今日から12月。
大変な年の大変な師走。
今年最後の商人舎標語。
「みたび、
ひとつずつ、
すこしずつ、
いっぽずつ」
3月11日の東日本大震災。
そのあとの4月の標語は、
「ひとつずつ、すこしずつ、いっぽずつ」
さらに5月の標語は、
「まだまだ、ひとつずつ、すこしずつ、いっぽずつ」
そしてこの12月。
「みたび、ひとつずつ、すこしずつ、いっぽずつ」
水前寺清子ではないが、
「3歩進んで2歩下がる」
瓦礫撤去問題や原発問題などだけ見ても、
まだまだ、まだまだ、
「ひとつずつ、すこしずつ、いっぽずつ」
年末商戦に入る今日から、
そして大晦日の31日まで、
忘れてはならない。
「ひとつずつ、すこしずつ、いっぽずつ」
その意味で、今年の12月商戦は、
例年とは大きく異なる。
なんというか、
一つひとつの仕事を丁寧にやりたい。
かといって、大震災にかこつけて、
やるべきことをネグってはいけない。
そんな卑怯なことは許されない。
被災して、復旧・復興に奮闘している人たちに失礼だ。
朝日新聞の『天声人語』は3月22日版で訴えた。
「救国の散財」
「節電で薄暗い店、歯抜けの商品棚。
これも有事かと思う」
あのころを思い出す。
「工場や発電所、物流網がやられ、
停電や放射能の風評被害もある。
空気ではなく実を伴う消沈だ」
「放射能の風評被害」と、ずいぶん軽く見ていた。
「日本全土が現場、全国民が当事者であろう。
だが、皆が沈み込んではお金が回らず、
再生はおぼつかない」
「国費を被災地に集め、
懐に余裕のある向きは
『救国の散財』をしてほしい」
「将来に備えた蓄えもあろうが、
国難を皆で乗り越えてこその将来、
ここは東北のために放出しよう。
世界の終わりではない・・・・・・」
いま、この12月、ふたたび、
消費者には『救国の散財』を提案し、
小売りサービス業には、
そのための奮闘努力を奨励しよう。
それも丁寧に、
「ひとつずつ、すこしずつ、いっぽずつ」
Retail is Detail.
[神は細部に宿る]
それが今年の12月だ。
まず2011年12月の1カ月を概観しておこう。
第1週の金曜日12月4日から「人権週間」がスタートする。
1週間後の12月10日が「世界人権デー」。
1年の最後の月の初めの週に、
「人権の尊重」が謳われる。
今年は特に「人権週間」を大切にしたい。
第3週に入ると、12月14日水曜日は、
「赤穂浪士討ち入りの日」。
そして翌日の15日木曜日から、
今年も「年賀郵便特別扱い」開始。
いよいよ第4週。
木曜日22日は「冬至」。
昼が一番短い日。
「柚子湯」に入る。
冬至がゆもカボチャも、
提案したい。
冬至の翌日23日は天皇誕生日の祭日。
今年の天皇誕生日は金曜日。
そして24日土曜日がクリスマス・イブ、
25日日曜日がクリスマス当日。
今年のクリスマス関連はこの3連休。
だから23日・24日・25日には、
1年の総決算のつもりで、
売りまくる。
26日月曜日からは完全に和風の年末際商戦に入るが、
26・27・28までは通常日。
28日の水曜日が官公庁御用納めの日。
多くの一般会社も冬休みに入る。
しかしここでも、普通の休み。
結局、30日の晦日と、
31日の大晦日に、短期集中。
消費は高揚する。
後ろになるほど盛り上がる。
この時こそ『救国の散財』をお勧めしたい。
さて、昨日は上海小売業視察二日目。
今日はカルフールとウォルマート、
世界2強の上海の店舗を紹介しよう。
中国の小売業は、
総合スーパー=ハイパーマーケットが主役。
対抗はコンビニエンスストア。
もちろん百貨店も主役のひとつだが、
食品スーパーマーケットは脇役とならざるを得ない。
これは日本の高度成長期に似ている。
カルフールは2008年までハイパーマーケットの王者で、
売上高ナンバー1だった。
現在も、上海市民は総合スーパーと言えば、
カルフールを思い描く。
それだけ市民に浸透している。
私たちは昆山(クンザン)を訪れた。
百貨店とハイパーマーケットが両核となったショッピングモール。
百貨店はパクソン。
郊外の大衆的な百貨店。
モールを抜けて反対側に向かう。
するとカルフールが登場。
スロープで地下1階へ。
ワンフロア7000㎡のハイパーマーケット。
カルフールの中国売上高は、
2010年に57億3200万ドル。
1ドル100円換算で5732億円。
645店で店数はハイパーマーケット企業最大。
必需品の12品目は地域で一番低価を出す。
入り口を入ると、特売プロモーションスペース。
カルフールは全体に黄色と赤を基調色にしている。
だからブルーを配置して、「安さ」を強調。
この店は実に管理状態がいい。
入り口側から家電売り場。
そしてドライグロサリー。
店舗中央を広いコンコースが走り、
