今日から7月。
1月から考えると、1年の折り返し点。
日本語では文月(ふづき)、
英語ではJuly。
語源由来辞典では、
文月は、「文披月(ふみひらきづき)」が転じたとする説をとる。
「短冊に歌や字を書き、書道の上達を祈った七夕の行事に因む」
7月は七夕の月なのだ。
Julyはユリウス・カエサル(Julius Caesar)の家紋名。
英語ではジュリアス・シーザーと発音する。
カエサルは紀元前にユリウス暦という世界初の太陽暦をつくった。
その時、7月に自分の家紋名を入れた。
7月13日がカエサルの誕生日だったから。
ユリウス暦が改良されて、現代の暦となった。
通称グレゴリオ暦。
1582年にローマ教皇グレゴリウス13世のもとでつくられた。
さて今日7月1日は、
海開き、富士山の山開き。
今年、私は富士登山はしないけれど。
忘れてならないのは、
今日からの15%節電スタート。
東北電力、東京電力管区内だが。
大口需要家に対して発令された電力使用制限令で、
石油危機以来37年ぶり。
東北は9月9日まで、関東では9月22日まで、
平日の午前9時から午後8時を対象として、
違反には100万円の罰金が課される。
7月4日はアメリカの独立記念日。
7月14日はフランスの革命記念日。
7月は革命が起こる「熱い月」のようだ。
7月前半の山は、
7日の七夕。
7月唯一の祭日は、
18日(月曜日)の「海の日」。
16日(土曜日)、
17日(日曜日)と、
海の日で三連休。
7月で一番、
売上げボリュームが大きいのが、
この三連休。
そして今年は21日(木曜日)が、
土用の丑。
今年の梅雨明けは、
九州南部がすでに6月28日。
ブログ「2週間天気予報」が好評の常盤勝美さんによると、
「もし7月の早い段階で梅雨明けのタイミングを逃してしまうと、
梅雨明けが7月末にずれ込むことも考えられる」
梅雨明けには高い関心を払っておきたい。
消費マインドがこれでガラリ、変わる。
それから7月は大きな祭りの月。
7月15日は福岡の博多祇園山笠追山、
7月17日は京都・祇園祭山鉾巡行、
7月25日は大阪の天神祭船渡御。
①前半の七夕、
②後半の「海の日」を含む三連休、
③そして土用の丑。
7月はイベントが多い。
震災後、5カ月目を迎えるが、
消費マインドを盛り上げるには、
最適の月。
震災を忘れることなく、
しかし「復興・振興」を志向して、
蒸し暑い7月を乗り切りたい。
さて7月の商人舎標語。
「明日のために今日を決める」
ご想像の通り、ピーター・ドラッカー先生の言葉。
『創造する経営者』(1964年執筆)にある。
そこから、『店ドラ』(96ページ)に引用した。
「未来を築くために初めになすべきことは、
明日何をなすべきかを決めることではなく、
明日をつくるために今日、
何をなすべきかを決めることである」
震災から5カ月、私たちは明日をつくるために、
日々、今日何をなすべきかを決める必要がある。
それがこの夏の仕事である。
さて昨日6月30日は、
日本スーパーマーケット協会(JSA)の定期総会。
総会後は、恒例となった正副会長パネルディスカッション。
場所は帝国ホテル本館3階「富士の間」。
会場には950名ほどの人々が詰めかけ、
途中、椅子席を追加するほどの盛況ぶり。
パネルディスカッションに先立ち、
これも恒例となった大塚明専務理事によるスピーチ。
内容はスーパーマーケットの現状分析と展望。
スーパーマーケットを取り巻く環境、
消費者の変化と競争の変化、
そして2010年代の課題が
スライドをつかって説明された。
総タイトルは、
「シナリオ2020」
ヤオコーでの実務経験が長い大塚専務理事。
この解説を聞くだけでも参加の価値がある。
