いま、私は、関西国際空港にいる。
今朝、羽田のANAに乗り込んで、
この関空へ。
周りは早口の中国人ばかり。
そのエネルギッシュな生活力には、
私たちが忘れてしまったものがある。
私は、夕方のユナイテッド航空886便で、
サンフランシスコ経由ダラスへ。
今回の渡米は1週間。
テキサスと北カリフォルニアを巡る。
ちょうど今日の日経新聞『地球回覧』にテキサス州の記事。
タイトルは、「『ペリーノミクス』は奇跡か」
ワシントン特派員の矢沢俊樹さんがレポートしている。
「ペリーノミクス」とはテキサス州知事リック・ペリーの政策を言う。
ペリーは共和党大統領選筆頭候補。
「州税である固定資産税の大幅な緩和や、
法人課税軽減を軸に企業誘致を進める」施策。
ペリー陣営は、これによって、
「雇用の原動力になったと実績を誇示」
テキサス州は今夏、
「1930年以来という史上最悪の干ばつに見舞われた」。
そして「綿花栽培は壊滅的打撃を受けた」
この綿花の国内シェアは4分の1にもなる。
「3日間、雨乞いの祈りをささげよう」。
ペリーは8月下旬、州民に呼びかけるほどだった。
しかしテキサス経済には「底力」がある。
「豊富な原油などエネルギー分野や医療・保健、コンピューターなど、
産業構造が分散しつつ、ダメージを補い合う」
ダラス連邦準備銀行は、テキサス州を中心に、
ルイジアナ州北部、ニューメキシコ州南部を含む第11地区を管轄するが、
その試算はテキサス州の力を如実に表す。
「2009年夏以降の全米の新規雇用者のおよそ4割近くを、
同州だけで占めた」
さらに「州別の00年から11年までの非農業者雇用の伸びは、
10%超と断トツ」
「州経済の伸びも3%台」
これは全米平均の1%台の3倍にもなる。
記事では死角の多さも指摘している。
「人口増大で学校や道路などの社会インフラ整備が遅れ、
不法移民や医療保険の未加入率の高さなど、
行政の不安は山積する」
「ペリーノミクス」にかかわるメディアの論争。
全米第2位の鉄道会社BNSFのマシュー・ローズCEOのコメント。
「この10~15年間、
規制緩和や税負担軽減に集中して取り組んだ成果が確実に出ている」。
「BNSFの路線が走る26州の中で最もビジネスに好適な州だ」。
ビジネスに好適な州は人口が増加する。
そして新しい小売業やサービス業が次々に参入する。
新しいフォーマットの実験も、
ここで行われる。
だから私たちはテキサスを目指す。
矢沢特派員は最後に語る。
「天然資源や人口移入、立地などの優位性に恵まれていても、
それらを調和させる政治の意志がなければ
ビジネス界の支持は得られない」
「適切な政策を欠けば
経済の潜在力も死蔵される」
政経一致こそ、
混迷の日米社会に共通する打開策なのだ。
呼応するように日経新聞のコラム『大機小機』。
タイトルは「『米国の日本化』の背景」
コラムニストの希氏が語る。
「米国経済は『日本化』の様相がはっきりしてきた」
日本化とは、
失業率は下がらず、
ゼロ金利政策が続き、
潜在成長率が低下する現象。
リーマン・ショック後、3年を経過して、
日本化はますます顕著になってきた。
日本の「失われた10年」の原因は二つ。
バランスシート調整(=企業の過剰債務、銀行の不良債権問題)とデフレ。
コラムニストは、問題点を絞る。
「『失われた10年』をもたらした要因として、
いずれがより重要であったか」
日本では、「バランスシート問題」がより重視された。
一方、アメリカは「デフレ主因説」を選んだ。
しかしこれが、住宅バブルの崩壊、
2007年のサブプライムローン問題、
翌年のリーマン破綻を促す。
要は、「素早く大胆な金融緩和」に踏み切った米国だが、
「バブル崩壊の衝撃を阻止することはできなかった」。
さらに「デフレ懸念」を理由として、
追加的な量的緩和を実行する。
「量的緩和で流れ込んだマネーが国際商品相場を押し上げ、
米国のデフレ懸念は遠のいたが、
「新興国が金融引き締めで対抗した結果、
株価は一時的な上昇にとどまり、
明確な景気回復にはつながらなかった」
デフレ防止だけでは「日本化」を防ぐことはできない。
それがこのコラムの趣旨。
20世紀的な一方的政策では、
難局を切り抜けられない。
難しいけれど、
両方ともに実現させねばならない。
バブル崩壊の後遺症はいまだに残っている。
そんなアメリカに、
私たちは向かう。
楽しみでもあり、
親近感もあり。
途上国では『成長の経済』という要因が働き、
先進国では『衰退の経済』というべき要因が働く。
これが現在の世界のトレンド。
最後にこれも日経新聞で恐縮だが、
『スポートピア』の樋口久子さんのコメント。
日本女子オープンをいきなり4連覇し、
全米女子プロでも優勝という金字塔を打ち立てた。
「私は昔から親に常々『腹を立てたら自分が損よ』と言われていたが、
ゴルフを通じてかなり忍耐強くなったと思っている」
これは現在の日本にもアメリカにも言えることだ。
そしてあなたにも私にも。
「腹を立てたら自分が損よ」
では、行ってきます。
<結城義晴>