結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2012年01月19日(木曜日)

「農場を持たない農業」と「はとの会」講演&セルコ新年会二元中継

日経新聞最終面 の『私の履歴書』。
元旦から元イギリス首相のトニー・ブレアが書いているが、
今朝のタイトルは「9・11」。
同時多発テロのときのこと。

ブレアは、2001年9月11日午後1時45分、
テロ直後、すぐに思う。
「これは世界を変える出来事だ」。

そして、「政府見解」を官邸から放送。

「これは米国とテロの戦いではない。
自由で民主的な世界とテロの戦いだ。
英国は、この悲劇のときに
米国の友人たちと肩を並べて立ち上がり、
我々も彼らと同じように、
この悪が世界から放逐されるまで
休んではならないのだ」

ブレアは、述懐する。
「肩を並べてという言葉を慎重に選んだ」。

なぜか。
「言葉ではなく、行動で測られるようになることを
意識していた」から。

さらに9月20日に、ニューヨークで発言。
「私たちは今、皆さんのそばにいます。
皆さんが失ったものは私たちが失ったものです。
皆さんの戦いは私たちの戦いです」

このブレアの発言を読んでいて、
東日本大震災のことを強く思った。

さてその日経新聞の一面トップ記事。
「小売りが低コスト農業」

セブン&アイ・ホールディングスと、
イオン、ローソンの取り組み。

まず、セブン&アイは1月下旬、
北海道中央部の東川町に、
子会社「セブンファーム北海道(仮称)」を設立予定。
出資はセブン&アイ同社が85%、
地元農家などが15%。

小売業、外食企業が運営する農場として、
国内最大規模。

生産量はブロッコリーやカボチャなど年間約1000トン。
夏場には「ほぼ毎日販売」可能となり、
「価格は市場経由に比べ1割ほど安くなる見込み」

私は一昨日から札幌にいたから、
雪景色を眺めながらも、
小売業の農業経営を思った。

一方、ローソンは「ローソンファーム」で、
「クラウドコンピューティングを使って、
農作業の即時管理を始める」。

クラウドとは「ネット経由でシステムを利用する」システム。
「農作業に当たる人がタブレット端末を持ち歩き、
農薬の使用量や収穫計画を入力する」。

システム開発はNEC。

イオンは富士通のクラウドシステムを導入して、
これまた子会社が運営する全国の農場で、
「気温、降水量や土の状態を把握」したり、
将来的には「需給予測」を目論む。

これは、野菜の「安定調達」、
そして「食の安心・安全」のため。

記事では、「『チェーンストア流』の農業」という表現をして、
「収益力を上げていく」とする。

日経新聞は『きょうのことば』でも、
「農業の大規模化」を取り上げて、
一面記事のフォローをしている。

「農業大規模化」の意味は、
「農地や経営体を集約して規模を大きくし、
農業の生産性を向上させること」

現在、日本の農家1戸当たりの平均農地面積は2ヘクタール。
アメリカは約200ヘクタール、フランスは50ヘクタール超。
小売業の店舗規模と同じで、小さいほど生産性は低い。
日本はアメリカの100分の1。

そこで、「政府は今後5年をめど」に、
「平地では20~30ヘクタール、
中山間地域では10~20ヘクタール規模に
集積させる計画」を打ち出す。

これにチェーンストアが乗った形。
「生産段階から品質を管理」できる。
さらに「農協や市場を通さないから、
「流通経費を省ける」。

かつて盛んに使われた言葉がある。
「工場を持たないメーカー」

実際に製造業であって、
自社工場を所有しないメーカーもある。
「ファブレスfabless」という。
「fab」は「fabrication facility」のこと。
それを「less」すること。
そのままの意味。

ファブレスのことを考えるならば、
本来、小売業は「農場を持たない農業」をこそ、
目指すべきだろうし、
セブン&アイやイオン、ローソンが、
所有と厳密な採算性を考慮に入れていないはずがないので、
これはポジティブなアクションと見てよいだろう。

しかし「工場を持たないメーカー」、
「農場を持たない生産者」の考え方は、
いまでも重要だと、私は思う。

さて昨日は、札幌で午前中、店回り。
サッポロドラッグストアーの2店舗を訪れた。
どちらもすばらしい店で、ちょっと驚いた。
このブログでの紹介は明日の予定。

午後は、講演。
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サッポロドラッグストアー「はとの会」新春セミナーでの講演。
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600人の予定が、それを大幅に超えて、
私自身、本当に盛り上がった。
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テーマは、
「2012年リテール産業におけるメガトレンド」
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熱心なご清聴、感謝したい。
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日本の小売業とドラッグストアの現状認識をしたうえで、
日本と欧米の、それぞれのトレンドを5つ説明した。
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トレンドといっても、
瞬間湯沸かしのようなものではない。
「操作的マーケティング」の提案ではなく、
「構造的マーケティング」の視点。

だからこの問題解決に当たっては、
腰を据えてかからねばならない。

ご理解いただけただろうか。

講演会が終わって、
ほんとうに意外な人に会った。
ユースキン製薬代表取締役社長の野渡和義さん。
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44年ぶりくらいの再会。
互いに、ずいぶん頭が薄くなった。
私が中学3年生、野渡さんが高校3年生の時に、
お別れして以来の再会。

