結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2012年04月23日(月曜日)

「戸籍を持たない産業」と「教育はコストか投資か?」への解

Everybody! Good Monday!
[2012vol17]

2012年第17週。
4月の第4週。

今週末の土曜日から、
2012年のゴールデンウィーク。

4月28日・29日・30日。
前半は三連休。

5月1日と2日を飛ばして、
3日・4日・5日・6日。
後半は4連休。

中の2日間を休めば、
9連休。

そんな人もいるんだろうなあ。

しかし小売業・サービス業は、
ゴールデンウィークこそ、
書き入れ時。

ところで、
国民放送NHKでは、
「ゴールデンウィーク」という言葉を、
使わないことになっている。

理由はいくつかある。
まず、「ゴールデンウィーク」が映画業界用語だったから。
使うと映画業界だけの宣伝になってしまう。
第2に、年配者にわかりにくいカタカナ語の多用を避けるため。
第3に、休めない人たちから「何がゴールデンだ」という抗議が来るから。
第4に、今回も9日間だが、1週間を超えて長くなって、
「ウィーク」はおかしいから。「ウィークス」でなくてはならない。
<ウィキペディアより>

だからNHKは「大型連休」で通している。

小売業・サービス業に関連するのは、
第3の理由かもしれないが、
こちらは「書き入れ時」だから、
抗議はしない。

それを喜びとするくらいでなければ、と思う。

もう1週間後、商品計画や販促プランは出来上がっているはず。
あとは粛々(しゅくしゅく)と進めるべし。

ただし、いまからでもできる小さなキャンペーンはある。
今月の商人舎標語。
「シンプルに。」で。

先週も書いたが、
「元気な挨拶、地域一番」
あるいは、
「お店ピカピカ、クレンリネス」

そしてこれは、直接、
売上げにつながらないことの方が、
よろしい。


さて、
一雨に寒さ緩める朝(あした)かな
〈日経俳壇より 芦屋・郷原資亮〉

東京・横浜は今日も雨です。
しかし一雨ごとに、寒さが緩む。

これがとてもいいい。

春眠がもやもやもやと近付きて
避ける間もなくふっと取り憑く

〈日経歌壇より 福岡・二宮正博〉

春眠暁を覚えず。

商売に関連する歌もある。

少しでも新鮮な牛乳買いたくて
奥へ奥へと伸びていく腕

〈同 福岡・武内美恵〉
「後入れ先出し」は顧客には、読まれている。

食べ物の歌も多い。
鳩サブレは絶対くちびるから食べる。
くちびるじゃなくってくちばしか

〈同 東京・佐藤友美〉

もうひとつ。
春雷や
つやつや光るできたてのバターロールが
我をいざなう

〈同 所沢・杉本葉子〉
食べ物や商売はなんて平和なんでしょう。
それが何より、良いですね。

今週は、「大型連休」に向けて、
準備を整える時。

今こそ、大事な1週間です。

さて、JOIS PERSONさんから、投稿。
昨夜23時34分27秒。

「結城先生 こんばんわ

そういえば結城先生と
横山さんの知識商人の対談のCDがあるのを
思い出し、改めて聞き直してみました。

一番気になったのは横山さんの『生産性』という言葉。
何故こんなに何度も何度も繰り返しでてくるのかと思って聞いておりましたら
『スーパーマーケット産業に戸籍を持たせたい』という思いだと知り、
それは生産性がまだまだ低いという現実に対する横山さんの思いでもあり、
それを向上させるためには規模の拡大も必要だ
ということなのだと改めて感じ入りました。
それが所謂『縮小拡大』ということなのですね。

そう思うと、ジョイスという本籍があり、
アークスという現住所を持てる喜びと実感が
少しずつ少しずつ湧きだしてきました。
そして横山清さんという人間そのものに
私個人として非常に興味がでて参りました。
それも結城先生の知識商人の対談の
おかげと思います。
ありがとうございました」

自分の環境の変化を受け止め、
自分で調査し、考察して、
それを読み解く。
さらに前向きに対処していく。

JOIS PERSONさんはまさしく、
「脱グライダー」の「知識商人」です。

「戸籍のない産業」とは、
スーパーマーケットのことです。

「この国のかたち」をつくっている分類表があります。
それが「日本標準産業分類」。

4段階構成で、
大分類20 中分類99 小分類529 細分類1455。

小売業・卸売業は、
大分類の9番目のI項目で、
中分類12 小分類61 細分類202。

例えば、中分類56は、「各種商品小売業」で、
小分類は560 「管理,補助的経済活動を行う事業所」
561 「百貨店,総合スーパー」となり、
細分類が「5611 百貨店,総合スーパー」となっています。

5611 百貨店
5612 総合スーパー
不思議なことに、こうはなっていない。

そして中分類57は「織物・衣服・身の回り品小売業」

中分類58  「飲食料品小売業」 。
この中の小分類580 「管理,補助的経済活動を行う事業所」
581  「各種食料品小売業」
細分類5811  「各種食料品小売業」

これがスーパーマーケットを示しています。
食品スーパーマーケットは、
「各種の食料品を扱う小売業」という意味。
一応、戸籍はあるのですが、
その戸籍の名称が何だかわからない。

「私の会社は各種食料品小売業です」と自己紹介して、
果たしてわかってもらえるでしょうか。

小分類582  野菜・果実小売業
583  食肉小売業
584  鮮魚小売業
585  酒小売業
586  菓子・パン小売業
589  その他の飲食料品小売業

この589の中に、細分類があります。
5891 「コンビニエンスストア(飲食料品を中心とするもの)」

さらに中分類60  「その他の小売業」
小分類603は「医薬品・化粧品小売業」
その中の細分類6031 「ドラッグストア」

小分類609 「他に分類されない小売業」
細分類6091 「ホームセンター」

こんな具合に、コンビニエンスストアやドラッグストア、ホームセンターが、
日本標準産業分類のなかに立派に位置づけられているのに、
「スーパーマーケット」はその名称がありません。

