日経新聞最終面の『私の履歴書』。
今月は落語家の桂三枝。
今日は大学受験から、浪人、
そして大学に入るところまで。
「長いトンネルのような浪人生活が始まった。
並行して郵便局でアルバイトを始めた」
「屋上で毎日弁当を一人で食べた。
近くの幼稚園が昼休みにいつも
『アマリリス』の歌を流していた。
いかにも愛らしい調べだが、
今もあの旋律を聞くと、
胸の塞がるような思いがよみがえる」
ここがいい。
桂三枝の創作落語は、
こんなディテールが積み重ねられて、
出来上がっている。
児童文学者のエーリッヒ・ケストナー。
「子供の頃のことをいかに鮮明に覚えているかが、
文学者の資質だ」
その意味で、
桂三枝の「アマリリス」は、
三枝落語の文学性を物語っている。
今朝は、妙に感心。
ちなみに三枝は、浪人のあと、
関西大学商学部に入学。
学んだ学部と表現者としての資質は、
関係ないらしい。
日経新聞スポーツ欄のコラム『チェンジアップ』。
元西鉄ライオンズの名遊撃手・豊田泰光が書く。
私が一番好きな野球コラム。
今日のテーマは、
「プロなら返金はタブー」
「中日の高木守道監督がお客のやじに我慢ならず
『バカやろー』と言い返した」
「しかし、客とけんかしてはだめだ。
野球のことなら何を言われても仕方がない。
それがプロだと私は思う」
豊田はこのコラムで、
プロフェッショナルの何たるかを説き続けている。
それが商人にとって、とても役に立つ。
もう一つの最近のエピソード。
「お金をとって野球をすることの意味を考えさせられたのが、
DeNAの入場料返金の試み」
DeNAは「コンプチャガ廃止問題」でも話題を集めているが、
この大型連休中、一部のチケットに、
「試合に満足できなければ、お代は返します」と打ち出した。
サービス業の入場料返金は、
小売業ではタダで商品を配るようなもの。
豊田は言う。
「話題作りとしてはいい。
だが返金はタブーだ」
「金を払ってでもみたくさせるのがプロ。
試合が成立したらお代は返しません、
というのが原則だろう」
顧客は皮肉なもので、
「ゴールデンウィーク中は健闘したのに、
返金希望者が相次いだとか」
DeNAの選手もチームも、
残念ながら、今のところ、
本物のプロではないらしい。
「お金のやりとりによって生じるスタンドとフィールドの間の緊張感が、
選手をプロにすることを忘れてはならない」
これも商売に通ずることだ。
商品の品質をはるかに下回る売価で顧客をつっても、
原価を割って安売り競争をしても、
顧客は続けて店にやって来はしない。
もちろん小売業でもコストコのように、
「返金返品・会費100%保障」を、
高らかに顧客と約束する店はある。
しかしその商売のプロフェッショナルぶりに、
会費を返せというカスタマーはほとんどいない。
さて、アメリカのニュース。
「米企業主要500社、1~3月8%増益」
これも恐縮しつつ日経新聞の記事。
調査会社トムソン・ロイターが、
第1四半期を終えた406企業実績に未発表企業のアナリスト予想を加えて集計。
純利益の前年同期比は8%で、
期初時点の予想値「3%増」を大きく上方修正。
その前の四半期・昨年10~12月期は9%増だったが、
二けた直前の伸びは続いた。
「中国は素晴らしい四半期になった」。
純利益を前年同期から94%増やしたアップル。
新機種「iPhone4S」の投入で、中国の売上高が3倍以上に急拡大。
米国の景気好調は、
中国をはじめとする新興国に支えられている。
対照的に、ヨーロッパ事業は長期的な落ち込みが懸念される。
フォード・モーターは「欧州地域の営業損が赤字になった」
結果としてフォードは「全体の純利益は45%減」。
スターバックスも既存店が、
「欧州・中東・アフリカ地域」で減収。
しかし米国本土は「底堅く推移」。
「マクドナルドの既存店売上高は米国が9%増」
これは「地域別で最も大きな伸び」。
私は今、成田空港。
これからその消費好調なアメリカに発つ。
商人舎USA視察研修会Basicコース。
目的地は、消費好調なアメリカで、
一番人口増加率の高いネバダ州のラスベガス。
2000年から2010年の10年間に、
ネバダ州の人口伸び率35.10%。
2010年段階で270万0551人。
伸び率は全米第一位。
第2位アリゾナ州の24.60%、
第3位ユタ州の23.80%を、
10ポイント以上も引き離して断トツ。
人口が増加しているから、
新しい業態やフォーマットが開発される。
商業・サービス業にダイナミズムがある。
1840年代末、
カリフォルニア州でゴールドラッシュが起こった。
ラスベガスは砂漠の中の重要な中継地として発足。
しかし金鉱ブームは去り、1929年の世界大恐慌。
そこで砂漠の中のネバダ州は、
税収確保のために、賭博の合法化を図る。
さらにニューディール政策で、
ラスベガス南東48Kmにフーバーダムが着工。
1930年段階の人口5165人。
このころを「ギャンブリングの時代」という。
つまりは賭博の街、ラスベガス。
つぎの段階は、1970年以降。
「ゲーミングの時代」。
男のギャンブルだけでなく、
女性も楽しめる「ゲーム化」した遊びの時代。
人口は12万5787人。
さらに第3段階は、1990年代から2000年後で、
このころが「エンターテインメントの時代」と呼ばれる。
人口は2000年に47万8434人に飛躍する。
街全体が遊園地の如き装置となる。
世界最高のショーも開催される。
子供連れのファミリーが楽しめる時代となる。
そして現在が第4段階で、
「コンベンション&リゾートの時代」。
2010年のラスベガスの人口58万3756人、
21万1689世帯。
大きな会議や展示会が開かれるところ、
そして他の地からやってくるだけでなく、
住み込んでしまうエリア。
ラスベガスという都市自体が、
「業態の転換」を図り、
「フォーマットの開発」を続けてきた。
大事なことは、
ギャンブリングもゲーミングも、
エンターテインメントも、
リゾート&コンベンションの時代に、
それぞれの機能がなくなってはいないということ。
社会的な機能が、
つけ加えられ、
厚みを増してきている。
だからストリップと言われる中心街は、
ギャンブリング、ゲーミング、エンターテインメント、
郊外には次々に新興住宅地ができ、
新しい小売業態やフォーマット、
ショッピングセンターが登場してくる。
Basicコースが、
ネバダ州ラスベガスを選んで、
一点集中で学ぶのは、
圧倒的に人口増加率が高く、
新しい業態やフォーマットが登場しているからだ。
ラスベガスに象徴されるアメリカのダイナミズムを、
肌で感じ、学び取るためだ。
豊田泰光の説く「プロフェッショナル」という点では、
一日の長があるアメリカへ、
いま私たちは、旅立とうとしている。
商人舎USA研修会Basicコースは、
2班に分かれて出発する。
Aグループはアメリカン航空で出発。
Bグループはユナイテッド航空。
事務局合わせて、
総勢67名のチームとなる。
チームごとに旅程や趣旨の説明。
Bグループ説明会。
そして最初のレクチャー。
Aグループに。
Bグループに。
フライト前の合間にも、
ブログとフェイスブックの執筆。
。
今年第1四半期消費好調のアメリカへ。
そのダイナミズムを感じ取りに、
では、行ってきます。
<結城義晴>