それがJSAの「強み」のひとつでもある。
そして、いよいよ15時から、
2時間にわたるパネルディスカッションがスタート。
コーディネーターは結城義晴。
協会発足後の第1回は私の単独講演だった。
第2回から会長・副会長勢揃いのディスカッションが恒例となった。
この間、ずっと、コーディネーター役を仰せつかっている。
今回のメインテーマは、
「歴史の節目『東日本大震災』後に
スーパーマーケット産業の戦略は変わるのか?!」
サブは、
「ライフライン・インダストリーとしての真の顧客主義を貫くために」
スーパーマーケットは震災から何を学び、
どのように変わっていかなければならないのか。
これを、震災時の対応や今後の経営戦略とあわせて、
各パネラーに1人ずつ、講演スタイルで、
じっくりと語っていただいた。
初めにJSA会長の川野幸夫さん。
㈱ヤオコー代表取締役会長。
113店舗中4店舗が被害を受けた。
「大震災後の企業経営、世の中のあり方として2つのことを感じた。
1つは、日本が生産者主権から生活者主権の国づくりに変わるということ。
日本の国民所得は、バブル崩壊後、20年間減っている。
これは世界でもまれなこと。国力が低迷している。
この大震災は、神様の厳しいお叱りなのかもしれない。
日本は生活者主権の国に変わらなければならない」
「2つ目は、リーダー、リーダーシップの大切さ。
政府も、会社も、組織はリーダーによって左右される。
店も店長によって異なる。
『リーダーシップをとれるリーダー』をもつ組織づくりが大切である」
「スーパーマーケットはライフラインを担っている。
その重要な役割、意義を感じられたことは大きな財産になった」
協会長として川野さんはそう締めくくった。
そして副会長の平富郎さん。
㈱エコスの代表取締役会長。
エコスは千葉、茨城エリアの店舗を中心に多大な被害を受けた。
その状況を平さんは語ってくれた。
「危機管理マニュアルは策定していたが、
現実には意味をなさなかった。
翌日には全店オープンの方針を打ち出したが、
天井が落ち、ゴンドラが倒れ、ガラスが割れ、落ちかかったり、
全店舗で商売できる状況になかった。
各店の店長がそれぞれに判断し、地域住民のために
売れるものを売り、タダで配るべきものは配った」
「店長のもと、皆が知恵を出し、
チームワークをもって対応した。
社長の名代は店長である。
店は店長というリーダーの器で決まる」
「普段目立たない店長が、
いざとなると頑張った。
青果部門のチーフはかなり寒い日だったのに、
Tシャツ一枚で汗だくで仕事した。
使命感が彼らを支えた」
「地域社会からのライフラインの要望にこたえた店は、
その後、売上げが伸びている。
地域のお客様が、危機の時の頑張りを、
よく見てくださったのだろう」
そして平さんは、こう言い切った。
危機を乗り越えたものは強い。
「東北から必ず大経営者が輩出するだろう」
続いて副会長の齋藤充弘さん。
全日本食品㈱代表取締役社長。
今回の震災は、ナショナルチェーンが活躍した。
ボランタリーチェーンの全国チェーンもそのひとつ。
全日食チェーン、CGCジャパンなどの活躍はめざましかった。
「西は九州、広島、大阪、名古屋から必要な商品を調達し、
被災後3~4日後から、東北の被災地に、
関東、北海道、新潟からの3ルートで緊急物資を搬送した」
「1週間も過ぎると、沿岸部と異なり、
内陸側の需要は普段の生活、毎日の生活需要が高まる。
いっときの需要と普段の需要。
これらを情報システムによって見極め、商品を送った。
送った商品はきちんと、
キャッシュアウトできた」
「震災時には、情報の共有化が大切だ。
私自らが地震、放射能、商品についての必要情報を、
イントラネットで流した。
