日経新聞最終面 の『私の履歴書』。
元旦から元イギリス首相のトニー・ブレアが書いているが、
今朝のタイトルは「9・11」。
同時多発テロのときのこと。
ブレアは、2001年9月11日午後1時45分、
テロ直後、すぐに思う。
「これは世界を変える出来事だ」。
そして、「政府見解」を官邸から放送。
「これは米国とテロの戦いではない。
自由で民主的な世界とテロの戦いだ。
英国は、この悲劇のときに
米国の友人たちと肩を並べて立ち上がり、
我々も彼らと同じように、
この悪が世界から放逐されるまで
休んではならないのだ」
ブレアは、述懐する。
「肩を並べてという言葉を慎重に選んだ」。
なぜか。
「言葉ではなく、行動で測られるようになることを
意識していた」から。
さらに9月20日に、ニューヨークで発言。
「私たちは今、皆さんのそばにいます。
皆さんが失ったものは私たちが失ったものです。
皆さんの戦いは私たちの戦いです」
このブレアの発言を読んでいて、
東日本大震災のことを強く思った。
さてその日経新聞の一面トップ記事。
「小売りが低コスト農業」
セブン&アイ・ホールディングスと、
イオン、ローソンの取り組み。
まず、セブン&アイは1月下旬、
北海道中央部の東川町に、
子会社「セブンファーム北海道(仮称)」を設立予定。
出資はセブン&アイ同社が85%、
地元農家などが15%。
小売業、外食企業が運営する農場として、
国内最大規模。
生産量はブロッコリーやカボチャなど年間約1000トン。
夏場には「ほぼ毎日販売」可能となり、
「価格は市場経由に比べ1割ほど安くなる見込み」
私は一昨日から札幌にいたから、
雪景色を眺めながらも、
小売業の農業経営を思った。
一方、ローソンは「ローソンファーム」で、
「クラウドコンピューティングを使って、
農作業の即時管理を始める」。
クラウドとは「ネット経由でシステムを利用する」システム。
「農作業に当たる人がタブレット端末を持ち歩き、
農薬の使用量や収穫計画を入力する」。
システム開発はNEC。
イオンは富士通のクラウドシステムを導入して、
これまた子会社が運営する全国の農場で、
「気温、降水量や土の状態を把握」したり、
将来的には「需給予測」を目論む。
これは、野菜の「安定調達」、
そして「食の安心・安全」のため。
記事では、「『チェーンストア流』の農業」という表現をして、
「収益力を上げていく」とする。
日経新聞は『きょうのことば』でも、
「農業の大規模化」を取り上げて、
一面記事のフォローをしている。
「農業大規模化」の意味は、
「農地や経営体を集約して規模を大きくし、
農業の生産性を向上させること」
現在、日本の農家1戸当たりの平均農地面積は2ヘクタール。
アメリカは約200ヘクタール、フランスは50ヘクタール超。
小売業の店舗規模と同じで、小さいほど生産性は低い。
日本はアメリカの100分の1。
そこで、「政府は今後5年をめど」に、
「平地では20~30ヘクタール、
中山間地域では10~20ヘクタール規模に
集積させる計画」を打ち出す。
これにチェーンストアが乗った形。
「生産段階から品質を管理」できる。
さらに「農協や市場を通さないから、
「流通経費を省ける」。
かつて盛んに使われた言葉がある。
「工場を持たないメーカー」
実際に製造業であって、
自社工場を所有しないメーカーもある。
「ファブレスfabless」という。
「fab」は「fabrication facility」のこと。
それを「less」すること。
そのままの意味。
ファブレスのことを考えるならば、
本来、小売業は「農場を持たない農業」をこそ、
目指すべきだろうし、
セブン&アイやイオン、ローソンが、
所有と厳密な採算性を考慮に入れていないはずがないので、
これはポジティブなアクションと見てよいだろう。
しかし「工場を持たないメーカー」、
「農場を持たない生産者」の考え方は、
いまでも重要だと、私は思う。
さて昨日は、札幌で午前中、店回り。
サッポロドラッグストアーの2店舗を訪れた。
どちらもすばらしい店で、ちょっと驚いた。
このブログでの紹介は明日の予定。
午後は、講演。
サッポロドラッグストアー「はとの会」新春セミナーでの講演。
600人の予定が、それを大幅に超えて、
私自身、本当に盛り上がった。
テーマは、
「2012年リテール産業におけるメガトレンド」
熱心なご清聴、感謝したい。
日本の小売業とドラッグストアの現状認識をしたうえで、
日本と欧米の、それぞれのトレンドを5つ説明した。
トレンドといっても、
瞬間湯沸かしのようなものではない。
「操作的マーケティング」の提案ではなく、
「構造的マーケティング」の視点。
だからこの問題解決に当たっては、
腰を据えてかからねばならない。
ご理解いただけただろうか。
講演会が終わって、
