菅直人内閣に対する不信任決議案。
あっさりと否決された。
賛成152、反対293。
投票総数445、過半数223だから、
菅首相の圧勝。
ただし、衆院本会議採決前の民主党代議士会で、
震災対応に「一定のめどがついた段階」での自発的退陣を表明。
「若い世代に責任を引き継いでいきたい」
それがこの票数に出た。
菅直人退陣。
枝野幸男官房長官あたりが首相となって、
民主党政権のもとでの震災対応がつづく。
ある意味で、民意が反映された形か。
鳩山由紀夫、亀井静香などが事前に動き、
小沢一郎、谷垣禎一などが狙った大連立や政界再編が封じられた。
これまた、民意の反映だろう。
さて昨夜は、NHK「Eテレ」で10時から、
「100分de名著・ドラッカー」第1回が放映された。
ドラッカー学会代表の上田惇生先生主演の番組といってよい。
その上田先生、素晴らしかった。
いつもの話しぶりや講義の情熱が、
テレビ画面を通じて、
ひしひしと伝わった。
内容は、ピーター・ドラッカーの『[エッセンシャル版]マネジメント』を、
上田惇生流にわかりやすく解説するというもの。
上田先生は、エッセンシャル版の「まえがき」こそ、
ドラッカーの「マネジメント宣言」であるという。
「まえがき」――なぜ組織が必要なのか。
写真のような画面を前に、上田先生の熱の入った説明。
「組織として成果を上げさせることが、
自由と尊厳を守る唯一の方法である」
ドラッカーは、マネジメントこそ、
「自由と尊厳を守る唯一の方法」と宣言しているのだ。
マルクス共産主義も、
ブルジョア資本主義も、
経済至上主義であった。
それを脱しようと台頭してきたナチスの全体主義は、
自由と尊厳を否定した。
ドラッカーは、「マネジメント」こそ、
「全体主義」に代わるものだと言い切る。
上田先生は、この一番大事な歴史観から、
ドラッカーの紹介に入った。
次が、「パート1・マネジメントの使命」の中の、
「第1章 企業の成果」の中の、
「2 企業とは何か」からの引用。
ここで最も有名なフレーズが登場。
「企業の目的の定義はひとつしかない。
それは、顧客を創造することである」
その前にテーゼを出す。
「企業の目的は、
それぞれの企業の外にある」
私も文章家の端くれとして、
「参った」としか言いようがない表現。
企業の目的は、企業の中にはない。
それぞれの企業の外にある。
企業自身の利益を上げることが、
企業の目的ではない。
企業の目的を果たすために、
利益は必要な条件であるけれども、
断じて、それが目的ではない。
利益よりも、顧客が優先される。
倉本長治の最も大事な言葉。
「店は客のためにある」
「店(企業)は客(企業の外の顧客)のためにある」
私の手元にある『エッセンシャル版』は、
「2001年12月13日初版発行」のもの。
この本では、9級の小さな字で、
こんな大事なことが、さらりと書かれている。
上田先生は、テレビの大画面の大きな字で、
この一番大事な二つのことを強調した。
なんともすごい番組だった。
この番組は毎週、火曜日の夜10時にEテレで、
25分ずつのストーリーが4回放映される。
次の第2回は来週6月8日、
第3回は15日、
第4回は22日。
是非、お見逃しなく。
リアルタイムに見られない人は、
絶対に録画しておくべきだ。
さて、『店長のためのやさしい《ドラッカー講座》』
上田先生にも推薦文を書いていただいた。
上田先生のコメントは、
「これは小売業・サービス業の店長のためのドラッカーである」
上田先生は自らドラッカー学会の代表を務める。
そのホームページの「ご挨拶」には、以下のようにある。
「不思議なことに、
誰もがドラッカーは
自分のために書いてくれたと思います。
5年経ったらまたそのとき、
自分のために書いてくれたと思います」
「ドラッカー・ファンが10人寄れば、
それぞれが別のドラッカーをもっていることを知ります」
「つまりドラッカーは、
それぞれのドラッカーです」
私は、本の表紙のトップタイトルに書いた。
「ドラッカーは小売り・サービス業を応援している!」
まさにこれが「それぞれのドラッカー」を表している。
私は、『店長のための《ドラッカー講座》』が、
上田先生が最も嫌う「ハウツー本」になっていないかを、
一番、気にかけていた。
わかりやすく、やさしく、ドラッカーを、書く。
するとどうしても「ハウツー本」に陥りやすい。
しかし上田先生から、
私の盟友・川勝利一さんを通してメールをいただいた。
「『店長のための…』
①ハウツーにはなっていませんので御心配なく。
②学会HPで書評と告知を掲載の予定です」
本当にホッとしたと同時に、
上田先生のやさしさに感動した。
昨夜の番組に関して、上田先生の呟き。
「ドキドキしています。上田」
越路吹雪という超大物歌手。
素晴らしいシンガーだった。
しかし舞台で歌う直前まで、
「ドキドキ」していて、
いつもマネジャーに背中を押してもらうようにして、
舞台に出ていった。
しかしいったん歌い始めると、
滔々と、堂々と、歌いきった。
上田惇生は、まさに越路吹雪だった。
昨夜の番組を見ていて、
私はそう思っていた。
上田先生、ありがとうございました。
何度も言うけれど、いい番組でした。
本当に勉強になりました。
ところで、民主党に自民党、そして公明党、エトセトラ。
「党の目的は、
それぞれの党の外にある」
政党や政治家こそ、
ドラッカーを学びましょう。
ドラッカーはそれを決して、
拒否はしないはず。
<結城義晴>