総合スーパーも百貨店と十把一からげ。

これはおそらく「スーパー」の概念が、
社会的に明確になっていないからだろうと思います。

総合スーパーと食品スーパーマーケットは、
異なる社会的機能を有するものです。

それが経済産業省やマスコミで、わかってもらっていない。
わかっていてもその重要性が実感されていない。
変更することの面倒くささの方が、上回っている。
このことを私は横山清さんに強く強く訴えました。
東京の第一ホテルの部屋でのことでした。

横山さんのアークスの活動のひとつは、
スーパーマーケットの、
産業としてのポジショニングを確立すること
です。

そのために企業としての生産性を高め、
さらに業界全体の生産性も高める必要があります。

JOIS PERSONさん、
よくぞ、そこまで考えました。

5月29・30・31日。
完全合宿制の2泊3日のセミナー。
「商人舎ミドルマネジメント研修会」
このセミナーでは自分でものを考え、
自分で問題解決する中堅幹部を養成します。
そのお手伝いをします。

JOIS PERSONさんのような思考方法を展開し、
自分たちで自分たちの方向を定める。

まさしく自分のエンジンをもたない「グライダー」ではなく、
自らのエンジンを持つ「脱グライダー知識商人」。

ここで「知識」という言葉を使いますが、
それは仕事の「知識と知恵」を意味する「ナレッジ」です。

昨年の東日本大震災では、
そんな「ナレッジ・マーチャント」が大活躍しました。

マルトの店長たち、
ヨークベニマルの店長たち、
マイヤの店長やマネジャーたち。
ジョイスやベルプラスの店長たち。
もちろんイオン、イトーヨーカ堂のマネジャーたち。
単独店では、びはんの間瀬慶蔵専務も。

彼らの中に存在したもの。
「マネージャーとして、
始めから身につけていなければならない資質が、
ひとつだけある。
才能ではない。
真摯さである」

ピーター・ドラッカーの言葉。

そのうえで、リーダーシップ。
チーム・ワーキング。

「商人舎ミドルマネジメント研修会」の基本テーマは、
ここから始まります。

もちろん、自分の仕事にコミットすること。
「献身・専心」すること。

そのうえで必須のマネジメント・カテゴリーを学びます。
品揃えとは何か。
売場づくりとは、販促とは、
作業とは、オペレーションシステムとは、
ストアコンパリゾンとは、
経営数値と計数管理とは。

こういったマネジメント・テクノロジーは、
マネジャーにとって必要不可欠の能力です。

日経産業新聞の4月21日版で、
「リーダーは投資しないと育たないと、
コーチ・エィ会長の伊藤守さん。

「政界やビジネス界では
強いリーダーシップを持った人材がいないとの嘆きが聞かれます」

「しかし本当の問題は、
現場のリーダーや中間管理職を中心とするミドル層も含め、
リーダーの数が足りない点なのです」
この点は私も同感です。

「日本固有の問題としてはここ10年ほど、
企業の組織のフラット化が進みました。
従来のような係長→課長→部長という出世階段が崩れ、
階層を設けずにフラットな組織を作ろうという流れです。
若手でも優秀な人材を登用するという意味では重要ですが、
幹部のトレーニングという側面から見ると欠点もあります」

「確実に言えることは、
リーダーは自然に生まれるものではなく、
投資して育てる必要があるということです」

「米国の企業はリーダーを育成するための研修や教育を『投資』と考えます。
多様性が高い社会で、リーダーを育てなければ会社を束ねることが難しく、
リーダー不在は会社にとって大きなリスクだからです」

「日本では長らく、リーダーの育成は『コスト』と考えられてきました。
現場の一人ひとりの社員のレベルが高く、
抜きんでた統率者がいなくても現場がまとまるという事情もあったのでしょう」

チェーンストアやスーパーマーケット産業ではずっと、
リーダーの育成は「投資」と位置付けられてきた。
だから国内研修はもとより、
アメリカ視察研修にも「投資」を続けてきた。
投資する企業が残ってきた。

倉本長治先生や川崎進一先生、
渥美俊一先生の功績大であると思う。
「しかし高度経済成長期のように
みんなで同じ船に乗って同じゴールを目指す時代は終わりました。
今のような明確な解がない時代には、
個々人が存分に能力を発揮しなければ競争に勝てません。
社員一人ひとりの能力を引き出すことのできる
リーダーの育成が急務になっています」

ここで一言で示されるリーダーを、
私は「脱グライダー」の「知識商人」と表現している。

これに対して、
今日のフェイスブックで亀川雅人先生が、
実に有益な論述を公開している。
亀川先生は立教大学経営学部教授・大学院教授で、
ビジネスデザイン研究科前委員長。

「教育はコストか投資か?」に対する解答。

「教育は、コストであり、投資です。
これはすべてに通じるコストと投資の概念整理」
まず、言い切る。

有形固定資産と減価償却費との関係を整理したうえで、
「同じように、教育にも2つの側面があります。
今日の収益を稼ぐために必要な今日の知識は、
その収益の対価として費消されます。
つまり、教育は費用です」

「しかし、教育効果が、明日以降の収益の獲得に貢献する場合には、
その効果は資産として残っていることになります。
この教育効果がなくならないうちは、無形の資産になっているわけです。
そのような教育は投資になります」
まことに明快。

「ある種の商売をするために
誰もが必要な技術や方法などはコスト
です。
これは競争企業のすべてが持っているわけで、
今日の収益を稼ぐためには必要不可欠です」

「しかし、真似のできないような知識や技術を育成するような教育は、
その効果が将来にわたり超過収益を稼ぐことになります。
この超過収益の現在価値が、教育投資の価値になるのです」

facebookの亀川教授の論述、
勉強してください。

「商人舎ミドルマネジメント研修会」。
これは会社の競争力をつける「投資」です。

しかし私は、
「商業現代化」を実現させるための同志をつくる意気込みで、
取り組む。

その意味で、私にとっては、「社会運動」であります。
倉本先生や川崎・渥美先生と同じ考え。

では、みなさん。
Good Monday!

