アメリカで「扇風機」旋風が吹いている。
なんといってもウォルマート。
14ドル88セントで、
この扇風機が大々的に売られている。
1200円也。
買って帰りたいくらいだ。
それからネイバーフッド・マーケット。
ウォルマートが展開する1200坪店舗。
その奥主通路沿いのエンド。
21ドル50セント。
典型的なサンプル陳列。
風を送っているので、
この前を通ると、その風を感じる。
そして気づく。
ウォルマートはこういった売り方の工夫を、
ほんとうに奨励し、上手に展開する。
私はこの姿勢大好き。
「知識商人」を感じさせる。
食品スーパーマーケットで、
こういった商品をスポットで販売する。
「シーゾナル商品」という。
生活必需品で、なおかつ定番商品でないもの。
それを期間限定で販売する。
売り切って、打ち止め。
いい売り方です。
扇風機はベッド&バス・ビヨンドでも。
いちばん右の黒いのが59ドル。
その左のちょっと大きいのが89ドル。
日本の震災の影響だろうか。
エアコンではなく扇風機。
人間が涼むだけでなく、
パソコンを冷やしたりといった用途もある。
いずれにしても扇風機。
新しい風が起こりそうだ。
さてこちらは金曜日の6月24日。
朝から2時間の講義。
ところは宿泊先のヒルトン・ダラス・リンカーンセンター。
昨夜は久しぶりにたっぷりと睡眠をとって、
元気いっぱい。
平和堂のアメリカ研修会。
50人全員、燃えている。
聴き手が燃えると、
語り手も燃える。
ベーシックな知識や技術論から、
最先端のトレンドや理論、
戦略・政策まで、
いくら時間があっても足りないが、
とにかく語りきる。
商品構成グラフの活用の方法。
この原則を知らない向きが意外に多い。
平和堂では新入社員の時に、
丁寧に教えられるそうだが、
改めて復習。
8時前に初めて10時まで、
あっという間に時間は過ぎる。
私は「イノベーション」を起こしたいと考えている。
全員が一丸となれば、それは大いに可能だ。
それがこの研修会の目的でもある。
時間が来たら講義はやめて、
バスの中での講義に移る。
それがアメリカ研修の良さ。
時間はたっぷりとある。
さて最初に訪れるのは、
ウォルマート。
何しろアメリカ小売業は、
ウォルマートを中心に回るメリーゴーランド。
中心から攻めなければ、
振り回され、振り落とされてしまう。
年商4050億ドル(前年比0.9%)、純利益143億ドル(7.0%)、
店舗数4304店。
世界最大の企業。
旧知のマーカス店長。
スキャッグス・アルファベータからウォルマートに転職し、
その後22年。
「82歳までこの会社で働く」と意気軒昂。
ウォルマートのスーパーセンター2907店の中でも、
最も多忙な店長の一人だが、
今回は最初にレクチャーしてくれた。
的確なコメントがよどみなく出てくる。
ウォルマートのストアマネジャーの能力の高さが、
マーカス店長によって示された。
後を引き継いでくれたのは、
ご覧のチャンダさん。
美形。
7000坪の店内ツアーをして説明してくれた後、
質疑応答。
通訳は、ご存知、五十嵐ゆう子さん。
二人の会話はどんどん奥に入っていって、
そしてわかりやすく解説される。
「自動発注」のこと、
部門構成のこと。
ウォルマートのオペレーションは、
毎度毎度、変化している。
それが自然な形に向かっている。
無理はないし、無駄もない。
それがよくわかるインタビューだった。
最後に全員で写真。
ウォルマートに来たら次は?
