日経新聞『文化往来』で、
角田光代さんの「曽根崎心中」を評論。
近松門左衛門が人形浄瑠璃向けに書いたものを、
翻案した同タイトルの小説。
書き終えた角田さんの述懐。
「恋を発展させた形が愛と思っていたが、
恋と愛は別物だと分かった」
英語で表せば、
恋も愛も、
どちらもlove。
「恋をまっとうさせると心中になる」
と、角田さん。
つまり、心中から逆に考察すると、
恋に至るのであって、
心中は愛からは起こらない。
シェークスピアのロミオとジュリエットは恋だった。
曽根崎心中の徳兵衛とお初も恋だった。
しかし十字架で磔されたイエス・キリストは、
愛だった。
心中を、自殺を、キリストは禁じた。
両者は全く正反対の概念だ。
44歳の直木賞作家角田光代が今、
そのことに気がついたということの方が驚きだが。
今日は午後、池袋の立教大学キャンパス。
入試も終わって、合格発表の時期。
蔦の絡まる1号館ボードに、
合格者の番号が掲示されていた。
さて、昨日の日経新聞の記事。
「コンビニ大手、複数店オーナー拡大」
複数の店舗を経営し、運営する加盟店オーナーの比率。
大手チェーン5社合計で、
2007年度末12%強が、
2011年度末20%強になる。
「総店舗数に対する複数店オーナーの店舗の比率は、
07年度末の約26%から11年度末は40%強まで伸びる」。
つまり複数店といっても、
一人で3店、4店、5店、10店と、
支店経営するオーナーがいるということ。
それを増やそうという動きがあるということ。
その複数店オーナー、
セブン-イレブンは少ない。
ファミリーマートは55%、
ローソンは50%。
我が商人舎の発起人の一人泉澤豊さんは、
その究極の達人。
セブン-イレブン加盟店から始めて、
複数店に挑戦。
同チェーンが複数店を歓迎していなかったので、
サンクスに乗り換えて、
経営する㈱CVSベイエリアは、
上場企業となった。
このたびサークルKサンクスを離れて、
ローソンのエリアフランチャイザーに転身。
泉澤さんが先鞭をつけたようなものだが、
大手チェーン各社は、
「複数店オーナーに優遇策を導入」。
ローソンは積極的で、
2010年春から新しい制度を設けた。
名づけて「マネジメントオーナー」制。
4店舗以上を持つジーをこう呼ぶ。
現在、64人。
「ほとんどが法人経営で、
本部は人材育成や税務を指南する」。
新浪剛史さん、このあたり上手ですね。
さらに2店目以降の加盟金を減額する。
ファミリーマート。
「5店、10店と増えるごとに、
本部が利益に応じて支払う奨励金の率を引き上げる」。
あまり歓迎していなかったセブン-イレブンも、
一昨年の2010年に、とうとう、
「ロイヤルティ率の軽減幅を3ポイント引き上げた」。
コンビニのフランチャイズ・システム自体にも、
イノベーションが図られている。
しかしこれによって、
コンビニの店舗拡大はさらに加速される。
大手5チェーンの来期出店計画は、
約3400店で、過去最高。
「飽和状態が迫っている」
こう評されることを嫌うこの業界だが、
算数で考えても、それは否定できない。
複数店経営オーナーが増え、
エリア・フランチャイザーやマルチ・フランチャイザーが増加してくると、
次の戦略目標を定めねばならない。
考えられるのは、二つしかない。
第1は業態やフォーマットの新開発と転換、
第2は海外進出。
もう一つあるとすれば、
今日の日経新聞の記事。
「ユニー、サークルKサンクスを完全子会社化」
そう、コンビニチェーンとしての成長拡大はそこそこであっても、
グループの収益構造に大いに貢献してくれればいい。
この考え方。
ユニーは小売業界第5位、
チェーンストア第3位。
2011年2月3月期決算で、
第1位セブン&アイ・ホールディングス、
第2位イオン
第3位ヤマダ電機
第4位三越伊勢丹ホールディングス。
この4社に次ぐ第5位。
しかし、中部地方に本拠を置くこともあって、
マスコミへの露出度も低く、
実力に比べて評価は高くない。
私は、それが「ユニーの強み」だと思っているが、
そのユニーがコンビニ子会社のサークルKサンクスを、
株式公開買い付けで完全子会社化する。
目途は7月中旬で、サークルKサンクスは上場廃止。
サークルKサンクスの昨2011年12月末時点の店舗数は、
6248店。
堂々たる4ケタチェーンだ。
しかし先ほどのCVSベイエリアの離脱など、
事件も起こっている。
そこでグループ・シナジーの最大化を図る。
この戦略は正しい。
業界内からは「遅い」という声も聞こえているが。
私はいつも言う。
「正しいことをする場合、
いつだって、まだまだ遅くはない」
持株会社の名称は「ユニーグループ・ホールディングス」。
ユニーの前村哲路社長が会長兼最高経営責任者(CEO)、
サークルKサンクスの中村元彦社長が社長兼最高執行責任者(COO)。
これも今のところ、妥当な人事で、
これしかない。
当面はサークルKサンクスがユニー・グループを、
収益面で支えるに違いない。
セブン&アイ・ホールディングスにおけるセブン-イレブンのように。
サークルKサンクスは、
グループの相乗効果を活かしつつ、
飽和の中の二つの戦略を志向する。
記事にもあるように、
「早ければ来年中にもサンクスの海外1号店を出す計画」。
しかしこの面でも、出遅れ感は否めない。
それでも「正しいことをする場合、
いつだって、まだまだ遅くはない」
頑張ろう、前村さん。
ユニーの強みを活かして。
では、みなさん、より週末を。
<結城義晴>