昨日は福岡への日帰り。
TERAOKAニューバランスフェアでの講演。
テーマは「大震災に学ぶこと」
1時間30分のところ、
いつも2時間を超える。
このニューバランスフェアでの講演を、
毎年毎年、私、25年以上もやっている。
だから事務局も心得てくれていて、
存分に語る。
今回は、2時間15分。
「雨ニモマケズ」から始めた。
ご存知、宮澤賢治の詩。
「【新】校本宮澤賢治全集第十三巻(上)覚書・手帳 本文篇」から。
雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラッテヰル
一日ニ玄米四合ト
味噌ト少シノ野菜ヲタベ
アラユルコトヲ
ジブンヲカンジョウニ入レズニ
ヨクミキキシワカリ
ソシテワスレズ
野原ノ松ノ林ノ蔭ノ
小サナ萱ブキノ小屋ニヰテ
東ニ病気ノコドモアレバ
行ッテ看病シテヤリ
西ニツカレタ母アレバ
行ッテソノ稲ノ束ヲ負ヒ
南ニ死ニサウナ人アレバ
行ッテコハガラナクテモイゝトイヒ
北ニケンクワヤソショウガアレバ
ツマラナイカラヤメロトイヒ
ヒドリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ。
小売商業には、もともと、根底に、
この「雨ニモマケズ」の精神が脈打っている。
最後のまとめは、堺屋太一の「非常時対策」。
このブログではおなじみの5段階。
第1は「救助の段階」
ここには原則がある。
「軽いものから先に」
1.最も急ぐ軽いものは「情報」。
2.「生活物資」。
生活物資ではまず「飲料と医薬の配布」。
その次が「緊急の食料」。
そしてその次が「燃料と衣料」。
3.「安全な生活空間の準備とそこへの搬送」
第2は「救済の段階」。
この期間は被災後10日が目安となる。
具体的には、
道路、水道、衛生、電力、ガスなどのライフラインの応急処置。
この段階で大事なのは速度。
そして第2段階の最低限のライフラインをつなげるリミットは、
1カ月以内。
第3は「復旧の段階」。
機関の目安は被災後1カ月から。
水道、道路、電力、鉄道などを旧(もと)に復すとともに、
店舗や飲食店を再開させ、日常生活を復元させる。
さらに精神的安定やコミュニティの再建創造を図る時期。
第4は、「復興の段階」。
この段階には、「新しいグランドデザイン」をつくる。
復旧で終わってはならない。
今回の東日本大震災における6月中旬の現段階は、
本来、復興に充てられる時期である。
しかしまことに残念ながら、まだ復旧段階のまま。
菅直人政府の停滞ぶりが批判されるが、
それは復興段階であるべきなのに、
いまだ復旧段階を終えていないことによる。
もちろんフクシマ原発の問題が大きくのしかかっている。
そして最後の第5は「振興の段階」。
私は復興で終わってもいけないと考えている。
堺屋太一さんと同意見。
そしてこの時には、
「世界のモデルとなる」ことを目指すべきだと思う。
㈱むすんでひらいて社長の原田政照さん(私の右)をはじめ、
若い人たちが駆けつけてくれ、聴講してくれた。
心から、感謝。
原田航太さん(私の左)、将太さん(いちばん右)も来てくれて、
ありがたかった。
さて今朝の日経新聞に、
小売業大手2社の海外戦略が、
対比的に出ていて、面白い。
まずイオンのアジア戦略。
2013年度までにショッピングセンター(SC)を、
約50カ所に増加させる。
これは現在の23カ所の約2倍。
出店先は現在、中国とマレーシア。
新規出店は中国16カ所、マレーシア7カ所。
さらに新たにベトナムに1~2店。
「SCは総合スーパーを核テナントに、
衣料品や雑貨、サービスなど百数十の専門店が入るモール型」。
古典的にはリージョナルSCと称するが、
現在は「モール」と呼ぶ。
大型のスーパーリージョナルSCを、
「ギャラリア」を呼ぶことが多い。