ほんとうに意外な人に会った。
ユースキン製薬代表取締役社長の野渡和義さん。
44年ぶりくらいの再会。
互いに、ずいぶん頭が薄くなった。
私が中学3年生、野渡さんが高校3年生の時に、
お別れして以来の再会。
私は中学高校と、横浜の一貫教育の私立学校に通った。
その器械体操部の3年先輩が野渡さんだった。
中学1年で入部して、
高校生と一緒に練習した。
野渡さんは私の一番のあこがれの先輩だった。
卒業したまま、互いに連絡もせず、
44年ぶりに、講演のあとでお会いした。
わざわざ川崎から駆けつけてくださったとのこと。
もちろんサッポロドラッグストアーの重要なお取引先。
この40年以上のことが、
走馬灯のように甦った。
講演が終わって、4人で写真。
サッポロドラッグストアー社長の富山睦浩さん、
副社長の富山光恵さん(右)、
そして取締役営業本部長の富山浩樹さん(左)。
オーナーシップ経営の強みを十二分に生かして、
良い会社をつくってほしい。
後継者の浩樹さんとかたい握手。
浩樹さんは4年前に、
私のアメリカ視察研修会に参加してくれて、
それ以来のお付き合い。
気分の良い講演会だった。
さて同じく昨日は、
横浜で会合が開かれていた。
2012年新春全国セルコグループトップ会。
所は恒例の新横浜国際ホテル。
懇親会に先立って行われた特別講演会では、
手嶋龍一さんが「今後の日本外交」をテーマに講演。
手嶋さんは、NHKの報道畑を歩み、
現在は外交ジャーナリスト、作家として活躍する。
NHKワシントン支局長時代に9.11同時多発テロが起こり、
連日のように米国からリポートし続けた。
2011年の世界動向を丁寧に追いながら、
2012年の共通課題をレクチャー。
さらに日本外交の稚拙さを鋭く指摘。
フクシマ原発事故のトップの対応をあげながら、
「『フクシマにブラックスワンが舞い降りた』と海外メディアが報じたが、
ブラックスワンとはあり得ないことが現実となること。
しかし、リーダーは『想像すらできない事態を想定し備えておけ』と、
核の語り部であるアルバート・ウォルステッター博士は言う。
リーダーにこそ、インテリジェンスが必要」
インテリジェンスとは、知能・知性や重要な事項に属する知識・情報。
そして賀詞交歓懇親会。
はじめに協同組合セルコチェーン佐伯行彦理事長がごあいさつ。
㈱さえきホールディングス社長。
「セルコグループは今年、前に打って出たい。
ナショナルブランド製品の単品に絞り込んだ共同仕入れ・共同販売、
女性の教育強化と女性パワー活用、
セルコライブネットにおける食品コンテンツの充実と
店頭デジタルサイネージによる情報発信を、積極的に進めていく」
私案の計画も発表し、会場を沸かせた。
そしてセルコチェーン役員が壇上に上がって、
一人ひとりの紹介。
続いて、来賓祝辞。
はじめに経済産業省中小企業庁から岡本勇二商業課長補佐。
「日本は99.7%が中小企業。
中小企業が頑張ってもらえる補助を行っていく」
農林水産省食料産業局からは、池渕雅和食品小売サービス課長。
「鹿野農水大臣から現場主義で行け、と指示を受けている。
農林水産業の発展で日本の復興を果たしたい」
チェーンストア協会会長の清水信次さん。
このブログに連日、ご登場。
「日本は建国以来の豊かさを享受している。
こんな時代に優れたリーダーは出ない。
消費税アップは時期が悪い。
国民によく相談しろといいたい」
㈱商工組合中央金庫の中川祐一東京支店長。
「良いことなのかそうでないのか、
復興貸付けが1兆2000億円を超えた」
企業再生に活用されるなら、良いことです。
そしてセルコ恒例の卸売業トップからの祝辞。
三菱食品㈱井上彪社長。
「『足るを知り分かち合う』という、
日本人のDNA・倫理観をひろげていきたい」
国分㈱國分勘兵衛社長。
「セルコの枠組みの中で、
力を結集すればできないことはないと信じる」
㈱日本アクセス田中茂治社長。
「してもらう、する、してあげるという3つの幸せがあるが、
してあげる幸せを求めていきたいと小学3年生の少女が書いている。
流通も儲けさせてあげる幸せを追求しよう」
伊藤忠食品㈱濱口泰三社長。
「マーケットはいくらでもある。
bigよりgoodな企業に。包み紙より中身が大事」
三井食品㈱長原光男社長。
「現場が強ければ問題は解決する。
創造的イノベーションに取り組んでいきたい」
そして乾杯は協会理事相談役の平富郎さん。
㈱エコス会長。
「セルコは学校。セルコで学び共に成長しよう」
懇親に次ぐ懇親のあとの、
中締めは井原實副理事長。
㈱与野フードセンター社長。
「会社の価値は社長で決まると平さんに教わった。
社長はもっと勉強をしよう」
3本締め、決まった(そうだ)。
今日のブログは札幌・横浜の二元中継。
44年ぶりに野渡先輩に合うことができて、
感激ひとしお。
その面でも富山さんに感謝。
<結城義晴>