結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2011年10月24日(月曜日)

「ケインズvsハイエク」の対立軸と「EDLP対ロイヤルティ・マーケティング」の融合

Everybody! Good Monday!
[vol43]

2011年も第43週。
10月の第4週というか5週というか。
最終週というか、その前の週というか。

今日24日月曜日から、
来週月曜日の31日ハロウィンまで、
ひとくくりに一気呵成。

「秋の日はつるべ落とし」
まさしくこの言葉のように、
あっという間に時間が過ぎる。

その一刻、一時、一瞬を、
大切にしたい。

私は今週、金曜日から、
アメリカ。

ダラス、ワシントンD.C.、ニューヨーク、ロサンゼルス。
10日間。

商人舎第10回記念USA研修会。
大久保恒夫さん、林廣美先生、
豪華ゲスト講師陣とともに、
今年最後のアメリカを楽しむ。

期間中31日にハロウィンがやってきて、
そのハロウィン一色の売場が、
11月第4週木曜日のサンクスギビングデー向けに変わる。

その様を見る、聞く。

これも楽しみの一つ。

今月の商人舎標語は、
「着眼大局 着手小局」

アメリカでは、東海岸、西海岸、中南部を巡り、
ハロウィンやサンクスギビングのプロモーションを感じ取りつつ、
一方で、2012年を展望する。

今日の日経新聞朝刊『オピニオン』。
コラムニストの土谷英夫さんが、
「ケインズvsハイエク再び」と題して、
「着眼大局」の視点を書いている。

「今日10月24日は、
世界経済にとって縁起の良い日ではない」
1929年10月24日はウォール街の株が暴落し、
「世界恐慌」が始まった日。

「その世界恐慌の原因や対処法」をめぐって、
「ケインズ」と「ハイエク」の対立軸が今、
再びみたび注目されている。

1883年生まれのジョン・メイナード・ケインズは、
イギリス人で、マクロ経済学の父。
1899年誕生のフリードリッヒ・ハイエクは、
ドラッカーと同じオーストリア人で、
「『小さな政府』派の教祖」。
<ちなみに、ハイエクは故倉本長治商業界主幹と同じ年だし、
ドラッカー先生よりも10歳上>

土谷コラムニストは、
ハイエクとの直接インタビューを思い出しつつ、
その主張をまとめる。

「政府の役割を減らすべきだ。原則は2つ」
①個人の自由な行動に干渉しない。
②市場に適さないものに保護や補助金を与えない。

1980年代は「ハイエクの10年」だった。

イギリスのマーガレット・サッチャー首相が、
「規制緩和、国有企業の民営化、所得税のフラット化など、
小さな政府を実践し世界に広めた」

「快走するかに見えた市場任せの経済は、
世紀の変わり目辺りで変調をきたす」

土谷さん、文章が簡潔で、鋭い。
「米国でIT(情報技術)バブルがはじけた。
そして2008年、世界を巻き込むリーマン危機――」

「『ケインズに返れ』の声が高まる番だった」

20カ国・地域首脳会議、すなわちG20も、
ケインズ理論を選ぶ。

「日米欧が一斉に景気刺激に踏み切り、
中国も大盤振る舞いした」

その結果が昨年のV字回復。
「2009年にマイナス成長だった世界経済が
2010年には5%成長」

ケインズ優勢、ハイエク劣勢か?

だが、第2幕。
「ギリシャなど欧州の国家債務危機」

「政府が危機の原因では、
景気刺激どころではなく、
緊縮策を迫られる」

アメリカの民主党バラク・オバマ大統領は、
高い失業率に業を煮やし、異例の「雇用演説」。
ケインズ派のスタンスで、
来年の大統領選挙に臨む。

一方の「共和党は、だれが候補者になろうとも、
ハイエク派の『小さな政府』を看板にする」

さて、日本の野田政権。
「期せずしてケインズ政策をとる」

ケインズは書いた。
「ピラミッドの建設、地震、そして戦争でさえもが
富の増進に一役買うかもしれない」

ケインズが2011年の東日本大震災を言い当てたわけではないが、
復興に巨額の財政出動を要する状況は、
ケインズ政策そのものだ。

ただし、国家財政から見て、
「復興増税、消費税増税」は避けられそうもない。

米国のポール・クルーグマン教授。
このブログでもよく取り上げる。
「世界は50%以上の確率で景気後退に陥る」
しかし、中国をはじめとする新興国の経済効果で、
「世界全体では穏やかな後退にとどまる」

この点が、「30年代と大きな違い」とコラムニストは指摘する。

「先進国では格段に充実した社会保障などセーフティーネットが下支えになる。
半面、それが財政悪化の要因にもなり財政出動の余地を減らし、
時に政府自身を危機の原因に追い込む」

まさしく、オクシモロンの問題解決が要求される。
あちらを立てて、
こちらも立てる。

「ケインズは、
政府が市場の欠陥を正せると考えた。
ハイエクは、
思うままに市場を操れるほど人間は賢くないと考えた」

コラムの結び。
「この勝負、なかなかつかない」

二者択一の勝負がつかないのが、
21世紀の特徴。

そのギリギリのところで、
妥協点を見つけ、これしかないという解決策を導き出す。
これこそオクシモロンの問題解決だ。
「着眼大局 着手小局」こそ、
オクシモロンの具体的方針となる。

さて先週発表された小売業態別の9月実績。
真っ先に10月18日発表の「全国百貨店売上高概況」
日本百貨店協会に加盟している86社の調査。

9月の総売上高は4369億7845万円で、
前年比はマイナス2.4%。
3カ月連続でマイナス。

商品別売上高は軒並みマイナス。
震災特需で夏場まで順調に推移していた家電も
ここにきて、前年比マイナス16.5%。

また、台風が週末に重なったことや、
残暑が続いたことも影響して、
秋冬物の衣料品の動きは鈍く、
マイナス2.5%だった。

エリア別にみると、新店効果が続いている福岡は、
プラス10.9%(全店ベース)と順調。
東北地区は今月、プラマイ0。
復興需要が一段落してきたことを示している。

10月20日、日本フランチャイズチェーン協会から発表の
「コンビニエンスストア統計調査」

9月の既存店総売上高は6779億4000万円、
そして前年同月比はマイナス4.0%で、
11カ月ぶりにマイナスとなった。

昨年9月は、10月のたばこ増税を前に、
たばこを大量購入した人が多かった。
この駆け込み需要で昨年9月の売上げは絶好調。

その反動で、今年の9月は、
売上高、客平均単価ともにマイナスとなった。
たばこを含む、非食品カテゴリーの前年比は、
なんとマイナス18.5%。

ただし、来客数は微増だが、プラス0.4%。
昨年の反動を抜きにして考えれば、
9月も比較的堅調だったといえる。

最後に「スーパーマーケットの販売統計」
日本スーパーマーケット協会、
オール日本スーパーマーケット協会、
新日本スーパーマーケット協会、
3協会からの合同発表。
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9月の総売上高は7807億7316万円。
既存店の前年同月比は98.0%、
つまりマイナス2.0%。

