今年の7月のイサカ。
ほんとうに暑い。
外は38度。
地球温暖化を、
このニューヨーク州の北の地で実感しようとは。
これからしばらくのブログは、
このニューヨーク州と日本との二元中継となる。
前編・イサカ編。
朝6時半の部屋からの景色。
左を見て、右を向いて。
まるでおとぎの国のようなキャンパス。
しかも広大。
宿泊とセミナーは、スタットラー・ホテル。
1階ロビーから奥に入る。
そしてコーネル・ジャパンのセミナー室。
今年は、階段教室。
朝8時、昨日の長旅をものともせずに、
「実行の第3期生」が席に着く。
いよいよ始まる。
イサカでの講義。
もう3度目となる同時通訳のお二人。
最初に副学長が出て、
お二人に拍手。
早速、講義。
講師はコーネル大学教授のビル・ドレイクさん。
テーマは「世界食品産業の課題と潮流」
ひとことで、素晴らしかった。
講義が終わってから私は、
ドレイク先生に言った。
「大きな刺激と強いインスピレーションを受けました」
この言葉通りの内容だった。
世界のトレンドは、
①都市化
②飽和
③景気後退
④食品価格の高騰
このあたりは昨年のロッド・ホークス先生の講義と、
ほぼ同じトレンド。
1年でそれほど大きく傾向が変わるわけではない。
この潮流の中で、
まず世界最大の企業ウォルマートは、
どう変わったか。
ウォルマートが世界で展開するバナー。
ウォルマートといえば、
チェーンストアの代表。
だが、そのチェーンストア代表は、
シングルフォーマット&シングルバナーではない。
そして最新フォーマットの「ウォルマート・エクスプレス」。
昨年のホークス先生は、
プロジェクト・インパクトを語った。
しかしそれから1年、
ドレイク先生は、
「Walmart’s Strategic”Flip Flop”」と表現した。
戦略転換のことだが、意味は、
「戦略の右往左往」といったところ。
しかし現場を見続けている限り、
私は大きく振れてはいるが、
「適切な修正」だと思う。
その証拠に今年ウォルマートは、
150億ドルのフリー・キャッシュフローを計上する。
それに対してスーパーマーケットの姿勢は、
「ハイパー・ローカル」
ほんとうに地域に密着して、
ウォルマートにできないことをやる。
それが可能である。
そしてドレイク先生は、
「Independent Supermarket Companies」の強みを、
強調した。
これは「非上場オーナーシップ経営の強み」と言い換えてよい。
これが新しい視点。
私が刺激を受け、
インスピレーションを感じたのはこの点。
帰国してから、深く考察し、結論を出したい。
HEBもウェグマンズもコボーンズも。
そしてその「非上場オーナーシップ経営」の5つの柱を、
きれいに解き明かし、
ドレイク先生の講義は終了。
最後に質疑応答で、
多くの質問に答えてくれた。
ビル・ドレイク先生に心から感謝。
やはりコーネル大学食品産業学部は、
世界最高峰です。
ドレイク先生の3時間45分の講義が終わると、
昼食。
ビュッフェ・スタイルだが、
食いしん坊にはたまらない。
満足顔の第3期生。
食事だけではなく、
講義内容に満足した顔つき。
昼休みを絡めて、
私は修了証書にサイン。
毎年、墨と筆で署名し、落款を押す。
午後の最後の講義は、
コーネル・ジャパン学長
エドワード・マクラフリン先生。
テーマは「流通業の未来を予測する」
マクラフリン先生は、あらかじめアンケートを出し、
その回答をデルファイ・テクニックによって分析し、
質疑応答しながら弁証法で講義を進める。
デルファイ・テクニックとは、
回答者グループが有する経験的判断や直観的意見を、
アンケートを使って、組織的に集約・洗練する意見収束技法。
一昨日まで行われていたサマースクールで、
主にアメリカ人のデルファイ分析をしていた。
それに日本の31人の回答を重ね合わせ、
未来予測を展開するという趣向。
①2014年までに実現する
②2014年以降実現する
③実現しない
28の質問事項にこの三つの回答をする。
その結果を%集計し、なおかつ中身を議論しながら、
未来予測を展開する。
例えば、
1 食品産業においてPOSデータは、
ほぼすべての棚割計画や仕入れ意思決定の基礎となる。
この質問に対して、