1カ月間で100号にもおよぶ情報発信をした」
「今回、メーカー・卸のサプライチェーンの情報が少なかった。
ライフラインを受け持つなら、
食品メーカーや卸は、
商品の生産、在庫の情報を、
小売りや消費者に発信してもらいたいところだ」
齋藤さんからのサプライチェーンに対する要望は
貴重な提言であった。
副会長の㈱平和堂社長の夏原平和さん。
平和堂はニチリウの主力企業であり、
地域住民からは「さん」付けで呼ばれるほど、
地域に根ざした企業として知られる。
「ヨークベニマルさんをはじめ被災された地域企業は、
商品を継続供給できなくなることがわかった。
滋賀県でドミナント展開する平和堂も、
震災に見舞われたら、同じことになる。
『緊急時商品供給連絡会』のような、
商品供給・分配のネットワークをつくる必要がある」
「店頭義援金はすぐに集まった。
1万円札も多かった。
内食機会が多くなった。
結婚する若者が増えた。
震災を経て、
日本人の価値観やライフスタイル感が変わった。
それにどう対応していくかが課題になる」
「私たちの会社の主張や考えを伝えて、
共感していただけるお客様をたくさん増やしていく。
そうした平和堂とお客様の互いの理解が大事になっていく」
そして副会長の最後は、横山清さん。
㈱ラルズの代表取締役会長であり、㈱アークスの社長。
青森の㈱ユニバースを子会社とする記者発表をしたばかり。
「災害は必ず来る。
『覚悟をせい!』と突きつけられた気がした」
「北海道でも3月は特需、
4月はまあまあ。
しかし5月は厳しかった。
震災ダメージが企業活動や消費活動に与える影響はこれからだ。
いいサービスがあれば、商品は売れるなんてことは絶対にない。
震災により、いままで以上に景気は悪化し、
人口減でさらに需要はダウンする」
「この商売を50年やらせていただいてきた。
お客様無視で仕事はできない。
利益を無視して継続はない」
「スーパーマーケット業界の地位を向上させるといっても、
生産性は低く、楽な仕事でもない。給料も低い。
だから、寡占化しないと生産性は上がらない」
「業界は業界、企業は企業。
過酷で厳しい競争環境の中で、
各企業が成長戦略を決めなければならない時期にきている。
ホールディングカンパニーの下で、
意思決定のスピードを上げていく」
「経営の地殻変動」が起こっている。
横山さんの視点は厳しくて、鋭い。
最後の最後に、協会名誉会長の清水信次さん。
この度、日本チェーンストア協会の会長にも就任された。
㈱ライフコーポレーション会長。
「関東大震災では東京、横浜は全てのエリアが被災し、
計15万人の死者と55兆円ともいわれる損害があった。
それでも内務省の後藤新平が復興院を発足させ、
現在の貨幣価値にして40兆円の予算を付け、
日本は8年で復興を果たした」
「いま、二つの問題がある。
第1は国民の生活を守る使命があるということ。
第2は原発は是か非かの問題。
命がけで始末をつける覚悟がいる」
「政治がしっかりすれば、必ず立ち直る。
菅直人首相のときに起こった震災だから、
菅直人に死ぬ気で復興までやらせればよい」
85歳になるのに、清水節は健在。
今回のパネルディスカッションは、
ディスカッションの形式をとらなかった。
各パネラーに自由に語っていただいた。
会長・副会長、論客の講演を、
ダイジェストスタイルで堪能した。
今回の講演会ダイジェストのキーワードは、
「使命感」だった。
小売業の使命感、
スーパーマーケットの使命感。
製造業や卸売業の使命感。
その製配販の使命感。
経営者の使命感、店長の使命感。
働く者の使命感。
政治家の使命感。
平和堂の夏原さんが紹介したポール・クローデルの言葉。
昭和の初めごろ駐日フランス大使を務めた詩人。
