「世界的な株安、止まらず」
今朝の全紙の一面トップ。
アメリカ・ヨーロッパのデフォルト問題に端を発した株安。
私など株式市場中心の経済を何とかすべきだと考えてしまう。
今朝の日経新聞『大機小機』。
「大学を人材育成の場とせよ」
コラムニストの癸亥氏が、
何とも当たり前のタイトルで書いている。
今更、大学を「人材育成の場にせよ」とは?
大学が「人材育成の場」ではないから、
こんなことがタイトルになる。
「日本はこの20年間、まったく成長していない」
癸亥氏、ひどく悲観的。
「日本が誇れる資源は、
水と森と海洋であり、
人材である」
「しかし、その人材もこのままでは劣化する」
「大学の4年間は多くの文系の学生にとって遊びでしかない」
「このため、実社会に出て役に立つ基礎能力が身につかない」
「現在、大学は半期で1講義あたり、
15回の授業を要請されている。
しかし、学生は授業を欠席するか、
出席しても勉強しない」
私も立教大学大学院で、
15回×2時限(3時間)を前期の単位として教授している。
そして私の院生はめったなことで欠席しない。
「片方でそんな学生に授業アンケートを実施し、
その回答結果が重視される」
これは教員にとって、辛い。
「本来の大学教育とは、学生の潜在的能力に磨きをかけ、
幅広い知識と専門能力を習得させることにある」
では、どうすれば現状を打破できるのか。
「大学入試を基本的な知識と潜在的な能力だけを測るものとし、
門戸を広げる」
「その代わり、入学後の進級要件を厳格にする」
よく言われるアメリカ方式。
「学力が講義で要求される水準に達しなければ、
決して単位を与えない」
「教員の充実とより多くの予算が必要」とまとめる。
大いに賛成。
しかし、そんな現状でも、
しっかり学んで卒業してくる学生はいる。
彼らをこそ、信じたい、生かしたい。
さて昨日は、
立教ビジネスデザイン科・結城ゼミ夏合宿の三日目。
午前中、各自、自習して、昼前にまとめ。
それから鴨川の亀田メディカルセンターを訪問、見学。
感動した。
ホスピタリティにあふれた総合医療サービス機関として超有名。
しかしアメリカで一般的なIHNの考えを採用した医療機関である。
Integrated Healthcare Network。
南房総地域の医療充実をめざし、
多様なネットワークサービスを展開する。
その根本にあるのが、
「患者さま」と呼ぶ姿勢。
2005年に誕生したカスタマー・リレーション部が、
この考え方を先導する。
亀田メディカルセンターは主に3つの機関で成り立つ。
急性期医療の亀田総合病院。
外来診療の亀田クリニック。
そして亜急性期医療の亀田リハビリテーション病院。
ここには全31科と100の診療室があり、
総ベッド数は1000床、医者400人、
看護師など職員を入れると総勢約3000人。
すべての機関が「患者さま」と呼び、
「カスタマー」ととらえる。
敷地内には、亀田医療技術専門学校もある。
立体駐車場があり、
月曜日なのに満車状態。
私たちは、カスタマー・リレーション部の山田剛士さんから、
40分ほどレクチャーを受け、質疑応答をしてもらい、
さらにメディカルセンター内のツアーをしてもらった。
医学は一人でできるが、
医療サービスは患者や地域との協働によってしかできない。
商品が顧客との協働によって販売されるのと同じ。
「医療の最終成果物」は何かと考えると、
それは「死」である。
だから亀田メディカルセンターは、
プロセスを重視しようと考えた。
したがってISO9001をとっている。
例えば、亀田は「個室病棟」にこだわる。
現代社会において、個室でないのは、
病院と刑務所だけといってよい。
いまやビジネスホテルでも、相部屋はない。
ところがサラリーマンも、
病院に入院すると相部屋で、
カーテン一枚で仕切られた空間で我慢させられる。
亀田は考えた。
病院だからこそ安らげる環境づくりが必要だ。
一番安らげるのは、
会いたいときに会いたい人と会えること。
医療にはこれが必要だった。
「リゾートは非日常、しかし病院は日常」
だから「安価な個室ビジネスホテル」並みの環境を整え、
価格を提案する。
「まず当たり前のことを当たり前にやろう」という発想が、
亀田メディカルセンターにはある。
しかしこれは医療業界から見ると、
非常識そのものだった。
地域医療ネットワークの質を上げるには、
顧客は内部の先生、業者、
さらに製薬メーカーや医療機器メーカーと考える。
彼らと地域医療連携の構築をめざし、
患者を中心に連携する。
病院長直轄・3人の専従でスタートしたカスタマーリレーション部には、
3つの使命があるが、その第一が、
「患者様満足向上にサービス業務を通じ貢献する」
もう、ホスピタリティ産業そのもののコンセプト。
私は山田さんの話を聞いているだけで、
心から嬉しくなってしまった。
いつも商売の話をしていることと全く同じ。
巣鴨信用金庫の田中実さんと同じ、
トレーダー・ジョーの店長たちと同じ、
ウェグマンズCEOのダニー・ウェグマンと同じ、
ナゲット・マーケットのフロントエンドマネジャーと同じ、
ウォルマートのマーカス店長と同じ・・・・・・。
そして医療サービスの世界だけに、
この領域特有の障害があったし、
イノベーションがあった。
それは細かな改善・改革の継続であった。
「イノベーションは、つまるところ、
経済や社会を変えなければならない」
ピーター・ドラッカーの言葉が、
私の胸をいっぱいにしていた。
(つつきます)
<結城義晴>