昨日のブログの訂正とお詫び。
朝日新聞一面トップ記事から拾って、
菅直人首相が「経産省事務次官ら3首脳更迭」と書いた。
しかしこれは事実とは違っていた。
今日の日経新聞が「一部報道」と言いながら、
朝日の間違いを指摘。
海江田万里経済産業相の緊急記者会見のコメント。
「首相が決めたわけじゃない。私が決めたんだ」
「言うまでもないが、人事権者は私だ」。
「あまりにひどい。腹に据えかねる」
みたびか、よたびか、いくたびか、
声を震わせた。
菅首相は「経産官僚のトップ更迭で指導力を印象づけようとしている」
海江田は「ひきょうだ、こそくだ」と吐き捨てる。
首相と経産相の溝は、
毎日のように深まって、
政権の末期症状。
日経の似顔絵入りの揶揄の仕方が面白い。
情けないことだが、これが、
我が総理大臣と経済産業大臣の関係。
日経新聞コラム『大機小機』
コラムニスト一直氏が、
公表された経済財政白書に関して反論しつつ、
「需要・供給・成長」を書く。
今年の白書の焦点は、
「大震災後の日本経済の成長条件」。
しかし「分析対象が供給力に偏りすぎで、
問題の本質をとらえそこねている」。
明確な、その問題意識とは。
「労働力の減少は経済成長の制約要因の一つではあるが、
労働力1人当たりの生産性こそが重要であり、
生産性の持続的上昇を可能にする環境をつくり出すことが
経済政策に期待される基本的な役割である」
しかし白書の分析そのものに問題がある。
「経済の中長期的な成長力は供給力に制約される」
この伝統的な成長論の考え方で一貫している点。
しかし伝統的成長論では、
白書は言い訳を分析しているに過ぎない。
一直氏は、ケインズの「一般理論」から、
「アニマルスピリット」を持ち出す。
その「アニマルスピリット」の定義。
「将来にしか結果が出ず、
その結果も確率計算ができない不確かなことでも
積極的になそうとする人間本来の衝動」
企業の現状が、
この「アニマルスピリットの欠如」にあると指摘。
結論は、
「経済成長は供給力が決めるというより、
規制削減やイノベーションが
需要の持続的拡大を生みだし、
それが供給力をリードしてゆくと考えるべき」
私も賛成。
知識商人も「アニマルスピリット」を、
持つ必要がある。
もう一つ。
日経「文化欄」の「8・15からの眼差し 震災5カ月」
戦後思想の巨人・吉本隆明も86歳。
その吉本にインタビュー。
敗戦直後は、
「人々も町中の印象も、どこか明るくて単純だった」
しかし今回の震災後は、
「何か暗くて、
このまま沈没して無くなってしまうんではないか、という気がした。
元気もないし、もう、やりようがないよ、という人が
黙々と歩いている感じ」
復興への道は、
「労働力、技術力をうまく組織化することが鍵を握る」
なにかドラッカーのようだ。
「規模の拡大だけを追求せず、
小さな形で緻密に組織化された産業の復興をめざすべきだ」
ここがいい。
「疲れずに能率よく働くシステムを
どうつくっていくか」
「組織内で生かす知恵が問われている」
さらに「原発廃絶論」に対して。
「原発をやめる、という選択は考えられない」
原子力の問題の「原理」を吉本はこう語る。
「人間の皮膚や硬い物質を透過する放射線を
産業利用するまでに科学が発達を遂げてしまった」
そこで、吉本流原発論。
「燃料としては桁違いにコストが安いが、
そのかわり、使い方を間違えると大変な危険を伴う。
しかし、発達してしまった科学を、
後戻りさせるという選択はあり得ない」
「それは、人類をやめろ、というのと同じです」
そこまで言うか?
「だから危険な場所まで科学を発達させたことを
人類の知恵が生み出した原罪と考えて、
科学者と現場スタッフの知恵を集め、
お金をかけて完璧な防御装置をつくる以外に方法はない」
吉本隆明がこう言い切ったことは覚えておいてよい。
そしてそれぞれの生き方。
「全体状況が暗くても、
それと自分を分けて考えること」。
「僕も自分なりに満足できるものを書くとか、
飼い猫に好かれるといった小さな満足感で、
押し寄せる絶望感をやり過ごしている」
この辺りは私と同じ。
「公の問題に押しつぶされず、
それぞれが関わる身近なものを、
一番大切に生きることだろう」
みなさんは、いかが?
