空の表情が変わってきた。
変わり方がはやくなってきた。
空の色そのものも、
変わってきた。
変わったように見えるから、
変わったのかもしれない。
朝日新聞の経済コラム『経済気象台』。
「アベノミクスの偽薬効果」がタイトル。
「医療の世界にプラシーボ効果という現象がある。
患者がよく効く薬と信じて服用することにより
治療効果が上がることをいう」
安倍晋三首相の経済政策を、
「安倍プラシーボ効果」と呼ぶ。
面白い。
コラムニストはしかし、
政策そのものには苦言を呈する。
「財政発動による資金散布が
有効だと考えているとすれば、
時代錯誤も甚だしい」
求められる政策を二つ。
財政健全化と規制緩和の具体案。
最後に結ぶ。
「プラシーボ効果は二度、効かない」
さて先週から本を送っていただいている。
そのうちの一冊がこれ。
「消費者の意見を聞いていはいけない。」
稲垣佳伸著、㈱ドゥ・ハウス発行。
発行者であり著者でもある稲垣さんから、
メッセージが添えられている。
「マーケティングの本はいつもぶ厚いです。
でも、核になるメッセージは
多くても100ページだろうと考えました。
あとは、体裁と店頭価格アップのための紙数です。
本の流通システムの都合です。
などと生意気を言いながら『100p新書』と銘打ってみました」
稲垣さんらしい反骨の精神がみなぎった新書。
476円也。
さらに「今、AmazonのKindleが活性化していますが、
この本もKindleストアにて
180円で販売しています」
本の結論はタイトル通り。
消費者の「意見」を聞いてはいけない。
一言でいえば、
「定性リサーチ」の考え方、作業モデル、技術を、
実にわかりやすく的確に示した本。
「1/1000の変化の芽を、競合他社より3日早く探す」のが、
定性リサーチの目的のひとつ。
ここには「定量リサーチ」とは異なる領域がある。
そしてこれまで小売流通業は、
定量情報、定量データによるディシジョンに
偏り過ぎていた。
そして売れっ子と自称するコンサルタントまで、
定性的な事項に関しては、
「だと思う」「かもしれない」などと、
非科学的な勘で言い切る。
定性リサーチによって、
それを科学することができる。
現場の人たちも、本部の人たちも、
自分で学んで訓練すれば、
定性リサーチをマスターできる。
もちろん定量リサーチと組み合わせれば、
自分たちで有効な手立てを考えることができる。
「消費者の意見を聞いてはいけない」
ピーター・ドラッカーは言う。
「最も重要な情報は
ノンカスタマ―についてのものである」
さて最後に、この1週間ファンとして読んでいる連載。
日経新聞の『プライスウオーズ』
第5回は「ユニクロ、次の挑戦」。
バングラデシュの首都ダッカから車で1時間のガジプール地区。
縫製工場スタイルクラフト社社長のシャムス・ラーマン。
「1ミリの縫製のズレも許さないミスターヤナイの品質へのこだわりは
欧米企業にはない」。
ファーストリテイリング会長兼社長・柳井正さんのこと。
「全商品の75%を中国で生産するファストリは
今、生産拠点の分散化を急ぐ」。
1990年代以降、
アジアを活用したものづくりで
日本に衣料品の価格革命を起こした。
家計調査によると、
2011年の洋服の平均支出額(総世帯)は4万8295円。
1998年からほぼ半減。
この年、ユニクロ「フリースブーム」が起こった。
いま、欧米の有力ブランドは、
アフリカで調達して低価格攻勢をかける。
とくにH&MとZARA。
柳井さんの考え方。
「プライスリーダーにならなければ、
世界トップの座は奪えない」
ただし今日の話は、
残念ながら、あまり面白くない。
ドラマがないからだ。
バングラディシュの工場という新しい情報が盛り込まれているが、
ほぼ、わかっていることのディテールを書き留めて、
追認したに過ぎない。
「プライスウォーズ」には、
もっともっとドラマがある。
それが一話一話に、
なくてはならない。
と、辛口になったところで、
みなさん、良い週末を。
〈結城義晴〉