日本の回答は①61.3%、②12.9%、③25.8%。
アメリカは①56%、②39%、③4%。
この結果をどう読むか。
2 遺伝子組み換えの農産物を、
国内スーパーマーケットが取り扱う。
こんな内容。
面白かったし、エキサイティングだった。
もっと時間がほしかった。
マクラフリン先生の講義は、2時間ほどで終了。
心から感謝。
そしてコーネル・ジャパン名誉学長のジン・ジャーマン先生と、
学長のマクラフリン先生のツーショット。
お二人のおかげで、
コーネル・ジャパンは第3期まで、
予想をはるかに超えた発展をすることができました。
ありがとうございました。
後編・横浜編。
日本では昨日の21日午後、
㈱CFSコーポレーション「2011年CFS絆の会」が開かれた。
場所は横浜プリンスホテル。
会場入り口ではCFSの取り組みパネルが掲示されている。
CFSは2010年8月、
スーパーマーケット事業部門をイオンに譲渡し、
ドラッグストア単一企業となった。
その中期3カ年計画の発表を兼ねた会場は、
取引先で埋まった。
来賓のあいさつは、
はじめに大正製薬㈱会長兼社長の上原明さん。
「東日本大震災で日本人の立ち居振る舞いが見直され、
生き方、暮らし方が変わった。
女子サッカーが優勝し、励みになる団結力を見せられた。
震災は物質的にも、精神的にも影響を与えた」
そのうえで、生活者、流通、小売り、行政の時代の変化を読み解きつつ、
「小売店は、専門知識を持った生活者に対し、
店頭での会話力、情報・ソフトウェアのある陳列が必要」と語った。
次いで、㈱Paltac社長の折目光司さん。
「大震災で、地域とのつながり、助け合い、人との絆を改めて感じた。
CFSは人が特徴。地域医療の拠点として、頑張ってもらいたい」
最後はイオン㈱岡田元也社長。
「何百という会社が震災から多くのことを学んだ。
私は二つを学んだ。
一つは現場の活躍。
もう一つは共有する企業の価値観の重要性」
「イオングループは東北で2万7000人、
北関東で3万人の従業員がいる。
残念ながら20名が亡くなった。
しかし震災当日、皆が活躍し、お客様を無事に避難させた。
石巻店は、現場の判断で上層階に2000人のお客様を誘導し、
2週間にわたって、避難所として提供した。
マニュアルや規則にないことを、すべて現場で判断し行動した。
普段から、共有する価値観があったからだと思う」
「小売業は地域産業、人間産業、平和産業。
そのことを再認識した」
「イオンは3つのシフトで3カ年計画をスタートした。
アジアシフト、都市シフト、シニアシフト。
グループ全体では、『純化』がテーマ。
一つの組織、企業体を純粋化していくということ。
成長が低下し、焦点が拡散している。
マーケットからはより高い『専門性とイノベーション』が求めらている。
たとえばイオンリテールはIT開発、トップバリュ開発をイオンに移管し、
GMS運営会社として専門性とイノベーションを目指していく」
最後は石田岳彦社長によるCFSの政策方針発表。
イオングループのHB&Cの中核企業として
2011年4月からの中期3カ年計画が45分にわたって語られた。
180店の新規出店によってドミナントエリアの強化と中部3県への進出、
PB商品販売の強化、CRMによるロイヤルカスタマーづくり、
本社コスト15%削減を柱とする構造改革などが進められる。
その後、場所を変えての懇親会。
乾杯のご発声は、
花王カスタマーマーケティング㈱の髙橋辰夫社長。
あいさつを終えた髙橋社長と㈱大木の松井秀夫社長。
お二人ともいい笑顔。
左から流通ジャーナルの加藤英夫主幹、
三菱食品㈱特別顧問の廣田正さん、
㈱CFSコーポレーション専務取締役の君澤安生さん、
そしてここでも、松井社長。
最後に石田健二名誉会長のお礼のあいさつ。
「1970年代、絆の会でアメリカを視察したことで、
スーパードラッグストア開発に至った。
同質化競争の中から抜け出し、新たなドラッグストアを
若い経営陣で築いてもらいたい」
お元気そうな姿。
ご登場の皆さんには、毎月、
『月刊商人舎』ブログレビューという小冊子をお送りしている。
石田名誉会長もご愛読くださっている。
「右左、上下、どっちを向いても感謝」
<結城義晴>