結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2011年06月30日(木曜日)

アサヒ・キリンの共同配送開始とアークス・ユニバースの経営統合で新しいパラダイムの時代始まる

帰国したら、途端に、
二つの画期的ニュース。

時差ボケはないけれど、
私自身、かなりの疲労。

それでも仕事の成果が上がっているから、
気力も体力も保たれている。

画期的なニュースの第1は、
「アサヒ・キリンがビール共同配送」。

なんとビール業界7割を超えるシェア二強が、
「共同配送」を始める。

きっかけは、東日本大震災だと思う。
かの震災では、両社ともに商品供給が滞った。
その反省を踏まえて、まず物流を見直す。

今秋、首都圏の1都3県から始められ、
順次、福岡県や愛知県、関西などに地域が広げられる。

両社ともに全国9カ所に工場をもつ。
そのうち工場が近隣に立地する地域から、
工場から取引先卸への物流を中継する配送拠点を相互に活用。

したがって同じトラックに両社の商品が混載される。
これによって積載効率は飛躍的に高まる。

両社のトラック台数は1~2割減少。
輸送距離は短縮され、
二酸化炭素(CO2)排出量は3割削減。

さらにこれが成功すれば、
資材の共通化や共同調達も視野に入る。

他業界にもこの影響は出そう。

何しろ金融では三井と住友が統合し、
三大メガバンクとなったほど。

キリンとサントリーがご破算になったあと、
ビール業界二強は、
まずは物流を手始めに、
実質的に21世紀を見通し始めた。

一方、第2はスーパーマーケット業界のニュース。
「アークス、ユニバースを子会社化」

アークスは北海道にドミナントを築く企業。
「八ヶ岳連峰経営」の小売業ホールディングカンパニー。
2011年2月期年商3036億0800万円、
経常利益100億6100万円。

ユニバースは青森県を中心に岩手県にしたローカルチェーン。
2011年4月期年商1025億8200万円、
経常利益41億7000万円。
超優良のスーパーマーケット企業。

両社ともに東京証券取引所1部上場。

その持株会社アークスの傘下にユニバースが入る。
株式交換によりユニバースがアークスの完全子会社となる。
ユニバースは上場廃止。

トータル売上高は、
4061億9000万円。

現在、食品スーパーマーケット業界の第1位企業は、
ライフコーポレーションで、
売上高は4808億2200万円、

経常利益98億5000万円。

アークスはライフに次ぐ第2位に躍り出る。

そのうえ、アークス、ユニバースともに、
業績の中身がいい。

ユニバース社長三浦紘一さんが、
アークス会長に就任する。
社長はアークスの横山清さん。

こういった合併の場合、
大切になるのは、
第1に人事、
第2に本部所在地、
第3にネーミング。

私はアメリカのスーパーマーケットのように、
ナショナルチェーンはマルチ・バナーがいいと考えている。

クローガーやセーフウェイは、
もともとのローカルチェーンの人事と管理、
ネーミングなどを活かす。
バナーとは「店舗ブランド」のこと。

この店舗バナーを合併した企業に、
踏襲させる。
全店統一ロゴなどには間違ってもしない。

アークスとユニバースはともに、
共同仕入れ機構のシジシージャパンに加盟している。
両者が統合したアークスは、
さらに南下政策をとって、
東日本での店舗拡大を志向する。

とりわけCGCジャパン加盟企業を中心に、
同志的M&Aを積極的に推進する。

横山社長の弁。
「売上高5000億円は目の前。
1兆円ぐらいまでやる」

わたしはこのM&A、高く評価する。

新生アークスは、
ローカルチェーンの新たな行き方を示した。

横山清アークス社長は語る。
「業績が好調な2社が組めば規模の拡大を続けられる」。

もちろんこれで、ニッチな企業がなくなるわけではない。
ある種の寡占化が進むと、なおさらニッチ企業が重要になる。
私は「範囲の経済」を信奉するものだ。
その範囲の中に、
第1にマーケット・リーダーが躍進する。
第2にマーケット・チャレンジャーが存在感を示す。
第3にマーケット・フォロワーが、これまで生き残ってきたが、
これらが脱落する。

そして第4のマーケット・ニッチャーは、
むしろ輝きだす。

いちばん危険なのは、
マーケット・フォロワー。
つまり3番手、4番手、5番手エトセトラの企業。

アークスとユニバースのM&Aは、
マーケット・リーダー志向を貫くものだ。

ここに評価のポイントがある。

時差ボケなどなっている暇はない。
震災からの復興・振興をグランドデザインしつつ、
むしろ胸躍る新時代が待っていると考えるべきだ。

両社の社員、取引先はもとより、
これからのスーパーマーケットを担う人たちも、
このM&Aの行方を見守りつつ、
モデルにしたいと考えるに違いない。

胸躍る時代がやってきたと考えるべきだ。

<結城義晴>

2011年06月29日(水曜日)

「イノベーション」と「自ら、変われ」を合言葉に帰国/日本小売業調査を俯瞰する

帰国しました。
全員無事。
大きな成果を携えて。

いま、関西国際空港のロビー。

日本では、今日が、
「震災総会」ピーク。
日経新聞の夕刊がトップで伝える。

3月期決算の企業1023社が、
今日6月29日に株主総会を開催。

それでも昨年より60社少なかった。

一方、日経MJは2010年度小売業調査を発表。
手元に新聞そのものがないので詳細は分からないが、
上位10社までのランキングをみると、
特徴的だし、感慨深い。

1位 セブン&アイ・ホールディングス
(年商5兆1197億円、前年比100.2%)
2位 イオン
(年商5兆0965億円、100.8%)

どちらもホールディングカンパニーで、
多業態を抱えるコングロマリット。
年商5兆円台で、「日本の2強」と呼んでも構わないが、
しかし1年間の伸びはないに等しい。
それだけ厳しい1年だった。

アメリカの企業ならば、
両者ともに並みレベルか、それ以下。
まだまだ頑張れということ。

3位はヤマダ電機(年商2兆1532億円、106.8%)
この会社が国際レベルで成長企業と呼べる。
しかしエコポイントなど追い風ビュービューのお蔭。

4位から減収企業が並ぶ。
つまりかつての実績でこのランクにいるが、
ダウントレンドは免れない企業。
こちらも頑張らねばならないということ。

4位 三越伊勢丹ホールディングス(1兆2207億円、94.5%)
5位 ユニー(1兆1127億円、98.1%)
6位 Jフロントリテイリング(9501億円、96.7%)
7位 ダイエー(9118億円、93.3%)