当然ながらターゲット。
全米小売業第4位。
年商634億ドル(0.9%)、純利益43億7600万ドル(7.2%)
店舗数1740店。
ウォルマートと同じ業態を展開しているライバル企業。
そのスーパーターゲット。
何から何まで対照的。
それがターゲットの存在価値であるし、
ターゲットがあるからウォルマートの存在価値もある。
だからこの業態では第三者を寄せ付けない。
次はコストコ。
全米小売業第3位。
年商714億ドル(こちらは前年比マイナス1.5%)、
純利益は10億8600万ドル(マイナス15.4%)、
店舗数566店。
直近の決算は落ち込んだが、
店舗は大繁盛。
ウォルマートのサムズと同じ業態で、
ウォルマートが逆立ちしてもかなわない企業。
平和堂の住関連部門バイヤーの人たちと、
ベッド&バス・ビヨンド。
Home Fashion Storeとして向かうところ敵なし。
全米第44位の小売業。
年商78億2900万ドル(伸び率8.6%)、
純利益9億8100万ドル(こちらは45.5%)。
現在1100店。
ベッド&バス・ビヨンドの最大の敵は、
ウォルマートであり、ターゲット。
同じ業態のリネン&シングスは倒産してしまった。
途中、CVSケアマークの新店が、
オープンしたばかりだったので、
急きょ、寄ってみた。
この店がよかった。
店名はCVSファーマシー。
企業年商は553億5500万ドル(伸び率13.0%)、
純利益41億5900万ドル(10.8%)、
店数はなんと7025店。
そしてこの企業全米第7位。
午後はスーパーマーケット企業。
まず、ウォルマート・ネイバーフッドマーケットから。
今年1月末で店舗数182店だが、
このところ店の状態はすこぶるいい。
スーパーマーケット第1位にして、
全米小売業第2位のクローガー。
その「マーケットプレイス」というフォーマット。
非食品強化型で、
明らかにウォルマート対策店舗。
クローガーの年商は767億ドル(伸び率0.8%)、
純利益10億9100ドル(こちらはマイナス55.5%)、
店数は3619店。
この店は本部推奨の上出来の店舗。
しかしどうしても私は、
非食品のキッチン家具などの品ぞろえは納得できない。
次はセーフウェイの傘下にあるトムサム。
セーフウェイは全米小売業第11位で、
スーパーマーケット第2位。
年商は349億8000万ドル(前年比マイナス7.1%)、
純利益はマイナス9億9300万ドル(前年比マイナス162.8%の赤字)、
店舗数は1501店。
ニューライフスタイルストアに全店を衣替え中だが、
新店は良いがリニューアル店舗は、いまいち。
ここまで、そうそうたる企業を、一巡り。
それができるのがダラスのメリット。
続いてローカル・スーパーマーケット・チェーン。
ユナイテッド・スーパーマーケットの新フォーマット。
マーケット・ストリート。
ダラスに来たら必ず訪れる。
そのホスピタリティは、異次元の域。
それがこの企業の「ポジショニング」となっている。
マーケット・ストリートは現在10店。
ウェグマンズをベンチマークして作ったサービス&クォリティタイプ。
それからサンフラワー・ファーマーズマーケット。
現在34店舗。
スーパーマーケット「業態」の中に、
「ファーマーズ・マーケット」というフォーマットは確立された。
これによって、
「進化や盛衰の動態」を、
「業態とフォーマット」という二つの考え方の間で、
「二段階分析」することの有効性が、
実に明確になった。
その意味で私は「ファーマーズ・マーケット」を、
重要なフォーマットだと思っているし、
むしろ感謝している。
この店でマーケティング・マネジャーのキャメロン君にあった。
実に気持ちの良い青年。
ちょっとだけ日本語も話すが、
その熱意がとてもいい。
意気投合してしまった。
この後、ノースパーク・ショッピングセンターへ。
そこで、新しいタイプのショッピングセンターと百貨店群を訪れた。
圧倒的ガリバー企業のメイシーズ。
全米小売業第15位で、850店を展開するチェーン百貨店。
年商234億8900万ドル(前年比マイナス5.6%)、
純利益10億6300万ドル。
ノードストローム。
全米第39位。
年商82億5800万ドル(マイナス0.2%)、
純利益8億3400万ドル(プラス7.1%)、
184店。
「伝説のサービス」の百貨店。
そして超高級百貨店ニーマン・マーカス。
全米79位で42店舗。
年商36億4300万ドル(マイナス20.8%)、
純利益はマイナス6億5300万ドルの赤字。
このショッピングセンターは芸術の街。
センターコートに巨大な現代彫刻。
そしてピアノの生演奏。
顧客でごった返す金曜日の夕方。
しかし「物を売りつけようとはしない商業集積」。
快適さを提供し、癒しを与える。
すなわち「ライフスタイルセンター」。
全米にこのトレンドが大きく広がっている。
ウォルマートもターゲットも、
クローガーもセーフウェイも、
そしてコストコもサムズも、
この大潮流の外にいるわけではない。
新しい風がびゅうびゅうと吹いている。
<結城義晴>