結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2011年10月06日(木曜日)

[帰国後の米国報告]その2・スプラウツ・ファーマーズマーケット「ベジタリアン&シンパのための大型八百屋」の新フォーマット

昨日10月5日、
このホームページのページビュー数は、
過去最高でした。

1日9272の金字塔。

ありがとうございました。

次の目標は10000。
1万です。

さて、昨日、スティーブン・ポール・ジョブズ逝去。
1955年2月24日生まれ、2011年10月5日没、
享年56。

米国アップル社会長。
ビジネス用パーソナルコンピュータで、
世界最初の成功を収めた。

米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツは、
ジョブズと同じ1955年の10月28日生まれ。

はじめて会った30年前から、
同志であり、好敵手であり、友人であった。

インターナショナル・ビジネスマシン社、
すなわちIBMが牛耳っていた情報の世界を、
ふたりは完全に塗り替えた。

『狂おしいほどに誇らしい』
ゲイツはジョブズに、
この言葉を贈った。

”The Gates Notes”
ビル・ゲイツが書いているブログ。
そのOctober 05, 2011には、以下の文章がある。

I’m truly saddened to learn of Steve Jobs’ death.
スティーブ・ジョブズの逝去を知って、
私は本当に悲しんだ。

Steve and I first met nearly 30 years ago,
and have been colleagues, competitors and friends
over the course of more than half our lives.
最初に彼と会った30年前から、
私たちは自分の人生の半分以上を、
同志として、好敵手として、友人として生きてきた。

For those of us lucky enough to get to work with him,
it’s been an insanely great honor.
幸運にも彼とともに仕事をしてきた私たちにとって、
それは『狂おしいほどに誇らしい』ことだった。

I will miss Steve immensely.
非常にさみしい。

こんなライバル、
うらやましいかぎり。

スティーブン・ジョブズ氏のご冥福を祈りたい。

さて、日本では、
政治資金規正法違反罪に問われた小沢一郎被告の初回公判。
無罪を主張し、「この裁判は打ち切るべきだ」と罪状認否。

意外にスピーディに審議が進む予定だが、
それでも来年3月ごろには結論が出る。

一方、ポール・クルーグマン博士が来日している。
現在、プリンストン大学教授で、
2008年ノーベル経済学賞受賞。
日本経済新聞記者に語った。
「今後、世界は、
50%以上の確率で景気後退に陥るだろう」

最大のリスク要因は「欧州の金融不安連鎖」。
そのうえで、米国の方は、
「オバマ政権が財政政策に動きにくい」と悲観的な見方。
「米欧の景気は後退しそうだが、
新興国は減速してもなお成長し続けるので、
世界全体で見れば緩やかな後退にとどまる」

「緩やかな後退」
これが世界の趨勢という意見。

クルーグマン教授は、米国の「日本化」も指摘した。
「金融危機のただなかにあった1998年の日本のようなもの」

さらに今現在の日本については、
「デフレから脱却できずにいることから、
実質金利が高くなっている」

実質金利とは、
「名目金利から物価変動率を引いた」金利。

「米国がゼロ金利政策をとるようになったなかで、
実質金利の高い円に上昇圧力がかかりやすくなっている」

緩やかな後退の中で、
円高もとどまらない。

これがポール・クルーグマンの見解。
この見方をベースにして、
「最悪を覚悟して、
最善を尽くす」

その具体的な方法は、
今月の商人舎標語。
「着眼大局 着手小局」

つまり、
①小さく始める
②ゆっくりと進める
③常に改善する

この姿勢。

さて、[帰国後の米国報告]第2弾。
スプラウツ・ファーマーズ・マーケット。
Sprouts Farmers Market
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本社所在地はアリゾナ州フェニックス。
CEOはショーン・ボニー(Shon Boney)
ホームページもある。

http://sprouts.com

21世紀に入って、2002年創業。
これもコーネル大学ビル・ドレイク教授が言うセオリー。
「インディペンデント企業の優位性」を地で行く会社。

要は家族経営・オーナーシップ企業

店舗数は61店舗(2011年6月現在)。
アリゾナ州 15店舗
カリフォルニア州 22店舗
コロラド州 9店舗
テキサス州 15店舗

経営理念は、
“アメリカ人の健康と長生き、そして節約のお手伝いをします”
店頭にはミッション・ステートメントが掲げられている。
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核となる価値提供は五つ。
①顧客価値
これが基本。

②ユニークネス
そのための先進的な創造性とイノベーション。

③integrity(真摯さ)
ドラッカー先生の最も重要視すること。

④loyalty
家族に、友人に、仲間に、顧客に。

⑤FUN
仕事と喜びを同時に実現する。

店舗に入ってみよう。
まず、1000坪ほどの広くて高くて簡素な建物。
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正面奥に、青果部門の売り場がデンとしつらえらえている。
これがこの「ファーマーズマーケット」フォーマットの特徴。
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ど真ん中は、このカラコンのきいた前進立体陳列。
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壁面の葉物を中核として、売場の前には、
腰高の平台がズラリと並ぶ。
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果物、根菜など、丸モノ関係が、
1コ売りで美しく陳列されている。
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果物のカラーリングはみごと。
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大ぶりのキャベツなどは、
一段低い平台。
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平台のアイランドには、
秤がセットされて、
顧客は自分で重量を測ることができる。
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トウモロコシの特売には顧客が殺到している。
自分で皮をむいて持ち帰る。
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この店舗中央のプロデュース売り場が、
ファーマーズ・マーケットの最大の特徴。