第二次大戦の終わりに、パリで発言した。
「日本人は貧しい、
しかし高貴だ。
世界でただ一つ、
どうしても生き残って欲しい民族をあげるとしたら、
それは日本人だ」
私は仕事をする時の日本人の使命感こそが、
この高貴さを生み出しているのだと思う。
東日本大震災でもそれが発揮された。
そしてこの使命感と高貴さこそ、
復興・振興の原動力である。
コーディネーターとして、
今回は控えめな発言に徹した。
発言いただいたパネラーの方々にも、
聞いていただいた皆さんにも、
満足していただける場をつくることができたならば、
私も満足。
ご清聴を感謝したい。
その後はこれも恒例の懇親会。
会長、副会長、専務理事、そして私も並んで皆様をお出迎え。
次々と列をつくりながら、皆さんがご挨拶。
セブン&アイ・ホールディングス名誉会長の伊藤雅俊さん、
㈱菱食特別顧問の廣田正さん、
社団法人新日本スーパーマーケット協会副会長の増井徳太郎さん。
増井さんは㈱紀ノ国屋ファウンダー。
会場入口で早速、記念のショット。
来賓あいさつは農林水産省大臣の鹿野道彦さんと、
経済産業省副大臣の松下忠洋さん。
それぞれにスーパーマーケットの震災対応への感謝を口にした。
そしてハイライトは川野会長の挨拶。
私が大好きなのは次のフレーズ。
「スーパーマーケットが、
『スーパー』の本家であるとのプレゼンスが、
今回の震災で示された」
スーパーマーケット協会長として、
これ以上の言葉はない。
乾杯のあいさつとご発声は、
㈱菱食会長の中野勘治さん。
この日は「菱食」最後の日。
7月1日からは「三菱食品」に商号変更される。
「震災で製配販の絆が確立された。
政治の世界と違って実務の世界は、
言ったことは成し遂げなければならない」
中野さんの辛口の挨拶はとてもよかった。
挨拶を終えた中野さんと写真。
そして懇親。
イオン㈱の岡田卓也名誉会長。
この日は、ずいぶん長くお話しさせていただいた。
面白かったのは、
中国共産党総書記の胡 錦濤の話。
精華大学での講演を岡田さんも聞いたそうだが、
胡が強調したことは、二つ。
「道徳とイノベーション」
日本の政治家で、
「道徳を説くものはいない」
「だから今、ブームは孔子とドラッカーだ」
『店ドラ』へのお褒めの言葉。
心から感謝。
それから川野会長と清水名誉会長。
今日は長時間の会合。
さらにチェーンストア協会長としての連日の激務。
さすがに椅子に腰を下ろしたが、
清水さんは本当にお元気。
伊藤雅俊、岡田卓也、清水信次。
やはり「化け物級」。
この日の懇親会では、被災地支援のため
東北の食材を使った料理が供された。
岩手県産の牛乳をつかったグラタン。
福島県産の野菜。
「食べて応援しよう!」のメッセージがいい。
川野会長と日本調理師協会の代表の関幸雄さん。
私は前日の29日に、
㈱平和堂のアメリカツアーをコーディネートして、
帰国したばかり。
夏原平和さんに団員の活躍ぶりを報告した。
齋藤充弘さんと㈱ライフコーポレーション社長の岩崎高治さん。
久々にお会いする㈱いなげや社長の遠藤正敏さん。
今度、伺います。
そして協会の前専務理事の並木利昭さん。
ライフコーポレーション常務取締役。
並木さんとは言葉はいらない。
現役専務理事の大塚明さん。
お疲れ様です。
大塚さんとも言葉はいらない。
コーネル・ジャパン「伝説の第1期生」江崎グリコ㈱の渡辺武さん。
日経MJデスクの白鳥和生さん。
最後にホテルのロビーで、
拓殖大学商学部教授の根本重之さん。
それ以外の方々にも、
たくさん会ったし、話もした。
名刺交換もした。
すべての皆さんに、感謝したい。
帰国翌日にしては、
私、頑張った。
「自分を褒める」などとは書かないが。
<結城義晴>