食品合計は6726億9875万円(マイナス1.2%)、
生鮮3部門の合計が2524億7310万円(マイナス1.9%)、
そのうち青果が1039億0810万円(マイナス3.9%)、
水産が697億2718万円(マイナス0.4%)、
畜産が788億3782万円(マイナス0.4%)。

惣菜は689億3206万円(プラス0.4%)、
日配は1446億6981万円(マイナス1.3%)、
一般食品は2066億2379万円(マイナス0.6%)。

非食品が654億0283万円(マイナス3.6)、
その他が426億7157万円(マイナス5.8%)。

全体総括を語ったのは、
オール日本スーパーマーケット協会松本光雄専務理事。
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「商売として難しい9月。
売上減の要因のひとつは、2つの台風上陸。
関西、東海、関東に被害の影響がでた。
ふたつめは、寒暖の差が激しく、
季節変動の売り場づくりができなかったこと。
昨年は、スーパーマーケットにもたばこ特需が吹き荒れた。
その反動で、4%マイナスの企業もあった」

「北海道、東北エリアが落ち着いてきたが
まだ震災による閉鎖店がある」

「部門別では、
野菜高騰が顕著だった昨年に比べ、
今年は価格が落ち着いている分、売上げはとれない。
水産はやや回復基調。
放射能汚染の風評被害は
潜在的にあっても、表には出ていない。
ただし牛肉は7掛けの値崩れ、
販売数量は8掛けと厳しい」

9月のゲストスピーカーは、
㈱ヤマナカ取締役常務執行役員の平山逸美さん。
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「東海地区は50%が自動車関連産業で成り立っている。
リーマンショック、トヨタショックで
生産関連が悪化したが、回復基調にあった。
そこに震災が起こり、急激に落ち込み、
食料品支出は全国平均を下回っている」

「節電で工場などの稼働日が変更され、
週末に稼ぐ小売・サービス業は大きな影響を受けている。
一家に車が2台あればいいが、1台だと通勤に使うため、
週末の車による来店客が減り、大物購入も減った」

「円高で産業の空洞化が懸念され、
買い控えやPBなど低単価商品の購入、
ディスカウント店へのシフトが進んでいる」

「東海地区は激戦地。
地元の中での戦いから、
他府県からの参入企業との戦いに変わった。

とくに岐阜のバローの出店が加速し、
3年で20店が計画されている」

「5年前は6000人に1店舗だったが、
現在は4000人に1店舗」

「EDLPは消費者に受け入れられ始めた。
バローとマックスバリュが売上げを伸ばし、
勝ち負けが鮮明になってきている」

「ヤマナカも『チェレンジハウス』というEDLP店舗を
既存店舗の活性化策として展開しはじめている」

「ヤマナカでは新たにFSPのポイントカードを導入した。
予定の30万人を超え9月時点で37万人会員を集めた。
チラシ販促から、カード会員への
サービス、販促にシフトしていきたい」

エブリデー・ロープライス(EDLP)と、
ロイヤルティ・マーケティング。

アメリカ小売業の対立軸だ。

しかしアメリカの好調スーパーマーケットは、
HEBもウェグマンズも、
EDLPとロイヤルティ・マーケティングを、
融合させて、
ウォルマートやアルディに対抗している。

ナショナルチェーンのクローガーも、
EDLPとフリークエント・ショッパーズ・プログラムを、
両立させようと悪戦苦闘。

あちらも立てて、
こちらも立てる。

どちらかで勝負がつくことはないし、
融合も両立も簡単なことではない。

それに挑むのが、私たちの仕事。

では皆さん、今週も。
Good Monday!

<結城義晴>

2011年10月23日(日曜日)

ジジと十字架[2011日曜版vol43]

ユウキ家のジジです。
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ユウキヨシハルのおとうさん、
きょうも、いません。
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先月から、1日も、
やすんでいません。

うごきまわるのが、
だいすきなんですから、
しかたありません。

きのうは、朝からrikkyoへ。
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ユウキ・ゼミ。
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そのあと、みんなで写真をとった。
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卒業アルバムの写真。
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なまえを、かく。
まちがえないようにするためです。
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ユウキ・ゼミのオカモトさん。
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全員の集合写真も。
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キマリました。
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ことしのユウキ・ゼミは、
7人のセイエイです。
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そのあと、ニイザ・キャンパスに移動。
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2日間の合宿です。
おとうさんは、合宿主義。

ドラッカー先生の「時間をまとめる」を、
ジッセンしているのです。

しっかり研究して、
夜は、コンシン。
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卒業生のシブキさんも、
きてくれました。
トヤマさんも熱心に、
きいています。
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で、のみすぎた。

ふつかよいで、
朝のサンポ。
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グランドへ。
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ゲンキなフットボールの選手たち。
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ハット、ハット。
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ゴー。
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すこしだけ、ゲンキをもらった。
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朝の教会。
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十字架。
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日曜日の礼拝をしていました。

みあげると・・・。
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秋の空。
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そして、十字架。
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「忙しい」とは、
「心を亡くす」とかく。
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こころをなくしては、
いけません。

おとうさん。

<『ジジの気分』(未刊)より>

2011年10月22日(土曜日)

コーネル大学2011年特別セミナー『白熱教室!食品小売業の存在意義』の「うどんとまんじゅうくらいの違い」

朝刊各紙のトップに踊った。
「史上最高値75円78銭」

昨日の21日(金曜日)のニューヨーク外国為替市場。
円相場は一時1ドル75円78銭まで高騰。

私は来週木曜日から今年6度目の渡米予定。
そのたびに向こうでの生活資金のためにドルを買うが、
いつも、これが最高値だろうと思いつつ、
裏切られてきた。

今年8月19日の、これまでの最高値75円95銭を、
17銭分更新。

この面での専門紙・日経新聞の記事では、こう、まとめられている。
「市場では、欧米経済の減速懸念や米国の追加緩和観測などから、
歴史的な円高水準が長期化するとの見方が出ている」