<結城義晴>

[追伸]
結城義晴のフェイスブック・グランドオープン。
facebookで友達になろう。
知識商人の輪を広げよう。

よろしく。

2012年04月22日(日曜日)

ジジと魔法のランプ[日曜版2012vol17]

ボクのすきなランプ。
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いつも、ランプのよこにすわって、
そとを、ながめます。
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鳥の声をきいたり、
空や雲をながめたり、
花をみたり。
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ベランダには、
スノーポール。
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なでしこ。
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あの、なでしこジャパンの花です。

そとの世界は、
いつも、かわっています。
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だから、おもしろい。
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カーテンのかげから、
そとを、みます。
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いろいろなものを目にとめながら、
ものをかんがえる。
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きいろいナスタチューム。
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しろいビオラ。
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でも、ランプのなかをみていると、
もっと、とおくのものも、みえてくる。
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ねえ、おとうさん。
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まあるいランプから、
とおくのものが、みえます。
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駅までの道のヤマザクラ。
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これも、のこったサクラ。
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ランプのなかの世界。
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花壇もみえます。
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サクラのはなびらが、
ちっています。
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それから、
rikkyoのキャンパスも、
みえます。
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いろいろな木が、
緑に色づいてきた。
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ボクはキャンパスには、
いったことがありません。
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イチョウも、
青々とした新緑。
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家のなかにいても、
魔法のランプから、
いろいろなものがみえる。
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これはボクのヒミツです。

<『ジジの気分』(未刊)より>

2012年04月21日(土曜日)

立教ビジネスデザイン研究科・結城ゼミ「脱グライダー人間」養成の役割

今日は、東京・池袋の立教大学。

イチョウの木も、葉が青々と茂って、
新緑の季節。
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そんなキャンパス・マキムホール5階で、
結城ゼミ。
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午後1時から始めて、
みっちりと5時過ぎまで。

ゼミ生が一人ひとり、
自分のテーマを定めて、
そのうえで、この2週間に学んだこと、
研究したことを発表する。

これは教えられたことを覚える学習ではない。
自分で、調査し、読書し、考察したことを、
自分なりの表現で発表する。

つまりはミドルマネジメントのシゴトと同じ。

商人舎ミドルマネジメント研修会。
5月29・30・31日の2泊3日完全合宿制度で、
行なわれる。

ここで教育するのは、
会社の中堅社員のためのマネジメント。

つまりは自分で考え、
自分で行動する人間の養成。

東日本大震災で私たちは、
学んだ。

いざという時には、
一人ひとりの現場の長が、
自分で判断し、自分で実行しなければならないことを。

そのための原理原則を提示し、
その能力を養成するための、
軌道を教える。

是非とも参加してもらいたいものだが、
立教ビジネスデザイン研究科で私がやっているのも、
この路線の教育だ。

研究者を育てるという先生もいる。
しかし私はビジネスクリエーターを養成するという立教の趣旨に賛同している。
これはクリエイティビティ豊かなマネジャーをつくることを志向している。

結城ゼミは、自分のテーマを自分で設定し、
自分で調査し、自分で研究し、自分で考察し、
それを発表する。
毎週。

教えられたことを、覚えるなんて、
小学生のようなことは、
大人の実務の世界では、
まったくありえないし、
大学院教育でも皆無。

そして結城ゼミが終れば、
そのOB懇親会。
場所は、池袋キャンパスの橋のセントポール・ハウス。
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ウェルカムボード。
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2階の懇親ルームへ。
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たっぷりと懇親して、
もう8時。
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結城ゼミ第3期生有志と第4期生が参集。

今年のゼミは、充実している。
私は例年以上に気合を込めて指導している。

きっと、大きな成果が上がると思う。

私なりの大学院教育は、
まったくもって社会人のミドルマネジメントに対して、
トップマネジメントを展望しつつ教育することだ。

それが社会人MBAの役割だと思う。
商人舎ミドルマネジメント研修会と、
コンセプトは同じ。

だから商人舎ミドルマネジメント研修会に参加することは、
大げさなようだが、小売業・サービス業にとって、
2泊3日で、社会人大学院に入れて、
集中的に修士課程の一部を修了させることに似ている。

小売りサービス業における大学院レベル。
その最低ギリギリの教育をする。
それは「覚える教育」では断じてない。

脱グライダー・ミドルマネジメントを、
養成するためだからである。

グライダーはエンジンを持たない飛行機。
だから自力では離陸できない。

そのため、「ウインチ曳航、飛行機曳航」によって、
空に舞い上がる。

離陸し、一定の高度を得ると、
ロープを切り話し、飛行する。

私はこんなグライダー・ビジネスマンを、
減らしていく必要があると考えている。

会社の言うこと、上司の言うことを素直に聞くだけの部下。
それを「グライダー人間」と呼ぶ。
グライダー人間は、ひどい時には法律を破ることさえいとわない。

会社や上司に引っ張られているからだ。

そんなグライダー人間養成の場合は、
「覚える教育」がもてはやされた。

しかし、それではだめなことは東日本大震災が、
むしろ明らかにしてくれた。

引っ張られなくても、
自分で判断できる「脱グライダー人間」。

立教大学院結城ゼミはそれを志向している。

自分でテーマを設定し、自分で調査し、
研究し、自分で考察する。

商人舎ミドルマネジメント研修会も、
同様に、自分で考え、
自分で行動するミドルマネジメントを養成する。

もちろんそうかといって、
勝手気ままに動く「自由人」をつくるのではない。

組織の使命を理解し、それと実現しつつ、
自ら仕事を切り拓く人間。

ピーター・ドラッカーは言う。

マネジメントの三つの役割。
① 自らの組織に特有の使命を果たす。
② 仕事を通じて働く人たちを生かす。
③ 自らが社会に与える影響を処理するとともに、
社会の問題について貢献する。

自らの組織に特有の使命を果たす。
しかし従来の上司の言いなりではない。
それがドラッカーの言うマネジャー。

あらゆるマネジャーに共通の仕事は五つである。
① 目標を設定する。
② 組織する。
③ 動機づけとコミュニケーションを図る。
④ 評価測定する。
⑤ 人材を開発する。

これはトップマネジメント、ミドルマネジメントに、
共通する役割と仕事である。

立教大学大学院日jネスデザイン研究科も、
商人舎ミドルマネジメント研修会も、
そんなマネジャーを養成することを目的としている。

私の仕事は、だから一貫している。
それが私の幸せ。

ありがたい。

<結城義晴>

 