百貨店と総合スーパー(欧米では「ハイパーマーケット」と呼ぶ)。
いわゆる総合大型店を中心に展開してきた企業。

8位から10位に専門店チェーン。

8位 エディオン(9010億円、109.9%)
9位 高島屋(8697億円、99.1%)
10位 ファーストリテイリング(8148億円、118.9%)

このままの傾向で行くと、
来年はエディオンとファーストリテイリングが、
ごぼう抜きで6位、7位に入りそう。

俯瞰すると、
第1に二社のトップ争いは変わらない。
第2に専門店チェーンが伸び続けている。
第3に総合大型店のダウントレンドは続いている。

これは上位の話。
つまり規模を追いかける企業群のこと。

企業価値はそれだけでは測れないし、
それだけが重要なことではない。

アメリカを見てきたばかりだから、
余計にそれを感じる。

ウォルマートは40兆円企業だし、
セブン&アイやイオン以上の規模を誇る企業が7社。
しかもいずれも展開フォーマットが絞られている。
パワーがあるということ。

さて私たちはサンフランシスコ国際空港から、
UA885便で、関空へ。

その前日、視察最終日の昼食。
アメリカ一番のハンバーガー・チェーン「イン&アウト」。
20110628194347.jpg
ハンバーガーもフライドポテトも、
サービスも価格も、
マクドナルドとの違いを鮮明にした企業。
すなわちポジショニングが確立された企業。

イン&アウトのハンバーガーは、基本に忠実。
パティ(肉)、レタス、トマト。
いずれも鮮度よく、うまいし、安全。
それにバンズ(パン)がおいしい。

フライドポテトは、
インストアでスライスし、フライしたてのものを供する。

そのオペレーションがまた、
感動的。

店員が全員きびきびしている。
まるでプロフットボールのチームみたい。

そのイン&アウトを堪能。

店外ではドライブスルーの注文を受けている。
20110628194401.jpg

これもさりげないホスピタリティ。
20110628194434.jpg

全員、満足。
20110628194418.jpg

そしてバスに乗り込んだ。
20110628194449.jpg

夜は、さよならパーティ。
場所はホテルから歩いて5分のステーキレストラン。
「ジョンズ・グリル」
20110628195517.jpg

昼はイン&アウトのハンバーガー、
夜はステーキのニューヨークカット。
20110628195530.jpg

視察研修が終わった安堵感と、
最後のディナーへの期待に胸が踊る。
20110628195552.jpg

地元ビールで、まずは乾杯。
20110628195608.jpg

乾杯の音頭とご挨拶は、
副団長の谷口昇さん。
20110628195626.jpg
谷口さんは経営企画部長。
平和堂の経営戦略をもとに、
研修の成果を活かしてほしいと要請したうえで、
全員で乾杯。

サラダ、スープ、パン、ステーキを堪能した後、
全員が順に感想や決意をコメントした。

素晴らしかった。

私、平和堂社員を、心から見直した。
もちろんこれまで低く見ていたわけでは全くない。

しかし、このコメントは、一人残らず、素晴らしかった。

最後に、我がパートナーの五十嵐ゆう子さんのスピーチ。
ゆう子さんもスピーチの素晴らしさを語った後、
「霧のサンフランシスコ」独唱。
20110628195642.JPG
I left my heart in San Francisco♪
high on a hill,it calls to me♪

アカペラの独唱、素晴らしかった。

その後、トリは結城義晴の総括スピーチ。
私はクレイトン・クリステンセンの「イノベーション」を語った。

持続的イノベーションと破壊的イノベーション。
そして最後に持続的イノベーションのポイント。
「ひとつずつ、すこしずつ、いっぽずつ」
20110628195658.jpg

スピーチが終了したら、
ピンクのパーカー姿、登場。

そう、ダラス・フォートワース空港で、
私がお薦めし、みんなのお奨めで購入したパーカー。
20110626161040.jpg
そのパーカーへのサイン。
周到にマジックまで用意されていた。
20110628195714.jpg
書き始めた言葉は、
「ひとつず・・・・」

サポーターが胸のところから押さえて・・・。
20110628195730.jpg

「ひとつずつ、
すこしずつ、
いっぽずつ」

20110628195746.jpg
完成すると、
みんなにご披露。
20110628195802.jpg

平和堂衣料品事業部レディス課チーフバイヤーの北川知二さん。
20110628195816.jpg
ダラス・カーボーイズのピンクのパーカー。
北川さんが仕入し、開発する衣料品、
これからピンクが増えるかもしれない。

それでもきっといい仕事をしてくれるに違いない。
期待したい。

突発的なサイン会で湧いた後、
全員で最後の記念写真。
20110628195853.jpg
横になって転がっているのは、
これもアイドルとなった添乗員の山口高徳さん。

この後、最後の夜(いや朝までだと思うが)、
San Franciscoは平和堂で盛り上がった。

明けて最終日。

7時50分、ホテルのロビー集合。

それからバスに乗り込んで、
最後の車中講義。
「ロイヤルカスタマーとイノベーション」

最後の最後は、
「自ら、変われ!」

そしてサンフランシスコ国際空港到着
20110629162437.jpg

最後の写真。
右から団長の取締役教育人事部長・村上茂人さん、
副団長の谷口さん、
私の隣はダブル・コーディネーターのゆう子さん、
そして添乗員の山口高徳さん。
20110629162506.jpg
「おつかれさま、ありがとう」

現地時間午前11時すぎ、UA855便に乗り込んだ。
空港付近は雨。
20110629162521.jpg

11時間後、関西国際空港。
20110629191153.jpg
一人ずつ固い握手。
「自ら、変われ」
期待したい。

そして出発ロビー。
夕方、5時50分発で羽田へ。
20110629162537.jpg

大阪は快晴。
しかし蒸し暑い。
20110629162550.jpg
1週間の旅だったが、
サンフランシスコは避暑地のようだった。

5月、6月、本当に忙しかったが、
それもひと段落。

成果が上がっていることで、
疲れも吹っ飛ぶ。

すべての人に、
心から感謝。

<結城義晴>

2011年06月28日(火曜日)