輸入産業やアメリカを訪問する者にとってはよいが、
まだまだ、輸出産業にとっては苦しい日々が続く。

日経新聞のコラム『大機小機』。
今日のテーマは「資本主義の歴史的転換期」。

「資本主義の全般的危機ともいえる様相を帯び始めた」

「状況は1930年代に似てきたが、
戦争や福祉国家が解決策だった歴史の
単純な繰り返しはないだろう」

1930年は、流通の世界では、
史上最も有名なマイケル・カレンの革命。
スーパーマーケットが誕生した年。

政治の領域では、この世界恐慌への解決策は、
ひとつがなんと第二次世界大戦という戦争、
もうひとつが福祉国家づくりだった。

コラムは続く。
「先進国の経済水準は当時と比べものにならないほど高い」し、
「豊かさの中の貧困と格差」こそ、
現代の難題となっている。

だからプライベートブランドにフェアトレード商品が入ってくるし、
世界最大の食品展示会アヌーガでも、
「フェアトレード」が大事なトレンドとして取り上げられる。
コラムニストの渾沌氏は指摘する。
「問われているのは
強者の論理で国民経済の危機を招いた
政治と経済のイデオロギーである」

「資本主義の歴史的転換期にある世界は、
経世済民新しい『政治経済学』の登場を待っている」

「けいせいさいみん」とは、中国の古典に登場する言葉。
「世を經(おさ)め、民を濟(すく)う」という意味。

世と民を略して「經濟」や「経済」と使うこともあるが、
この場合、英語の「economy」とは趣旨が違っていて、
「広く政治・統治・行政全般を指示する」。
だから渾沌氏は、
「新しい政治経済学」の登場を切望している。

世界の小売流通業は、
1930年の「スーパーマーケット革命」並みの「革命」を、
待ち望んでいるのかもしれない。

もう一つ日経の記事。
「アマゾンが国内参入
電子書籍、本格普及へ」

「出版界は新会社 読書文化も変化」

「2010年度の電子書籍市場は
13%増の約650億円で、
15年度には2000億円に達する見込み」。

ただし「現状は漫画8割」だとか。

これに対して、
小説家の京極夏彦さんがコメント。

今月、新作「ルー=ガルー2」を、
単行本、ノベルス(新書サイズのソフトカバー)、文庫、電子書籍と、
4形態で同時発売した。

「そもそも、単行本を出して数年たったら
文庫にするという日本の慣習に疑問」
「数年前から単行本と文庫を同時発売してきた」

「結果、どれもよく売れた」
「ユーザーが別だということだ」

「単行本と文庫で読者が違うなら、
電子書籍の読者はもっと違うだろう」

「出版不況を電子書籍のせいにする論調が
一時あったが、根拠がない」

「現状では、商品としての出来は100点満点の10点くらい。
紙の本と電子書籍はテキストデータが同じだけで別のものなのに、
似たような作りだからだ」

「本当は、うどんとまんじゅうくらいに違う」

「紙の本は何百年もかけて今の形になった。
電子書籍も時間をかけて見せ方を試行錯誤しなくてはいけない」。

全くの同感。

㈱商業界時代の雑誌づくりと、
㈱商人舎のネットづくり。
テキストデータは同じだが、
全く別のものだ。
私は全く別のライフスタイルで仕事している。

さて、昨日21日も六本木アカデミーヒルズ49。
2日連続の、同じ会場でのセミナー。

今回は、コーネル大学・新日本スーパーマーケット協会主催。
テーマは「熱血教室!
ライフラインを担う食品小売業の役割と存在意義」

もちろん講師は、コーネル大学から来日したお二人の先生。
ジーン・A・ジャーマン名誉教授と、
ウィリアム・E・ドレイク教授。

同時通訳で聴講できる階段教室は、
コーネル大学リテール・マネジメント・プログラム・オブ・ジャパン卒業生をはじめ、
新日本スーパーマーケット協会、
オール日本スーパーマーケット協会の経営者・幹部、
さらに多くの食品産業関係者で満席。
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はじめに、増井徳太郎副会長が主催ごあいさつ。
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第1部はジャーマン先生の講義。
「アメリカの食品小売業の現状2011」

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食品業界が直面するマクロの影響を、
1.景気後退
2.消費者の変化
3.新しいテクノロジー
4.消費者が求める利便性
5.業界の競争
6.新たな位置づけ

と、6つの視点から分析してくださった。
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消費者は内食志向が高まり、
高級店からバリューストアへ足を運び、
低価格なPBを選択し、
ベーシックなものを購入する。

さらに消費者は、
ユーチューブやアマゾン、フェイスブックなどのソーシャルメディアを駆使し、
ツイッターでつぶやきながら、賢い消費行動をとる。

こうした顧客との双方向コミュニケーションを図るために、
食品小売業は、悪戦苦闘している。
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店舗とサイトとの新しいビジネスモデルが進行している。

その背景にあるのは、
食品マーケットをあらゆる業態が狙っているアメリカの競争環境。
だからこそ、自社・自店のポジショニングが重要である。

結論は私の見解と全く一致。
90分の時間があっという間に過ぎるほど、
整理された興味深い講義だった。

そして昼食。
昼食時間に談笑するのは、
㈱セイミヤの加藤勝正社長と、
㈱関西スーパーマーケットのコーネル・ジャパン・トリオ。
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2期生の国分㈱の山崎桂介さんと㈱よこまちの横町浩明さん。
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第2部は、ドレイク先生による「小売業の使命とは」
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「アメリカ小売業の災害への備えと対応」が、
今回のテーマ。

全世界の自然災害の経緯をデータで追跡。
自然災害の影響は拡大している。

この災害に対して小売業はいかに役割を果たすか。

ドレイク先生は、
「小売企業は独自の役割を果たしてきた」ことを強調した。
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そのうえで2005年のハリケーン「カトリーナ」来襲のときの、
ウォルマートやホーム・デポ、ウィンデキシーの対応を解説。