2012年04月20日(金曜日)

「正規軍は勝たなければ負けである・ゲリラは負けなければ勝ちになる」

ほんとうにうれしいニュースがあった。

渋木克久さんと杉山純子さんが、
今日、婚姻届を出して、
その足で、商人舎を訪れてくれた。
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渋木さんは、
立教大学大学院ビジネスデザイン研究科8期生で、
結城ゼミの第2期生。
杉山さんは7期生で、
二人はホスピタリティ研究会というサークルで、
3年前に出会った。

そして、このたび、
めでたく結婚。
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おめでとう。

「ふるさとの海に向かいて言うことなし
ふるさとの海はありがたきかな

ふるさとの山に向かいて言うことなし
ふるさとの山はありがたきかな」

<石川啄木『一握の砂』より>
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二人を見ていて、
そんな気分になった。

いつでも君のそばに
しあわせが
いつでも君のそばに
よろこびが
あるように

<詞・曲 山崎眞幹>

ふたたび、おめでとう。

このところ、結城ゼミは、
お目出度続き。

第3期生の岡本あゆ子さんが、
ついこの間、婚約したばかりで、
facebookで、
のろけ話ばかり読まされている。

でも、結城ゼミはしあわせを運ぶ。
結城ゼミはよろこびをもたらす。

それは私の望むところ。

この写真で私が持っているのは、
杉山さんの新刊著書。
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『LCCが拓く航空市場――格安航空会社の成長戦略』
(成山堂書店刊)
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航空業界でも、
ディスカウントやロープライス戦略が注目されている。
その新しい切り口を鮮明にした本。

杉山さんは修士論文が単行本化、
同時に結婚。
お目出度続き。
まさに「言うことなし」

さて、日経MJ 一面特集は、
「アークス連合 再編誘発」の特集。

結城義晴の「2012年、5つのトレンド予測」
昨年末あたりから、講演のテーマにしているが、
その3番目が「M&Aの新たなうねり」。

第1は、東日本大震災の影響。
第2は、消費税導入論議と消費者の価格意識の強まり。
第3が、M&Aの新たなうねり。
第4が、小型店舗開発とノンストアリテイリングの隆盛。
そして第5が、食品分野の多業態間競争激化。

「アークス&ジョイスの統合」は、
まさにその典型。
日経MJもその視点で、
踏み込んで取材し、記事を書いた。

日経本紙や朝日、読売、毎日よりも、
ずっと専門的で、こういった事件が起こった時にこそ、
日経MJには頑張ってもらいたいものだ。

特集には真ん中に大きな東北の地図がある。
「東北地方の主要スーパーの勢力図」

①アークス 289店4600億円
②ユナイトホールディングス 39店620億円
③マークス 66店舗750億円

これらはグループやホールディングカンパニー。

①のアークスが、北海道を本拠にして八ヶ岳連峰経営を標榜し、
東北ではユニバースとジョイスが参画。

②は秋田県の伊徳ホールディングスとタカヤナギ。

③は盛岡のマエダ、三陸のマイヤ、
相馬のキクチ、山形のおーばんホールディングス。

以上はすべて、シジシージャパン加盟企業群。
それ以外の企業で主要勢力図に乗っているのは3社。
④マックスバリュ東北で、87店舗、919億円
これはイオン。

⑤ヨークベニマルで、176店3429億円
セブン&アイ・ホールディングス。

⑥ヤマザワ 65店舗1000億円。

こう見ると、単独のローカルスーパーマーケットは、
ヤマザワだけのようにも見える。
もちろんこれらの企業以外にも、
東北には多くの魅力的なスーパーマーケットがある。
生協の活動も活発だ。

しかし図式化すると、
勢力図ははっきりし、
寡占化の方向に進んでいることがわかる。

横山清さんの持論「クリティカル・マス」が、
日本のスーパーマーケットに及んでいることも、
イメージできる。

私は、「クリティカル・マス」はまず、
コモディティ・グッズの世界で起こると考えている。
クリティカル・マスとは「量」の問題だからだ。

そして、そのうえで、
物流のしくみや情報システムなどが完璧に整備される以前の段階、
さらにメーカーや卸の力が依然として強い場合には、
「範囲の経済」の要素が働く。
こう、付け加えている。

「コモディティ・グッズ領域」と
「範囲の経済」のなかで、まず、
クリティカル・マスの現象が起こる。

それが「M&Aの新たなうねり」となって、
現れている。

この特集の終りに横山清アークス社長のインタビューがある。
「他社のひんしゅくをあえて買う言い方になるが、
アークスは勝ち組の食品スーパーとしか組まない」
これは横山さんの逆説的な言い回し。

「M&A戦略は巡航速度で進んでいる」

自信満々。

「食品スーパーは全国の売上高が大きくても、
地域内のシェアが高くなければ卸も安く商品を提供せず、
コスト削減など規模のメリットが働きにくい」
これは私の言う「範囲の経済」と「コモディティ領域」の話。

「地域の食品スーパーは大手に勝つ必要はない。
負けなければ、事実上勝利を収めたことになる」
これは、私の言葉を裏付けにしている。

「正規軍とゲリラ」

正規軍は、勝たなければ
すなわち負けである。
ゲリラは、負けなければ、
それで勝ちになる。

ベトナム戦争におけるアメリカ軍は
明らかに前者であったし、
ベトコンは確かに後者であった。

古くは共和制時代のローマ軍とカルタゴ軍の間でも、
長らくこの対立関係が続いた。

湾岸戦争ではなぜか、
ブッシュもフセインも
正規軍とゲリラ軍に分かれつつ、
どちらも勝った気でいた。

減収減益が相次ぐ今。
そして、消費マインドが
停滞しきった観のある現在。
「勝たねば負け組」には、
つらい逆風が吹く。
「負けねば勝ち組」には、
意外にも順風が潜んでいる。

