小売り流通業界話題の企業統合&トップ人事。
マックスバリュ西日本会長の藤本昭さんが、
25日付で退任し、マルナカの代表取締役会長に就任。
マックスバリュ西日本は、
イオン・グループ最大にして、
最高利益を上げるスーパーマーケット企業。
藤本さんはそのマックスバリュ西日本の社長・会長を歴任し、
中国地方と四国瀬戸内海方面に明るい。
10月にイオン傘下に入ったマルナカと山陽マルナカの会長として、
これ以上ないといううってつけの人物。
私は昨年10月にヨーロッパで、藤本さんとご一緒した。
スーパーマーケット経営の専門家であり、
見識の高さ、経営力は定評のあるところ。
イオンの強みは、
藤本さんのような経営者群の存在にある。
マルナカの現社長・中山明憲さんは在任、
山陽マルナカは中山さんが代表権のない会長に就き、
新社長にはイオン琉球社長の栗本建三さんを迎える。
藤本、栗本両氏は常駐して、
イオン本体やマックスバリュ西日本と、
マルナカ・山陽マルナカとの連携に目を配る。
藤本さんを頂点に、
イオン傘下にある現在のマルナカは、
今後も店名や雇用体制に変化はない。
中国新聞によると、
イオン側は「両社の強みを生かし、
より満足していただける売り場づくりに励んでいく」とコメント。
マルナカは「イオングループの一員となり、
新生マルナカとして地域により貢献したい」と発言。
この件によって、イオンの売上高は、
セブン&アイ・ホールディングスを超えた。
すなわち現在の日本小売業界最大売上高企業はイオンとなった。
今朝の日経新聞『大機小機』。
「人口減少・高齢化と需給のミスマッチ」と題して、
コラムニスト希氏が書く。
「人口減少が既存産業での需要減退につながることは間違いない」
しかし、コラムニストの指摘はマイナスばかりではないという点にある。
「高齢化は新たな需要も生み出すはずである」
「現状は、その需要を生かし切れていない」
そして2つの問題点を挙げる。
第1は、「高齢化に伴い、顕著に需要が増加する分野が
公的コントロール下に置かれていることだ」
「病院の混雑ぶりや介護施設の不足をみれば、
莫大な未充足需要は明白だが、
自然に価格が上がったり、
供給が増えたりする仕組みにはなっていない」
つまり高齢化で需要が拡大する分野に、
市場原理が働いていないという指摘。
第2は「民間の努力不足」。
従来から「団塊世代の退職で巨大なシルバー市場が生まれる」との期待があった。
しかし現状は「シルバー市場は難しい」との嘆きばかり。
なぜか。
「若者は人数が減ってもマスである」
対して高齢者は、
「所得・資産・嗜好のあらゆる面で細分化されている」
「高度成長期のマス市場に慣れた企業には、
若者狙いの方が楽なのだ」
この指摘、実に鋭い。
その証拠となる現象を明らかにする。
「高齢化が進むこの国で、
街にはファストフード、ファストファッションが花盛りという奇妙な光景」
「円高などで産業空洞化を懸念する声が強いが、
人口減少社会で企業がグローバル市場に活路を求めるのは当然だ」
この見解にも私は同感。
「今求められるのは、
官民双方の工夫で内需=シルバー市場を活性化し、
空洞化を埋めていくことだろう」
まったくもって、賛成。
産業の空洞化を埋めるのが民間の仕事であるし、
小売りサービス業の役目だ。
さて昨日は、大阪。
AKR共栄会主催の第六回AKR協力会で講演。
AKR共栄会は、平成9年、
大阪市旭区小売市場連合会からスタート。
いわゆる「公設市場」の連合会。
AKRのAは旭区のA、
Kは小売り市場(Kouri-ichiba)のK、
Rは連合会(Rengokai)のK。
現在は、名称を変更し、
オール小売市場連合会(All Kouri-ichiba Rengokai)。
「共同仕入れ」「共同配送」事業によって、
市場活性化を目指す事業組織として活動している。
加盟小売り市場は、
大阪府、京都府、兵庫県、滋賀県にまたがる。
AKR共栄会本部は、
店舗支援として企画提案、店舗運営の経営アドバイス、
さらに店舗視察や研修、勉強会の支援を行うが、
今回の講演はその勉強会のひとつ。
私のタイトルは「製配販協業のマーケティング・マネジメント」
中小の小売業連合会に、
製造業や卸売業が協力する。
すなわち製配販の協業。
そのためのマーケティング・マネジメント論。
フィリップ・コトラーは言う。
「マーケティングは個人によっても行われるが、
交換には相当量の業務と技術が必要であり、
組織体がこれを行うのが普通である。
その意味でマーケティングとは組織体のマーケティングを指しており、
そこでマーケティング・マネジメントを論じることになる」
私は製配販の協業体全体で、
「マーケティング・マネジメントを展開せよ」と訴えた。
そのためにマーケティングの定義を確認し、サービス産業化を提案し、
そのうえで、コモディティとノンコモディティの持論を展開。
アメリカから持ち帰った「パワーレード」を掲げて、
コモディティ化現象を解説。
最後は、ドラッカーとクリステンセンのイノベーションのすすめ。
小売業には大動脈・大静脈もあるが、
毛細血管もなければならない。
両方が必要なのだと思う。
これは私の確信。
AKR幹部の皆さんと記念写真。
コープこうべから転籍し、
AKRの事務方を支える島本博史さん。
イオン・マルナカの統合で、
寡占化はますます進む。
一方で、かつての公設市場も、
毛細血管としてしっかり機能している。
私が考える「自然界の森」のような小売業界になってきた。
大木も雑草も、
環境に適応できる者が生き残る。
それが産業の空洞化を埋め、
新しい産業構造を構築するに違いない。
<結城義晴>