バークレーボウル、ナゲット、ウィンコ、フレッシュ&イージー歴訪

アメリカ米商務省発表の5月小売業売上高。
季節調整済みで前月比マイナス0.2%。
これは11カ月ぶり。
4月はプラス0.3%だった。

こちらにも東日本大震災の影響があった。
すなわち自動車売上高の減少。

ただし自動車を除く小売売上高はプラス0.3%。
4月はプラス0.5%だった。
それでも昨2010年7月以来の小幅増加率。

さらにガソリンを除く小売売上高はマイナス0.3%。
4月はプラス0.1%だった。

ガソリンスタンドの売上げはプラス0.3%。
食品・飲料はマイナス0.5%、
スポーツ用品・趣味関連マイナス0.4%、
電子製品・機器マイナス1.3%。
衣料・装身具はプラス0.2%、
建設資材・庭用設備はプラス1.2%。

消費意欲の減退が見られる。

一方、日本の経済産業省発表の5月商業販売統計速報。
小売業販売額は、
前年同月比マイナス1.3%。

10兆9170億円。
日本は前年同月比で出してくる。

東日本大震災発生の3月以降、減少が続く。
それでも救いは、マイナス幅の減少。
4月はマイナス4.8%だった。

扇風機やクールビズ衣料など節電関連の売り上げが好調だった。
飲食料品小売業はプラス1.7%、
その中で コンビニエンスストアがプラス7.3%。
特に東北地方のコンビニはプラス10.9%だった。

代わりに大型小売店はマイナス1.3%。

日米ともに消費が減退。
ともに東日本大震災の影響がある。

しかし、だからこそ、
「元気を出そうよ、
それがあなたの仕事です」

さて、サンフランシスコでの3日目。
宿泊はホテル日航サンフランシスコ。
20110628195427.jpg
よく利用するが、とても快適。

近くにユニオンスクェアがあって、
ケーブルカーが走り、
いつもにぎわっている。
20110628195457.jpg

そのホテル日航の3階会議室で、
朝からセミナー。
20110628184948.jpg
団長から個人課題レポートやチーム別発表の要請があってから、
私の2時間講義。

今回のテキストは201ページ。
事前テキストが25ページあったから、
226ページになる。

そのテキストを2回の早朝講義とバスの中での講義で、
すべて語りつくす。
20110628185001.jpg
だから最後は、ビデオテープの早回しのようになる。
ご清聴を感謝したい。

今回、強調したのは競争局面での闘い方。
20110628185013.jpg
もちろん、フォーマットとポジショニング、
クリティカル・マスや範囲の経済、
コモディティとノンコモディティなどの概念は、
アメリカ小売業を理解し、学習し、
日本に帰ってから仮説を構築するために、
必須の理論体系。

日本でも同じ課題がくっきりとしてきたからだ。
ただし、日本ではこの考え方、
しっかり理解されていない。

アメリカを見ると、それが鮮明で、
驚くほど、理解度が高まる。

講義の後は、最後の視察。
「話題の店舗を訪れる」というのが今日の趣旨。

まずバークレー・ボウル(Berkeley Bowl)。
20110628185026.jpg
店舗数は2だが、
総売上高1億2000万ドル。
これは前年対比でプラスの20.0%。

2009年にバークレー・ボウル・ウェスト店を開店した。
そのウェストを訪問。
20110628185039.jpg
私は今年、3月、5月に続いて3度目の訪問。

日系人のグレン・ヤスダさんが経営するインディペンデント企業。
それでも圧倒的な青果部門によって、
大繁盛店となっている。
20110628194151.jpg
超大型の八百屋。
それにフルラインのスーパーマーケット商品構成が付設されている。

まるで青果市場のような売り場。
珍しい野菜や果物、
季節の野菜や果物が満載された売り場。
20110628194207.jpg

カリフォルニアは青果物の大産地だから、
この生産力を背景に全米第1を誇る品ぞろえが実現できる。
20110628194220.jpg

ヤスダさんはその1品1品を、
丁寧に育ててきた。
新しい品種の商品、
珍しい商品は、
食べ方を教えながら、
試食を多用し、
安く提供し続ける。

そうすると顧客がその商品を、
よく知るようになる。

そしてこのアイテムがヒットすると、
バークレー・ボウルのオリジナル商品のようになる。

この店で売られる青果物はみな、
ノンコモディティ・グッズ。
それがいわば、
バークレー・ボウルのプライベートブランドと化している。
20110628194233.jpg
ポケットに一昨夜のレストランの爪楊枝が入っていたので、
それを使って試食の青果物はすべて食べた。
まさに「サンプル・ライフ」。

鮮魚・精肉は対面売り場。
20110628194257.jpg
青果ほどの圧倒的な品ぞろえはないが、
青果部門と商品レベルが統一されている。
それが最も重要なこと。

「大型八百屋」がスーパーマーケットの商品構成をつくると、
青果はいいが、あとはからきしダメな売り場になることが多い。

野球選手で言えば、打撃はいいが、
守備、走塁は全くダメな選手。

バークレー・ボウルはそうはなっていない。
ここがこの店のカギを握るところ。

もちろん青果部門は間違いなく全米第一。

店舗入り口の生花のコーナー。
20110628194314.jpg

レジ前のグロサリーのエンド。
20110628194330.jpg

月曜日の朝にもかかわらず、
開店前から顧客が並んでいた。

バークレー・ボウル健在なり。
私は無性にうれしかった。

続いて、フリーウェイを1時間以上も飛ばして、
ナゲット・マーケットNugget Marketへ。
20110628194548.jpg
ご存知、「インポッシブル」な店。
店舗数9で、年商2億8800万ドル。
これは前年比プラス0.3%。

「フォーチュン」誌の働きたい企業ランキング100で、
2011年は堂々の第8位。
昨年は5位だった。

この店も青果部門が圧巻。
20110628194611.jpg
品ぞろえはバークレーボウルが勝るが、
芸術的な出来栄えは、
これまた全米第一。

店舗をアートの世界に引き上げた。
それがナゲット・マーケット。
20110628194627.jpg

店舗入り口の何気ない特売陳列も、芸術的。
20110628194704.jpg

もちろん青果部門だけでなく、
対面の精肉・鮮魚、サービス・デリも、
セルフサービスの乳製品、冷凍食品、グロサリーも、
いずれも芸術的。
20110628194652.jpg

コスメティクス売り場はとりわけて、
アーティスティック・レベルが高い。
20110628194719.jpg

考えてみると、
女性の顔や体は、
まさに芸術品であるし、
そのレベルを高める商品群を売る場が、
芸術的でなければならないことは、
自明の理。

ウォルマートのネイバーフッド・マーケットでも、
コスメティクスの売り場は異常に美しい。

ナゲットではレジ後ろに「価格調査結果」を掲示している。
20110628194736.jpg
セーフウェイ、レイリーズなど競合店と、
25品目の価格比較をしてその結果を月別に示している。