「勝ちに不思議の勝ちあり。
負けに不思議の負けなし」
この野村克也の言葉の、
勝ちの不思議は「神風」である。

「勝った負けたとさわぐじゃないよ」と
歌う水前寺清子は、
「あとの態度」を大事にする。
これは、「負けに不思議なし」を言っている。

あなたはゲリラか、
はたまた正規軍か。
逆風を選ぶか、
順風を好むか。

どちらであっても、小売流通業は常に、
不思議の神風を感じる機会にめぐまれている。
ビジネスそのものが、
不思議の神風を知るために、為されている。

しかし、そのとき、
これだけは忘れてはならない。

労働法無視のゲリラになるな。
顧客不在の正規軍になるな。

<『メッセージ』 (結城義晴著・商業界刊)より>

企業統合もM&Aも、
合併も吸収も、せんじ詰めれば、
これは組織と組織の結婚である。

今日は、その結婚を、
心から祝福しよう。

「ふるさとの山に向かいて
言うことなし」

おめでとう。
こころから。

<結城義晴>

2012年04月19日(木曜日)

「商人の本籍地と現住所」そして「不安とワクワク」の一瞬の積み重ね

新緑の季節になってきた。
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商人舎オフィスの窓から見える桜の枝にも、
みずみずしい緑の葉が茂る。

その遊歩道のモミジの葉も、
新緑に変わる。
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そして路端には、タンポポ。
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桜色一色の様から、
黄緑、黄色の季節へ。

5月の最終週、29日、30日・31日。2泊3日完全合宿制。
「商人舎ミドルマネジメント研修会」
受講申し込み、受付中。
締め切りの4月末日2週間後に迫る。

東京都立中央図書館のこのシーズンの企画展。
「新ビジネスマン、本を読もう!」
小売業やサービス業の店舗だけでなく、
図書館も様々な季節に様々な企画を打つ。
まあ、図書館もサービス業のひとつですが。

この企画の一環として、
著者メッセージの依頼が来た。

「今回の企画展は、この春、
就職や転職等で新たなスタートを切った社会人を対象に、
ビジネストレンドや仕事のための下調べ、
ビジネスシーンでの話題作りに役立つ情報源としての書籍、
中でも全国紙や経済誌に書評が掲載された話題の本を
一堂に集めて展示するものです」

私の「小売業界大研究」なども、
展示される。

そこで私が贈った短いメッセージ。

イオンに入ってから、
実家を継いだ柳井正さん。
ユニクロのファーストリテイリング会長兼社長。

総合商社に入社してから、
小売業に出向した新浪剛史さん。
ローソン社長。

銀行に就職してから、
小売業とITを結びつけて起業した三木谷浩史さん。
楽天社長。

いずれもまず、
小売業の面白さを語る。
小売業の夢を広げる。
小売業の社会貢献を知る。

一生をかけるに値する仕事です。
自分なりのスキルを磨くことのできる職業です。
生きがいと遣り甲斐をくれる産業です。

一昨日のこのブログに投稿あり。
「アークス&ジョイス統合」 の件。

JOIS PERSON より

「結城先生 こんばんわ

一夜明けて、
私たちは
時代の大きなうねりの中にいるんだ
なと
改めて思いました。

その中で今できることは
私たちは地域のお客様に
より喜んで頂けるために
今まで以上に精進すること。
今まで以上に自分たちの責任を
果たすこと
、でしょうか。

そう思うと
不安もありつつ、
ワクワクもしてきます」

素晴らしい。
自分で問題解決しているプロセスが、
描かれている。

これこそ脱グライダー知識商人の姿。

「商人の本籍地と現住所」を貫くものは、
「地域のお客様に喜んでいただく」こと。
そのために「今まで以上に精進すること」。
「今まで以上に自分たちの責任を果たすこと」。

まさにそれです。

「不安もありつつ、
ワクワクもしてくる」

時代のうねりの中で、
生きている実感。

それが人生でしょう。

昨日も書いたけれど、
故倉本長治商業界主幹の言葉。
この一瞬の積み重ねこそ
君という商人の全生涯

ふたたび、
Good Luck! Jois People!

さて、4月2日から、
結城義晴のフェイスブック、
グランドオープン。

facebookで友達になろう。
知識商人の輪を広げよう。
キャンペーンは続いている。

そのフェイスブックにいい話。

相模女子大学専任講師の小泉京美さん、
かつて私の立教ビジネスデザイン研究科の講義を履修してくれて、
現在、女子大講師の才媛。

小泉さん、昨日、
お茶のお稽古に行った。
そこで聞いた宗匠のお言葉。

お弟子さんが、
床の間に生けた花を見て言った。
「主役は二人いらない」

花入には、
2種類のメインとなる花が
生けられていた。

「この言葉、ビジネスの場面でも、
家庭内でも、色々な場面で言えますよね。。。

さすが、修行をしたヒトは違うな~」
小泉さんのつぶやき。

例えば、ひとつのコーナーでアソートメントする。
カテゴリーごとに、
「主役は二人いらない」

例えば、チラシで売り出し商品を企画する。
部門ごとに、
「主役は二人いらない」

フィリップ・コトラー。
マーケット・リーダーとマーケット・チャレンジャー。
「主役は二人いらない」

ちょっと古すぎるが現役時代の「王と長嶋」。
「主役は二人いらない」
ならば、どっちが主役?

記憶に残る主役は長嶋茂雄。
記録に残る主役は王貞治。

コンテスト型競争の時代が始まっていたのでした。

さて、昨日の午後は、日本スーパーマーケット協会。
商業経営問題研究会の4月例会。
通称RMLC(Retail Management Learning Circle)。
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この日の第1部は、
協会事務局長の江口法生さんが特別ゲスト講師。
「流通を取り巻く法律・制度改正の諸問題」について、
レクチャーしてもらった。
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江口さんはライフコーポレーションで、
清水信次会長の秘書をしていた。

流通に関連する法律・制度問題の、
いわばスペシャリスト。
こういった人財、
団体・協会には欠かせない。
江口さんが整理、解説してくれたのは、
「6つの視点からの法改正の動き」

第1は、社会保障と税の一体改革、
復興財源としての臨時増税問題。

短時間労働者への厚生年金、健康保険等適用拡大と、
今国会最大のテーマになっている消費税率の引き上げ。
そして、復興財源のための所得税、個人住民税、法人税のアップ。

