「お客の支持を得る店は、
レベルが高い低いよりも、
そのレベルが高くなろうとしている店、
高くなりつつあるのがお客にわかる店なんだよ」
昨日のブログで報告した宇都宮クリニックの最中、
10店以上の店を回りながら、
流通仙人の杉山昭次郎先生が漏らした言葉。
さすがに流通仙人、
プロのコンサルタント、
商人舎最高顧問。
このクリニックは、毎年の夏の恒例行事。
現在は私が座長を務める商業経営問題研究会だが、
もともとは杉山先生が座長だった。
84歳になりながら、
「試行錯誤することが成長の源だ」と、
仙人は最近、気が付いた。
その含蓄のある言葉。
レベルが高まりつつある店。
レベルアップがお客にわかる店。
小さくともよい。
日々、レベルが上がっている店。
クレイトン・クリステンセンの持論。
「持続的イノベーション」
その意志をもつ店、
それが顧客にわかる店。
店に限らない。
人間や組織にも、
このことは当てはまる。
自分の部下でも、
自分の学生でも、
友人でも知り合いでも、
もともとのレベルが高い者は、
それはそれで評価する。
しかし、低い者が、
努力をして自分を高めようとしている。
実際に、努力によってレベルが上がってきた。
そんな人間、
そんな組織が、
私は好きだ。
これまでも好きだった。
これは私に限らず、
店に対する顧客の評価にも通ずる。
逆に停滞している店、
レベルダウンしている店。
お客は、そんな店から去っていく。
商品の品質や鮮度でもよいし、
クレンリネスでもよい。
プロモーションでも、
ホスピタリティでもよい。
セブン&アイ・フードシステムズ社長の大久保恒夫さんは、
「まず、挨拶」と言う。
挨拶のレベルが、
店全体で、
グングン高まっている店。
「挨拶」は誰にもそれが、よくわかる。
必ず、地域のお客から支援してもらえる。
さて昨日から、
コーネル大学RMPジャパン第3期の補講。
東日本大震災で延期となっていた情報システムと物流問題。
今年も埼玉県川越駅に集合し、
バスでヤオコーの狭山物流センターに移動。
センター内の会議室をお借りしての講義となった。
第一講座の講師は㈱プラネットの玉生弘昌社長。
「流通業界におけるITシステム活用の常識」。
東日本大震災で、
情報や物流のシステムは多大な被害をこうむった。
その前提に立った講義となった。
まずセシウムをはじめとする放射線汚染の誤解、
そして正しい知識の必要性。
専門家の内容をわかりやすく語ってくれた。
次に事業継続を脅かすさまざまな危機に、
いかに対処すべきか。
中央集権より現場自立、
中央依存より相互依存、
そのための現場力の条件、
こうしたことを整理したうえで、
日本の流通におけるネットワークの進展、
より良いEDIを実現させるための標準の三要素、
そして情報システムのレガシー問題とオープン系の問題。
自らの体験や実績をもとに、
これ以上ないというほどにわかりやすい講義が展開された。
私が最後に、CIOの必要性を付け加えさせていただいて、終了。
CIOとはチーフ・インフォメーション・オフィサー。
情報担当取締役のことだが、
役員の中に一人、専門家が必要となる。
玉生さんの持論でもある。
講義を終えた玉生さんを囲んで、
荒井伸也首席講師と写真。
控室で荒井先生から質問。
「経営者はいつ、どんな時に。
情報システム投資をしたらよいのか」
玉生さんの答えは、
「そのためにCIOが必要」というもの。
情報の専門家を経営者に育てるか、
経営者が情報リテラシーを学んでCIOになるか。
道は、どちらかしかない。
それがコンピュータ・リテラシーの問題だ。
すなわち、コンピュータを読み書き算盤のように使いこなすこと。
決して難しいスキルではない。
玉生社長を、
ヤオコー顧問の大塚明さんが送ってくれた。
日本スーパーマーケット専務理事。
大塚さんもコーネル・ジャパンの講師。
第二講座の講師は、臼井秀彰さん。
チェーンストアの物流コンサルタントの第一人者。
「スーパーマーケットのロジスティクス問題」がテーマ。
ロジスティクス戦略の立案、
センター開設の目的と課題などを、
実務的な視点から話してくれた。
センターフィー問題は数値を示しながら課題を指摘。
小売業は、物流機能を事業に加えた新しいビジネスモデルを作るべきだ。
これが臼井さんの主張。
私は講義の初めに「真摯に受け止めてほしい」とくぎを刺した。
第三期生はどのように受け止めただろうか。
そしていよいよ、ヤオコー物流センターの視察。
はじめに大塚明さんからの解説。
さらにヤオコーロジスティックス推進部長の笠本秀之さんのコメント。
笠本さんは㈱ヤオコービジネスサービス常務取締役を兼務する。
そのうえで、物流センター運営に携わる皆さんが、
センター施設を案内してくださった。
ヤオコー狭山センターはグロッサリーセンターとチルドセンターからなる。
昨年12月に2300坪を増床し、3万7000坪に拡張。
現在、狭山センターでグロッサリーは64店舗、
チルドは47店舗に供給するが、
増床強化によって70店ほどにまでキャパシティが広がった。
そのセンター施設とオペレーションを、
2チームに分かれて解説してもらう。
小分けピッキングには興味津々の三期生。
3温度帯で管理されるチルドセンター。
ここでは精肉と鮮魚(おもにマグロ)の検質も行われる。
1時間ほどの視察を終えて、再び会議室にもどり、
それぞれの部門担当の方から詳しく説明していただいた。
最後に質疑応答。
三期生の質問に丁寧に丁寧に答えてくださった。
物流センター担当部長の本城宗尚さん、
グロッサリーセンター長の加藤さん、
狭山チルドセンター長の中下さん、
精肉マネジャーの水野尚さん、
鮮魚マネジャーの椿さん。
皆さんに心から感謝。
講義が終了したのは午後8時。
ヤオコーの皆さんもご一緒して、
近くの豆腐料理の「梅の花」で夕食。
お酒もいただき、みんなで談笑・懇親。
最後に副学長からのお礼の言葉。
「ヤオコーには持続的なイノベーションがある。
センターや物流に関しても、
1年間に、その変化がよくわかる」
「シンプルにシンプルに変わっている」
「このイノベーションこそ、
私たちがヤオコーから学ぶものだ」
流通仙人の言葉が、
ヤオコーの中で実現されている。
締めのご挨拶は笠本秀之さん。
「シャン・シャン・シャン、
シャシャシャン・シャン」の締め。
本庄の生まれで、
かの地の締め方だそうだが、
これもシンプルで、とてもよかった。
感謝をこめて笠本さんへ『店ドラ』をプレゼント。
そして固い握手。
すべての皆さんに、
心から感謝。
私は、
イノベーションを続ける者が、
大好きだ。
それを阻む者とは、
闘い続ける。
そんな意を強くした一日だった。
<結城義晴>