とりわけウォルマートのカトリーナ対応は、
連邦災害対策局(FEMA)をはるかに凌いだ。

そのプロセスがハーバード大学ケネディ・スクールの研究を、
トレースする形で紹介され、ドレイク先生の分析が加えられた。

「アメリカの政府がウォルマートのように対応していたなら、
私たちはこのような危機に陥ることはなかっただろう」
ジェファーソン郡のハリー・リー保安課の言葉。

「ウォルマートの模範的対応」と題したスライドには、
2005年8月23日から9月5日までの行動が、
丁寧に描かれた。

最後は「ウォルマートの対応のまとめ」と、
「ハリケーン・カトリーナから学んだ教訓」。

その第2、公共部門と民間部門の関係は、
体系化されなければならない。

その第4、現地の自治と行動の自由が必要である。

素晴らしいレクチャーだった。

第3部は、ディスカッション。
両先生と参加者との質疑応答、議論・討論。
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口火を切ったのは、コーネル・ジャパン3期生の岡秀夫さん。
行政と民間の役割について質問。
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ドレイク先生は、、
アメリカの事例から、そして今回の震災の経験から
公的な機関と民間の役割の枠ぎめが大切であると強調された。
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2期生の㈱伊藤軒・中井としおさん。
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1期生の㈱京急ストア上野裕さん。
「伝説の1期生ならぬ、電鉄の1期生です」
笑いを誘ってから、貫録のコメント。
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「電鉄系の店舗は、3.11では帰宅困難者の宿泊場所となったが、
一方で、従業員の安全確保も考えなければならない。
小売業の使命とはどこまでか」と発言。

次々と質問や意見が発せられた。
先生方は熱心に耳を傾け、
丁寧に答えてくださった。
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3期生の㈱よこまち・横町正俊さんは、
自身が被災した際の状況と対応を具体的に説明した。
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1期生の㈱北辰商事の太田順康さんは、
物流が寸断された要因と、今後の取り組みの在り方を、
ロヂャースの対応を紹介しながら語った。
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太田さんは震災直後から、
10数回にわたり被災地に支援物資を届けた。
自衛隊はすばらしい活躍をしたが、
自衛隊の物流機能には限界があった。
物流のプロならではの目線で、
多くの課題を指摘してくれた。

ジャーマン先生は、
こうした議論をじっと聞いていた。
そして指摘した。
「ウォルマートには災害時に対応するだけの親切さと能力があった。
災害のストレスを受けながら、能力を発揮できるのかどうか。
大事なのは、小売業はどこまで責任を負うのか。
どこで責任を終わらせ、政府に引き継ぐのか。
そのガイドラインづくりが大事だ」
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司会者からの無茶ぶりで、私も持論を発言。
「我々はすでに大震災や災害から多くのことを学んでいる。
イオンも、セブン&アイも、CGCもAJSも、
対応マニュアルをもち、実際に見事に行動した。
今後、大事なのは、それらを小売業や製配販、社会全体で共有化し、
改善・改革を続け、さらに公開し、活用することである」
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「そのうえで、業界を挙げて、定期的に防災訓練を展開し、
その運動を世界に発信することだ。
災害列島日本に住まう者として、
日本が安全で安心できる国であることを、
強くアピールすべきだと思う」

ジャーマン先生も、
「協会こそが共有化するためのエンジン役を果たすべきだ」と、
賛成してくださった。
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そのジャーマン先生の講義内容に対して、
コーネル・ジャパンの荒井伸也首席講師からも、意見がでた。
荒井先生はこのたび、中内学園流通科学大学客員教授に就任。

「店をアップスケールするにしても、
ディスカウントタイプにすることがあっても、
ポンペイの都の繁栄の時代から、
スーパーマーケットは普遍的な業態である」
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ジャーマン先生も
「調整・変化しつつ、成長するという意味であればその通り。
しかし、最初から意図的に新たな分野に参入することができれば、
もっと良いと思う」
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ドレイク先生は指摘した。
「スーパーマーケット企業はアメリカでも戦略を変えたがらない。
そこで、少しずつ変えていくと、本来の目的を見失う。
時の経緯の中で、最初の戦略が変容してしまうこともある。
少しずつ積み重ねた結果は、例えば、
シアーズ、Kマートの崩壊というケーススタディが示す」
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私もそうだが、ジャーマン先生、ドレイク先生の視野には、
1930年以来の変革のときが迫っているとの認識がある。
『大機小機』で渾沌氏が指摘した歴史的転換期。

私は「業態」が「フォーマット」に分化していると認識している。
京極夏彦ではないが、それは、
「うどんとまんじゅうくらいに違う」。

コーネル・ジャパン関係者を中心に紹介してきたが、
このディスカッションでは、他にも多くの参加者が質問を発した。
90分にわたる贅沢な時間は、これまた、あっという間に過ぎた。
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すべてのプログラムを終え、
主催者の増井副会長と二人の先生方は満面の笑み。
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私は、ドレイク先生とジャーマン先生に、
自著に筆で言葉を添書きして、
感謝をこめて差し上げた。
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ドレイク先生には『小売業ハンドブック』に、
「心は燃やせ、頭は冷やせ」
”Warm Heart,but Cool Head”
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ジャーマン先生には『店ドラ』に、
「朝に希望、昼に努力、夕に感謝」

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ジャーマン先生は「アートだね」と喜んでくださった。
私も、心から感謝。

そして最後に増井副会長と写真。
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六本木ヒルズ49階の眼下には、
秋の東京の市街が広がっていた。
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コーネル大学ジャパンの3年間。
ジャーマン先生とマクラフリン先生、
そしてドレイク先生とホークス先生。

伝説の第1期生(電鉄の第1期生を含む)、
奇跡の第2期生、実行の第3期生。

そして80カリキュラムを支えてくださったファカルティ、
日本の講師陣の皆さん。

充実した研修の日々だった。
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ニューヨーク州イサカのコーネル大学、
東京・市ヶ谷の法政大学、
ヤオコー、ロヂャース、サミットのセンターや店舗、
三井物産や東京商工会議所の研修センター。

様々な場での交流。

すべての人々に、
心から感謝しつつ、
日本の小売産業・食品産業の現代化を、
祈念したい。

<結城義晴>

2011年10月21日(金曜日)