この価格調査には顧客も参加する。
調査に参加してくれた顧客に対して、
月間一人だけ1000ドルを進呈する。

調査結果はナゲットが圧勝している。

良い品が安い。
そして店は芸術的。

これを「インポシブル(不可能)なことを可能にする店」と、
自ら称する。

さらにホスピタリティ。
20110628194753.jpg
アルバイトが顧客のカートを押し、
車に運ぶサービス。
20110628194807.jpg
インディペンデントやローカルチェーンが採用するサービス。
競争がますます激しくなり、ナゲットにも気合が入ってきた。
そんな印象を受けた。

サービス&クォリティ・スーパーマーケットの次は、
ディスカウント・タイプの代表。
20110628194831.jpg
ウィンコ・フーズWinco Foods。
年商50億ドル(約5000億円)。
この企業が1年に16.3%伸びている。
店舗数も78になった。

スーパー・ウェアハウス・ストアと称するフォーマット。
倉庫型ディスカウント・スーパーマーケット。
20110628194858.jpg
単品大量販売を基本とするが、
鮮度も品質も良好。

精肉部門は長い陳列線が続く。
20110628194921.jpg
一般の消費者も来店するが、
飲食店などの業者も多い。

グロサリーはラックで高く積み上げてある。
20110628194937.jpg
出店エリアは、カリフォルニア州が30店舗と中核で、
ワシントン州、オレゴン州、アイダホ州、
さらにネバダ州、ユタ州に店がある。

商品は全品センターから供給されるが、
そのセンターは4カ所。
オレゴンに2カ所、カリフォルニア、アイダホにそれぞれ1カ所。
20110628194952.jpg
この店も極めて高いレベルのウェアハウス・ストアで、
前年比16%増にも納得させられる。

周辺のレギュラータイプのスーパーマーケットはもとより、
ウォルマートにも打撃を与えているに違いない。

ウォルマートは敵だらけになってしまった。
そんな感慨を持つ。

ウィンコはウォルマートと似ている。
第1は、従業員持ち株制度がウォルマート以上であること。
第2は、以前の店名、社名がWaremartだったこと。

社名変更し、Winning Companyを略して「Winco」とした。

従業員もウォルマートに対しては、
燃えるに違いない。

最後の最後の訪問店は、
フレッシュ&イージーFresh & Easy。
20110628195013.jpg
イギリスのテスコがアメリカに進出した1万平方フィートの新フォーマット。
店舗数は176、年商は4億9500万ポンド(7億4300万ドル 1.5ドル換算)、
743億円のチェーンストアになってきた。

吉幾三似の店長ジョンさんがインタビューに応じてくれた。
20110628195031.jpg
ジョンさんは、健康や安全面で、
フレッシュ&イージーがセーフウェイなどよりも、
まじめで誠実であることを強調した。

私はいつもこの店の店頭をチェックしている。
20110628195045.jpg
フレッシュ&イージーのプライベートブランドが、
やっと店外でアピールされるようになってきた。

少しずつブランドが定着してきた証拠。

ただし、店舗入り口にはまだ、
ペプシコーラとドクターペッパーがうずたかく積まれている。
20110628195101.jpg
ここもプライベートブランドになってきたら、
フレッシュ&イージーは本物になる。

CEOのティム・メイソンは、発言しているようだ。
「400店になったら損益分岐点をクリアする」
いまだ道半ば。

しかしそれでも確実に小さなイノベーションを続けている。
20110628195119.jpg
特に青果部門がよくなった。

品種が増えたし、品質も確かになった。
20110628195137.jpg

働く女性やコンビニエンス志向の顧客に対応する商品開発は、
むしろスピードアップした。
20110628195207.jpg

「NEW」のスポッターがついているのが、新商品。
20110628195240.jpg
簡便でおいしそう。

対面の試食サービス・コーナーも充実。
20110628195226.jpg

店舗奥の主通路。
店づくりもクレンリネスも、
少しずつ洗練されてきた。
20110628195255.jpg

ワインをはじめリカーコーナーも、レベルアップ。
20110628195308.jpg

レジ前の冷蔵ケースには「エクストラ・ロー・プライス」のコーナー。
20110628195330.jpg
簡便・健康、そのうえ低価格。
実に欲張ったコンセプトだが、
一歩ずつ実現に向かう。

実現のバロメーターは店数。
400店が目安だろうが、
まずは200店。
その200店が目前。

収益性も高まるだろうし、
この店に必須の「立地選定」も、
これからは吟味するようになるに違いない。

「サンドイッチ・すし」などのコーナー。
これもレジ前で、コンビニエンスな売り場となっている。
20110628195344.jpg

レジの後ろにメッセージ。
「あなたが何を考えているか教えてください」
20110628195357.jpg
今月の商人舎標語。
「顧客からのスタート」
こんなところでお目にかかって、
ちょっと感激。

フレッシュ&イージーの小型店作戦が軌道に乗ると、
アメリカの小型店競争は、
ますます激化する。

現在の両横綱はトレーダージョーとアルディ。
これらはどちらもドイツのアルブレヒト・ファミリー傘下。

フレッシュ&イージーは、この二つのフォーマットを、
足して二で割った欲張りなフォーマット。

そしてウォルマートはまた、新フォーマットを開発した。
「ウォルマート・エクスプレス」。

「マーケット・サイド」の実験は芳しい結果をもたらしていないようだが、
それでもその修正版としての「エクスプレス」の登場。

役者がそろって、
ますます面白くなる。

役者の中にテスコはいてほしいと思うのは、
私だけだろうか。

<結城義晴>

2011年06月27日(月曜日)

故斎藤眞さんの「米国空間論」による「文明宣教の意識」と商業集積の新しい大潮流と「顧客からのスタート」

Everybody! Good Monday!
[vol26]

2011年第26週、6月の最終週。
週末の金曜日から7月。

今年ももう半分が過ぎようとしている。
そして3月11日からは、16週間。

月が変わるたびに、思う。
「あれから何週間、あれから何か月」

亡くなられた魂に哀悼の意を表し、
ご冥福を祈りたい。

そして生き残った私たちは、
この命をよりよく燃やしたい。

合掌。

読売新聞の一面コラム『編集手帳』。
政治学者の故斎藤眞さんに触れた。
アメリカ研究の大御所。

その斎藤さんはアメリカを「空間論」で捉えていた。
「大西洋で隔てられ、
欧州の権力政治に関わることのなかった米国は、
欧州文明と異なる文明を広める『文明宣教の意識』をもつ」