さて今日は、横浜の商人舎オフィスで対談。
お相手は、平野健二さん。
㈱サンキュードラッグ代表取締役社長。
平野さんは1959年生まれ。
ドラッグストア業界きっての理論家として知られる。
本部は福岡県北九州市門司区にある。
店舗は2011年3月末現在で、
ドラッグストア36店舗(うち調剤併設25店舗)、調剤薬局24店舗。
つまり調剤重視の会社ということ。
売上高は183億6457万円。
平野さんは今年5月単行本を上梓した。
『これからのドラッグストア・薬局ではたらく君たちに伝えたいこと』
(㈱ニュー・フォーマット研究所刊)
通称、「これドラ」。
この本がすこぶる良い。
現役経営者の手になる本としては、
ドラッグストア業界では随一。
小売業界に広げてみても、
そうあるものではない。
私の『店ドラ』が発刊されたのも5月。
そこで「『店ドラ』×『これドラ』」対談が企画された。
メディアは『月刊マーチャンダイジング』。
今日は宮崎文隆編集長も同行して、
対談はスタート。
互いに相手の本の感想を述べ合ってから、
本題に入る。
私は平野さんのドラッグストア業界に対するものの見方が、
まず、気にいった。
というか同感した。
平野さんはコモディティとパーソナルケアとに分ける。
スーパーマーケット業界では、ヤオコー会長の川野幸夫さんが、
コモディティとライフスタイルに分ける。
私は「コモディティとノンコモディティ」に分類している。
さらに平野さんは、ローカルチェーンの強みを主張する。
私もチェーンストアの基礎単位は、
ローカルチェーンであると確信している。
そのうえで日本では江戸時代の「藩」単位に、
生活文化が出来上がり、今も残っていて、
だから藩単位のローカルチェーンが強いと考えている。
さらに平野さんは「狭小商圏主義者」である。
そのとりわけ狭い商圏内で、
「明確な来店目的を持った少数顧客」をつかむことで、
ドラッグストアの最強のフォーマットができると考える。
私の掲げる客数主義は、
同一顧客の来店頻度が高まる方向で実現される。
そのうえで平野さんは顧客データ付ID-POSシステムの使い手である。
私が非常勤取締役を務めるカスタマー・コミュニケーションズ㈱は、
まさにこの面でのマーケティング会社である。
平野さんはID-POSデータをもとに、
「潜在需要発掘研究会」を毎月、開催している。
ここにはメーカーが56社集まって、
熱心に仮説を立て、それを検証し、
店頭起点のマーケティング活動を展開している。
そんな話が連綿と続き、
あっという間に90分。
宮崎編集長が突如、
「では最後にご自分の本の執筆目的を述べて、
終わりにしてください」
互いにロマンとビジョンを語って、
対談は終了。
私は、心から爽快な気分になった。
この対談の詳細は、
『月刊マーチャンダイジング』10月号に掲載される。
商人舎ホームページでも、
結城義晴の対談シリーズで掲載予定。
乞う、ご期待。
対談が終わって、
互いに著書にサインをして交換。
そして並んで、写真。
平野さんも私も、福岡生まれの同郷人。
固い握手。
平野さんと宮崎さんに、感謝。
今日は午後、東京・池尻の東邦大学付属病院で、
恒例の検査と診察。
左右ともに眼圧14で、良好。
専属の北幸喜先生が言う。
「いい状態です」
「ところで結城さんは、本を書くのですか?
新聞に広告が載っていました」
私はここで、
ドラッカーのナレッジ・ワーカーとテクノロジストの話を展開した。
この病院で手術をしてもらった2008年3月、
私はドラッカーの『ポスト資本主義社会』を読みつつ、
病院で働く医師・看護師などの仕事が、
21世紀の商人やビジネスマンにつながるものだと実感した。
そんなことを北医師に話しながら、
平野さんとの対談を思い出していた。
「全体状況が暗くても、
それと自分を分けて考えること」。
「公の問題に押しつぶされず、
それぞれが関わる身近なものを、
一番大切に生きること」
吉本隆明の言葉も、頭に浮かんでいた。
<結城義晴>