中内学園「リテール科学研究所」設立記念セミナーで「巨星、集う」

「スーパー、被災者の就職支援」
日経新聞本紙が取り上げてくれた。

小売業の4つの協会と加盟企業が、
東日本大震災の被災者の就職支援に乗り出す。

日本チェーンストア協会、
日本スーパーマーケット協会、
新日本スーパーマーケット協会、
オール日本スーパーマーケット協会。

総加盟社数は計400弱に上る。

素晴らしいこと。
これぞまさに、社会的責任。

協会加盟各社はそれぞれ採用可能な人数を集約し、
合同の就職説明会を開催する。

採用の目途は新卒・既卒合わせて年間100人規模。
さらに今後10年間、同規模の採用を続ける。

11月に「流通4団体被災者支援委員会(仮称)」が、
立ち上げられる。

この委員会は、
「加盟各社が被災者をどの程度雇えるか調査するとともに、
被災地のハローワークや学校などに採用情報を伝える」

就職説明会は、2012年初めから、
被災地などで開かれる予定。

さらに年内をめどに専用ホームページが開設され、
採用募集企業一覧や企業情報、
さらに仕事の具体的な内容が公開される。

記事には、企業名が上がっている。
大阪の阪食、関東のヤオコー、マルエツなどが、
採用を前向きに検討している。

このブログの10月8日版で、
大阪の㈱万代がすでに来年の新卒採用に関して、
7人の被災地出身者を内定したことを報じた。

新日本協会の横山清会長は、語っている。
「単年度の施策ではきちんと支援できない」
そこで、今後10年間、採用は続けられる。

100人といわず、
1000人、1万人と、
採用の枠を広げ、
それを続けてもらいたいものだ。

さて、学校法人中内学園が、
「リテール科学研究所」を設立した。
その記念シンポジウムが、
六本木アカデミーヒルズ49で開かれた。

ダイエーの創業者・故中内功さんが創設した学校法人。
現在はその長男の潤さんが理事長。

はじめに記念講演。
中内学園流通科学大学の石井淳蔵学長。
「小売の産業化を考える」
日本におけるチェーンマネジメントの革新からスタートして、
その小売産業化の課題まで、
高い見識に基づいた提言がなされた。

生鮮三品の取扱いマネジメントを、
アカデミズムとして評価してくださったのは、
ありがたかった。

そのあと、パネルディスカッション。
タイトルは「巨星、集う」
その記念写真。
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前列左から、
伊藤雅俊さん。
㈱セブン&アイ・ホールディングス名誉会長。
岡田卓也さん。
イオン㈱名誉会長相談役。
清水信次さん。
㈱ライフコーポレーション代表取締役会長兼CEO、
日本チェーンストア協会会長。
横山清さん。
㈱アークス代表取締役社長、
社団法人新日本スーパーマーケット協会会長。

後列は、真ん中が、
中内学園理事長の中内潤さん
右が流通科学大学学長の石井淳蔵さん、
左は、商学部教授の清水信年さん。
パネルディスカッションの司会。

パネルディスカッションは、
まったくかみ合わないように見えたが、
「士農工商」の序列への反骨と、
商売による社会変革の気概にあふれていた。
だからきわめてスリリングで、
私にはとても面白かった。

伊藤雅俊さん。
「お客様にご奉仕することは、
日本人が一番すぐれている。

そのうえで、財務比率を考え、
自己資本比率を意識した経営をする」

岡田卓也さん。
「小売業は平和産業であり、
地域産業、人間産業である。

その小売業が立派にならねばならない。
規模が大きいということではなく、
近江商人のように立派な商人であることだ」

清水信次さん。
「私たちは毎日、最末端で、
1億2600万人のお客に商品やサービスを手渡ししている。
ところが士農工商の域から脱し切れていない。
どうしても国民と一緒にやらねばならない」

清水さんは、
「国民生活産業消費者団体連合会設立の意義を訴えた。
重厚長大の「経団連」に対して、
軽薄短小の「生団連」。

横山清さん。
「ピークアウトした国内市場。
本格的なチェーンストア展開は、ツーレイト。
落穂拾いでも顧客ニーズに対応する道はある。
地方で、手を組んで、
協同組合と株式会社を、
足して2で割るようなことをやっている」

中国・成都から帰国したての伊藤雅俊さん、
シンガポールから帰ったばかりの岡田卓也さん。
「生団連」発足に駆けずり回る清水信次さん。
そして「新スパ」会長、
ユニバースとの統合で奮闘の横山清さん。

「ふるさとに語ることなし」
本意は異なるが、
坂口安吾の言葉が浮かんだ。

セミナー終了後、
六本木ヒルズ51階の会場に場所を移して、懇親会。
都心の青山、新宿を真下に眺望できる大きな窓がある。

まず、岡田さん、清水さんに挟まれて、懇談。
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翌日、すなわち今日は、同じ会場で、
コーネル大学主催のセミナーが開かれる。
新日本スーパーマーケット協会も主催。

それに合わせてコーネル大学から、
ジーン・A・ジャーマン名誉教授、
ビル・E・ドレイク教授が来日。

伊藤名誉会長を囲んで、
ドレイク教授(左)、ジャーマン名誉教授と奥様。
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さらに㈱カスミ会長の小濵裕正さん(左)、
岡田名誉会長、
ニッコーレン㈱会長の本間謙伍さん(右)、
私も加わり記念のショット。
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ジャーマン先生の奥様は、
1年ぶりの来日。
再会をとても喜んでくださった。
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岡田名誉会長を挟んで、小濵さんと。

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シンガポールでのアジア小売業大会の話で盛り上がった。

こちらは三菱食品㈱特別顧問の廣田正さんと清水名誉会長。
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清水さんは「生団連」の発足に向けて、
精力的に活動中。
この後も2つの会合があるとか。
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最近の政治家や経団連のトップたち、行政官たちを評して、
「頭は良いし、ハートもあるが、腹がない」
「腹が据わっていない、腹芸ができない、太っ腹がいない」
そんな意味。

ご支援を約束して、固い握手。

中内学園理事長兼学園長であり、
今回、新設されたリテール科学研究所所長をつとめる中内潤さん。
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「より豊かな社会の実現を目指す」ために、
それを支えるリテール機能を科学的に研究する。
これが研究所設立の理念。

そして流通科学大学の石井淳蔵学長(左)と、
石原武政特別教授。
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石井学長は今回、
私の著書『小売業界大研究』と
『小売業ハンドブック』を手に入れて、
読んでくださったとか。
「小売業のダイナミズムがよく描かれている」
(私)「あれは学生や新人向けにやさしく書いたものです」
「いや、高度なことが書かれていますよ」
お褒めいただいて、恐縮。

石原先生とは、
8月のUIゼンセン同盟流通部会の労使懇談会でご一緒した。
先生は基調講演をされ、
私がコーディネートを務めたパネルディスカッションにも登場いただいて、
しっかりと議論した。

さらに中内学園関係者。
専務理事の川一男さん。
シジシージャパンの顧問でもある。
元ダイエー専務。
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川さんには、もう30年も前に、
『販売革新』誌のインタービューで
お会いして以来のお付き合い。
お互いにがんばりましょうと、
ファイティングポーズで。

こちらは関西スーパーのコーネル・ジャパン・トリオ。
右から、伝説の1期生、福谷耕治さん、
奇跡の2期生、柄谷康夫さん
実行の3期生、岡秀夫さん。
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大阪からそろって駆けつけてくれた。