「文明宣教」。
その文明の一つが消費産業や小売商業。

心を委ねて、
「宣教」されている気分。
この地に来たら、
それが一番。

そして日本に帰って、
冷静に「日本文明」を顧みる。

さらにヨーロッパとの対比を明らかにし、
三者の比較・検討を試みる。

消費・小売産業の視点からそれを展開すると、
自分にも仕事があるのだと自覚できる。

それが私の生きるエネルギーとなる。

私は今、サンフランシスコ。
テキサス州ダラスは35度を超える熱暑だった。
そこから朝晩は12度のカリフォルニア州サンフランシスコへ。

東京・横浜から軽井沢へ避暑に来た。
そんな感じの霧の街サンフランシスコ。

I left my heart in San Francisco
これが一番の歌詞の冒頭。
二番の始まりは、
My love wait there in San Francisco

一番は「私」が主語。
二番は「愛する人」が主語。

いい歌です。
いつもここに来ると思い出す。

その旅も、もうあと3日。

昨夜はどっと疲れが出て、
部屋に帰るなり、
まさに「バタン、キュー」。

朝4時頃起きだして、
メールをチェックし、
新聞に目を通し、
ブログに取り掛かる。

さて、この二日間。
ダラス、サンフランを駆け巡った。

ダラスでは、
朝一番でアルディの新店。
20110627230609.jpg
アルディは1000店を超えてから、
ますます磨きがかかった。

その後、大注目のウォルマートの新店。
20110627230627.jpg
「Appliance Market」のショップが入ったスーパーセンター。
20110627230817.jpg
店全体にもイノベーションの息吹が満ち溢れている。

そして2005年オープンのウォルマート・エコストア。
マッキーニ店。
20110627230833.jpg

酷暑地対応エコストアだが、
大繁盛店として地域になくてはならない店になっている。

エコストア実験店が大繁盛店。
これがウォルマートの良さ。

ちなみにウォルマートを私は、
「エブリデーロープライス宣教企業」と評する。

ダラスの最後は、
HEBの「セントラルマーケット」。
20110627230846.jpg
日本語にすれば「中央市場」。
各地に「セントラルマーケット」のバナーを使う店があるが、
テキサスの雄HEBのセントラルマーケットが、
最も強烈なインパクトを発している。

それからサンフランシスコにやってきて、
昨日はまずトレーダージョー。
20110627232258.jpg
すごい店長とすごい店。
トレーダージョーの357店の中で、
ニューヨーク・マンハッタンのユニオンスクェア店に次いで、
二番目の売上げを誇る店。

ユニオンスクェアの店ほどの超大商圏ではないのに、
この実績。

マニー・ボベル店長の力量が半端ではない。
1万平方フィート(280坪)の店をマネジメントしていて、
年収18万ドル、1800万円。
20110627232311.jpg
このインタビューは帰国してから掲載予定。

次がスプラウツ・ファーマーズマーケット。
20110627232323.jpg
Sprouts Farmers Market
年商は未公開だが、店舗数61。
ヘンリーズ・ファーマーズマーケットと合併して、
100店間近の企業となる。

何度も書くが、
「社会的機能」としてのスーパーマーケット業態が分化してきた。
その分化は「戦略行動」と「ポジショニング」によってフォーマットとして確立された。
このフォーマットの一つがファーマーズマーケット。
この店はスプラウツの最高峰。

その後、ホールフーズ・マーケットへ。
20110627232334.jpg
全米チェーンストア41位。
年商80億3200万ドル(伸び率1.0%)
純利益2億8400万ドル(+20.4%)
店舗数273。

いつも驚かされる。
常にイノベーションがある。
それが売場にくっきりと出ている。

オーガニック&ナチュラル・スーパーマーケットだから、
ホールフーズが優れているのではない。

イノベーションの気運を失わないところが、
優れているのだ。

これは企業風土とマネジメントそのものである。

それから「サンタナ・ロー」へ。
2002年にオープンした「ライフスタイルセンター」。
20110627232346.jpg
いま、アメリカのショッピングセンターは、
「ショッピングセンター」という呼称がつかない商業集積が伸びている。

「パワーセンター」
「アウトレットモール」
そして「ライフスタイルセンター」

古典的な分類のショッピングセンターもたくさんある。
小型のネイバーフッドショッピングセンター。
中型のコミュニティショッピングセンター。
大型のリージョナルショッピングセンター、
そして超大型のスーパーリージョナルショッピングセンター。

これらからすべて、
「ショッピング」という言葉が、
取り去られようとしている。

「物を売る商業集積」は、
パワーセンターとアウトレットセンターが受け持ち、
「安らぎや憩、癒し」を提供し、
ついでに買い物も提供するのが、
ライフスタイルセンター。

小型・中型の小商圏・中商圏の商業集積はパワーセンター化し、
大型・超大型の大商圏・特大商圏の集積は、
ライフスタイルセンターでなければ、
置き去りにされるほどのトレンド。

それがサンタナ・ローに現れている。

その後、セーフウェイの小型店「ザ・マーケット」。

さらにトレーダージョーと、
セーフウェイ・ニューライフスタイルストア。
それらが核となったコミュニティ型のライフスタイルセンターへ。
ライフスタイルセンターに出店しているから、
どちらも並み以上に繁盛している。

そう見ることができる。
最後に、サンフランシスコ市街のホールフーズ小型店。
20110627232359.jpg
新バナーはつけれらていないけれど、
ホールフーズの新フォーマット。

充実した視察行だった。
私も満足。

五十嵐ゆう子さんとドライバーの杉さんに、
心から感謝。

すべての店に共通していること。
今月の商人舎標語の「顧客からのスタート」
これを忘れた店や商業集積は廃れる。

それを唯一・最大のポリシーにしている店や商業集積は栄える。

「文明宣教」しているアメリカから、
強く強く学んだこと。

Everybody! Good Monday!
今週もよろしく。

<結城義晴>

2011年06月26日(日曜日)

ジジと独立記念日[2011日曜版vol26]

