アメリカにいて、
日本時間に合わせてブログを書いていると、
曜日の感覚は完全に失われる。
日本の祝日に関してはもう、
完璧に実感できないが、
今日は「文化の日」。
その趣旨は、
「自由と平和を愛し、文化をすすめる」こと。
「自由と平等」ならば、
アメリカやヨーロッパが本場だし、
文化を進めることなら、
日米欧、変わりがない。
だから今日はニューヨーク・マンハッタンから、
自由と平等を愛し、文化をすすめよう。
さて日経新聞に、
EDLP(エブリデー・ロー・プライス)の話。
日経の定義は、「毎日一定の低価格で売る手法」
ここに付け加えなければいけない。
「1年間売価を固定して売る方法」
「毎日一定の低価格」って、いつまで?
「ずっと、ずっと」
それでもいい。
しかしインフレもあるし、デフレもある。
原材料費の高騰も低減もある。
だから1年で見直す。
日経の説明は、続く。
「米ウォルマート・ストアーズが推進してきた。
加工食品や日用品を中心に通常の食品スーパーと比べて
1~3割安いケースが多い。
チラシ代など販売促進費や人件費などのコストを削り、
浮いた分を値下げの原資に振り向ける」
ここで「コストを削り、浮いた分を値下げの原資に振り向ける」とある。
そう見えるかもしれないが、
無駄なコストを削減するのは、
どんな業種業態でも、
どんな企業でもやっている努力。
浮いた分を「値下げ原資」にするか、
利益にするかはそれぞれの企業の勝手。
当たり前のこと。
「日本ではメーカーなどが提供する販促金を
原資とした『特売』が主流だったが、
価格志向の強まりから
平均購入単価が下がるEDLPを導入する店が増えてきた。
ただ仕入れコストを下げるため、
商品数は減り、選択の幅が狭くなる面もある」
ここも、逆だ。
商品数、ブランド数を
絞り込んで大量に売るから、
仕入れコストを下げる交渉ができる。
例えば一つの品種の品ぞろえを1社に絞り込むと、
その1社の商品の売上げは数社分のものになる。
その1社に1品ずつの利益を小さくしてもらう。
その1社は売上げは増える。
総利益も増えるギリギリのところで、
仕入れ原価を決める。
店側も小売業側も、
1品当たりの粗利益はギリギリにして、
安く売る。
そうすると1品当たりの売れ数は爆発する。
それがEDLPの本質。
あえて「選択の幅を狭くする」のが、
エブリデー・ロー・プライスのポイント。
なぜか。
なぜ、あえて「選択の幅を狭く」するのか。
コモディティ化現象が進んでいるから。
どの商品も似たり寄ったり。
品質や機能が同質化してくる現象。
だから数品目も品揃えする必要はない。
ならば1アイテムに絞って、
EDLPをする。
客は喜ぶ。
1社だけのメーカーも利益は増える。
小売業も利益は増える。
ただしここで重要なのは、
その品種がコモディティ商品なのか否か。
日経になぜこんな定義が出てきたのか。
それはダイエーがEDLPを導入するというニュースから。
「ダイエーは食品や日用品を
恒常的に安く販売する『毎日安売り』手法を本格導入する。
チラシの削減など店の運営費を約1割抑える分、
店頭価格を通常より2~3割下げる仕組みで、
来年2月末までに30店、2~3年で60店に拡大する」
いなげやは既存店を業態転換。
EDLP型の「いなげや ina(いーな)21」のフォーマットを開発。
30店と1年で4割増やす。
ヤオコーもEDLP導入店を増やしている。
3月末時点で25店だったが、
10月末までに全体の3分1に当たる35店まで増やした。
コモディティ化現象が広がると、
EDLPは増える。
ヤオコーまでやっているというのは、
その証拠。
こちらこそ、
強調されねばならない。
さてEDLPの本場アメリカ。
第10回記念USAスーパーマーケット研修会は、
マンハッタンでの2日目を迎えた。
経営戦略SPコースにとっては、
視察最終日。
朝7時半にホテルを発って、
まずはヨンカースのスチューレオナードに向かう。
バスは渋滞もなく順調に走り、あっという間についた。
ニューヨーク州には3日前に、季節外れの大雪警報がでた。
その雪が駐車場のいたるところに残っている。
8時過ぎのスチューレオナード。
スタッフが黙々と品出し作業に励む。
お客でごった返す、いつものスチューレオナードではないが、
これもまた、学ぶによし。
ただし、スチューレオナードに、
イノベーションはあるのか。
店数が4店舗で、単位当たりの販売効率が高い店。
しかしそれはよほどの意識改革を続けなければ、
イノベーションは起こらない。
理念や哲学の素晴らしさは、変わらない。
問題はイノベーションだ。
2番目の視察店は、
トレーダージョー・ブルックリン店。
キャプテンのジェイソン君、34歳にインタビュー。
「トレーダージョーはフェアな会社、オネストな会社」
なぜ、フェアな会社か。
「私たちはEDLPをやっている。
売価を変えない。
こんなフェアなことはない」
トレーダージョーのEDLPも、
メーカーを絞り込んでいる。
ただしほとんどすべてがプライベートブランドだが。
そのプライベートブランドが、
魅力に満ち溢れている。
しかも売価をくるくる変えないEDLP。
トレーダージョーの場合は、
1年間変えないのではなく、
「ずっとずっと」変えない。
ジェイソン・キャプテンが淡々と、
しかし胸を張って「フェアな会社」と言い切るのは、
コモディティ化現象のなかで、
ノンコモディティのEDLPを全面展開する、
トレーダージョーのポジショニングが際立っていて、
他の追随を許さないからだ。
そしてこの会社は毎年10数店から30店の新店を出す。
成長のスピードのなかにこそイノベーションが起こる。
インタビュー後の記念撮影。
お礼と感謝をこめて固い握手。
いいインタビューだった。
イノベーションの本質が見えた。
(続きます)
<結城義晴>