
明確にするために行われる。

その小売業におけるポジショニング要素は5つある。
(1)店づくり、レイアウト、内装、照明の差異性
(2)マーチャンダイジング、売り方の差異性
(3)コミュニケーション
(4)プロモーション
(5)パーソナリティ・イメージ

トレーダー・ジョーは、これらの5つの要素を、
すべて備えてポジショニングを確立している。

トップパネルだけとってみても、
それが良くわかる。

鳥の目・魚の目とともに、
虫の目で凝視することも必要。
それが、企業の本質を理解することになる。
経営戦略を知ることになる。
(まだまだつづきます)

<結城義晴>

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