結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2011年08月23日(火曜日)

「公平と不公平」のオクシモロンの問題解決を果たすのは「機縁」と糸井重里は言った!

残暑が残るというものの、
一雨ごとに秋がやってくる気がする。
昨日は横浜の商人舎オフィスで、
窓を開け放って仕事した。

蝉の声が耳をつんざくほどに響いたが、
不思議なもので、しばらくしたら、慣れる。

私は、40代の終わりからメニエル氏病で、
いつも、耳がシンシンと鳴っているから、
蝉の声はそれを掻き消してくれて、
むしろ快適ささえ感じる。

ちょっと自虐的ではあるが、
そんな短い、季節の隙間。

残暑 お見舞い申し上げたい。

さて昨日は夕方に、
㈱イースト・プレス書籍1部の中西庸(よう)さん来社。
20110822224937.jpg
ご存知『店ドラ』の担当編集者。
『店長のためのやさしい《ドラッカー講座》』
お陰様で、書店でも売れ行き好調です。
「ドラッカー・コーナー」におかれるといいのだけれど、
どうしても小売り・サービス、販売・営業などの書籍売り場に並ぶ。

それでも、読者は見つけて買ってくれるそうだ。
ありがたいことです。

もっともっと、アピールして、
この本の値打ちを広めたい。

ふたりして、そう、誓い合った。

中西さんは、最近担当した『論語』など、
新刊本を持ってきてくれて、そのうえで情報交換。

来年の春に向けて、
新しい本の執筆に取り組むことにした。
楽しみにしてください。

さて、「ほぼ日」。
糸井重里さんが主宰するサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」

考えてみると、「もしドラ」にしろ「店ドラ」にしろ、
「ほぼ日」にしろ、つづめて表現するのが心地よい。
そんな語感の時代に入っている。

[毎日更新宣言]はさしずめ「マイ宣」」だろうか。
その「ほぼ日」の巻頭言は、
「今日のダーリン」とタイトルされている。

昨日の巻頭言は良かった。

糸井さんは今年、ずいぶんと、
「公平・不公平」について考えた。

「なんでも公平であるべきだ‥‥よく言われます。
不公平はよくない‥‥正しいのだと思います」

「ただ、ほんとうに悩ましいのは、
原理主義的に公平を実現しようとすると、
どんどん減っていってしまうものがあるということです」

これが問題意識。

鋭い。

被災地に送られた救援物資、支援物資の話。
「公平に配れないから、配らない」

「50人の人がほしいものが、35しかなかったら、
それは配るわけにはいきません」

こんなことが、「きっとあちこちであったでしょう」

糸井さんは言う。
「あなたが『配る立場』になったときに、
どうするだろうか、ということも考える必要がある」

そこで、論理は展開する。
「35人の人をよろこばせることと、
15人の方々の不満について『なんとかする』ことと、
両方ができるような方法があるか‥‥というわけです」

これが私の強調する「オクシモロン」
オクシとは鋭い、賢いという意味のギリシャ語、
モロンは鈍い、愚かだとう意味。
それらを合わせて、オクシモロン。

「創造的破壊」「ヘタウマ」など、
現代の問題解決のカギを握る考え方。

糸井さんは再び語る。
「『配らない』と思考停止するのではなく、
15人の人がよろこべる方法は、ないものだろうか?
そういう考え方が求められているんだと思うのです」

最初からの思考停止が一番よくない。
ただし、「ほんとうは『公平』とか『平等』って、
神様仏様にも出来てないことなんですよね」

そこで糸井さん、結論に近づく。
「そういうことについて『機縁』ということばで、
説明した坊さんがいました」

「ある命を救うことができた『縁』もあるし、
ある命を奪うことになった『縁』もある‥‥」

「できないことを追いかける」のではなく、
じぶんのその立場で目の前の「できることを、する」

これは、東日本大震災の時の、
ヨークベニマル物江信弘店長と全く一緒の心境。
「自分にとって今、できることは何か。
お客様のために今、できることは何か。
それだけを考えていた」

オクシモロンの問題解決のひとつが、
「機縁」。

大きな収穫。

そういえば、㈱カスミ会長の小濵裕正さんが言っていた。
「バイヤーは100店全店に並べる商品ばかり追いかけて、
100店のロットに至らないものは視野に入らない。
チェーンオペレーションの行き過ぎた弊害です」

「公平」と「顧客の喜び」「店の役割」。

オクシモロンと「機縁」で解決の方向が見えた。

さて日経新聞「消費欄」。
「店内に設けたベーカリーで販売する『焼きたてパン』の人気が高まっている」
つまり「インストアベーカリー」の人気が上昇しているという記事。

それは東日本大震災の影響。

製パンメーカーは、原材料価格高騰で値上げに踏み切った。
しかしスーパーマーケットはほとんどの企業が価格を維持した。
さらに震災直後も、品切れはなかった。
「頼りになった」
いなげや練馬上石神井南店を訪れた50代の主婦の言。

いなげやでは震災以降、5月まで、
インストアベーカリーの売上げが2割増。
6月以降も2~3%の伸び。
一方、メーカー品は前年割れが続く。

現在、メーカーの食パンの価格帯は、
特売にかけられることもあって150円程度。
スーパーマーケットの「焼きたての食パンは250円程度」

価格差はある。

しかし、ブランドスイッチが起こりつつある。

サミットは全99店のうち、51店にベーカリーを導入。
7月の売上げは前年比5%増。

ヤオコーも震災前までは前年割れだったが、
「足元は前年実績を上回っている」

スーパーマーケットのインストアベーカリー。
震災と製パンメーカーの値上げが、
追い風になって、やっと利益が出る体質がつくれるか。

これまで確かなニーズはあった。
しかし営業利益が出なかった。

それが売れてきた。
売れれば売れるほど、
ロスは減るし、
コスト率は下がる。
少しだけ安くも売れる。


そして利益が出る。

オクシモロンの問題解決に悩んでいたインストアベーカリー。
チャンス到来。

震災が機縁をもたらしたかもしれない。

頑張れ、インストアベーカリー。
ナンバ君も。

<結城義晴>

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