『ほぼ日刊イトイ新聞』。
糸井重里の毎日巻頭言「今日のダーリン」
いつも同感させられることばかり。
ぼくは、じぶんが参考にする意見としては、
「よりスキャンダラスでないほう」を選びます。
「より脅かしてないほう」を選びます。
「より正義を語らないほう」を選びます。
「より失礼でないほう」を選びます。
そして「よりユーモアのあるほう」を選びます。
まったく同感。
新聞でも雑誌でも、
インターネットのニュースでも、
ブログでもfacebookでも。
「スキャンダラス」な情報は、人の注目を集めます。
人のこころを激しく波立たせます。
そういう情報を伝えるということには、まずは、
慎重であるべきだと考えるのがおとなの知性でしょう。
「そんなにすごいこと」を、次々に発信する人の意見は、
ぼくは信じる前に、しばらく置いて「待ち」ます。
待っている間に、錯覚や誤情報だと判明する場合が、
いままでのところでは、とても多かったです。
「脅かし」ている情報は、判断の選択肢をせばめます。
「これしか方法はない」と追い込まれると、
人間は考えを停止して、行動せざるを得なくなります。
「もっといい方法」を探すことも、
「いまは、それどころじゃない!」の怖れのなかで、
できなくなってしまいますから。
「正義を語る」をことさらにするということは、
「自己批評」の余地がないということになります。
「おれもダメなんだけどさ」という部分がないと、
どこまでも持論を押し付けることになりやすいです。
「よいことをするときには、
わるいことをしているくらいに思ってちょうどいい」
と、ぼくはそう考えています。
「損得より先に善悪を考えよ」
これは正義について語っています。
しかし「ことさらにする」ということではありません。
ここ、とても大事なところ。
最後に。
「失礼」ということについては、
‥‥誰だって、
失礼な人の話は聞きたくないでしょう?
そして「ユーモア」は知性そのもの。
文章の最後に「(笑)」など入れればユーモア、
などと勘違いしている人もいますが、
それはよく、「失礼」をごまかすときに使ったりされます。
さて、日本は蒸し暑いみたいだが、
サンフランシスコは夏服では寒い。
昨日は研修最後の日。
朝一番で、私の講義。
みんな、元気に集まってきた。
ホテル日航25階の会議室。
サンフランシスコの街が見おろせる。
テキストのすべてを語るけれど、
今日は一番大切な理論の部分。
途中で、調査報告をしてもらう。
発表者は小田島孝さん、
ウォルマートとコストコで、
牛乳のPFグラフをつくった。
全員が7つの班に分かれて、
それぞれ、異なるカテゴリーで調査を行う。
それをまとめて、PFグラフにする。
私が講評しつつ、
店長の売場点検と売り場管理の方法を伝授。
2時間きっかり、
「フォーマット」と「ポジショニング」、
そして「コモディティ」に関する肝となる講義を終わる。
それからすぐにバスに乗って、
最後の視察。
ウィンコ・フーズ。
いま最も注目すべき企業。
店舗面積はほぼ94,000平方フィート(7,500㎡)。
天井はむき出し、ノンフリルの低投資型店舗。
広い店内を約150人のアソシエーツが、
効率よく運営・管理。
だから床はピカピカで、清潔感がある。
入り口を入ると、「The Wall Of Values」。
巨大なラックに陳列された超特売品売り場。
並んでいる商品の関連性は全くない。
むしろ「意外!」と思われるくらいがいい。
品目ごとに競合店価格比較POPがついている。
ウォールが終わると青果部門。
壁面売場も、クレート陳列。
鮮度はいい。
バナナの売り場。
最も安い。
600品目のバルク売り場。
冷蔵平ケースと対面売り場のデリ、ミート部門。
そして長い長い平冷凍ケース。
両サイドはリーチインケースが並ぶ。
グロサリー部門は、
店舗両サイドから一番向こうまで見渡せる可視率の高い売り場づくり。
品目は絞り込まれていて、単品大量販売。
コカコーラ2リットル1ドル08セント。
アメリカ中で一番安い。
クレジットカードは受けず、現金決済。
回転差資金を生み出すキャッシュフロー経営が、
ウィンコの安さの秘密のひとつ。
まだまだ研究余地がある企業だ。
何しろウォルマートが一番厄介な存在と考えているくらい。
次はナゲットのフード4レス。
これもディスカウント・スーパーマーケット。
店長のティムさんが、また、
迎えてくれた。
入り口はウィンコと同じ巨大な壁。
床はウィンコ以上にピカピカ。
それからワンウェイで青果部門へ。
安売りしながらこの陳列。
ミートはUSDAのチョイス・グレード。
牛乳もウォークインクーラー。
ラックに陳列されたドライグロサリー。
前進立体陳列と突き出し陳列の配置が、
これ以上ないというくらい原則的。
ウィンコとナゲットのフード4レスを訪れると、
アメリカのディスカウント業態が
明らかに変化を遂げたことがわかる。
安いから悪い。
安いから汚い。
安いからノーサービス。
これでは、まったく競争に勝てない。
安くて良い。
安くてきれい。
安くてホスピタリティ。
この次元に到達している。
恐ろしいことだが、
それができなければ生き残れない。
<結城義晴>