両サイドに部門が順に配置されていく。
①家電
②バザー(非食品雑貨)
③テキスタイル(衣料品)
④加工食品
⑤生鮮食品・惣菜
一番奥に生鮮を配して、
顧客を全店回遊させる仕掛け。
衣料品はブランド物は扱わず、
大衆品に徹する。
現在の上海の低所得層を狙っていることがよくわかる。
バザーと呼ぶ日用品雑貨売り場。
そして化粧用品・コスメティックス。
ソフトドリンクから始まるグロサリー。
コメは、自由に欲しいだけすくい取る販売方式。
乾物は平台でバラ陳列。
生鮮部門のトップは左サイドの青果部門。
ここでもばら売り中心。
右手には鮮魚部門。
水槽には生魚が泳いでいる。
その奥がR型平台に陳列された惣菜。
一番奥が精肉の対面コーナー。
中華料理は肉を多く使う。
そのバラエティ豊かな精肉売り場が、
延々と奥壁面沿いを占める。
漬物などもばら販売。
この店は実によく管理されている。
ただしまだ赤字。
食品の売上高が全体の7割を占める。
店長の張さんとディスカッションした。
私の隣。
真ん中は㈱万代副社長の山下和孝さん、
常務の不破栄さん。
今回のコーディネーターのシン・チエさん。
張さんはフランス人ばかりのカルフールの店長の中で、
中国人として頑張っている。
張さんが占う「中国の業態別の将来」。
「ハイパーマーケットとコンビニは成長する。
スーパーマーケットは淘汰される」。
張さんはアメリカ小売業にも明るい。
「スーパーマーケットで生き残るのは、
久光百貨店のフレッシュマートのようなハイクオリティの店」
私は、現在の上海は日本高度成長のときと似ていると考える。
あの時代、総合スーパー全盛だった。
しかし消費が成熟し、オーバーストアになってくると、
カテゴリーキラーとしてのスーパーマーケットが伸びてくる。
逆にハイパーマーケットは衰弱する。
張さんの意見と私の見方。
どちらが正解か。
歴史が証明することとなる。
議論に応じてくれた張さんに、
心から感謝。
さてカルフールを辞して、
ウォルマートに向かう。
五角場万達広場のウォルマート。
ちょっと古い店だが、ウォルマートの実力がよくわかる。
現在、グロサリーリテイラーとして中国ナンバー1。
2010年度年商99億6900万ドル。
1ドル100円で1兆円の手前。
ウォルマートは322店を中国で展開中。
3フロアの変則的な店舗だが、
この店も圧倒的に食品が強い。
入り口を入るとアイランド・プロモーション。
手が込んだアクション・アレー。
通路は広く天井も高い。
しかしアメリカの完成されたスーパーセンターとは、
全く違う店づくり、売場づくり。
ウォルマートは現地化を重視する。
だからハイパーマーケットの基本業態構成は、
アメリカと同じだが、
それが「分化した形」としてのフォーマットは、中国流。
だからアメリカと同じでなくとも、
一切、気にしない。
青果部門は平台展開中心のばら売り。
ばら売りしておいて、
売場の真ん中にラッピング担当員を配置。
まだまだ人件費が安いからできること。
しかし生鮮、特に青果は強い。
バナナ売り場。
葉物の平台。
こちらはパック野菜。
コメはカルフールと同じ売り方。
顧客が群がっている。
精肉部門も広い。
鮮魚コーナーは氷を敷き詰めて、
その上に商品を並べる。
精肉も対面方式の平台で、
奥で作業をする。
しかし何とも不衛生な感じ。
卵売り場は島陳列。
小玉のオーガニック卵が大量陳列されている。
ウォルマートが有機食品を扱うということは、
上海にもこれから、オーガニックブームがやってくる。
壁面に加工肉のショップ。
広いフロアの中央に惣菜対面売り場があって、
コンコースはそれを取り囲むようにU字型に設けられている。
レジ前の最後のスペースに「地方特産」のコーナー。
すべてばら売りで、自分で袋に入れて、
重量を測って、シールを張る。
それをレジに持っていく。
バルク売り場も広いし、品ぞろえが豊富。
ぐるりと回ってレジに戻る。
この2階の売り場が食品。
やはり7割がフードによって販売される。
総合スーパーのハイパーマーケットといっても、
強大な食品スーパーマーケット+非食品の構成。
それが上海の市民の生活を示している。
レジを出たところに焼き栗の出店がある。
もちろん外部業者だが、
ウォルマートの管理下の店。
売り子が寝ていた。
アメリカのウォルマートでは、
まず見られない光景。
つまりは、マネジメントが不在であることを物語っている。
ウォルマートの中国展開も、
まだまだ難関だらけだろう。
カルフールの張店長と、このウォルマートの売り子。
この落差をどう感じるか。
しかし上海のハイパーマーケットの現在のチャンピオンは、
実はカルフールでもウォルマートでもない。
明日、その主役が登場する。
<結城義晴>