Everybody! Good Monday!
[2012vol20]
2012年も、第20週。
5月の第3週が始まる。
昨日の母の日。
どんな店も、きっと、
いい成果が上がったと思う。
母の日という大切な記念日を、
自分のこと、自分の母のことのように、
考え、行動しさえすれば。
邪念が入ると、
母の日は成功しない。
私はそう思う。
その母の日が終わると、
つぎのイベントは、
来週月曜日の金環日食。
5月21日午前7時半ごろ。
そしてこの日は、
二十四節気の小満(しょうまん)。
「万物が次第に成長して、
一定の大きさに達して来るころ」のこと。
いい季節だということ。
しかし5月中旬の今ごろから、実は
梅雨前線が天気図上に現れる。
この前線は華南や南西諸島付近に停滞。
そして沖縄では、早ければ小満のころから梅雨に入る。
さらに5月下旬から6月上旬、
九州、四国が梅雨前線の影響下に入る。
そう考えると、梅雨はもうすぐ。
いまは、その梅雨の前のいい季節ということになる。
いい季節のいい1週間を過ごして、
300年後にしか見られない金環日食を楽しむ。
晴れてくれることを祈りつつ。
私は今、アメリカ合衆国ネバダ州ラスベガス。
この地は1年で3回しか雨が降らないと言われる。
ここでならば金環日食は絶対に見られるのに、
なんて思ったりする。
今月は月終わりの5月29日・30日・31日に、
商人舎ミドルマネジメント研修会開催。
いまのところ110名の参加状況だが、
あと10名くらいの席を用意した。
今週末まで、まだまだ、募集中。
是非ご参加を。
さて私はラスベガス。
もう4日目が終わった。
ラスベガスの食品小売業の企業業態別市場占拠率は以下。
これは2011年の数値。
1.クローガー系スミス27.7%
2.ウォルマート スーパーセンター16.2%
3.アルバートソン9.2%
4.コストコ9.0%
5.セーフウェイ系ボンズ7.7%
6.ウォルマート・サムズクラブ7.5%
7.ウォルマート・ネイバーフッドマーケット4.1%
8.ホールフーズ・マーケット2.9%
9.ウィンコ・フーズ 2.4%
10.フレッシュ&イージー(テスコ)2.3%
11.トレーダー・ジョー2.2%
このうちスーパーセンター、サムズ、
そしてネイバーフッドマーケットを合わせると、
ウォルマートが27.8%。
ウォルマートとクローガーが、
それぞれ27%台を占める2強であることがわかる。
かつて、このネバダ州のローカルチェーンは、
スミスとボンズだった。
それらはクローガーとセーフウェイの傘下に入ってしまった。
その最大の理由はウォルマートの侵入。
さらにホールフーズ、ウィンコ、フレッシュ&イージー、
そしてトレーダー・ジョーなどの参入。
商人舎ベーシック編は、
当然ながら、これらの店をすべて訪れる。
今日は、スーパーマーケットのナショナルチェーン2社と、
ホールフーズ、トレーダー・ジョーを紹介しよう。
まず、売上げナンバー1のクローガー系スミス。
クローガーは全米小売業第3位。
スーパーマーケット第1位。
2011年売上高903億7400万ドル。
100円換算で9兆0374億、伸び率9.9%。
純利益が6億0200万ドル(602億円)、こちらはマイナス46.0%。
総店舗数は3574。
「最高の品質」をうたう青果売り場。
極めてオーソドックスな店づくりだが、
そのオーソドックスさが許されるのは、
トップ・シェアのクローガーだけ。
カラー・コントロールされたプレゼンテーション。
ボリューム陳列も美しい。
「商品に語らせる」とはこのことだ。
青果に続くデリ売り場は、
サラダの対面コーナーから入る。
下段にはカップサラダが並ぶ。
精肉も対面売り場から入る。
最高品質のチョイス、カンザスのプライムビーフを品ぞろえ。
対面売り場の次に、セルフサービスの多段ケースのミート売り場。
これもオーソドックスな販売方式。
1930年、マイケル・カレンは、
「80%をセルフサービス、20%を対面売り場」とする方式を生み出した。
それがスーパーマーケットだった。