コーネル・ジャパンの卒業生たちも、
ジャーマン先生、ドレイク先生に会うために参集。
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皆で、お二人を囲んで記念写真。
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コーネル・ジャパン第1期の事務局長の大高愛一郎さん。
その幼馴染の㈱マルタ社長の渡辺太郎さんと、
セミナー前の昼食をご一緒。
渡辺さんは私のブログのファンだそうで、
大高さんが紹介してくれた。
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渡辺さんは、郡山と東京を往復しながら、
スーパーマーケットのプロモーションの会社を経営している。
この日は、郡山で東日本大震災を経験した時の話をしてくれた。
まじめでフラットな大高さんの友人だけあって、
とても真摯な語り口。
応援します。

シンポジウムには、商業界同友会からも、
勉強家が集った。
㈱ダスキンくりはら社長の栗原一博さん(真ん中)と、
㈱シバタ社長の大久保守晃さん。
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栗原さんは商人舎の発足の会の発起人のおひとりで、
来年の商業界ゼミナール実行委員長。

懇親会が終わって麻布十番の蕎麦屋に入ったら、
なんと、同じ会に参加していたお二人と、偶然、バッタリ。
オール日本スーパーマーケット協会の、
専務理事の松本光雄さん(真ん中)と常務の前田伸司さん。
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松本さんなじみの老舗蕎麦屋だそうで、
私はお薦めのかき揚げと太打ちそばをいただいた。
これが本当においしかった。

めまぐるしい一日だった。
「この一瞬の積み重ねこそ、
君という商人の全生涯」

今日も倉本長治先生の言葉を思い出していた。

<結城義晴>

2011年10月20日(木曜日)

全日食チェーン創業50周年記念大会での小泉純一郎講演

「小泉、声の張りがない」。
はじめ、私はメモをした。
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しかし話すごとに声は響き渡り、
手が大きく動き出し、
聴衆は引き込まれていった。

やはり、小泉の話には、
説得力があった。

元首相・小泉純一郎氏の講演。
全日食チェーン50周年記念大会でのこと。

「1988年に厚生大臣になったときに、
全国に100歳以上の人は2400人だった。
今年9月の発表では、
それが4万7000人を超えている。
1県当たりにすると1000人。
100歳はもう、珍しくはなくなった。
私たちは一つの目標を達成してしまった。
しかしただ生きているだけではだめだ。
100歳でも、
生きる喜びをもって暮らせる社会を、
つくること大事だ」

帰国してからのヨーロッパ報告、
申し訳ないことに中断している。

帰国してからも、
毎日毎日、あっちこっち動き回って、
いそがしい。

しかし、それが、
私の「喜びをもって」生きること。

昨日20日は、
東京台場のホテルグランパシフィック。
全日食 創業50周年記念「躍進チェーン大会」が、
開催された。
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会場にはいつものように、
取引先のメーカー・卸、関連企業のトップ、幹部、
政治・行政、業界団体、マスコミ、消費者、
そして全日食チェーンの加盟店オーナーたちが、
全国から駆け付けて、参集した。
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はじめに田中彰会長が開会のあいさつ。
全日食チェーン商業協同組合連合会代表理事。
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50年前
いくつかの業種は淘汰された。
だから覚悟をもって臨む必要がある。
天職としての商いの代を繋ぐ。
一時勝負ではない。

規模という経営資源が足りないことの自覚と覚悟。
だから衆知を結集し 絶対的競争力を培養する。
その機能を本部が持つ。

環境変化が起こっている。
それが店頭にそよと吹く風の中に含まれている。
それを、チェーン施策に変えていく。

隊列を整え、覚悟を決める。

一番目の車輪は行政の視点。
二番目の車輪は取引先。
三番目の車輪は地元の顧客。
そして4番目の車輪は、社員・幹部。
この4つのエンジンの総力で、全体を動かしていく。
4輪駆動をどう隊列をつくって、どう動かすか。

50周年を迎えた今年、
東日本大震災で東北・関東の加盟店が被災した。
全日食は、その被災地、被災加盟店の仲間を、
素早い商品供給で支援した。

復興、復旧のために、
地域のお客様との絆を大切に、
ボランタリーチェーンとしての絆を確認しつつ、
次の50周年に向かって、
地域商業の担い手になっていこう。

50年を感謝しつつ先を望みたい。

新たな決意表明だった。

第一部の記念講演は、
小泉純一郎元総理。
「日本の歩むべき道」
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2009年に政界を引退したが、
小泉節は健在。

「日本は1923年9月1日に、
関東大震災で10万5000人の死傷者を出した。
第二次大戦では300万人が亡くなった。
それでも日本は復興を果たし、平和を築いてきた。
今年大震災で3万人近い死者行方不明者がでたが、
日本は必ず復興する」

「オイルショック後、エネルギー政策は、
備蓄、省エネ技術の開発、代替エネルギーの開発の3つだった。
原子力への傾斜はここから始まっている。
フクシマ原発事故を体験し、
決して原子力エネルギーは安いものではないと知った。
地震、津波、台風、自然災害の多い日本には向かない。
エネルギー政策の変更はやむを得ない」

それが「生きる喜びを持った社会」につながる。

そんな話だった。

第二部は躍進チェーン大会。
大会会長のあいさつは、
全日本食品㈱社長の齋藤充弘さん。
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50年間の歩みと、全日食チェーンのイノベーションの軌跡を振り返りつつ、
50年目に起こった大災難の中から、我々は立ち上がっていこう。
仲良く、朗らかに「和の経済」で進んでいこうという決意表明だった。

この後、政治家や行政トップの来賓のあいさつが続いたが、
目玉は小泉進次郎衆議院議員。
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父上に似て、話はうまい。
女性経営者たちはみな、携帯で写真を撮りまくり。
女性ファンが多いのも父上譲り。

メーカーからは味の素㈱社長の伊藤雅俊さん。
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東日本大震災では、「製販配」サプライチェーンは、
ライフラインを守りきった。
これは大したものだった。
結局、お客様のすぐ隣でお客様の生活を守る者が勝者。
50年間、それをしてきた全日食チェーンに敬意を表したい

「命の素・食」を支えると、未来の生活が良くなる。
質の高い日本らしい食をつくっていきたい。

味の素という社名を「命の素」とひっかけて、
アピール。

卸からは三菱食品㈱の新社長・井上彪さんが、
祝辞を述べた。
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全日食チェーンを「若さあふれる馬力」と評した。
「その絆を深め、本部・加盟店一体となって、
機能強化してほしい」

