福島県いわき市の安島浩さん。
あの㈱マルト代表取締役社長。
安島さんから誕生祝が届いた。
プライベートブランドの大吟醸「滄海」。
それからとらやの羊羹。
そして日野原重明著『100歳のことば』(PHP文庫)。
心から、お礼申し上げたい。
日野原さんの本を読んでいたら、
100歳まで生きたくなった。
100歳まで生きられる気になった。
「日々忙しいことが、
たいへんな人生を歩む滋養になっている」
日野原重明、100歳。
「時には失敗もありますが、
楽しい多忙です」
外山滋比古、言語学者、87歳。
「無難なことをやっていては、
明日という日は訪れて来ない」
奥村土牛、画家、1990年9月25日没、101歳。
「無茶をせず、無理をする」に通ずる。
「今日もおしごと、おまんまうまいよ、
びんぼうごくらく、ながいきするよ」
平櫛田中、彫刻家、1979年12月30日没、107歳。
多忙こそ長生きのもと。
私もその気になってくる。
安島さん、ありがとう。
さて昨日の続き。
「スチュー・レオナードとイータリー」
〈後編〉の今日はまずイータリーを紹介しよう。
Eatalyの創業は2007年。
トリノにイタリアン食料品店&飲食店として開店。
その本店は1万平方メートル超級の大型店。
マンハッタン5番街23丁目のニューヨーク店は、
2010年のオープンで、
本店の半分の約4600平方メートル。
入り口は2カ所あるが、
メインの入り口ともいうべき青果部門から入る。
イタリアの市場スタイルの売り方。
いわゆるマーケット。
スチュー・レオナードのようなワンウェイ方式ではない。
しかし、どう見てもスーパーマーケットの青果部門。
シーフード部門は対面方式。
精肉部門ももちろん対面方式で、
イタリアメニューの各種肉類が販売されている。
ハム・ソーセージ売場も対面方式。
パスタ類を中心にしたデリ売場。
本場イタリアのグルメ惣菜が、
これでもかとアソートメントされている。
売場にはすぐに客が押し寄せ、
写真が撮れなくなる。
インストア・ベーカリーもご覧の人気。
チーズ、牛乳、乳製品の品ぞろえも豊富で、
イタリア料理の奥の深さを感じさせてくれる。
飲料売り場も充実しているし、
イタリアワインも実によく品揃えされている。
キッチン用品、食器もイタリアンテーストの小洒落た品ばかり。
つまりは商品ラインの統一が、
完璧に図られている。
そしてイタリアの食と料理に関連した本や雑誌。
最後にレジ。
トレーダー・ジョーやホールフーズの繁盛店と同様の、
ストレスがかからない銀行方式のレジ。
ここまではスーパーマーケットそのもの。
対面方式多用ではあるものの。
そしてこの小売業の機能とフードサービスの機能が、
手の届く範囲で共存している。
売場ゾーンと飲食ゾーンが、
カテゴリー別に隣り合わせで共存している。
まさにスーパーマーケットとフードサービスの融合。
イタリアの食に絞り込んだ。
だからこそ内食と外食、中食の融合が、
実現された。
私は、そう考えている。
コンセプトは、
「学んで、食べて、買う」。
店内はイタリアからの輸入品を中心とする小売ゾーン、
イートインスペースとレストラン、
さらに料理教室などが一体化されている。
店舗入り口付近のレストラン。
料理教室のような施設で調理され、
そのわきのテーブルで食事をとる。
私たちも立食のスペースで、
ワインと生ハム、チーズを注文。
すぐに注文に応じて、
料理が出来上がる。
そして乾杯。
買い物組と合流。
こんな楽しみ方もできる。
イタリアに7店、日本に11店、
アメリカには、ニューヨークに1店。
この店は、
外食と内食の完全なる融合という点において、
21世紀の未来型食品店舗の一端を表現 している。
そのイータリーの「Our Policy」。
1 The customer is not always right
顧客はいつも正しいわけではない。
2 Eataly is not always right
イータリーもいつも正しいわけではない。
3 Through our differences, we create harmony
顧客とイータリーの差異が調和を創り出す。
対して、スチュー・レオナードの「Our Policy」。
Rule1 The Customer is Always Right!
原則1 顧客はいつも正しい。
Rule2 If the Customer is Ever Wrong, Reread Rule1.
原則2 たとえ、顧客が間違っていると思っても、原則1を読み返せ。
レオナードは、いつも顧客は正しいと言い、
イータリーは、いつも正しいわけではないと言い返す。
イータリーのオマージュ?
イータリーのユーモア?
私はここに20世紀と21世紀の差異を見る。
20世紀型のレオナードは生真面目に顧客をとらえる。
21世紀のイータリーは現実のものとして顧客をとらえる。
レオナードは顧客との主従の関係を重視する。
イータリーは顧客との対等の関係を志向する。
主従の関係をサービスという。
対等の関係をホスピタリティと呼ぶ。
レオナードはファミリーを呼び寄せる。
幼児化した店づくりも見せる。
イータリーは大人の世界を追求する。
子供は寄せつけない。
20世紀にはレオナードの幸せがあった。
21世紀にも、もちろんその良さはある。
しかしそれがすべてではない。
豊かさのひとつだ。
つまり21世紀はセグメントされたニーズの時代。
20世紀はマスのニーズの時代。
この違いをレオナードとイータリーが表している。
そして郊外ヨンカースのレオナードは客数が減り、
マンハッタン5番街のイータリーは押すな押すなの大盛況。
マスがすべてではなくなったことを、
この現象は示している。
いまや、セグメンテーション、ターゲティング、
そしてポジショニングが、
小売業・サービス業でも、
必須の考え方なのである。
イータリーにはこのマーケティングの鉄則がある。
これが21世紀のマーケティングであり、
未来型小売りサービス業である。
Is the customer always right?
レオナードとイータリーが、
自らの存在をかけて、
私たちに問うている。
<結城義晴>