ジジです。
20110626160047.jpg
ユウキヨシハルのおとうさん、
また、いません。

アメリカのテキサスです。
20110626160151.jpg

いそがしい。
20110626160301.jpg

6月いっぱいは、とても。
20110626160311.jpg

そして7月になると、
アメリカでは「インディペンデンス・デー」
20110626161813.jpg
国が独立したことを記念する日。

この国のひとは、
旗をたいせつにします。
20110626160106.jpg

天井からぶらさげる。
20110626160340.jpg

たかいところにかかげる。
20110626160402.jpg

ニッポンとは、ちがう。
20110626160119.jpg

売場にかざる。
20110626160419.jpg

POPにもかざる。
20110626160441.jpg

ニッポンとはちがいます。
20110626160132.jpg

商品にも国の旗をあらわす。
20110626160455.jpg

旗まで、売ります。
20110626160536.jpg

やっぱりニッポンとはちがう。
20110626160228.jpg

そこが、おもしろい。
20110626160243.jpg

売場を飾るときにも、
国の旗、使います。
20110626160550.jpg
インディペンデンス・デーがくるから。

おとうさんは、きょう、
ダラスからサンフランシスコへ。
20110626160632.jpg

ダラス・フォートワース空港は、
ハブ空港。
20110626160904.jpg

空港のショップ。
20110626161024.jpg

サンフランシスコはさむいから、
ダラス・カーボーイズのパーカーを、
団員におすすめしました。
20110626161040.jpg
そうしたら、おにあい。

でもサンフランシスコにきたら、
もうすぐおわり。
20110626160657.jpg

そして、かえってきます。
20110626160707.jpg

ロッキー山脈をこえて。
20110626160919.jpg

アメリカ大陸をとんで。
20110626160933.jpg

ベイエリアへ。
20110626160945.jpg

サンフランシスコの夜景が、
みえてきました。
20110626161000.jpg

いい街です。
20110626160730.jpg

きっと、たのしんでいます。
20110626160717.jpg

もっともっと、たのしんできてください。
20110626160759.jpg

そしてアメリカのエネルギーやエッセンスを、
もちかえってください。
20110626160745.jpg

それが、おとうさんのシゴトです。
それが、おとうさんのヤクメです。
20110626160815.jpg

「ちがい」をだすこと。
「差異」をみとめること。
20110626165604.jpg

それがアメリカの良さ。
20110626160832.jpg
おとうさんは、
この「ディフェレンス」を、
たいせつにしています。

<『ジジの気分』(未完)より>

2011年06月25日(土曜日)

ダラス初日はウォルマート/コストコ/クローガー/百貨店総巡り

アメリカで「扇風機」旋風が吹いている。

なんといってもウォルマート。
14ドル88セントで、
この扇風機が大々的に売られている。
20110625165150.jpg
1200円也。
買って帰りたいくらいだ。

それからネイバーフッド・マーケット。
ウォルマートが展開する1200坪店舗。
その奥主通路沿いのエンド。
20110625165205.jpg
21ドル50セント。

典型的なサンプル陳列。
風を送っているので、
この前を通ると、その風を感じる。
そして気づく。
20110625165220.jpg
ウォルマートはこういった売り方の工夫を、
ほんとうに奨励し、上手に展開する。
私はこの姿勢大好き。
「知識商人」を感じさせる。

食品スーパーマーケットで、
こういった商品をスポットで販売する。
「シーゾナル商品」という。
生活必需品で、なおかつ定番商品でないもの。

それを期間限定で販売する。
売り切って、打ち止め。

いい売り方です。

扇風機はベッド&バス・ビヨンドでも。
20110625165241.jpg
いちばん右の黒いのが59ドル。
その左のちょっと大きいのが89ドル。

日本の震災の影響だろうか。
エアコンではなく扇風機。

人間が涼むだけでなく、
パソコンを冷やしたりといった用途もある。

いずれにしても扇風機。
新しい風が起こりそうだ。

さてこちらは金曜日の6月24日。
朝から2時間の講義。
20110625163952.jpg
ところは宿泊先のヒルトン・ダラス・リンカーンセンター。

昨夜は久しぶりにたっぷりと睡眠をとって、
元気いっぱい。

平和堂のアメリカ研修会。
50人全員、燃えている。
聴き手が燃えると、
語り手も燃える。

ベーシックな知識や技術論から、
最先端のトレンドや理論、
戦略・政策まで、
いくら時間があっても足りないが、
とにかく語りきる。

商品構成グラフの活用の方法。
この原則を知らない向きが意外に多い。
20110625164014.jpg
平和堂では新入社員の時に、
丁寧に教えられるそうだが、
改めて復習。
20110625164030.jpg

8時前に初めて10時まで、
あっという間に時間は過ぎる。
20110625164044.jpg

私は「イノベーション」を起こしたいと考えている。
全員が一丸となれば、それは大いに可能だ。
20110625164057.jpg
それがこの研修会の目的でもある。

時間が来たら講義はやめて、
バスの中での講義に移る。

それがアメリカ研修の良さ。
時間はたっぷりとある。

さて最初に訪れるのは、
ウォルマート。
20110625164115.jpg

何しろアメリカ小売業は、
ウォルマートを中心に回るメリーゴーランド。
中心から攻めなければ、
振り回され、振り落とされてしまう。
20110625185207.jpg

年商4050億ドル(前年比0.9%)、純利益143億ドル(7.0%)、
店舗数4304店。
世界最大の企業。
20110625185301.jpg

旧知のマーカス店長。
20110625164131.jpg
スキャッグス・アルファベータからウォルマートに転職し、
その後22年。
「82歳までこの会社で働く」と意気軒昂。

ウォルマートのスーパーセンター2907店の中でも、
最も多忙な店長の一人だが、
今回は最初にレクチャーしてくれた。
20110625164148.jpg
的確なコメントがよどみなく出てくる。
ウォルマートのストアマネジャーの能力の高さが、
マーカス店長によって示された。

後を引き継いでくれたのは、
ご覧のチャンダさん。
美形。
20110625164211.jpg

7000坪の店内ツアーをして説明してくれた後、
質疑応答。
20110625164228.jpg
通訳は、ご存知、五十嵐ゆう子さん。

二人の会話はどんどん奥に入っていって、
そしてわかりやすく解説される。
「自動発注」のこと、
部門構成のこと。
20110625185347.jpg

ウォルマートのオペレーションは、
毎度毎度、変化している。
20110625185423.jpg

それが自然な形に向かっている。
無理はないし、無駄もない。
それがよくわかるインタビューだった。

最後に全員で写真。
20110625164245.jpg

ウォルマートに来たら次は?
当然ながらターゲット。
20110625164412.jpg

全米小売業第4位。
年商634億ドル(0.9%)、純利益43億7600万ドル(7.2%)
店舗数1740店。
20110625185544.jpg

ウォルマートと同じ業態を展開しているライバル企業。
そのスーパーターゲット。
20110625185506.jpg
何から何まで対照的。
それがターゲットの存在価値であるし、
ターゲットがあるからウォルマートの存在価値もある。
20110625185637.jpg
だからこの業態では第三者を寄せ付けない。