二部の最後はこれも恒例の『大会宣言』
今年は、被災地のジュニアボード東北会議会長の服部浩幸さん
ジュニアボード全国会議前会長の寺島良昌さん
力強い宣言に、会場の全員が聞き入った。
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第三部は祝賀会。
会場設置の幕間は、恒例のバイオリン・カルテット演奏。
いつもながら、素敵な演出。
斎藤さんごのみか。
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そして祝賀会がスタート。
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全日食チェーン商業協同組合連合会の渡辺正之代表理事が、
開会のあいさつ。
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来賓祝辞に続き、いよいよ鏡開き。
取引先の新旧トップが壇上にあがり、1,2,3でよいっしょ。
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乾杯のあいさつは
サントリーフーズ㈱社長の栗原信裕さん。

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そして、いよいよ懇親。
まず齋藤充弘社長と、
三菱食品㈱特別顧問の廣田正さん。
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同じく三菱食品会長の中野勘治さん。
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「あなたは超人だ」と盛んに褒めていただいたが、
「褒め殺し?」
しかし「忙しすぎて体を壊すな」と、
優しいお気遣い。
心から感謝。

同じくスピーチの終わった井上彪社長。
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さらに中嶋隆夫副社長。
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中嶋さんには11月18日、
日本チェーンストア協会主催のパネルディスカッションで、
パネラーをお願いしている。
私がコーディネートする。
よろしく。

一方、三井食品㈱前社長で特別顧問の水足眞一さん。
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エコス㈱会長の平富郎さんと塩原屋㈱社長の笠原良一さん。
平さんはいつも「結城さんと一緒にアメリカに行きたい」といってくださる。
来年こそ、ご一緒しましょう。
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日本ボランタリーチェーン協会会長の小川修司さん。
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日本ボランタリーチェーン協会副会長の菅田茂さん。
㈱ジュエラーズジャパン社長。
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伊藤ハム㈱社長の堀尾守さん(右)と相談役の河西力さん。
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㈱伊藤園社長の本庄大介さん。
右は何度も登場しているが、
私の相棒・松井康彦さん。
商人舎エグゼクティブ・プロデューサー、アド・パイン代表。
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国分㈱東京支社第二部長の千木良治さん。
コーネル・ジャパン実行の第三期生。
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こちらは日経MJデスクの白鳥和生さん(右)と 、
記者の大島有美子さん (左)。
そこに㈱プラネット社長の玉生弘昌さん。
玉生さんは財団法人流通問題研究協会会長。
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中締めのあいさつはカルビー㈱社長の伊藤秀二さん。
万歳三唱でぴしっと決まった。
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全日本食品顧問の小川和夫さんと、監事の成田嘉一さん(右)。
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ご苦労様でした。
そして50周年おめでとうございます。

全日本食品㈱副社長の高畠滋夫さん。
齋藤充弘社長と二人三脚で、次の50年を目指す。
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最後の最後に、田中彰会長と。
創業50年おめでとうございます。
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閉会のあと、
赤いブレザーの事務局の皆さんが、
最後に集合。
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その皆さんの後姿を見つつ、私も帰路に。
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昨夜は、急に冷え込んだ。
お台場のベイブリッジが美しい。
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橋の下ではカラフルな屋形船。
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そのまま帰るにはもったいない。
景色を見ながら、お台場の夜を少し楽しんだ。
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50年は次の50年のためにある。

「この一瞬の積み重ねこそ、
君という商人の全生涯」  

故倉本長治商業界主幹の言葉が浮かんだ。

<結城義晴>

2011年10月19日(水曜日)

青森・丸大サクラヰ薬局のハッピー共栄会でドラッカーを語る

昨日から青森。

朝、羽田から青森へ。
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飛行機の窓から見た景色も、
白雲と紅葉が美しかった。
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到着した青森空港は寒かった。
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1871年、明治にすると4年、
廃藩置県の詔が発せられた。

現在の青森県には、5つの藩があった。
弘前藩、黒石藩、斗南藩、七戸藩、八戸藩。
さらに北海道渡島半島の館藩が加わって、
弘前県が成立。
それがやがて青森県となる。

つまりは青森県は5つの地域に分かれていたことになる。

私は日本のスーパーマーケットやドラッグストアのローカルチェーンはまず、
この旧藩の単位から始まっていると考えている。

全国的にみると、初めは、
3府302県あったという。
つまり300くらいの藩が単位だった。

これは現在の小選挙区制の300単位と、
シンクロしている。

小売業の最小商勢圏が、藩単位で形成され、

それが少しずつ統合していったと考えると、
日本のスーパーマーケット企業やドラッグストア企業が、
ローカルチェーンのオーバーカンパニー状態を示していることの説明がつく。

藩の単位ごとに生活習慣が異なり、
さらにその地域での人々の絆も、
強く深いものがあったからだ。

さて、昨日は、
㈱丸大サクラヰ薬局のハッピー共栄会で講演。
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丸大サクラヰ薬局は、
その青森県にドミナントを敷いて出店しているドラッグストア・チェーン。
ハッピー共栄会はその取引先の集まり。
そこでの講演。
今回で第6回目となる。

日曜日にフランス・パリから帰って、
まだ時差が残る。

夕方、ひどく睡魔に襲われるが、
夜中には目が冴える。

講演していても、
最初は自分の関心事に頭が集中する。
しばらく話していると、
本日のテーマに入っていくことができる。

代表取締役社長の櫻井清さんは、
今年、ジャパン・ドラッグストアショーの実行委員長として活躍。
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<㈱丸大サクラヰ幹部の皆さんと写真。私の左が櫻井清社長>

3月11日の東日本大震災の勃発の瞬間、
千葉県の幕張メッセを借り切って、
ドラッグストアショーの初日が開催されていた。

このショーを仕切ったのが、櫻井さん。
私のひとつ上の昭和26年生まれの、
薬剤師資格を持つ経営者。

だから同年配の志を同じくする者として、
尊敬しつつ、仕事ぶりを拝見してきた。

丸大サクラヰ薬局の創業は昭和47年10月。
平成22年9月期の売上高145億円、
23年は168億円。

オーナーシップ経営のローカル・ドラッグストアチェーンとして、
増収増益を堅持。

日本の地方企業のモデルのひとつ。

「ハッピー・ドラッグ」「ハッピー調剤」のバナーで、
地域密着の店舗展開。

私の講演は、
日本の小売業態のなかで、
ドラッグストアの位置づけをし、
今後の方向性を明らかにし、
そのうえでドラッグストアは、
「知識商人」によってしか成り立たないことを示した。

