秋の夕ぐれ。
昨日の写真。
今日は台風21号来襲。
みなさん、気をつけて。
一雨ごとに、秋は深まり、
冬に近づく。
さて、褒める話、褒められる話。
和田誠に褒められた若いころの糸井重里。
和田誠さんは、イラストレーターでエッセイスト。
『ほぼ日刊イトイ新聞』の巻頭言で、
糸井さんが述懐している。
「ぼくが、ほとんど知られていない若い人だった時代に、
あんまり目立たない場にひっそり書かせてもらった
原稿用紙一枚くらいの文章を、
『和田さんがほめてくれた』と
知ったことがあったのです」
一流の人に褒められるのは、
率直にうれしい。
特に若いころは。
「ほめられたぼくは、六十いくつになり、
ほめてくれた和田さんはそのひと回り上。
そんな歳になっていますが、和田さんは言いました。
『おれも、そんなふうにほめられたことがあった』」
そこで糸井さんはつぶやく。
「ほめる人」という産婆のような役割がある。
「ほめる人」は
ほめることにけちであってはいけない。
「ほめる人」は、
おもしろさや才能について、
うそやお世辞を言ってはいけない。
褒めることは難しいが、
産婆のように必須の存在だ。
褒めることにけちであってはいけないし、
褒めるときに嘘やお世辞を言ってはいけない。
まったくその通りだと思う。
日経新聞に「店舗賃料、全国的に上昇」の記事。
小売業やサービス業にとって、
不動産コストが上がるという死活問題。
米系不動産サービス会社シービーアールイーの調査。
7~9月のビル1階の店舗部分の平均募集賃料(共益費込み)。
まず東京・銀座が3.3平方メートルあたり4万7309円。
「4~6月比で3.75%上昇」
大阪・梅田は3万0772円、
これは1.3%アップ。
名古屋・栄は1万8545円で、
3.1%上昇。
賃貸料上昇の根本理由は、
「今年前半の小売業の景況感回復」。
景況感が好転すると、
「各地区の大通りを中心にテナントの出店需要が堅調」になった。
賃貸料は需要と供給のバランスで決まる。
そこで賃貸料がアップした。
一方、今日の日経新聞には、
「分譲マンション弱含み」の記事も。
こちらは不動産経済研究所の調査。
9月の首都圏のマンション市場動向。
平均販売価格は1戸あたり4120万円、
前年同月比で3.4%下落。
2012年度上半期は前年同期比1.9%のマイナス。
2012年1~9月は、4515万円で、2.0%のマイナス。
こちらは、「景気の低迷で消費者の購買力が落ちており、
各社が価格を抑えている」。
近畿圏の9月の平均販売価格は、
1戸3486万円。
6月が直近のピークだったが、
その平均価格は3598万円。
関西でも下落基調。
不思議な現象が起こっている。
商売をするための賃貸料は上がり、
居住するためのマンション価格は下がる。
私はこの面での専門家ではないから、
あくまでも素人発想だが、
商売の方は今年前半の景況「感」、
つまり感覚で決まり、
住居の方は一生モノの大型の買い物で、
今の景気低迷に対するリアリティで決定される。
この格差が大きいのかもしれない。
だとすると、商売に対するシビアさが、
大いに欠けていると考えねばならない。
故渥美俊一先生は、
分配率の概念を重視した。
粗利益に占める経費の割合。
そのなかで、粗利益に対する不動産費・設備費を、
「不動産分配率」という。
それは25%未満を目指すべきで、
理想は18%と指導した。
イオンの岡田卓也名誉会長は、
例えばヤオハンやマイカルの再建にあたって、
その企業特有のミッションを再確認したうえで、
経営的にはまず、
不動産費や賃貸料を下げる交渉から始めさせた。
ここには商売に対するひたむきさがある。
この美しい秋に、
商売は厳しさを増す。
不動産分配率に鈍感な商売があるとしたら、
これは厳重に戒めねばならない。
<結城義晴>