週20時~30時間勤務する短時間労働者への
年金、保険等の適用拡大は、大きな問題だ。

従業員数501人以上の企業が、
1年以上雇用する従業員を週20時間以上働かせる場合に、
対象となる。

厚労省調べでは、370万人がその対象で、
企業負担は5400億円に上る。
パートタイマー依存が高いチェーンストア企業の負担は重い。

第2は、エネルギー政策の転換と、
それに伴う買い取りコストの問題。

東電の原発事故で原発が順次停止する中、
再生エネルギーの拡大による買い取り制度の導入など、
企業活動への影響は必須になってきている。

第3は、環境関連法案。
容器包装リサイクル法、食品リサイクル法、
省エネ法、フロン類等の対策など、
食品スーパーマーケットに直接かかわる法規の動向。

フロンの回収・破壊法に関しては、
フロンを冷媒とする冷蔵ケースなどを製造するメーカーではなく、
使用する側、つまり小売業の責任が議論されている。

第4は、食品の表示を取り巻く環境。
加工食品の原料原産地表示、トレーサビリティ、栄養成分表示、
トランス脂肪酸の含有量表示などなど、
これも、食品産業にとっては、
注視しなくてはならない動き。

第5が、人事・労務分野における課題。
店舗における管理監督者問題、最低賃金の引き上げ問題、
障害者雇用対策法の改正対応、有期労働契約、
高年齢者雇用安定法改正案、
パートタイム労働対策などの法改正の動向。

最後に6番目は、食品の放射能汚染問題。
4月1日施行の放射性セシウムの新基準に関する考え方。

90分にわたってのレクチャーにみな、
真剣に耳を傾けた。
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その後、Q&Aとディスカッション。
左から山口紀生さん、高木和成代表世話人、
杉田幸夫さん、古川芳之さん。
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杉田さんは、中小企業には、
法改正の情報が入らないのではないかと指摘。
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江口さんの見解。
「個店対応では難しいでしょう。
とりわけ表示問題は、
共同仕入れ機構で指導を受けるなどの対策が必要。
また、短時間労働者の問題を機に、
短期雇用形態を再検討し、
外部化を図ることも対策のひとつです」
江口さんは、丁寧に、答えてくれた。
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6つの法律・制度の改変は、
大きな意味では「規制強化」である。
いま、規制が強化されているのだ。

だとすると3つの姿勢が求められる。
第1は、その規制の中身を知ること。
第2は、それを順守する体制をつくること。
そして第3に、政治・行政に働きかけ、業界の意志を伝え、
同時にその意志を消費者や関連業界に広報・伝達すること。

「知って、守って、働きかける」
知らずして、守らずして、文句だけ言うのでは、
世間は納得しない。

この時、こういった問題の専門家が必要になる。
自分の会社内で、そういったスペシャリストを養成する必要がある。
それができない企業は、団体・協会に頼ることになる。

だから団体・協会の役割はますます重くなるし、
業界の専門マスコミの役目も重要になる。
これが私のまとめ。
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その意味で、
日本スーパーマーケット協会事務局長の江口さんが、
流通を取り巻く法律・制度改正の動向を把握していることは、
頼もしい限り。

江口さんに、心から感謝。

多くの協会、団体、研究会、勉強会、
江口さんを呼んでレクチャーしてもらってください。

第2部は、「シナリオ2020」を受けてのディスカッション。
前回の大塚明協会専務理事の講義をもとに、
RMLCの議論を深める。

高木代表世話人が、マーケットの捉え方として、
外食との競争など食の業際化、国際化を問題提起。

それに対し、㈱たいらや社長の村上篤三郎さんは、明快に返答。
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「外食との競争はほとんどない。
それ以外にスーパーマーケットとして、
本来やるべきことは山ほどある。
ヤオコー、ヨークベニマルともにポイントカードは導入しないと言っていたが、
私は必ず導入すると見越し、準備を進めてきた。
たいらやは6月に、ID-POS付きのポイントカードを導入する。
自分の店をどのように組み立てていくのか。
それが大事だと思う」

話はどんどん展開し、スーパーマーケットの海外戦略に及ぶ。
左から前田章三さん、村上さん、小林清泰さん。
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日本のスーパーマーケット企業がなぜ、
海外出店をしないのか。
いま、その動きがあるが、成功するのか。

これまた、高木さんからの問題提起。
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それに対して、私が海外のスーパーマーケット企業の動向を話す。
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イギリスのテスコ、フランスのカルフール、ドイツのメトロ、
アメリカのウォルマートなどなどの海外展開。
いずれもハイパーマーケットなど総合スーパー業態での進出。

米国スーパーマーケットのクローガーやセーフウェイは、
海外展開をしていない。

さらに中国、台湾、韓国の流通事情まで。

経済が高度成長を果たしている段階の国では、
ハイパーマーケットが、
そしてコンビニが急速拡大しやすい。

食品スーパーマーケットは、
ある程度成熟した段階で機能する業態であるし、
システムを構築するのに時間がかかる業態だ。
その代り、構築された仕組みは、
そう簡単にとってかわられるものではない。

そんな話をした。

㈱セイミヤの加藤勝正さんも、
大いに楽しんで、議論に参加。

加藤さんは、低価格化、低コスト化、そして単純化、
フォーマット時代に特化した店づくりの問題、
さらに販売チャネルの問題など、
重要なテーマ資源を指摘してくれた。
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RMLCは今年、次世代のスーパーマーケットについて、
議論、研究していく。

前田さんの指摘は第三極に及んだ。
イオン、セブン&アイホールディングスに次ぐヤマダ電機、
そしてヨドバシカメラやビックカメラは、
家電だけではなく食品、薬とあらゆるものを扱っている。
食品マーケットにおいても大きな存在になる。
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第2部後半は活発なディスカッションで、面白かった。
活発な議論は、のどが渇く。
そこで、有志による地下の居酒屋での一献。
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㈱ケノスの小林清泰先生と村上さん、高木さん。

村上さんの本籍地は西友、現住所はたいらや社長、
高木さんは本籍地ユニー、現住所コンサルタント、
小林先生は本籍地が一級建築士で、
現住所コーポレート・アイデンティティのデザイナー&社長、
結城義晴の本籍地・商業界、
現住所・商人舎&立教大学。