イオンは日本で、SCを約110カ所、運営している。
これには小型近隣型のネイバーフッドSCや、
中型のコミュニティ型SCも含まれるが、
アジアでは人口集中が見込まれる大都市近郊に「モール型SC」を、
逐次、出店していく。
そのスピードは日本国内よりも早い。
一つの理由は、
現地ディベロッパーとのコラボレーション。
現地ディベロッパーが土地・建物を所有、
「イオンは賃借してSCを運営」。
これによって「低コスト&高出店ペース」を実現できる。
2013年度までの3年間の海外投資は、
SCを中心に食品スーパーマーケット、ディスカウントストア出店などで、
約2100億円の計画。
もちろんSC開発はイオンモールが核となるが、
そのイオンモールは2014年度以降、毎年、
海外に10カ所以上のSCを開発する予定。
岡田元也社長は方針を示している。
「10年後には
アジアと日本の売上高と営業利益を
1対1にする」
一方、セブン&アイの海外戦略。
こちらはコンビニエンスストア事業が中心。
海外での事業展開による営業利益は、
2015年2月期に600億円程度まで増やす。
第1にアジアでの加速的出店。
韓国やタイなどアジアを中心に出店強化。
2011年2月期の海外店舗の純増数は、
国内の4倍強の2118店舗だった。
海外店舗数は2万7000店を超え、
国内の2倍強に達する。
第2はアメリカのサウスランド社。
こちらは同業コンビニ企業の買収も企図。
今年3月末にエクソンモービルのコンビニ店舗を買収。
続いて6月中には「ウィルソンファームズ」を買収する。
ニューヨーク州を中心に200店舗弱を展開する企業。
新規出店も、2012年2月期は1年間で500店舗増加。
設備投資は前期比65%増の809億円の計画。
結果として2015年2月期には、
世界のチェーン全店売上高を10兆円にする。
セブン&アイのコンビニ事業の海外営業利益は、
2010年度に前期比3%減の333億円だった。
しかし海外戦略には円高の影響が大きく反映される。
それを調整すると「3年間で営業利益は4割増」。
イオンとセブン&アイの海外戦略。
共通する第1の特徴は、
「自社の強み」の「業態」で進出すること。
イオンはSC、
セブンはコンビニ。
これは両者の国際レベルの競争力が、
それぞれSCとコンビニにあることを示す。
その意味で、
イオンとセブンは、
違う道を歩き始めている。
それはとてもいいことだ。
「強み」が異なる2社が、
リーダーであるという事実。
それが日本チェーンストアの実力の一端を示している。
第2は、これからの10年の戦略は、
「国内よりも海外」であること。
現状でも国内よりも海外のほうが、
はるかに数字がいい。
今朝の朝日新聞に、
ファーストリテイリングの柳井正さんが登場。
「政治に物申す」と怪気炎を上げているが、
ユニクロも海外戦略を優先させる方針。
正社員も2900人採用し、日本人はその1割。
ピーター・ドラッカー先生は強調する。
自らの「強み」を伸ばせ。
さらに語る。
「ほとんどあらゆる組織にとって、
もっとも重要な情報は、
顧客ではなく非顧客(ノンカスタマー)についてのものである。
変化が起こるのはノンカスタマーの世界である」
イオン、セブン、ユニクロ。
いずれもドラッカーの戦略に沿っているが、
ポール・クルーグマンは言っている。
「小売業・サービス業の生産性を上げなければ、
国民の生活は豊かにならない」
こちらももっともな正論だ。
ユニクロ、イオン、セブンには、
国内と海外のどちらも、
バランスをとってやってもらいたいところだ。
これまたドラッカーの弁。
最も大事なバランスが、
「近い将来と遠い将来のバランス」
大手小売業が海外にばかり目を向けているとすれば、
国内勢にとってはチャンスが広がる。
<結城義晴>