クローガーはその伝統的な方式を踏襲している。
通常より1ポンドあたい1ドル30セント割引価格のボンレスポーク。
パック当たりいくらお得かをパッケージに表示して訴求。
チーズ売り場も対面とセルフサービスを組み合わせる。
その対面のチーズ売り場。
セルフのチーズ売り場。
チーズとワインの充実は必須となってきた。
対面には人手がかけられる。
だからノンコモディティ商品。
セルフは説明しなくともわかる商品。
すなわちコモディティ商品。
グルテンフリー商品は、
アメリカでは当たり前に品ぞろえされている。
低価格商品はスポッターで強調する。
店のいたるところで、
2012年ラスベガスのベスト店舗に選ばれたことを告知している。
今回で7回目。
クローガーのスミスは、
このエリアナンバー1の地位を占めるだけあって、
オーソドックスな店づくりだが、
まさにマーケット・リーダーの戦いぶりだ。
一方、セーフウェイ系のボンズ。
セーフウェイの2011年度売上高は、
436億3000万ドル、6.3%。
純利益は5億1700万ドルだが、
前年比マイナス12.4%、
期末店舗数は1678店。
このほとんどの店舗を、
「ニューライフスタイル」ストアに改装して、
セーフウェイは脱皮を図っている。
「オーソドックス」の伝統型が通用するのは、
地域ナンバー1シェアの企業だけのようだ。
入り口を入ると、プロモーションコーナー。
価格訴求の商品が並ぶ。
母の日を控え、
切り花コーナーは入り口付近で充実。
「LOWER PRICE」をアピールする青果売り場だが、
オーガニックの取り扱いを強調している。
壁面は多段ケースでの葉物の展開。
木製の床と什器でシックな高級感を演出する。
ドライフルーツの展開。
高い平台は、お客にとっては商品が見やすい。
今日のオーガニックフルーツと野菜のコーナー。
鮮度をアピール。
プライベートブランド「Oオーガニック」のカット野菜のパック。
りんごなどの青果物にもOオーガニック商品が数多く開発されている。
リンゴ一つ一つに「O」ブランドマークがついている。
青果部門の次が、
奥に調剤薬局のあるファーマシー売り場。
現在のスーパーマーケットは、
ほとんどがドラッグストア併設型。
フード&ドラッグと言ったり、フード&ファーマシーと呼んだり。
そしてドラッグストアの大半は、
奥壁面に位置付けられる。
このことによって、
店内をくまなく回遊してもらうことができる。
壁面がR型に湾曲したデアリー・コーナー、
すなわち乳製品の売り場。
店舗左翼はサービス・デリのゾーン。
レンジ商品の「meals to go」コーナー。
温めるだけですぐに食べられる調理済みメニューが豊富にそろっている。
「HOT SPOT」とPOPでアピールされたお買い得商品。
視察の金曜日は、売り場全体で「5ドル」キャンペーンが行われていた。
ピザ、ロティサリーチキンなど5ドル商品を展開し、よく売っている。
グロサリーのアイルは陳列線が長い。
そして店舗左が酒売り場。
ただしこの店、ちと苦しい。
三番目はタウンスクエア地区にあるホールフーズ。
ライフスタイルセンターと呼ばれるショッピングセンターの核店舗。
昼時には、周辺のオフィスで働く人たちが訪れる。
ホールフーズの2011年売上高は、
311店舗で101億0800万ドル、
対前年比12.2%。
100円換算ながら、ついに1兆を超えた。
既存店伸び率は8.5%。
純利益は3億4300万ドルで、
これも39.4%の驚異的な伸び。
店舗数も311となった。
オーガニック&ナチュラル・フーズを中心に、
健康的なライフスタイルを提供する。
ラスベガスでも独自のポジショニングで固定ファンをもつ。
入り口を入ってすぐの壁面には、
「ロウ・フード」のコーナー。
Raw Food。
つまり加工されていない生の食材を用いた食品。
これを主体に食生活する考え方を「ロウフーディズム」という。
「リビングフード(Living Food)と呼ばれることもある。
一般に、全食事の6割以上であれば、
