今日の立冬、横浜は温かった。
2011年のスポーツ界も、
大詰めを迎えている。
そのスポーツ・ネタを三つ。
大阪の27年組田中さんのリクエストに、
ときどきは応えて。
まずプロ野球セントラル・リーグのクライマックスシリーズ。
東京ヤクルトスワローズの最後の打者畠山和洋が、
三塁横にファールフライを上げた。
それがキャッチされ、ゲームが終わった瞬間、
落合博満監督の眼鏡の奥に涙が見えた。
落合は昭和28年生まれ。
今現在、プロフェッショナル監督の最右翼。
いい涙だった。
そのプロ野球界のポスト・シーズン。
横浜ベイスターズが売却された。
買ったのはゲームソフト「モバゲー」を運営するDeNA。
春日真会長は、商品の「モバゲー」を球団名に入れたかった。
しかし、以下の「一声で消えた」と朝日新聞。
「モガベーという名前で
一つの球団とるってのは無理だよ」
渡辺恒夫読売巨人軍会長の言葉。
「モガベー」とは、
「モバゲー」のこと。
球団名は、「横浜DeNAベイスターズ」になるらしい。
私も横浜在住だから、本当は「横浜ベイスターズ」がいい。
アメリカでは「テキサスが勝った」などという。
これはテキサス・レンジャーズのこと。
州の名や市の名でチームを呼ぶのが、
なんとなく心地よいし、カッコよい。
「茂ヶ兵衛」は「モバゲー」より、
日本的語感であることには違いないが、
「茂ヶ兵衛」は球団名になり難いし、
「横浜」とつなげて「横浜茂ヶ兵衛ベイスターズ」は、
勘弁願いたい。
日経新聞『スポートピア』で樋口久子さんが書く。
「ゴルフに『引退』ある?」
「9月に今季限りの引退を発表した古閑美保さん」
「過去には大迫たつ子さん、村口史子さんも
『引退宣言』している」
樋口さんはそれが気に入らないらしい。
「自分の心にケリをつけたいという思いからか。
潔くもあるが、私はプロゴルファーに
『引退』という言葉はそぐわない気がする」
そして、言う。
「ツアーへの出場資格がなくなったりして
“フェードアウト”していくのが自然な流れ」
「フェードアウト」
ゴルフは人生そのものである。
プロの道も人生そのものなのだ。
TPP反対論議が喧しい。
日経新聞『人こと』
らでぃっしゅぼーや 緒方大助社長。
「安心・安全を求める消費者の意識の高まりは、
生産者にとって大きなチャンス」
食品宅配業で、有機野菜などの契約農家を全国に持つ。
「生産コストの3割程度を占める人件費負担に加え、
人手不足も長年の課題」として、
「農業に従事する人材派遣事業への参入も検討中」
「コストと人手の両課題を解決できる成功モデルを作りたい」
日本農業そのもののイノベーションが、
いまこそ求められる。
しかし朝日新聞のコラム『経済気象台』
コラムニスト龍氏が「本当に日本農業は弱いのか」と問う。
「筆者は、日本のコメ農家の生産性は
世界一級であるとの実感を持っている」
私の一族はもともと、
福岡市早良区で農業を営んでいた。
だから日本農業の生産性の高さを評価してもらうと、
素直に嬉しい。
「苗、田植え、草取り、水位調整、防虫、
収穫の一連の作業を観察すると、
機械化その他の技術の進歩で大幅に省力化され、
実際の投入時間当たりの生産性は極めて高い」
だから「むしろTPPを、
この高い潜在性を顕在化させる政策を
論議する好機とすべきだ」
まさに正論。
最後に『世界経営者会議』で、
㈱セブン&アイ・ホールディングス鈴木敏文会長が講演。
1982年に始めた「業務改革」の話が役に立つ。
時代を超えて有益な話だ。
「手掛けたのは、
売れる商品と売れない商品を見極める単品管理。
非常に地味な作業で社内に異論があった。
ただ、会社全体でやらなくては意味がない」
そこで「業務改革委員会」を立ち上げる。
この事務局に大久保恒夫さんが抜擢される。
「営業担当だけでなく、
すべての役員・幹部を出席させて、
問題の解決に乗り出した」
「一つのことを改革するには、
あらゆる部門が手を携えないといけない。
一部の部門だと、部分的な改善はできても、
改革にはつながらないからだ」
カルロス・ゴーン日産社長は、
「クロス・ファンクショナル・チーム」と呼んだ。
私もかつて会社の大改革の方法に、
「クロス・ファンクションによる改革」を選んだ。
「しばらくやっていくと、売れない商品、
いわゆる『死に筋』が多いことが判明した」
そこで「死に筋を排除することから始めた。
不良在庫を減らす。在庫を徹底的に少なくする」
小売業や卸売業の改革の根本。
派手なことや目立つことが、
イノベーションにつながるのでは、
断じてない。
セブン銀行立ち上げについても言及。
「銀行を立ち上げようと思ったのは、
セブン‐イレブンが銀行の代わりを務められたら
どれだけ便利になるだろうかと考えたからだ」
「銀行は3時までしか営業しておらず、普段着では行きにくい。
一方、セブン‐イレブンは24時間営業している」
つまりは顧客のニーズを優先したわけだが、
鈴木さんは面白い言い方をする。
「私は社員が
『顧客のために』ということを
禁じている」
なぜか。
「顧客のためにということは結局は
自分の立場でものを考えることにほかならない」
「顧客のためというのは、
顧客の立場でものを考えることとは
全く意味が違う」
ここが鈴木敏文の鈴木敏文たる所以だ。
最後に次の時代を予見する。
「これからはインターネットを制する者が
リアル(店舗)を制し、
ビジネスを制することになる」
これもまったくの同感。
「ネットスーパー」事業は10年間で
「売上高は350億円に達した」
「利益を出しているのは我々だけではないか」
コンビニに対しても、
「業界は飽和しているとの意見に対し、
私はしていないと言い続けている」
「他のコンビニがセブン‐イレブンになるなら飽和だが、
質に差があれば飽和はない」
イオン㈱名誉会長相談役の『岡田卓也の十章』。
私の㈱商業界への置き土産のひとつだが、
「建物が多いだけで店は少ない」が第1章。
鈴木さんと岡田さんの市場の見方は、
通じている。
最後の最後に、
「我々は常にリードし、
差異化しなくてはならない」
違いを出すことを「差異化」という。
すなわちこれが「ポジショニング」。
商人舎USA研修会メインテキストより。
「ポジショニングは自店と競合店との差異を明確にするために行われる。
最も効果的な戦略は
『容易に模倣できないポジション』を占めること。
〈ピーター・ドラッカー教授強調するところの「自らの強み」こそ、
ポジショニング戦略の要になる〉」
鈴木敏文さんの基本的な思想も、
このポジショニングにある。
<結城義晴>