私は中学高校と、横浜の一貫教育の私立学校に通った。
その器械体操部の3年先輩が野渡さんだった。

中学1年で入部して、
高校生と一緒に練習した。

野渡さんは私の一番のあこがれの先輩だった。
卒業したまま、互いに連絡もせず、
44年ぶりに、講演のあとでお会いした。

わざわざ川崎から駆けつけてくださったとのこと。
もちろんサッポロドラッグストアーの重要なお取引先。

この40年以上のことが、
走馬灯のように甦った。

講演が終わって、4人で写真。
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サッポロドラッグストアー社長の富山睦浩さん、
副社長の富山光恵さん(右)、
そして取締役営業本部長の富山浩樹さん(左)。

オーナーシップ経営の強みを十二分に生かして、
良い会社をつくってほしい。
後継者の浩樹さんとかたい握手。
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浩樹さんは4年前に、
私のアメリカ視察研修会に参加してくれて、
それ以来のお付き合い。

気分の良い講演会だった。

さて同じく昨日は、
横浜で会合が開かれていた。
2012年新春全国セルコグループトップ会。
所は恒例の新横浜国際ホテル。
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懇親会に先立って行われた特別講演会では、
手嶋龍一さんが「今後の日本外交」をテーマに講演。

手嶋さんは、NHKの報道畑を歩み、
現在は外交ジャーナリスト、作家として活躍する。
NHKワシントン支局長時代に9.11同時多発テロが起こり、
連日のように米国からリポートし続けた。
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2011年の世界動向を丁寧に追いながら、
2012年の共通課題をレクチャー。
さらに日本外交の稚拙さを鋭く指摘。

フクシマ原発事故のトップの対応をあげながら、
「『フクシマにブラックスワンが舞い降りた』と海外メディアが報じたが、
ブラックスワンとはあり得ないことが現実となること。
しかし、リーダーは『想像すらできない事態を想定し備えておけ』と、
核の語り部であるアルバート・ウォルステッター博士は言う。
リーダーにこそ、インテリジェンスが必要」
インテリジェンスとは、知能・知性や重要な事項に属する知識・情報。
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そして賀詞交歓懇親会。
はじめに協同組合セルコチェーン佐伯行彦理事長がごあいさつ。
㈱さえきホールディングス社長。
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「セルコグループは今年、前に打って出たい。
ナショナルブランド製品の単品に絞り込んだ共同仕入れ・共同販売、
女性の教育強化と女性パワー活用、
セルコライブネットにおける食品コンテンツの充実と
店頭デジタルサイネージによる情報発信を、積極的に進めていく」
私案の計画も発表し、会場を沸かせた。

そしてセルコチェーン役員が壇上に上がって、
一人ひとりの紹介。
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続いて、来賓祝辞。
はじめに経済産業省中小企業庁から岡本勇二商業課長補佐。
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「日本は99.7%が中小企業。
中小企業が頑張ってもらえる補助を行っていく」

農林水産省食料産業局からは、池渕雅和食品小売サービス課長。
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「鹿野農水大臣から現場主義で行け、と指示を受けている。
農林水産業の発展で日本の復興を果たしたい」

チェーンストア協会会長の清水信次さん
このブログに連日、ご登場。
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「日本は建国以来の豊かさを享受している。
こんな時代に優れたリーダーは出ない。
消費税アップは時期が悪い。
国民によく相談しろといいたい」

㈱商工組合中央金庫の中川祐一東京支店長。
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「良いことなのかそうでないのか、
復興貸付けが1兆2000億円を超えた」

企業再生に活用されるなら、良いことです。

そしてセルコ恒例の卸売業トップからの祝辞。
三菱食品㈱井上彪社長。
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「『足るを知り分かち合う』という、
日本人のDNA・倫理観をひろげていきたい」

国分㈱國分勘兵衛社長。
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「セルコの枠組みの中で、
力を結集すればできないことはないと信じる」

㈱日本アクセス田中茂治社長。
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「してもらう、する、してあげるという3つの幸せがあるが、
してあげる幸せを求めていきたいと小学3年生の少女が書いている。
流通も儲けさせてあげる幸せを追求しよう」

伊藤忠食品㈱濱口泰三社長。
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「マーケットはいくらでもある。
bigよりgoodな企業に。包み紙より中身が大事」

三井食品㈱長原光男社長。
「現場が強ければ問題は解決する。
創造的イノベーションに取り組んでいきたい」
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そして乾杯は協会理事相談役の平富郎さん。
㈱エコス会長。
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「セルコは学校。セルコで学び共に成長しよう」

懇親に次ぐ懇親のあとの、
中締めは井原實副理事長。
㈱与野フードセンター社長。
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「会社の価値は社長で決まると平さんに教わった。
社長はもっと勉強をしよう」

3本締め、決まった(そうだ)。

今日のブログは札幌・横浜の二元中継。

44年ぶりに野渡先輩に合うことができて、
感激ひとしお。

その面でも富山さんに感謝。

<結城義晴>

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