「基本的な経済資源、すなわち生産手段は、
もはや資本でも、天然資源でも、労働でもない。
それは、知識である」

「知識の、生産的使用への配賦の方法を知っているのは、
知識経営者であり、知識専門家であり、知識従業員である」

ドラッカーはナレッジ・ワーカーと呼ぶが、
私はこれをナレッジ・マーチャントと名付けた。

「夕食に招く客には教養のある人がよい。
だが、砂漠では教養のある人はいらない。
何かのやり方を知っている人がよい」

つまり仕事の専門家。
薬剤師をはじめとして、
ドラッグストアに勤める人々は、
まさにこの知識商人。

「マーク・トウェインが1889年に書いた小説の主人公、
コネティカット出身のヤンキーは教養ある人間ではなかった。
ラテン語もギリシャ語も知らず、
シェイクスピアを読んだこともなく、
『聖書』もほとんど読まなかった。
しかし彼は、機械のことなら、
電気を起こすことから電話機をつくることまで
すべて知っていた」

知識商人は、知識と知恵を駆使する。
教養は必要ない。
品性は不可欠だが。
「商売のこと、
商品のこと、
お客様のこと、
地域のこと。
これらを誰よりもよく知る専門家」

それが、知識社会の「知識商人」である、

このナレッジ・マーチャントを実現させるのが、
ドラッカー理論である。

今回の講演は、そのことを訴えたものとなった。
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そのうえで、
ドラッカー理論を、
できる限り分かりやすく解説し、
提案した。

いかがだったろうか。

最近の講演は、
どうしてもドラッカーの言葉や考え方が増えてくる。
それとアメリカやヨーロッパの現状の解読。

これが私の講演の特徴。
これが私のやり方。

ドラッカー先生の言い方ならば、
これが「自分の強み」。

自らの強みを知れ。
自らの強みを伸ばせ。
一流になれることに集中せよ

今日の最後はドラッカーの〈イノベーションの原理〉。

第一は、機会を徹底して分析する。

第二は、自分の目と耳で確認する。

第三は、焦点を絞り、単純なものにする。

第四は、小さくスタートする。

第五は、最初からトップの座をねらう。

ドラッカー先生のありがたさをつくづく感じた講演だった。
ドラッカー先生に心から感謝。

<結城義晴>

 

2011年10月18日(火曜日)

帰国後のニューズ雑感・糸井重里さんの「階段」と東北の大学受験率低下と大相撲の土俵の充実

糸井重里さんが毎日書いているブログ。
「今日のダーリン」
ウェブサイト『ほぼ日』こと、
「ほぼ日刊イトイ新聞」の巻頭言。

私のブログと同じに毎日書くが、
糸井さんの巻頭言は1日で消える。
2日目には見ることも、読むこともできない。

これも一つのやり方。

だから、どうしても、毎日、
このサイトに飛んでいかなければならない。
それを狙いとしている。

ただし、一定期間経ってから、
ひとつの読み物としてまとめられる。

その10月16日版。

「たいていのものごとは、
人がイメージしたいような『右肩上がり』では進まない。
うまく行く場合にしても、
階段のような感じになるもんだ」

これ、まったくの同感。

私もかつて『食品商業』の巻頭に書いた。
そして『メッセージ』という単行本にまとめた。

十箇月と一瞬

調査・研究とは、
十箇月の妊娠のようなものであり、
問題の解決とは、
ある朝の分娩のようなものである。

人間も組織も、
企業も店舗も商品も、
本来、段階型に成長する。
階段を登るように発展する。

十箇月の停滞に耐えて、
ある、ひとつの階段を登る。
停滞が長く、つらいほど、
登るステージは高い。

ああ、つらい。
ああ長い。
ああ、しんどい。
ああ退屈。

だからこそ
たったひとつのステップアップが
ああ、うれしい。
ああ尊い。

たとえば十箇月の
調査と研究。
一瞬の
問題解決。

この繰り返しが
仕事である。
その積み重ねが
革新となる。

糸井さんのダーリンは続く。

「ある程度は『右肩上がり』の斜面として進んで、
『停滞』という伸びない時期にさしかかる。
『スランプ』とかいわれるのも、こういうときだ。」

「で、その『停滞期』に気づくと、
何をどうしたらいいかジタバタとしたり、
新しい考えや、いままでとちがう状況に出合おうとする。
しばらくは、あたまの中が腫れたような感じで過ごす。
おかげで、また動き出せるようになって、進む。
『右肩上がり』が、少し進む」

「階段の『ステップ(足を乗せられる部分)』が、
『停滞期』というやつの別名なのだと、気づく」

「長年いろいろやっていると、
『ステップ』は、あるに決まってるものだとわかるから、
その時期に、心地よい危機感だとか、
目玉の付け替えだとか、
空気の入れ替えだとかをやると決めて準備ができる。
まだ『右肩上がり』の時期に、
『そろそろ、このままじゃだめだな』と思うようになる。
なんか、うまく行ってるときには、
どこかで『賞味期限切れ』の腐った匂いがしているのだ」

朝日新聞のニュース。
「東北の大学、志望者減」
福島大学が29%マイナス、東北大学も13%マイナス。

河合塾の調査。
「東京電力福島第一原発事故を含めた震災の影響とみる」
こうまとめられている。

悲しい感じがする。

読売新聞巻頭コラム『編集手帳』。
「厚生労働省の調査によれば、
福島、宮城、岩手の3県で、
不眠症に悩む人の割合が平均32.0% と、
震災前の約5倍に増えた」

「原発事故の影響が広範囲に及んでいるせいだろう」
大学への受験生の心持ちもわからないではない。
しかし、今年こそ東北地方、福島県の大学への希望者が増えてほしい。

日経新聞のスポーツ欄で始まった連載。
大相撲改革 待ったなし(1)ファン離れ 止められず
その最後のところ。

「『土俵が充実すれば人気は回復する』と繰り返す親方は多い。
新大関・琴奨菊の誕生など明るいニュースも出てきたが、
経営目標として『土俵の充実』というほどあいまいな言葉もない。
土俵外の具体的な改革を軌道に乗せなければならない」

コア・ビジネス・クォリティと
ホスピタリティ・クォリティ。

顧客ロイヤルティは、
その掛け算の結果のものだ。
足し算ではない。

土俵の充実がコアビジネス・クォリティ。
土俵外の具体的な改革こそ、ホスピタリティ・クォリティ。

どこの世界も、ホスピタリティ・クォリティの欠如が、
根本的な問題である。

そしていつまでも、
「土俵の充実」だけ言い続けている親方衆の存在が。

<結城義晴>

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