結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2012年09月08日(土曜日)

イトーヨーカ堂2015年パート比率90%の改革と童謡「赤とんぼ」の郷愁

後世に残したい童謡ランキング1位は、
「赤とんぼ」だそうだ。

毎日新聞の一面コラム『余禄』が取り上げた。

三木露風作詞、山田耕筰作曲。
詞は1921年(大正10年)、
曲は1927年(昭和2年)につくられた。

夕焼小焼の赤とんぼ
負われて見たのはいつの日か

山の畑の桑の実を
小籠に摘んだはまぼろしか

十五で姐やは嫁に行き
お里のたよりも絶えはてた

夕焼小焼の赤とんぼ
とまっているよ竿
の先

一番の歌詞の「負われて」を、
「追われて」と勘違いしている人が意外に多いとか。

二番の「桑の実」も今や、
それを知る若い人は少ない。
三番の歌詞の「姐や」という仕事はもう見当たらないし、
十五で嫁に行く少女もほとんどいない。

とすると、四番の歌詞だけが、
今でも通用するのか。

「夕焼け小焼けの赤とんぼ
とまっているよ竿の先」

しかし「竿」も日常的には身の回りにないし、
そして何よりも「赤とんぼ」が、都会からは消えた。

ノスルジー nostalgie。郷愁。
私たちのこの感情が、
赤とんぼの歌を残したいと訴える。

さて、流通に関して、
いろいろなメディアが取り上げたが、
日経新聞の一面記事が一番目立った。
「ヨーカ堂、正社員半減 パートを9割に」

総合スーパーを主力に展開するイトーヨーカ堂。

㈱セブン&アイ・ホールディングスは、
日本の小売業第2位。

2011年度年商4兆7863億円、前年対比でマイナス6.5%。
経常利益は2932億円で、こちらは前年比20.7%増。

そのなかでイトーヨーカ堂は、
1兆3611億円、 前年比マイナス0.9%。
経常利益は135億円。
こちらは前年がひどく悪かったので、
162.9%増。

このグループの稼ぎ頭は、
セブン‐イレブン・ジャパン。
チェーン全体の売上高は3兆2805億円で、
伸び率11.3%。
経常利益は1898億円 で、
伸び率7.7%。

単体企業として堂々の日本一。

もう経常利益はコンビニが、
総合スーパーの14倍。

一方、イオンリテールの年商は、
2兆1999億円 で、前年比プラス28.5%。
こちらの経常利益は432億円、
前年比40.3%プラス。

イオンリテールの利益は、
イトーヨーカ堂の3.2倍。

ちなみに同グループのスーパーマーケットは、
ヨークベニマルの年商3486億円 (プラス1.5%)
ヨークマート1184億円(7.2%)
で、
両者を合わせると4670億円。

経常利益は、ヨークベニマル163億円(58.7%増)、
ヨークマート40億円(27.8%増)で、
ヨークベニマルだけでもイトーヨーカ堂の経常利益を上回る。
スーパーマーケット2社合計の203億円は、
ライフコーポレーションやアークスをしのいで日本一。

イトーヨーカ堂は、
かつて経常利益1000億円を超えていて、
それは2位から6位までの5社合計を上回っていた。
ダイエー、西友、ジャスコ、マイカル、ユニーの経常利益を、
総合スーパーのイトーヨーカ堂1社がしのいで、
利益では「1強5弱」といわれた。

それが、現在は、
セブン-イレブンはもとより、
同業態のイオンリテールにも、
同グループのヨークベニマルにも及ばない。

そこで、根本的な収益構造転換対策を講じる。
現在でもパートタイマー中心のオペレーションだが、
そのパート比率を90%に引き上げる。
現時点より13ポイント高める。
パート社員は6800人増やされ、
正社員8600人は半減される。

その結果、2015年度段階の総従業員数は、
現在より約2500人増えて、
4万0500人となる。

肝心の人件費は100億円削減され、
現在から7%減の1330億円になる。

目途は2015年度だから、
3年半の猶予。

イオンをはじめ主要小売企業のパート比率はほぼ80%前後。
イトーヨーカ堂の90%はディスカウンターの水準と同等となる。

もちろん優秀なパートタイマーが採用されねばならないし、
その技術レベルも上がっていかねばならない。

従って、パートタイマーの給与制度は改められる。
例えば生鮮加工技能を持つ人には、
現在の2倍、3倍の給与水準が用意される。

さらにトップマネジメントやミドルマネジメントへの、
登用の仕組みも導入される。

こう見ると、イトーヨーカ堂のパートタイマー比率引き上げは、
アメリカ流の体系への転換と受け止めることもできよう。
アメリカでは基本的に、
マネジャーが月給制 (サラリー)である。
あとは時給制のフルタイマーとパートタイマーに分けられる。

ウォルマートの精肉部門長は、
時給制のフルタイマーで、
時給22ドル。

そんな方向を、イトーヨーカ堂は、
志向せざるを得ないと思う。

ただ単に衰退業態における人件費の削減であったら、
これは失敗するに違いない 。

新しいマネジメント体系づくりを志向するならば、
イトーヨーカ堂は他のモデルとなるシステムをつくるかもしれない。

同社正社員はグループ内の他社へ転籍される。
採用も抑制される。
希望退職は実施しない。

最も多い転籍先は、セブンーイレブン。
仕事はスーパーバイザーまたはフランチャイズ加盟店の店長。

これも厳しい仕事だが、
希望退職制度は採用しないという。

最後に、私見。
総合スーパーは国際的にはハイパーマーケットと呼ばれる。
アメリカではウォルマートのスーパーセンター、
ターゲットのスーパーターゲット、
フランスではカルフールのハイーパーマーケット、
イギリスではテスコ・エクストラやマークス&スペンサー。

イトーヨーカ堂ほどの企業が、
この業態の日本市場における社会的機能を、
再生させられないはずはない。

その一つの側面が、
パートタイマーの改革なのだと思う。

イトーヨーカ堂を、
「赤とんぼ」のノスタルジーには、
してはならない。

<結城義晴>

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