昨日も、今日も、明日も残暑。
6日連続の熱帯夜。
関東地方は来週月曜日の「敬老の日」まで、
真夏日と熱帯夜が続く。
秋の運動会シーズンを控えて、
その練習中に児童たちに熱中症が頻発。
それでも、
秋の訪れをビンビン感じる。
変な陽気の日本、
変な具合の地球。
しかし氷河期などの長い長い歴史を思うと、
いまの地球や日本も、
連綿たる営みの、ほんの一瞬に過ぎない。
さて、またまた日経MJで恐縮だが、
先週金曜日の1面と3面に続く対談。
ファーストリテイリングの柳井正さんと、
日本マクドナルドホールディングスの原田泳幸さん。
ともに会長兼社長。
ずいぶん前のことになるが、日経ビジネスで、
吉野家の安部修仁さんと柳井さんが対談した。
私はその対談を思い出していた。
今回の対談のタイトルは、
「グローバルワン 目指せ」
マクドナルドはもう既に、
外食産業でグローバルワン。
日本法人も日本の外食産業で一番。
あらためてグローバルワンを目指すものではないが、
他の産業、企業に対してこう呼びかけるならばよいだろう。
ファーストリテイリングは、
世界第1のギャップを売上高でターゲットとし、
利益ではすでに追い越している。
日本のカジュアルファッション・チェーンとしては、
断トツのトップ。
原田さんは1948年生まれ、
柳井さんは1949年生まれ。
柳井さんは自ら創業トップ。
原田さんはアップルコンピュータジャパンから日本マクドナルドに、
華麗なる転身。
オーナー経営者と専門経営者。
ずいぶん違いがあるが、
ふたりは共感するものを感じたようだ。
経営の本質論を語り合うと、共通点が多い。
ほとんど共通している。
しかし経営のやり方は、
全く違う。
私は、そう見る。
このブログでは日経MJの内容とは反対に、
組織やリーダーシップ、経営に関するコメントから始めよう。
まず「経営の思い」は社員に伝わっているのか。
柳井さんは、
「(きちんと) 伝わっていたら、
すごくもうかっていますよ」
原田さんも、
「ちゃんと伝わってたら
売上げは倍ですね(笑)」
経営者の思いは、伝わりにくい。
だからそれを伝えることに努力する。
経営とはそれ以外にない。
柳井さんは、経営方針を、
「間接ではなく直接伝えない限りだめですね。
スーパーバイザーやブロックリーダーが中に入ると、
どうしてもバイアスがかかってしまう」
そう、組織はバイアス。
原田さんも、
「伝わらない最大の障害は、階層的な組織。
伝言ゲームではだめです」
柳井さん、
「私は全員経営と言っているんです。
商売の原点から考えたら、
小売業は店頭に立つ人が経営者だったら一番いいわけですね」
原田さん、
「おかしいと思ったら、
フラットなコミュニケーションが必要です」
経営はダイレクトなコミュニケーション。
しかし考えてみると、
会社の規模が小さいことは、
「強み」となる。
しかし現実的には、
規模が小さくて顔ぶれが変わらないと、
コミュニケーションの断裂が生まれたりする。
柳井さん。
「楽な仕事は一つもありません。
だけど、自分が面白いと思い、
世間が面白いと思ったことならば何でもできます」
そして言う。
「経営は総合芸術です。
苦しいことを面白いと思える人が、
経営者に向いているんじゃないですか」
原田さん「やっぱりやりがいですよ」
柳井さん。
「知らないことを知ろうと突き詰めることほど、
面白いことはないですよ」
柳井さんは、本当にストイック。
それがファーストリテイリングの特徴。
マーケティングで大切にしているもの。
柳井さん。
「消費者は
需要が少なくなればなるほど、
不景気になればなるほど、
注意深く消費するものです」
その通り。
現在がそれ。
「すると売れるものはすごく売れますが、
大部分のものは売れない」
すなわち「一極集中状態が起きます」
これも、しかり。
「ならば自社のブランドが、
一極集中に入るように目指さなければならない」
原田さん、
「今やっているのは、基本を徹底的に見直し、
質の良い経営オペレーションをつくることです」
「細かく言うと、客数を増やすために、
来店頻度をデモグラフィ(人口動態)別、時間帯別、地域別に見極め、
どこに力を入れるか決める作業です」
そのうえで、ヒット商品作りを語る。
柳井さん、
「ヒットを生むには、
(消費者の)期待を超えること」
原田さん、
「私もリサーチだけで商品計画を立てるな、と言っています」
サム・ウォルトンも言い残している。
「顧客の期待を超越せよ」
原田さん、
「ヒット商品は商品力だけでなく、
作り手の情報が相当影響します」
柳井さん、
「商品がどういうコンセプトでつくられたのか、
作り手は情報を持っているか、
といった目に見えない会社の生き方や姿勢が、
商品やマーケティングに表れていないと、
買ってもらえません」
経営の姿勢、会社の姿勢が、
商品に反映されてくる。
柳井さん、
「ブランド戦略も各国別に変えるのではなく、
グローバルワンチーム、グローバルワンカンパニーで、
推進するから強みが発揮できます」
原田さん、
「『世界で売れるもの』しか
『日本で売れるもの』になりません」
これはすごいことだ。
原田さん、
「マクドナルドであれば、
世界中で売れているのは、
ビッグマック、チーズバーガー、フライドポテト。
これらの商品は『ゴールドスタンダードメニュー』といって、
絶対に味付けを変えないことになっています」
柳井さん、
「わかっていない人は、
全体の1~2割に過ぎない部分を気にするんですよ。
本質的に8~9割は同じ」
「翻訳と一緒で直訳してはいけませんが、
マーケティングも伝えたい本質は、
全世界一緒であるべきです」
そしてブランドについて語る。
柳井さん、
「ブランドは企業そのものです。
ですから人も物も金も」
「極論すると店舗のトイレから
従業員の表情までブランドなんです」
「そうしたイメージや商品そのものを
評価してもらうことで買ってもらえます。
そうした全体像がはっきりしない限り、
売れません」
これを私は「ポジショニング」と呼んで、
いま、最も大切なものと考えている。
さて昨日はブルーチップ㈱の経営者お二人が来社。
宮本洋一社長と松浦克行常務。
宮本さんはこの7月31日に社長に就任したばかり。
宮本さんは商人舎発足の会の発起人のおひとり。
だから社長就任は自分のことのようにうれしい。
ブルーチップの経営は今後、
宮本・松浦の二人三脚で進められる。
これ、すごく、いいこと。
『店ドラ』に、
「心は燃やせ、頭は冷やせ」のメッセージを書いて、
プレゼント。
スーパーマーケットの顧客のために、
早くも新規事業を進めている。
周富徳さん監修の餃子、静岡の餃子、
秋田県八郎潟のお米など、
こだわりの商品を企画し加盟店に供給する。
場所を近くの居酒屋に移し、
九州の焼酎を傾けながらの久々の情報交換は、
本当に楽しかった。
宮本さんにも松浦さんにも、
総合芸術の経営を突き詰めてほしいものだ。
それが二人三脚のお二人にはできる。
私はそう感じている。
<結城義晴>