ロウフーディストと考えられる。
その売り場を入り口右手に大々的にもってきた。
意欲的な試みだ。
青果部門から入るが、どの店もカラーコントロールと陳列の技術が高い。
そして鮮魚の対面売り場。
作業台が一段高くなっていて、
顧客を見下ろすような態勢となる。
しかしこれがコミュニケーションをしやすくする。
精肉対面コーナーのひき肉からステーキ売り場。
「マザーズ・デー」のPOPがつけられている。
惣菜コーナーはホールフーズの売り物の一つだが、
対面方式の大皿盛は、とりわけてうまい。
もちろんオーガニック素材がふんだんに使われている。
店舗左奥がワイン&チーズのショップ。
オーガニックワインも品揃えされているし、
1ドル99セントワインも開発されている。
それらのワインとチーズを組み合わせて、
ショップ展開するところまで、
ホールフーズは専門性を追求している。
ベーカリー売り場に最近お目見えした新しい什器。
品質維持が可能で、しかも顧客からすごく見やすい。
レジの手前には、コーヒー豆売り場。
そしてレジのうしろのフードコートに、
急きょ登場したエコバッグゴンドラ。
カスタマーサービス担当のケンドラさんと、
マーケティング担当のジムさんの2人にインタビュー。
ホールフーズに働く喜びや、やりがい、
そして生きがいまで語ってくれた。
その後、全員で記念写真。
ケンドラさん、ジムさんというホールフーズのナレッジ・マーチャント。
そして日本からやってきた知識商人たち。
とても良い交流ができた。
つづいてトレーダー・ジョー。
2011年売上高90億ドル。約9000億円。
伸び率は5.8%と相変わらず。
期末店舗数も375と成長は続く。
ホールフーズもトレーダー・ジョーも、
1兆円の大台に乗るかという企業になってきた。
ずっと両者を認め、応援してきた私としては、
嬉しいかぎり。
両者がチェーンストアでないとは言えないし、
両者がスーパーマーケットでないとも絶対に決めつけられない。
入り口を入ったところに花売り場。
青果部門の鮮度、品質、品ぞろえのレベルも、
ずいぶん高くなってきた。
トレーダー・ジョーは、
リミテッドアソートメントのグロサリーストアであった。
しかし客数が多くて商品回転が速いと、
生鮮食品も充実してくる。
このオーガニック・バナナのおいしそうなこと。
バナナの奥のリンゴなども島陳列。
必需の品が鮮度よく、安全で、安い。
全てがセンター供給。
Artisan Breadの島陳列。
最近一番力を入れているのが、チーズ。
ナチュラルチーズも、安くて、うまい。
そしてワインコーナー。
トレーダー・ジョーのプライベートブランド「リザーブ」が、
9ドル99セントでエンド陳列。
私がお土産に持って帰る、定番ワイン。
1000円だが3000円から5000円くらいの価値がある。
そして最後におなじみのレナートさんのインタビュー。
固い握手。
そしてトレーダー・ジョーでも、
全員で記念写真。
ラスベガス地区のマーケットシェアは、
クローガーとウォルマートがクリティカル・マスを超えている。
この2強に対抗することができる企業は、
明らかにホールフーズとトレーダー・ジョー。
最近はこれらにウィンコ・フーズが加わる。
こちらはディスカウントタイプのスーパーウェアハウスストア。
ウィンコはウォルマートと、
激しく競争する。
その影響を最も大きく受けるものは、
クローガーだろう。
ホールフーズとトレーダー・ジョーの、
両者のポジショニングを揺るがす者は、
しばらく登場することはない。
クローガーもセーフウェイも、
頭が痛いに違いないし、
ウィンコはウォルマートにとって、
これまた目の上のたんこぶだ。
そこで企業規模もマーケットシェアも
小さな者たちの方が、
優位な競争を進めている。
不思議な現象が起こっている。
これがアメリカの面白いところだし、
知識社会が訪れていることを証明するものでもある。
そしてなぜか元気が出てくる。
皆さんに、その元気を、
おすそ分け。
では、Good Monday!
(明日につづきます)
<結城義晴>