次はコストコ。
20110625164340.jpg
全米小売業第3位。
年商714億ドル(こちらは前年比マイナス1.5%)、
純利益は10億8600万ドル(マイナス15.4%)、
店舗数566店。

直近の決算は落ち込んだが、
店舗は大繁盛。

ウォルマートのサムズと同じ業態で、
ウォルマートが逆立ちしてもかなわない企業。

平和堂の住関連部門バイヤーの人たちと、
ベッド&バス・ビヨンド。
20110625164320.jpg
Home Fashion Storeとして向かうところ敵なし。
全米第44位の小売業。
年商78億2900万ドル(伸び率8.6%)、
純利益9億8100万ドル(こちらは45.5%)。
現在1100店。
20110625185714.jpg

ベッド&バス・ビヨンドの最大の敵は、
ウォルマートであり、ターゲット。
同じ業態のリネン&シングスは倒産してしまった。

途中、CVSケアマークの新店が、
オープンしたばかりだったので、
急きょ、寄ってみた。
20110625164440.jpg
この店がよかった。

店名はCVSファーマシー。
20110625185809.jpg
企業年商は553億5500万ドル(伸び率13.0%)、
純利益41億5900万ドル(10.8%)、
店数はなんと7025店。
そしてこの企業全米第7位。

午後はスーパーマーケット企業。
まず、ウォルマート・ネイバーフッドマーケットから。
20110625164503.jpg
今年1月末で店舗数182店だが、
このところ店の状態はすこぶるいい。
20110625185928.jpg

スーパーマーケット第1位にして、
全米小売業第2位のクローガー。
20110625164523.jpg
その「マーケットプレイス」というフォーマット。
非食品強化型で、
明らかにウォルマート対策店舗。
20110625190017.jpg

クローガーの年商は767億ドル(伸び率0.8%)、
純利益10億9100ドル(こちらはマイナス55.5%)、
店数は3619店。
20110625190415.jpg

この店は本部推奨の上出来の店舗。
しかしどうしても私は、
非食品のキッチン家具などの品ぞろえは納得できない。
20110625190142.jpg

次はセーフウェイの傘下にあるトムサム。
20110625164549.jpg
セーフウェイは全米小売業第11位で、
スーパーマーケット第2位。
年商は349億8000万ドル(前年比マイナス7.1%)、
純利益はマイナス9億9300万ドル(前年比マイナス162.8%の赤字)、
店舗数は1501店。
ニューライフスタイルストアに全店を衣替え中だが、
新店は良いがリニューアル店舗は、いまいち。
20110625192047.jpg

ここまで、そうそうたる企業を、一巡り。
それができるのがダラスのメリット。

続いてローカル・スーパーマーケット・チェーン。
ユナイテッド・スーパーマーケットの新フォーマット。
マーケット・ストリート。
20110625164613.jpg
ダラスに来たら必ず訪れる。

そのホスピタリティは、異次元の域。
それがこの企業の「ポジショニング」となっている。
20110625190311.jpg
マーケット・ストリートは現在10店。
ウェグマンズをベンチマークして作ったサービス&クォリティタイプ。

それからサンフラワー・ファーマーズマーケット。
20110625164635.jpg
現在34店舗。

スーパーマーケット「業態」の中に、
「ファーマーズ・マーケット」というフォーマットは確立された。
20110625190838.jpg
これによって、
「進化や盛衰の動態」を、
「業態とフォーマット」という二つの考え方の間で、
「二段階分析」することの有効性が、
実に明確になった。
20110625190856.jpg
その意味で私は「ファーマーズ・マーケット」を、
重要なフォーマットだと思っているし、
むしろ感謝している。

この店でマーケティング・マネジャーのキャメロン君にあった。
20110625164747.jpg

実に気持ちの良い青年。
20110625164803.jpg
ちょっとだけ日本語も話すが、
その熱意がとてもいい。
意気投合してしまった。

この後、ノースパーク・ショッピングセンターへ。
そこで、新しいタイプのショッピングセンターと百貨店群を訪れた。

圧倒的ガリバー企業のメイシーズ。
20110625164838.jpg
全米小売業第15位で、850店を展開するチェーン百貨店。
年商234億8900万ドル(前年比マイナス5.6%)、
純利益10億6300万ドル。

ノードストローム。
20110625164855.jpg
全米第39位。
年商82億5800万ドル(マイナス0.2%)、
純利益8億3400万ドル(プラス7.1%)、
184店。

「伝説のサービス」の百貨店。
20110625164913.jpg

そして超高級百貨店ニーマン・マーカス。
20110625164947.jpg
全米79位で42店舗。
年商36億4300万ドル(マイナス20.8%)、
純利益はマイナス6億5300万ドルの赤字。

このショッピングセンターは芸術の街。
20110625165011.jpg

センターコートに巨大な現代彫刻。
20110625165038.jpg

そしてピアノの生演奏。
20110625165058.jpg

顧客でごった返す金曜日の夕方。

しかし「物を売りつけようとはしない商業集積」。
快適さを提供し、癒しを与える。
すなわち「ライフスタイルセンター」。

全米にこのトレンドが大きく広がっている。

ウォルマートもターゲットも、
クローガーもセーフウェイも、
そしてコストコもサムズも、
この大潮流の外にいるわけではない。

新しい風がびゅうびゅうと吹いている。

<結城義晴>

2011年06月24日(金曜日)

成田空港を飛び立ち28時間後にテキサス州ダラスのホテルに到着、意気軒昂! 目指すは「迅速な実行」

「私自身燃え尽きる覚悟で取り組んでいきたい」。
菅直人首相が延長国会について力説。

アメリカ・テキサスの36度の気温の中で、
ネット上の日本情報を読んだ。

「私がやらなければいけない課題は、
復旧・復興、原発事故の収束」
課題は誰でも分かっている。
如何に迅速に実行するかだ。

今日は「東日本大震災チャリティセミナー」名古屋大会。
200人を超える方々が参集してくださった。
心から感謝申し上げたい。

私は昨日23日夕方、成田空港を出発し、
サンフランシスコ経由で、ダラスへ到着。

今回は、㈱平和堂のミドルクラスのメンバーの視察勉強会。
1週間にわたり、ダラス、サンフランシスコで研修する。

昨日は成田空港南ウィングに集合して、
結団式からスタート。
20110624104908.jpg

平和堂の皆さんは、朝早く、新幹線に乗り込み、
東京駅からバスに乗り継いでやってきた。
成田空港に到着したころには、疲れた様子。
20110624104931.jpg