さて、入り口を入ったところには、
右手にハロウィンのプレゼンテーション。
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野菜・果物が核となる店だけに、
ハロウィンのカボチャのアピールは、
店の生命線。
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入り口を入ったすぐ右手は、
ドライフルーツが並んでいるが、
壁面には「フレッシュ・フラワー」のパネル。
ここには生花が並んでいたが、
売れないのでドライものの売り場に変えたものとみられる。
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ハロウィンの出迎えプレゼンテーシュオンの奥には、
ベーカリー。
インストアの焼き立てパンが並ぶ。
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パンから対面のデリカテッセン売場へと続く。
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対面惣菜デリ売場の前には、
平オープンケースのデリ売場。
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アメリカ人の生活の中で、
意外にもデリは幅広い。
もちろん日本ほどではないが。
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対面の惣菜売り場を「サービスデリ」と称し、
セルフサービスのデリ売場と区別して管理する。
人件費が大きく違うからだ。

デリ部門に続いて、店舗右翼は「ミート&シーフード」部門。
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こちらも対面の精肉・鮮魚部門とセルフの売場は、
完全に分かれている。
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この店全体が健康志向で貫徹されているから、
魚は充実しているし、精肉もオーガニック素材が揃う。

その前に、パスタのエンド。
パスタは健康食品。
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「健康を安く」がこの店のコンセプト。

パスタの島陳列の店舗中央側に、
ワインの島陳列売り場。
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デリ、肉、パスタ、ワインと、
コーナーの連続性がある。
これも店舗右翼。
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店舗中央のレジの真後ろ、
そして青果部門の手前が広大なバルク売り場。

そしてバルク売り場にコーヒー・コーナーがある。
題して「グルメ・コーヒー」。
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バルク方式は、顧客が好きな量を自分で選ぶことができる。
これは一人ひとりのカスタマーにとって究極の節約となる。
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コーヒー売り場のエンドには、
必ず、無料の試飲コーナーが設けられている。
これは必須。

トレーダージョーでもホールフーズでも、
コーヒーの無料試飲は必須。
覚えておいてほしい。

店舗中央レジ寄りのスペースは、
穀類売場といってよいバルクコーナー。
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この店は3分の1ずつに分割することができる。
中央の3分の1は、青果と穀類。
すなわち植物関連。
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ここが店の中心。

アメリカのスーパーマーケットは、
バルク販売を積極的に展開する。
それは顧客に安さを提供するためだ。
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これでもかとバルク販売。
顧客の間にもルールがあって、
異質物を混入させる不届き者はいない。
そんな顧客はこの店にやってこないし、
そんな顧客をむしろ排除しているのが、
ファーマーズマーケットということになる。

バルク・アイランドには、
四隅に樽などが配置されている。
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バルク売場の隣が、
ドライグロサリーの島陳列。
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そして店舗左翼手前は、
これも広大なバイタミン・ショップ。
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写真にはないが、この右手は、
店の奥正面に向かって、
冷凍食品や加工食品、卵の売り場となる。

そして店舗左手に対面のコンサルティングサービスコーナーと、
書籍コーナー。ここには健康関連書籍がしっかり品揃えされている。
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レジはさりげないホスピタリティにあふれている。
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いかがだろうか。
スプラウツ。
ファーマーズマーケットのフォーマット。
スーパーマーケットの業態に違いない。
食生活を中心にした内食材料提供業だ。

しかし従来のスーパーマーケットのセオリーを、
完全に無視している。

この店のフォーマットを、私は、位置付ける。
「大型八百屋+自然と健康コンセプト+便利なもの」

スーパーマーケット業態が多様化し、
営業形態が分化し、その一つが、
ファーマーズマーケットのフォーマットとなった。

ファーマーズマーケットというだけあって、
できるだけ地元農家から仕入れをする。
つまりは「地産地消」。

そして当然ながら、
オーガニック食品やビタミン剤・サプリメントなどの品揃えは、
他の追随を許さない。

これを超えるのは2社だけ。
ホールフーズとトレーダージョー。

いまや健康、安全のジャンルは、
この3者といってもよいくらい。

そして私はこの店を別名で呼ぶ。
「ベジタリアン・スーパーマーケット」

アメリカ人には菜食主義者が多い。
いわゆる「ベジタリアン」。

ホールフーズやトレーダージョーは、
ベジタリアンの店というほどまでに特化はしていない。

もっと大衆的だ。
だから大人気の店となる。

しかし大人気ではなくとも。
ベジタリアンとそのシンパ向けに特化すると、
存在の意義が出てくる。
それがファーマーズマーケットである。

だから野菜・穀類売場が、
店の中央にデント構える。

両サイドは、青果・穀類主義者にとって、
サブカテゴリーでよい。

それが肉であり、魚であり、デリであり、冷食である。

いかがだろうか。

このスプラウツ、今年後半に、
ヘンリーズ・ファーマーズマーケットと合併した

そして95店舗のチェーンストアとなった。
もう100店舗は間近。

ファーマーズマーケットのフォーマットの完成も、
間近となった感がある。

私は「業態」の概念だけでは、
どうも説明できない段階に来ていると考えている。
それを説明するに都合の良いのが、
ファーマーズマーケットだ。

ホールフーズ300店、
トレーダージョー350店、
そしてスプラウツ・ファーマーズマーケット100店

健康、安全、安心をコンセプトにしたフォーマットのイノベーションこそ、
アメリカの現段階とみることができる。
(ブログアップ時間はギリギリだけれど、まだまだ明日に続きます)

<結城義晴>

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