今週は疲れた。
充実した日々であることは間違いないが、
それでも肉体的、精神的に疲労感が残る。
日経新聞夕刊に、
「シニア消費100兆円、
昨年個人支出の44%」の記事。
見出しだけですべてを表している。
第一生命経済研究所・熊野英生首席エコノミストの推計。
シニア世代とは「60歳以上」。
2011年の60歳以上の消費支出額は、
約101兆2000億円。
前年比でプラス2.4%。
これは消費全体の44%。
総務省の家計調査によると、
高齢者世帯(世帯主が65歳以上)の1カ月の消費支出は、
直近ピークの2007年からマイナス5%。
しかしシニア人口は増加した。
団塊の世代がシニアになったから。
1947年生まれから始まる団塊の世代。
最初の47年組が65歳を迎える。
シニア世代はいつも得をしてきた。
もともと教育費や住居費の負担が少ない。
だから所得をストレートに消費支出に回す、その割合が高い。
今年、60歳を迎え、
シニア世代に入る大量退職者たちによって、
シニア市場はさらに拡大する。
今日の夕方から、
私は中学高校時代の友人7人で、
恒例の新年会を開いた。
「ひこばえの会」
高校時代に文学同人誌をやっていた。
横浜の聖光学院。
あの小田和正が3期生の、
ちょっとした名門。
その8期生の仲間。
全員が、今年、もしくは来年の初めに、
60歳となる。
還暦でシニアに入る。
だからその消費の中身や、
ターゲッティング、マーケティング、
私には良くわかる。
さて、日経新聞『人こと』に、
日本チェーンストア協会清水信次会長登場。
「関東大震災の時は増税せずに、
現在の金額で40兆円を国が投じて、
5年で東京を復興させた」。
「いかに苦境を脱してきたのか、
歴史に学ぶべきだ」。
これが清水さんの持論。
オットー・ビスマルクの言葉。
「賢者は歴史に学び、
愚者は経験にしか学ばない」
昨日20日は、その清水さんと一緒だった。
日本チェーンストア協会賀詞交歓会が行われた。
会場は赤坂のホテルニューオータニ。
東京も横浜も、この日初雪を観測し、
午後には氷雨に変わった。
懇親会に先立ち、15時から
協会員向けの「新春パネルディスカッション」が行われ、
私はパネラー兼コーディネーターを務めた。
14時にはホテルに着き、控え室で資料の最終チェック。
会場は本館1階の鳳凰の間。
前列には協会理事の経営トップの面々が座り、
その後ろには、たくさんの聴講者。
850名を超える参加となった。
テーマは
「アメリカ・ヨーロッパ・アジア・日本の流通業の
現状と今後の予測」
テーマと人選は清水会長のご指名。
パネリストは『人こと』に登場した清水さんご自身。
㈱ライフコーポレーション会長・CEO。
もうお一人は、小濵裕正㈱カスミ会長。
はじめにコーディネーター役の私から
FORTUNE誌「グローバル500」をベースに
海外小売業ランキングを整理し、
5つのトレンドを問題提起。
これに対し、小濵さんがアメリカ小売業の動向と、
スーパーマーケットの注目される経営戦略を、
見事に整理。
1.小型化
2.ネットショッピング
3.サスティナブル
4.PB開発進化
5.ローカル(地産地消)
6.ESLP(正札販売)
この見解は、私と同じ。
小濵さんは指摘する。
「アメリカの小売業に学ぶものはないという人もいるが、
アメリカのイノベーション力、革新する魂には、
日本はかなわない」
その国内マーケットについては
1.コンビニエンスストアの革新性
2.価格の2極化
3.GMS出店のスローダウン
三点を挙げて見解を述べてくれた。
一方、清水さんは、
中内功ダイエー創業者の志と偉業や、
自らの経験と経営を振り返りつつ
「私は商品のことがわからないが、
時代の変化の匂いは感じてきた。
わからないということを知っているから、
できる人を選んで、任せた」
自らの経営哲学を語ってくれた。
清水さんの発言を受けて、
私はサム・ウォルトンの戦中・戦後の試練の話をした。
試練は商人を成長させる。
清水さんや小濵さんを見ていると、
それが本当によくわかる。
小濵さんが最後に私に質問。
「大規模化やM&Aは進むか。
そして中国など海外への進出はいかに」
私は答えた。
「欧米と同じとは言わないが、
日本でも寡占化が進み、大規模化が進む。
ただしそれは同一資本によるものだけではない。
ボランタリーチェーン、協業化などでも、寡占化は進む。
中国など海外への進出は、
国際競争力のある業態によって、
成し遂げられる。
それはコンビニであり、ユニクロである」
それに対して小濵さんは、
さらに自ら、回答を用意していた。
「小売企業の大規模化は、
バイイングパワーの獲得によって、
製造業から主導権を取り戻すといったことが目的ではない。
マーチャンダイジングをすることが目的なのだ」
まさに卓見。
最後に、小濵さんのお奨め本。
故上野光平先生著『流通産業の思想と戦略』(リブロポート刊)
上野先生先生の遺作集で、私も編集のお手伝いをした。
商業界の雑誌に掲載され、
この本に転載された論文はすべて、
私が選んだ。
小濵さんはこの本に、
「現在起こっている問題はすべて指摘されている」と発言。
「上野さんは流通業界唯一の思想家だった」と、
しみじみと語った。
私は突然のことで、驚いたが、
ほんとうに嬉しかった。
上野先生は商人舎最高顧問の杉山昭次郎先生の盟友。
30年前、私は、
その研究会の門前の小僧をやっていた。
そんなことを最後に思い浮かべるパネルディスカッション。
90分はあっという間に終了。
ご清聴に感謝したい。
そして会場を変えて新年賀詞交歓会。
入り口金屏風の前では会長、副会長がお出迎え。
会場はごらんのとおり、超満員。
開会のあいさつは清水信次協会長。
「やっと生活者、消費者のための生団連が昨年11月に誕生した。
2年間頑張る。協力をお願いしたい」
その後来賓の政治家たちの祝辞が続き、
乾杯は三菱食品㈱社長の井上彪さん。
与野党の政治家が駆けつけて、乾杯!
そのあと名刺交換で会場はごった返し。
その間隙をすり抜けながら、私も懇親。
㈱平和堂の夏原平和社長。
日本スーパーマーケット協会長、㈱ヤオコー会長の川野幸夫さん。
大創産業㈱社長の矢野博丈さん。
㈱ライフコーポレーション社長の岩崎高治さんと、
三菱食品㈱専務の中嶋隆夫さん(右)。
第一屋製パン㈱の面々と社長の細貝理栄さん。
㈱伊藤園の本庄大介社長(隣)、
江島祥仁副社長(左)、本庄周介副社長。
右端は、商人舎エグゼクティブ・プロデューサーの松井康彦。
アドパイン代表。
最後に清水さんと。
清水さん85歳、大活躍の一日だった。
お疲れ様でした。
「シニア世代100兆円」の話題にふれたが、
その上の世代が、
まだまだ頑張っている。
清水さん80代、小濵さん70代、
今年60代を迎える私など、
まだまだ門前の小僧。
しかしそう思うだけで、
エネルギーが湧きあがってくる。
「今週は疲れた」などと口に出してはいられない。
みなさんも、良い週末を、
「元気をだそうよ、
それがあなたの仕事です」
<結城義晴>