みんな、「本籍地と現住所」をしっかりと認識している。

そして、「不安とワクワク」を知っている。

年とって、「不安」にも「ワクワク」にも、
若干、新鮮さが薄れてきたけれど。

<結城義晴>

2012年04月18日(水曜日)

そごう水島広雄元会長の「百寿」と日本総人口「最大の25.9万人減」

ちょっと驚いたニュース。
「そごう水島元会長、100歳の祝い」

「あっと、まだ生きてらっしゃったのか」
そんな感じ。

長寿そのものは、
極めてめでたいことだけれど。

百貨店そごうの元会長・水島広雄さん。
1912年生まれで、
4月15日に100歳の誕生日を迎えた。

日本興業銀行から、そごうの社長・会長へ。
2000年段階で、日本最大の百貨店グループを構築。
しかし当時、負債は戦後6番目の1兆8700億円となり、
民事再生法の適用申請。

水島そごうの「成長戦略」は、
結果として見れば、「膨張戦略」だった。

だから破綻した。

昨日、水島さんは車いすで会場に登場。
「百歳はあっという間だった」とコメント。

このコメントはすごい。
こうでなければいけない。

この一瞬の積み重ねこそ
君という商人の全生涯

<故倉本長治>

だからこそ百歳も、
あっという間だったに違いない。

しかし水島そごう「膨張理論」は、
破綻した。

ああ、100歳まで生きたんだ。
他を圧する生命力。

敬服。

一方、日経新聞は朝刊一面トップに、
「総人口、最大の25.9万人減」の記事。
2011年10月1日時点の日本の推計人口。

総務省恒例の調査発表、
総人口は1億2779万9000人。

ただし1年間に25万9000人のマイナス。

減少数は1950年以降の統計で最大。
65歳以上の老年人口は過去最高の23.3%に到達。
そごう水島さんも、老年人口の中の一人。

減少数は過去最大だが、
外国人の国外転出も過去最高を記録。
東日本大震災と福島原発事故の影響。

日本は2005年、戦後初の人口減少に見舞われた。
分かっていたことだが、ショックは大きかった。
その後、2007年以降、人口の自然減が定着。

今や、「少子高齢化」はニッポンの常識。

昨年の人口の最大の減少は、
第1に出生率の低下と高齢化、
第2に震災と原発事故による人口流出。

今年、来年と、少なくとも、
第2の原因は、なくなる。

だからこんなに急激な人口減少は、
起こらない。

都道府県のなかでは、
福島県の人口減少率が第1位で、
1.93%。

これは都道府県別の過去最大落ち込み幅。

人口減少率第2位は岩手県
宮城県が第4位。

東日本大震災で被災した3県の人口減少が著しい。

一方、年号別にみると、
「平成生まれ」が20.5%。
初めて総人口のと2割を超えた。

しかしやはり全国的に、
「老年人口」が「年少人口」を上回る。
「老年」は65歳以上、「年少」は0~14歳。
年少人口が老年人口を上回る若い県は、
なんと沖縄のみ。

そして75歳以上の「後期高齢者人口」が、
年少人口を上回るのは47都道府県中24道県。

老年人口が多いとは、
日本が長寿国という意味だ。

これは考え方によっては、
日本国の長所。

私はこの長所を生かしつつ、
出生率を上げ、なおかつ、
日本独自の移民制度を創造すべきと考えている。

20世紀にアメリカ合衆国が世界をリードしたのは、
イノベーティブな移民制度が確立されたからだ。

日本はその時代のアメリカとは異なる移民制度を模索し、
創造すべきだ。

小売流通業をみると、
まず伊藤雅俊さんが存命だ。
イトーヨーカ堂創業者・セブン&アイ・ホールディングス名誉会長。

岡田卓也さんもお元気。
イオン名誉会長相談役。

清水信次さんはいまだ現役。
ライフコーポレーション会長、日本チェーンストア協会会長。
そのうえ清水さんは生団連を立ち上げ、その会長。

商人舎最高顧問の杉山昭次郎先生は85歳。
昭和2年生まれで、昭次郎。

壽里茂先生は86歳。
私の大学の恩師・早稲田大学名誉教授。

そして私の両親・結城義登・ヨシ子も、
揃って、今年、86歳。

私は日本が長寿国であることを、
心から喜んでいるし、
身近に長寿者が多いことを誇りにしている。

そのうえで、この高齢者の知恵と力をいただきつつ、
人口の維持・増加を図りたい。

今年の人口統計が発表されたからこそ、
そのことを強く心にとめ、意思を確認したい。

去年(こぞ)今年貫く棒の如きもの
<高浜虚子 昭和25年作>

東日本大震災の去年の2011年、
そして人口減少率過去最高が発表された今年2012年。

「貫く棒の如きもの」を、
私たちは共有しなければならない。

<結城義晴>

2012年04月17日(火曜日)

東急ストア・木下雄治さんのお別れの会と「アークス&ジョイス統合」

木下雄治さんの「お別れの会」があった。
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昨日の12時30分から、
東京・渋谷のセルリアンタワー東急ホテル・ボールルーム。
元の東京急行電鉄本社跡にできたホテル。
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木下さんは㈱東急ストア社長にして、
東京急行電鉄㈱専務取締役。
東急百貨店の取締役や、
㈱八社会の社長を兼務。

一言でいえば、電鉄系小売業のトップ・リーダーで、
しかもその革新の旗手だった。

多くの人が献花に訪れた。
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シンプルな祭壇。

私が入場した時には、
ビートルズの「レット・イット・ビー」が、
弦楽四重奏で流れていた。
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それから音楽は、いつの間にか、
「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」、
「ノルウェイの森」へと変わった。

木下さんが好きだったのだろうと想像しながら、
献花し、合掌。

次の間には、軽食が用意され、
木下さんをしのぶ写真が展示されていた。
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在りし日のビデオやパネルも上映され、掲示された。
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最後に木下さんの趣味。
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「愛用の包丁と料理の数々」

食品スーパーマーケット・東急ストアの社長として、
この趣味は絶好だった。

木下さんは昭和26年4月23日、横浜生まれ。
私よりも一つ上。

名門・翠嵐高校から青山学院大学へ。
私は横浜の私立聖光学院中学・高校に行ったが、
その道を歩まなければ、おそらく、
松本中学から翠嵐高校を選んだはず。
両校のそばの三ツ沢に家があったからだ。

