結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2011年09月10日(土曜日)

「福島産全早場米出荷可能」と「イオン、久慈サンマ全量買い上げ」と「味の素・ウォルマート取引開始」の新局面

良いニュースを二つ。

朝日新聞から、
「福島産早場米すべて出荷可能」。
福島県の調査結果の発表。

8月下旬から早場米の調査を始め、
20市町村の水田で計101サンプルを調べた。
いずれも国の基準値を下回った。
国の基準とは、
1キロあたり500ベクレル。

最後に県内4市町で収穫した早場米を検査、
国の基準値を超える放射性セシウムは、
検出されなかった。

これによって、
福島県内で収穫した早場米は、
すべて出荷が可能になった。

おめでとう。

もう一つはイオンの取り組み。
こちらは日経新聞。
「岩手・久慈で水揚げのサンマを全量買い取り」

イオンが提携したのは岩手県の久慈市漁業協同組合。
久慈市の漁港に水揚げされる北海道沖でとれたサンマは、
イオンによって全量、買い取られ、
東北・関東にあるグループ店舗で販売される。

目的は、大震災で被災した現地の漁業関係者の復興支援。
もちろん商売上もイオンには大きなメリットが生まれる。

第1は鮮度。

これらのサンマの店着は、
東北の店舗には水揚げの翌日、
関東の店舗には翌々日。

通常の市場仕入のサンマに比べると、
それぞれ1日早い。

第1回の水揚げは来週はじめの予定。
1回の水揚げ量は20~50トン、計7~8回。
10月中旬までに最大計400トンを買い取ることになる。

鮮魚として販売できない規格のサンマは、
現地業者がすり身に加工し、これもイオンが買い取る。

イオンは、宮城県石巻市の工場で生産したサンマのかば焼きなども、
プライベートブランドとして発売する。
当然ながら、全量買い取りが前提。

東日本大震災への支援をしつつ、
それが売る側、買う側両者のメリットにつながる。

近江商人の「三方良し」
売り手良し、買い手良し、世間良し。

これです。

さて、日経新聞の大きな記事。
「味の素、ウォルマートに販路」

味の素は、この9月から米国のウォルマート本体と取引を始めた。
これによって全米約2500店舗で冷凍食品4アイテムが販売される。

今月末、私はテキサス州とカリフォルニア州を訪れる。
都市にすれば、ダラス、サンフランシスコ、サクラメント。
ウォルマートを見る楽しみが一つ、増えた。
20110910172005.jpg
ウォルマートで販売するのは、味の素の米国ブランド「サムライ」
その鶏肉チャーハンとあんかけかた焼きそば、さらに「ミールキット」。
特にミールキットは、
「オレンジチキン」など米国定番メニューと米飯とを組み合わせた簡便商品。

各商品の容量は、1.15キログラム。
ウォルマートの定番に多い1箱3~4人分相当。

売価に関して、日経の記事では、
「店頭想定価格は9ドル前後となる見込み」とあるが、
おそらく8ドル98セントといった価格ポイントで、
リーチインケースでエブリデーロープライスで販売されるはず。
20110910172020.jpg
製品はオレゴン州の現地法人工場、
または中国・江蘇省の子会社工場で生産されている。

味の素全体の冷凍食品部門の売上高は、
2010年度で1095億円。

その海外比率は、数%。
ウォルマートとの取引を機に、
これを10%以上に拡大する計画。

このうちアメリカでの売上高は約65億円。
しかし米ドルベー スで年率1~2割の成長。
これを3年のうちに、100億円に乗せる。

そのためにまず、ウォルマートの店頭を押さえ、
次にクローガーやセーフウェイ、パブリックス、HEB、
そしてコストコ、ターゲットといった企業にもアプローチをかける。

米国でのアジア・エスニック風冷凍食品の市場は、
約800億円と試算される。
ここに日本食や中華料理、タイやベトナムのメニューが含まれる。
特にトレーダー・ジョーの売り場など見ているとわかるが、
この分野の成長率は年間5%の伸び率。

その理由は、アジア系・ヒスパニック系の住民の急増。
米国2010年国勢調査によると、
この10年間で、アジア系、ヒスパニック系ともに、
43%の増加。
日本人は増えてはいないが。

そしてアジア系、ヒスパニック系は、
日本食を大いに好む。

ウォルマートもそこに目をつけたということだ。
日本のメーカーは一部を除いて、
ウォルマートへの拒否反応が強い。

納入原価の買い叩きに遭うのではないか、
そんな被害妄想のようなところもある。
しかし丸裸の原価(ネットネットプライス)での取引は要求されるが、
いざ店頭に並んだら、当初の計画通りの売上げを達成する。
もちろんメーカーの利益も計画通りに生み出される確率が高い。

日本水産の垣添直也社長はそのことを述懐する。
ニッスイはアメリカに子会社の水産会社を持っていて、
その取引相手にはウォルマートとマクドナルドがある。

垣添さんは両社との取引に、
「計画通り」というメリットを見出している。

今回の味の素のウォルマートとの取引開始は、
日本の食品製造業が、
新しい戦略局面に入ったことを示していると思う。

日本独自の発達をし、
日本市場への最適化に専念してきたメーカー各社が、
国際化を目指そうとしている。

もちろんキッコーマンや伊藤園といった先行事例はあった。
その列に味の素が加わり、ウォルマートと取引を始めた。

国内空洞化と国際化との狭間の緊張の中で、
新しい局面が展開され始めた。

私は今日、明日と、
立教大学新座キャンパスで、
結城ゼミの合宿。

充実した時間を、
ゼミ生とともに過ごす。

ウォルマート店頭の「サムライ」ブランドとの対面を楽しみにしながら。

皆さんも、良い週末を。
今週も、結城義晴の[毎日更新宣言]、
ご愛読、感謝します。

<結城義晴>

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