寒い日が続きます。
しかしそれも、
すこしづつすこしづつ春けふの空
〈宇都宮市・小野寺七十六 朝日俳壇より〉
私たちはいつも、
一心不怠 成長無限
今月の商人舎標語。
今日の日経新聞最終面の『交遊抄』。
立教学院理事長の糸魚川順さんが、
交遊のお相手として登場。
書き手は北越紀州製紙社長の岸本晢夫さん。
「日本人でもこのようなすごい国際人がいるのか」
岸本さんはそう思ったそうだ。
1992年のハーバードビジネススクール。
お二人は上級経営プログラムで出会った。
「どんな話題でも相手の立場を尊重し、理解を得る。
外国人との間合いは絶妙だった」
糸魚川理事長は私も年に何度か、
第一食堂での交流会でお顔を拝見するが、
「国際紳士」そのもの。
今度お会いしたら、
この話を聞かせてもらおう。
さて、日経新聞のスポーツ欄。
私は高く評価している。
写真を除いて。
そのコラム『クールダウン』。
ちょっと地味なボクシングの話題。
「ボクシングは恐怖心が基本。
それがないと上手にならへん」
兵庫県の定時制高校ボクシング部顧問・脇浜義明さんの指導理念。
脇坂さんは71歳になる。
「パンチが怖いから、よける方法を必死に磨く」
「本能で体が動くからこそ本物の技術が身につく」
脇浜門下生の女性ボクサー多田悦子。
世界ボクシング協会女子ミニマム級王座を7度防衛。
そしてコメント。
「久々にボクシングが怖いと思った」
コラムニストは、この感情を「畏れ」と表現する。
「『恐れ』というより『畏れ』に近い気がする」と。
「畏れ」は「神をも畏れぬ」と言った時に使われる。
「彼我の力量を見定めて、
畏敬の念を抱きながら勝つ方法を探る」
この姿勢、この心構え。
ほんとうに大事だ。
「『怖いもの知らず』の蛮勇よりも、
怖いものを怖いと素直に認める勇気」
これが「勝者の資質」。
東日本大震災後の不確実な消費の実像。
この時に必要なのは本当の勇気なのだと思う。
私の著書『メッセージ』(商業界刊)より、
勇気ある決断
私たちは
いつも
勇気を
もたねばならない。
弱い人も、
強い人も。
小さな人も、
大きな人も。
力ある人も
知恵ある人も。
地位ある人も、
将来ある人も。
最後の最後には
勇気ある
決断を
しなければならない。
恐れてはいけない。
くじけてはいけない。
悔やんでもいけない。
逃げては、もちろんいけない。
日々の
小さな意思決定にも
勇気が
潜んでいなければならない。
人生一度の
大きな勝負どころには
勇気が
あふれていなければならない。
四面楚歌の
窮地には
勇気でしか
立ち向かえない。
勇気とは
未知なる世界に一歩、
目隠しで踏み込む
心のあり方だ。
雪印も日本ハムも、
ダイエーも西友も、
イトーヨーカ堂もイオンも、
そしてユニクロも。
人びとが
すべて
勇気ある決断を
しつづけなければいけない。
〈第1章・プロローグ「元気と勇気」より〉
もう一つ日経のコラム『大機小機』。
コラムニスト五月氏。
ちょっと季節外れのペンネーム。
「時代の変化はすさまじい。
老舗企業も判断を誤ればたちまち
危機に陥ってしまう」
「乱の時代といってもよい」
故渥美俊一先生が、
「天下大乱」と熱く語っていたのを思い出す。
「川の水が引いた時、
川底にこんな大きな岩がごろごろあったのかと
初めて見えてくることがある」
「危機に際して企業はどう対応すべきか」
ここでコラムニストは、
松下幸之助の「不況克服の心得十カ条」を引き出す。
▼『責任は我にあり』の自覚を――(第8条)。
▼再点検して、自らの力を正しくつかむ――(第3条)。
これは脇浜ボクシングに通ずる。
▼旧来の慣習、慣行、常識を打ち破る――(第5条)。
「現状の延長線上から新しいものは生まれない」
これ以外にも、
「不退転の覚悟で取り組む」(第4条)
「人材育成に力を注ぐ」(第7条)
「打てば響く組織づくりを進める」(第9条)
私自身は第6条も好きだ。
「時には一服して待つ」
そして第10条。
「日ごろからなすべきことをなしておく」
コラムニストは言い換える。
「先憂後楽」
さらに、「日ごろから最悪のことを考えて経営し、
変化への感度を磨くことを忘れてはならない」
さらにさらに、
「治に居て乱を忘れず」
これは私がよく使う言葉と同意。
「最悪を覚悟して、最善を尽くす」
すべてが本当の「勇気」のことを言わんとしている。
<結城義晴>