だからもしかしたら、木下さんを、
「先輩」と呼んでいたかもしれない。
そんな縁がある。

木下さんは大学卒業と同時に東急電鉄入社。

そして東急一筋。

極めて順調に階段を登り、
2009年3月、東急ストア社長、
昨2011年、東急電鉄専務に就任。

今年の1月20日、ホテルニューオータニで、
パネルディスカッションが開催された。
日本チェーンストア協会総会後の企画。
私はコーディネーター兼パネラーを務めたが、
この場で、木下さんとご一緒する予定だった。

ライフコーポレーション会長でチェーン協会長の清水信次さん、
カスミ会長の小濵裕正さんがパネラーだったが、
木下さんの突然の欠席に、
ちょっと驚きつつ、まことに残念に思った。

木下さんはこの時、体調を崩して入院し、
そのまま退院することなく、3月17日、永眠。

東急電鉄にとっても、
日本の小売産業にとっても、
本当に惜しい木下さんの早世だった。

こころよりご冥福を祈りつつ、
ふたたび合掌。

さて、昨日は大きなニュース。
記者会見が開かれ、新聞各紙が取り上げた。
「アークスとジョイスの統合」

日経新聞の記事には、
「北海道・東北地盤の食品スーパー2位、アークスは16日、
岩手県地盤のジョイスを9月1日付で買収し
完全子会社化すると発表」
アークスが株式交換の方式で、
ジョイスを完全子会社化する。
ジョイス株1株に対し、
アークス株0.293株を割り当てる。

2012年2月期のアークスの連結売上高は3481億円。
北海道・東北で253店舗の食品スーパーマーケットを展開。

ジョイスは年商373億円で、
岩手県を中心に北東北3県で36店舗を運営。

この統合で、年間売上高3855億円。

2013年2月期の見通しは4600億円。
スーパーマーケット業界第1位のライフコーポレーションは、
今年度5250億円だから、
業界第2位の規模となる。

アークスは八ヶ岳連峰経営を標榜するホールディングカンパニーで、
従ってジョイスが、そのグループに参加するという捉え方が正しいところ。

10年前、㈱ラルズと㈱福原の道内の2社が統合して、アークスが発足。
店舗運営、仕入れ、物流、情報システムなどの面で、
統合のメリットを活かして、ローコスト経営を追求してきた。

参画企業の自主性を重んじる。
アークス社長・横山清さんの基本的な考え方。
その趣旨に賛同して、
北海道内のスーパーマーケット、ドラッグストアが、
アークス傘下に入ってきた。

昨年10月には、青森に本部を置くユニバースが、
アークスに参加。
そして今回、ジョイスが参画。

いずれもシジシー・ジャパンの有力加盟企業。

CGCグループの北海道・東北のグループが統合して、
イオンに対抗するというのが今回の構図。

アークスの発表数値だが、
岩手県内の食品スーパーマーケットの市場シェアは、
ジョイスが15.6%で1位、ユニバースが11.9%で3位、
両社を合わせた新アークスグループは、27.5%のシェアを占め、
完全なる「クリティカル・マス」達成となる。

クリティカル・マスは、
横山さんの持論。
私の持論でもある。

イオンやセブン&アイ・ホールディングスは5兆円を超えるが、
アークスの総年商は今のところ両社の10分の1以下。

しかしそれぞれの地域でのシェアは、
17%のクリティカル・マスを超える。
「これで十分に闘える」。
それが横山戦略。

当然ながら、今後も、
東日本の食品スーパーマーケットと統合を進めながら、
「縮小拡大」を図る。

「縮小拡大」とはこれも横山造語で、
日本の消費市場が少子高齢化で「縮小」する中、
グループ年商規模が「拡大」すれば、
実際の数値以上の力を有することができる、というもの。

昨日、アークス横山清、ジョイス小苅米秀樹両社長が、
揃って東京・大手町で記者会見。
新体制では横山さんがアークス社長、
小苅米さんはアークス取締役執行役員に就任予定。

横山さんの弁。
「地域のシェアを握ることで収益を確保し、
地域に貢献でき、競争にも勝てる」

小苅米さんのコメント。
「統合後も、ジョイスらしいサービスを維持できる」

店のブランドのことを「バナー」というが、
そのバナーは、これまで通り。

「合併や買収、吸収」といったニュアンスよりも、
「統合、合従連衡、大同団結」と呼ぶのがふさわしい。

昨年11月、イオンは、
中四国のマルナカ・山陽マルナカを子会社化した。
平和堂は滋賀県の丸善(8店舗)を傘下に入れた。
バローも昨年、岐阜県の年商50億円ファミリースーパーマルキを買収。

昨年末から、
私が予測している「2012 5つのトレンド」の第2が、
このM&A。

ちなみにジョイスの小苅米さんは、
コーネル・ジャパン「伝説の第1期生」。
第1期生には、ラルズの猫宮一久さん(常務取締役)
福原の福原郁治さん(常務取締役)がいて、
三人は同期生。

コーネルの授業でも私は、
「クリティカル・マス」と「範囲の経済」を講義した。

日本の小売流通業は、
私の考えるように動いてはいるが、
地方のスーパーマーケットが減っていくことには、
いくばくかの寂しさを感じる。

今朝の朝日新聞のコラム『経済気象台』。
タイトルは「雨が降れば傘をさせ」
大阪・船場の古くからの格言。

「言わんとするところは、
『うろうろせずにやるべきところをやれ』」と、
コラムニストは書くが、
それよりも今回のジョイス小苅米さんの決断は、
まさに船場の格言通りだったと思う。
「雨が降れば傘をさせ」

それがアークスの傘だったということ。

最後に一言。
ジョイスの社員・従業員の人たちへ。
あなたたちには「商人の本籍地と現住所」がある。

ジョイスという本籍地があり、
現住所はアークス内ジョイスになった。

本籍地の良さ、ありがたさを忘れずに、
現住所の生活に、早く慣れることだ。

健闘を祈る。
Good Luck! Jois People!

<結城義晴>

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