毎日新聞巻頭コラム『余禄』は、
「首のすげ替え」を使った。
「もともと文楽の言葉という。
登場人物のキャラクターと場面にあわせて
人形の首(かしら)をすげ替えて用いることから、
人事のたとえとして広まったそうだ」
これ、自民党総裁の谷垣禎一不出馬の記事。
日経新聞『春秋』が使用したのは、
「糟糠(そうこう)の妻は堂より下さず」
「貧しい時代に苦労をともにしてきた妻を、
自分が出世して偉くなったからといって
家から追い出してはならない、という意味である」
これも、哀れな谷垣総裁のこと。
一方、朝日新聞『天声人語』は、
「半世紀前の名曲『王将』は、
勝負師の意地がはじける三番がいい」
〈明日は東京に出て行くからは
なにがなんでも勝たねばならぬ……〉
大阪から「天下取り」に挑んだ人物、
すなわち橋下徹大阪市長。
大新聞が政治の季節を迎える。
そうなると、
「首のすげ替え」や「糟糠の妻」から、「王将」まで、
何だか時代がかった言い回しが頻発する。
民主党代表選挙の4候補は、
野田佳彦、赤松広隆、原口一博、
そして鹿野道彦まで出てきた。
対する自民党候補は、谷垣禎一辞退で、
石原伸晃と安倍晋三、石破茂、
さらに町村信孝、林芳正。
日本維新の会は、
橋下徹の一人舞台。
いまだ日本の政党として何一つ実績がないにもかかわらず、
この注目度。
国民の生活が第一、
みんなの党をはじめ、
「中小野党」といわれた諸党は全く蚊帳の外。
民主党の国会議員数337人、
衆議院議員248人、参議院議員89人。
自由民主党は202人で、衆119・参83。
三番手は国民の生活が第一で49人、衆12・参37、
公明党が続いて、国会議員40人の衆19・参21。
両者は現在、キャスティングボードを握ることを存在価値とする。
次が、みんなの党16人、衆5・参11。
日本共産党と社会民主党は、
それぞれ国会議員15人と10人。
いまや古典的政党。
あとの小野党は、
新党きづな9人、国民新党5人、
新党大地・真民主5人、
たちあがれ日本5人、減税日本3人、
新党改革2人、新党日本1人。
このカテゴリーは「新党〇〇」が多い。
こう見てくると、「王将」の日本維新の会は、
みんなの党レベルになるのか、
それとも国民の生活が第一や公明党を抜いて、
第三位に入り込んで、
他の中小野党議員を一本釣りで獲得し、
膨張するのか。
私は東北・仙台。
海岸線は東日本大震災の甚大な被害を受けたが、
1年半後の今、東北新幹線の車窓から次々に見える光景が、
この地が日本の穀倉であることを示してくれる。
政治も行政も経済も、
この現場の前では、
謹んで合掌するしかない。
仙台一の歓楽街・国分町も、
完全復活近し。
私は、東北の友人たちと情報交換。
左から、旧知のケイマート社長・千葉喜夫さん、
㈱アイダスグループ社長・鈴木國朗さん、
そして㈱寺岡システム代表取締役社長の長沢善光さん。
さて震災の打撃から回復している東北も熱いが、
四国の商業もホットだ。
日経新聞の日曜版に、
「セブンイレブン、四国進出」の記事。
セブン-イレブン・ジャパンが、
来年2013年の春から、
四国に進出する。
もう四国は戦々恐々。
スーパーマーケットは、
マルナカがイオンの子会社となった。
コンビニはセブン-イレブンが進出してくる。
1997年7月にローソンは、
全都道府県に出店し終わった。
このローソンに対して、
セブン-イレブンはドミナントエリア主義を貫いて、
拙速の出店地域の拡大を避けてきた。
21世紀に入ってからのセブン-イレブンの出店県。
2001年大分県、和歌山県、奈良県。
2002年2月、9000店舗到達。
7月最後の巨大マーケット愛知県へ出店。
2003年8月、1万店達成。
2005年、岐阜県へ進出。
2006年、三重県へ進出。
2009年、富山県、福井県、島根県、 石川県へ進出。
2011年、鹿児島県へ進出、
2012年、秋田県へ進出。
鹿児島県にはもう80店以上がネットワークをつくる。
来期は過去最高の出店計画1500店。
この12年間で12の県に出店し、
残る空白地は四国4県と、
青森、鳥取、沖縄。
その四国に、2015年度末、3年で250店、
2018年度末、520店の計画。
これは計画通りに達成されるに違いない。、
そのうえ、運営会社のサンクスアンドアソシエイツ東四国が、
セブン-イレブンへの鞍替えを希望。
同社は香川県と徳島県で約120店のサンクスを運営。
さらに来年1月、サークルKサンクスとの契約が満了する予定。
コンビニ業界第4位のサークルKサンクスは災難続き。
昨2011年、富山県の約70店のサンクスがローソンに契約転換。
極めつけは、上場企業のシー・ヴイ・エスベイエリア。
今年初めに契約解消して約120店がローソンとなった。
今度は、四国のサンクスが、
雪崩を打ってセブン-イレブンとなる。
四国4県のコンビニは11年度末で約1200店。
ローソンが422店で筆頭だが、セブン-イレブンが出てくると、
数年のうちのそれに迫る。
全国レベルで見ると2012年度の出店計画は、
セブン-イレブン1500店をはじめ、
大手5社の合計で約3700店。
これも過去最高。
大手5社とは、
セブン、ローソン、ファミリーマート、
それからユニー系のサークルKサンクス、
イオン系のミニストップ。
ミニストップは当然のこととして、
イオン・グループの小型スーパーマーケットと連携をとる。
まいばすけっとやアコレ、
マックスバリュ・エクスプレス。
全国的にコンビニ、ミニスーパーなど、
小型店の激戦が展開される。
コンビニ業界は日本の政党と同じく、
多数企業の並立が成り立っていた。
しかしここへきて、
セブン-イレブンの出店余地が少なくなると、
競合激化。
政治とコンビニ業界。
似たところがあるとしても、
政治の如き四面楚歌の混迷は避けたい。
それは「店は客のためにある」の貫徹によって、
避けることができる。
<結城義晴>