最後の百貨店ジャーナリスト風間晃、
逝去。享年60。
謹んで、心から哀悼の意を表したい。
一昨日、通夜、昨日、告別式。
私は参列できなかった。
㈱ストアーズ取締役編集局長。
アメリカにも『ストアーズ』という媒体があるが、
あちらはチェーンストアの情報誌。
日本では月刊『ストアーズ・レポート』が、
唯一の百貨店業界の専門誌。
ストアーズ社はそれ以外にも、
ブランケット版の『週刊デパートニューズ』紙を発刊していて、
私も何度か、風間さんに頼まれて寄稿したことがある。
もう30年以上も前になるが、
「横浜会」という勉強会をやっていた。
小売流通業のジャーナリスト、コンサルタント、
そして若手実務家が集って、
1カ月に1回、研究会を開いて、一献傾ける。
コンサルタントの小森勝さんや、
当時、イトーヨーカ堂RE部の鈴木哲男さんも参加していた。
もちろん風間さんも私も、常連メンバーで、
横浜駅南口の「味楽」というおでん屋を根城にしていた。
実際に、このおでん屋には、
ストアーズ社の桧垣さん(お名前は失念した)と言う先輩が、
4畳半の座敷に泊まり込んで、寝起きしていた。
古き良き時代。
ストアーズ社は、作家の椎名誠さんを輩出した。
椎名さんは1976年、『ストアーズレポート』編集長のとき、
『本の雑誌』の創刊号をゲリラ的に発行。
デパートニューズ社の同僚の目黒考二さん、菊池仁さんが、
共同でその編集に携わった。
この菊地仁さんが風間さんの実の兄上で、
だから風間さんは最初から、仕事上はペンネームを使っていた。
社内に菊地が二人いると紛らわしいから。
私が商業界に入社した1977年、
私の属した『販売革新』と『ストアーズ・レポート』は、
同じ印刷所を使っていた。
東京・茗荷谷の東洋社印刷。
小林さんという気さくな営業マンが、
いつも愚痴を言いながら、
原稿を受け取りに来ていた。
小さな印刷所は活版印刷の方式で、
1階の工場では植字工という職人たちが、
いつも文選作業をしていた。
昼休みには「チンチロリン」で遊んでいたが、
プライドの高い職人ばかりで、
彼らの教養は驚くほど高かった。
椎名さんはその後、
㈱商業界の月刊『商業界』編集長にスカウトされたが、
ギリギリのところで、それを断って、
作家兼『本の雑誌』編集長となった。
このあたりの経緯は、
椎名著『哀愁の町に霧が降るのだ』の後半から、
『新橋烏森口青春篇』、『銀座のカラス』などに、
面白おかしく書かれている。
椎名さんが去った後、
残された『ストアーズ・レポート』を支えたのが、
風間晃さんで、だから私は彼をこう呼ぶ。
「最後の百貨店ジャーナリスト」。
まだ残っている現役諸君には申し訳ないが、
私と同期の風間晃を、私がそう呼ぶのだから、
許してください。
それにしても、60歳の早世。
ここ数年、会っていなかったし、
酒を酌み交わすこともなかった。
残念でならない。
黙祷し、静かに、合掌。
さて、昨日の関東地方は、
一転、汗ばむ気温。
その昨日の午後、
一般社団法人流通問題研究協会の通常総会。
そして記念講演会が開かれた。
場所は東京タワー向かいの機械振興会館。
東京タワーの下に広がる芝公園。
お年寄りや子供たちが新緑の中で散策したりサッカーをしたり。
東京タワーも青空に映える。
新緑にもタワーは映える。
スカイツリーばかりが話題で、
忘れられた存在になりがちだが、
どっこい、東京タワーは修学旅行生でにぎわっている。
平成24年度第46回通常総会では、
23年度の事業報告、決算、
そして24年度事業計画と予算が、
無事に承認された。
今年度からは、一般社団法人となる。
新CIも定まり、IDRの略称で活動することも確認された。
講演会では、IDR協会長の玉生弘昌さんがあいさつ。
「講演の後に質問タイムを設けますが、
いろいろお聞きしたいことはあるでしょうが、
場にそぐわないご質問はしないよう願います」
一同爆笑。
なぜなら、講演者は㈱ヤオコーの川野幸夫会長。
日本スーパーマーケット協会会長。
先だって㈱ライフコーポレーションとの業務提携を発表したばかり。
そのためか、会場は満席。
川野会長の講演テーマは、
「全員参加の商売 全員参加の経営」
ヤオコーは23期連続増収増益。
「日本に4000社ほどの株式上場企業があるが、
ヤオコーは一番長い間、増収増益を果たしている企業らしい」
川野さんは、その背景にあるものを1時間にわたって語ってくれた。
「卑屈な仕事、付加価値の低い仕事と誤解し、
商人になりたくないと思っていた学生の頃、
林周二の『流通革命』、渥美俊一の「流通革命論」に感銘を受け、
商人になろうと決めた。
バブル崩壊後、小売サービス業が、
専門化しなければならない時代を迎える。
ヤオコーも他のスーパーマーケット同様、業績が低迷。
そこで1994年4月に第一次中期3カ年計画をスタートさせ、
『ライフスタイルアソートメント型スーパーマーケット』を志向。
とりわけ生鮮食品とデリの充実を図る。
1998年10月、狭山店の大改装で
マーケットプレイス型狭山店モデルを成功させる。
2003年3月の川越南古谷店では、
ミールソリューションの充実、
『キッチンサポートコーナー』を設置。
そして今年3月、
これからの出発点となる川越的場店をオープンさせた」
「スーパーマーケットは狭い商圏での市場(いちば)。
すべてのお客を対象にしなければならない。
だからライフスタイルアソートメント型スーパーマーケットでも、
価格コンシャスが大切。
店によって売れるもの、値ごろ感など商圏特性がある。
だから地方分権のような考え方で、
『チェーンとしての個店経営』が必要。
ヤオコーのパートナーさんは日本一。
女性は優秀だし、活かされたいと思っている。
パートナーの中には、経営のことまで考えている人がいる。
仕事の喜びは上からの命令、統制ではなく、
自らの意志で何かをしたときにしか生まれない」
「ポイントカード・ヤオコーカードの導入、
三味の合併、
ライフコーポレーションとの業務提携など、
将来を見据えて、若い経営陣が、
次の一手を打ち出している」
川野さんは、ヤオコーの強みを存分に語った。
最後に玉生さんと記念撮影。
県立浦和高校の先輩後輩。
息が合っています。
講演を終え、増上寺を通り抜け、横浜へ。
旧方丈門が、若葉に彩られ美しい。
いい季節に気持ちのいい話を聞いた。
それにしても、風間晃、
もったいない。
再び、合掌。
<結城義晴>