「本当にハードなのはこれから。
駆け足の7日間だが、
アメリカの文化、消費生活、食生活を楽しむと同時に、
帰国してからイノベーションを起こしてもらいたい」と要請。
20110624104943.jpg

今回の参加者は50名。
率いる団長は取締役教育人事部長の村上茂人さん。
20110624104949.jpg

夏原平和社長より託された「8C」のメッセージを伝えながら、
「会社が与えてくれたこの機会を有意義な学びの場にしよう」と挨拶。

こうして一行は、成田を出発。
20110624104958.jpg

乗り込んだのはUA838便。
20110624130705.jpg

あっという間に、北アメリカ大陸の海岸線。
20110624130721.jpg
サンフランシスコ国際空港で乗り換えて、テキサスへ。

ロッキー山脈には雪が見えた。
20110624130736.jpg

3時間ほどでテキサスの平原。
20110624130749.jpg

ダラス・フォートワース空港で、
ロサンゼルスから先乗りしていた五十嵐ゆう子さんと落ち合い、
今回のツアーの顔ぶれがそろった。

早速、バスにギュウギュウ詰めで、
フリーウェイに出た。

もう時間は午後5時を過ぎた。

アメリカンフットボールのダラス・カウボーイズ・スタジアム。
20110624130811.jpg
北米4大プロスポーツリーグ全122チームの中で、
最も資産価値の高いチームと評されている。

隣にメジャーリーグのテキサス・レンジャーズ・スタジアム。
20110624130823.jpg

そして人気のステーキハウス「トレイル・ダスト」
20110624130834.jpg

まずは50人揃って、
テキサスのローカルビール「シャイナー・ボック」で乾杯。
20110624130850.jpg

そして、この店恒例の「ネクタイ・カット」の儀式。
この店を訪問するときの「正装」は、
テンガロンハットにウェスタンブーツ。
スーツにネクタイはご法度。
だからネクタイをして行くと、
店舗中央に引き出されて、
そのネクタイを切り落とされる。
20110624130903.jpg

村上団長、谷口昇副団長、山口高徳添乗員、
三人ともカットされたネクタイを掲げて、うれしそう。
20110624130914.jpg

ステーキは当然ながら、
ポーターハウス・ステーキ。
テンダーロインとサーロインが、
Tボーンに挟まれてくっついている部位。
20110624130936.jpg
日本時間6月23日朝7時に滋賀県の彦根を出て、
テキサス時間23日午後9時(日本時間24日午前11時)ホテル到着。

長い長い一日、
28時間の旅だったが、
全員元気。

明朝からの研修は激務。
覚悟しつつ、今宵は、
アメリカン・ライフを楽しんだ。

さて一方、日本では、
6月22(水)、23(木)の2日間、
「リョーショクグループ2011グランドフェア」開催。
開場は、東京流通センターの第一・第二展示場。
20110624114446.jpg

総合食品卸売企業㈱菱食は、
7月1日に明治屋商事㈱、
㈱フードサービスネットワーク、
そして㈱サンエスと経営統合を控えている。
新社名は「三菱食品株式会社」。

つまり「リョーショク」としては
最後のグランドフェアになる。

第一会場の入り口。
後藤雅治会長のお出迎え。
20110624114555.jpg
(後藤会長の写真が小さくてすみません)

今年のテーマは「みつけよう!それぞれのFINE」。
箸につままれたスマイルが目をひく。

「とどけるFine、つなげるFine、しかけるFine」を、
各ブースで提案。
20110624114655.jpg

震災後ということで、
震災関連のブースや東北支援のブースなどが目立った。
20110624114731.jpg

東北地方の麺類の数々。
20110624114749.jpg

災害時用の水の紹介など。
20110624114954.jpg

グランドフェアの記者会見。
㈱菱食の中野勘治代表取締役社長。
20110624115212.jpg

震災をうけ、今年のグランドフェアの開催については、
議論もあったそうが、
「『菱食』最後のフェアをやりたいとの気持ちが大きく、
開催を決めた」。

「『がんばろう日本』と叫ばれているが、
それは違うと思う。
『ひとりひとりが頑張るぞ』という気持ちで、
乗り越えなければならない」

「それには、今年のテーマが大事。
つまり『それぞれが見つけ出すスマイル』。
『自分』を主語として、重たい空気を振り払おう」

中嶋隆夫副社長(右)と福原淑文専務(左)。
20110624115242.jpg

「普段の生活、普通の商売がいかに大事か。
いかに多くの消費者に『安心・安全・安定』を提供できるか。
そのために、品質、供給、価格の安定を目指す。
今回の震災は、
サプライ・チェーン・マネジメントの洗い直しをする機会を与えてくれた」

今回のフェアは、震災の影響をしっかり意識した。
家族や家庭での食事提案に力を入れている。

「おウチピクニック」の提案。
20110624115352.jpg

料亭のメニューを家庭で食べる「おウチ料亭」。
20110624115305.jpg

売場を活性化するプロジェクトの提案。
20110624115315.jpg

震災の影響は、当然ながら、
テキサスにはない。しかし「迅速な実行」が必要なことは、
世界共通。

明日からもこれで行こう。
“Practice comes first!”

では、おやすみなさい。

<結城義晴>

「月刊商人舎」購読者専用サイト
月刊商人舎 今月号
商人舎 流通スーパーニュース
月刊商人舎magazine Facebook

ウレコン

今月の標語
商人舎インフォメーション
商人舎スペシャルメンバー
商人舎発起人

東北関東大震災へのメッセージ

ミドルマネジメント研修会
商人舎ミドルマネジメント研修会
海外視察研修会
商人舎の新刊
チェーンストア産業ビジョン

結城義晴・著


コロナは時間を早める

結城義晴・著


流通RE戦略―EC時代の店舗と売場を科学する

鈴木哲男・著

結城義晴の著書の紹介

新装版 出来‼︎

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》
(イーストプレス刊)

新着ブログ
毎日更新宣言カレンダー
指定月の記事を読む
毎日更新宣言カテゴリー
毎日更新宣言最新記事
毎日更新宣言最新コメント
知識商人のためのリンク集

掲載の記事・写真・動画等の無断転載を禁じます。商人舎サイトについて
Copyright © 2008- Shoninsha Co., Ltd. All rights reserved.