目玉は、
どっち向きについている?
前だ。
光の射す方向が、
前だぜ。
糸井重里さんが、
『ほぼ日』の巻頭言
「今日のダーリン」に書いている。
東北の被災したともだちに、
メールを送って考えたこと。
読売新聞の巻頭コラム『編集手帳』。
「社長が従業員に告げた。
『今年の給与は50%アップになる』
『昨年比ですか?』
『来年比だ』」。
月刊『東京人』4月号に、
名越健郎さんが紹介する世界のジョーク。
コラムニストは、言う。
「今日よりも明日が暗く、
今年よりも来年の経済が案じられる」
小さな喜び、
ささやかな幸せ、
明日への希望。
これは結城義晴の言葉。
前向きに、
ポジティブに、
それでいて、
焦らず、一歩ずつ、
行きたい。
日経新聞に「投資家バフェットの流儀」。
アメリカの投資家ウォーレン・バフェット氏(81歳)。
投資会社バークシャー・ハザウェイのCEO。
「一代で世界3位の富豪に上り詰めた『オマハの賢人』」。
その株主総会には世界中から3万5000人が参集。
総会は、投資家たちの年に1度の「お祭り」。
7時間におよぶロングラン。
会議場を埋め尽くした株主らからの質疑応答は、
「バフェット白熱教室」のよう。
「気に入った企業に投資するとき、
マクロ経済の状況は議論しません」。
「今後10年にわたり、
収益力と競争環境を保てると思える企業を選びます」
これは企業そのもののビジョンと直結する。
「『株式』を買うのではなく、
本当に気に入った『事業』を永久に保有するつもりで、
集中投資する」
私自身は、株式をはじめとして、
投資は、一切やらない。
ジャーナリストとして判断を間違うことになるからだ。
しかし企業活動を研究する者として、
バフェット氏の視点には共通するものを感じる。
バークシャーが株を保有する企業、
コカ・コーラ、IBM、ウェルズ・ファーゴ、
アメリカン・エキスプレス、
P&G、クラフト・フーズ。
そしてウォルマート・ストアーズ。
「バフェット流株式投資の鉄則」が、
記事には掲載されている。
①事業内容を自分で理解できる会社にしか投資しない
②長期に収益を上げるブランド力の強い企業を選ぶ
③成長性より安定性を重視する
④変化が激しく先の読めない業界への投資は避ける
⑤投資のための借金はしない
まったくもって、企業経営活動そのものに通じる。
最後に、金(ゴールド)への投資に関しての考え方が面白い。
「あなたが金を1オンス買ったとして、
100年経っても1オンスのままですよ」
ウォーレン・バフェット氏は81歳になっても、
前を向いている。
さて昨日、今日の私の行動をさかのぼる。
明日はアメリカに発つが、
そのため、今日は朝から横浜の商人舎オフィス。
午後、㈱紀文食品社長室担当部長・山本真砂美さんと、
商品企画五課課長の堀内慎也さん来社。
先のことになるが、9月4日・5日に、
「紀文正月フォーラム2012」が開催される。
場所は、昨年同様、東京・時事通信ホール。
今年、私は、2日とも、講演する。
今年末商戦、来年の年始商戦に対する考え方を述べる。
紀文からも提案がある。
是非、ご参加いただきたい。
山本さん、堀内さんとは、
その打ち合わせ。
そして昨日は、昼から千葉県の幕張本郷。
メイプルイン幕張。
イオンビジネススクール
SM事業コースの巻頭講義。
イオングループのスーパーマーケット事業は、
いまや1600店、2兆1000億円となる。
全国のマックスバリュ各社、
それにカスミ、いなげや、ベルク、
マルエツ、光洋、イオンキミサワ。
昨年11月からは、
四国・中国地方のマルナカグループが加わった。
日本で唯一のスーパーマーケットのナショナルチェーンである。
このスーパーマーケット事業部隊の店長、バイヤーが90人。
午後1時から3時間。
私のテーマは、
「商業の産業化・現代化と知識商人の役割」
イオンビジネススクールといっても、
私は持論を展開する。
日本商業の現代化は、
「新しい森」づくりに似ている。
CWニコルさんの影響を受けて、
「新しい森」と表現している。
その新しい森には、
大木もあれば、
中小の木々も生息している。
草花も息づいている。
ニコルさんが購入して、再生したアファンの森。
それは賢くて謙虚で忍耐強い人間によって蘇生された。
現在「アファンの森財団」となっている。
日本商業の現代化は、
この「アファンの森」づくりに似ている。
イオンもセブン&アイ・ホールディングスも、
そしてローカルチェーンも、
インディペンデントも、
店頭では競争しながら、
全体として俯瞰すると、
あたらしい「アファンの森」となっている。
それが商業の現代化である。
昨日の講義ではこんな話はしていないが、
しかし背景にはこの考え方がある。
途中、10分の休憩をはさんで、
3時間。
日本商業の現状と課題、
マネジメント理論の変遷など、
マーケティングとイノベーションにとって
不可避の内容を語った。
あまりに熱が入って、
最後には声がかれた。
イオン・ピープルとしてのインテグリティ。
是非とも守り続けてほしい。
それが商業の基幹産業化に貢献することになる。
講義が終了してから、
イオンビジネススクール担当の石川大元さんと写真。
お疲れ様でした。
この後、石川さんから本をいただいた。
小嶋千鶴子著『あしあと』。
伝説の名著。
私は㈱商業界時代にこの書を手にして、
会社で読んだ覚えがあるが、
所蔵はしていない。
イオン名誉会長の岡田卓也さんの姉上が、
著者の小嶋さん。
戦前の1937年には、
イオンの前身㈱岡田屋呉服店代表取締役就任。
1972年にはジャスコ㈱常務取締役就任。
ジャスコ、イオンのマネジメントの基礎を築いた人だ。
その半生を振り返った手記が『あしあと』。
「お礼のことば」と題された前書きにある。
「経営書ではピーター・F・ドラッカーに、
一番傾倒しています」
そう、イオンは、ドラッカーの哲学をもとに、
マネジメントの骨組みがつくられている。
この本の第4章「おぼえがき」には、
こんな小見出しが並ぶ。
「企業の発展力は人」
「部下を信頼する」
「得手とするところを把握する」
「人の長所をどう引き出すか」
これらはすべて、ドラッカーの考え方と一致する。
そして、この本の最後のところに、
「大切なこと」と題して、
短い添え書きがある。
「危険は絶えず繰り返す。
兆候は先づ在庫の過剰に現れる」
「利益が商品にあるのではなく、
利益は回転の速度によって決まるのである」
「回転の速度は、
お客様の心をよく
読むことによって維持される」
そして最後の最後に、ある。
「簡単なことが一番むつかしく
そして努力の要ることなのである」
小嶋千鶴子さん、96歳。
いまだにシャキッと背筋を伸ばして、
前を向いて生きている。
心から感謝。
新しい森づくりに、
小嶋さんの教訓は、
忘れられない。
<結城義晴>