帰国したら、途端に、
二つの画期的ニュース。
時差ボケはないけれど、
私自身、かなりの疲労。
それでも仕事の成果が上がっているから、
気力も体力も保たれている。
画期的なニュースの第1は、
「アサヒ・キリンがビール共同配送」。
なんとビール業界7割を超えるシェア二強が、
「共同配送」を始める。
きっかけは、東日本大震災だと思う。
かの震災では、両社ともに商品供給が滞った。
その反省を踏まえて、まず物流を見直す。
今秋、首都圏の1都3県から始められ、
順次、福岡県や愛知県、関西などに地域が広げられる。
両社ともに全国9カ所に工場をもつ。
そのうち工場が近隣に立地する地域から、
工場から取引先卸への物流を中継する配送拠点を相互に活用。
したがって同じトラックに両社の商品が混載される。
これによって積載効率は飛躍的に高まる。
両社のトラック台数は1~2割減少。
輸送距離は短縮され、
二酸化炭素(CO2)排出量は3割削減。
さらにこれが成功すれば、
資材の共通化や共同調達も視野に入る。
他業界にもこの影響は出そう。
何しろ金融では三井と住友が統合し、
三大メガバンクとなったほど。
キリンとサントリーがご破算になったあと、
ビール業界二強は、
まずは物流を手始めに、
実質的に21世紀を見通し始めた。
一方、第2はスーパーマーケット業界のニュース。
「アークス、ユニバースを子会社化」
アークスは北海道にドミナントを築く企業。
「八ヶ岳連峰経営」の小売業ホールディングカンパニー。
2011年2月期年商3036億0800万円、
経常利益100億6100万円。
ユニバースは青森県を中心に岩手県にしたローカルチェーン。
2011年4月期年商1025億8200万円、
経常利益41億7000万円。
超優良のスーパーマーケット企業。
両社ともに東京証券取引所1部上場。
その持株会社アークスの傘下にユニバースが入る。
株式交換によりユニバースがアークスの完全子会社となる。
ユニバースは上場廃止。
トータル売上高は、
4061億9000万円。
現在、食品スーパーマーケット業界の第1位企業は、
ライフコーポレーションで、
売上高は4808億2200万円、
経常利益98億5000万円。
アークスはライフに次ぐ第2位に躍り出る。
そのうえ、アークス、ユニバースともに、
業績の中身がいい。
ユニバース社長三浦紘一さんが、
アークス会長に就任する。
社長はアークスの横山清さん。
こういった合併の場合、
大切になるのは、
第1に人事、
第2に本部所在地、
第3にネーミング。
私はアメリカのスーパーマーケットのように、
ナショナルチェーンはマルチ・バナーがいいと考えている。
クローガーやセーフウェイは、
もともとのローカルチェーンの人事と管理、
ネーミングなどを活かす。
バナーとは「店舗ブランド」のこと。
この店舗バナーを合併した企業に、
踏襲させる。
全店統一ロゴなどには間違ってもしない。
アークスとユニバースはともに、
共同仕入れ機構のシジシージャパンに加盟している。
両者が統合したアークスは、
さらに南下政策をとって、
東日本での店舗拡大を志向する。
とりわけCGCジャパン加盟企業を中心に、
同志的M&Aを積極的に推進する。
横山社長の弁。
「売上高5000億円は目の前。
1兆円ぐらいまでやる」
わたしはこのM&A、高く評価する。
新生アークスは、
ローカルチェーンの新たな行き方を示した。
横山清アークス社長は語る。
「業績が好調な2社が組めば規模の拡大を続けられる」。
もちろんこれで、ニッチな企業がなくなるわけではない。
ある種の寡占化が進むと、なおさらニッチ企業が重要になる。
私は「範囲の経済」を信奉するものだ。
その範囲の中に、
第1にマーケット・リーダーが躍進する。
第2にマーケット・チャレンジャーが存在感を示す。
第3にマーケット・フォロワーが、これまで生き残ってきたが、
これらが脱落する。
そして第4のマーケット・ニッチャーは、
むしろ輝きだす。
いちばん危険なのは、
マーケット・フォロワー。
つまり3番手、4番手、5番手エトセトラの企業。
アークスとユニバースのM&Aは、
マーケット・リーダー志向を貫くものだ。
ここに評価のポイントがある。
時差ボケなどなっている暇はない。
震災からの復興・振興をグランドデザインしつつ、
むしろ胸躍る新時代が待っていると考えるべきだ。
両社の社員、取引先はもとより、
これからのスーパーマーケットを担う人たちも、
このM&Aの行方を見守りつつ、
モデルにしたいと考えるに違いない。
胸躍る時代がやってきたと考えるべきだ。
<結城義晴>