横浜商人舎オフィスの席替えをして、
私のスペースができた。
6年目に突入ということで、
シンビジウムなど贈ってもらって、
気分はよろしい。
壁にかかっているのは、
私の好きなジャン・ジャンセン。
席移動した日の環境と比べると、
ずっと快適になった。
気分は爽快だが、
天気はいまいち。
今夜から明日は雪になるらしい。
昨日は夕方から立教大学。
仕事を終わらせると、
暗くなっていた。
そして今日からキャンパスは閉鎖され、
入学試験シーズンに入る。
立教大学の入試は、
明日6日の経済学部・法学部などから始まって、
14日の社会学部とコミュニティ福祉学部・現代心理学部まで。
9日間で一応、大学入試は終わる。
ちなみにコミュニティ福祉学部・現代心理学部は、
社会人入試の対象学部。
受験生諸君には、
全力を出し尽くしてほしい。
さて「Harvard Business Review」日本語版2月号。
「ビッグデータ競争元年」の大特集を組んだ。
大量のデジタルデータの有効活用が、
競争のカギを握る。
そのための考え方と戦略を大特集したものだが、
アマゾン・ドットコムやシアーズ・ローバックが、
ケーススタディされている。
シアーズがビッグデータを活かして再生されるとは、
とても考えられないが・・・。
この号の巻頭に小田亮さんが、
「利他学のすすめ」と題して書いている。
名古屋工業大学大学院准教授。
「利他行動とは、行為者が損をして
その相手が得をする行為である」
人間に一番近い霊長類はチンパンジー。
「チンパンジー同士が協力し合わなければ
問題が解決できないような状況を実験的につくってやると、
彼らは相手が手助けを要求した時のみ、
相手に協力する」
しかし私たち人間。
「困っている人を見ると、
頼まれなくても手を差し伸べる」
これを利他行動という。
そしてこれを研究するのが「利他学」。
実験結果から得られた知見。
「人間は外見や身振りだけで
相手の利他性をある程度見極めることができるし、
利他的ではない人の顔を
無意識のうちによく記憶している」
小田准教授は、
人間が進化によって身につけたこの利他性は、
「経済活動」に重要な意味を持つという。
労働契約の多くは、
「不完備契約」である。
「労働者がすべきことを
こと細かに明記していない」からだ。
だから「労働者はなるべく
余計な仕事をしないほうが
自己利益になる」。
ところが、経済実験によって、
面白い結果が得られている。
「『雇用者』が賃金水準を高めに設定すると、
『労働者』の努力水準は最低値よりも少し高くなった」
雇用者の利他的態度に、
労働者が利他的態度で、
お返しをしたことになる。
人間の、チンバンジーとの違いこそ、
マネジメントの根幹にあるものだ。
もうひとつ面白い巻頭言。
おなじみの『ほぼ日』の糸井重里。
「何かがある、
そしてそれが魅力的であれば、
人は動き出すものです」
「ある時代にはアメリカ西海岸で金が出ました。
そしたら、それを掘ろうとたくさんの人が動きました。
ゴールドが、ラッシュを起こさせたわけです」
今年の米国スーパーボウルで、
惜しくも負けたフォーティナイナーズ。
そのチーム名は、ゴールド・ラッシュに由来する。
「ある時代には、鉄道会社の創始者が、
女性ばかりの歌劇団をつくりました。
これが人気でたくさんの人びとが動きました」
ご存知、小林一三と宝塚歌劇団。
「ある時代には、大量仕入れて大量に安く売る店が、
スーパーマーケットという呼び名で人気になりました。
それまでのように駅前や繁華街などではなく、
人通りの少ない安い土地に、大きな店が建てられました。
そこに、人びとは動いて行きました」
「人の集まる場所には、
さらに人が集まります。
集まる人を相手にする商売が成り立つからです。
そして、その人たちを相手にする仕事もできてきます。
人が集まるというのは、すごいことです」
しかしここからが糸井重里の真骨頂。
「人が集まるの根っこのところには、
かならず『魅力(チャーム)』という『魔法』があります」
「人が動き、人が集まるということは、
あらゆるものごとの活力そのものです」
「何もしないよりも失敗したほうがいい、
という言い方がありますが、
それも、まったくその通りだと思います。
失敗の方が、人が動くもの」
「そして、何もしないところには『魔法』もない。
「『魔法』つまり『チャーム』を生み出すことをやめたら、
ただ痩せて枯れていくだけだと思うんですよね」
さてさて日経新聞東京・首都圏経済版に、
「SC、駅前出店が続々」の記事。
日本ショッピングセンター協会の調査。
「2013年中に1都3県で開業するSCは
2012年比6割増の26施設」。
2007年には、29施設の出店があったが、
この時は、出店規制強化に伴う駆け込み出店。
それに次ぐのが今年。
3年ぶりの増加。
ただし、昨年12月に自民党が政権を奪回したから、
SC出店が増えたわけではない。
二つの傾向がある。
第1は、都市型の駅前店舗。
いわゆる「駅ナカ・駅近」。
3月21日、東京駅丸の内口、
旧東京中央郵便局の建物に、
商業施設「KITTE(キッテ)」が開業。
超高層オフィスビルJPタワー低層部に、
テナント店舗数98店。
これは丸の内ビルディング、
新丸の内ビルディングに次ぐ規模。
3月15日には、
小田急線相模大野駅前の「ボーノ相模大野」オープン。
これも駅北口と直結。
店舗占有面積を拡げるために、
北棟と南棟も分けて、3万3000㎡とした。
総事業費587億円。
昨2012年には、
渋谷ヒカリエや東京駅内の商業施設など、
駅と直結した大型施設が開業し話題をさらった。
3年前と昨年の2度、立教の結城ゼミでも、
「駅ナカ・駅近」の研究が進められ、
それが立派な修士論文となった。
開業が増える第2の理由は、
自治体のSCに対する姿勢の変化。
2007年に「改正まちづくり3法」が完全施行された。
これは商店街の再生を目指した法律で、
規制対象となった郊外型SCの出店は落ち込んだ。
しかし、商店街の衰退は止まらないし、
円高で工場の閉鎖や縮小などが相次ぐ。
大型SCは数千人の雇用吸収力を持つ。
「自治体にとって魅力的」。
今春開業予定の「イオンタウン新船橋」は、
旭硝子の工場跡地に立地。
4月開業予定の酒々井プレミアム・アウトレットは、
人口約2万1000人の町で、1000人の雇用。
自治体には、固定資産税や法人税などの税収が見込まれる。
「年間350万人の来場で観光の活性化にもつながる」。
埼玉県春日部市にはこの3月に、
イオンモール春日部が開業。
売り場面積は5万6000㎡。
初年度に1000万人の客数予定。
従業員数2400人のうち半分が地元雇用。
鉄道が主導する大型の駅ナカ・駅近と、
地方自治体が誘致する郊外SC。
人が動き、集まるところには、
魔法がある、活力が生まれる。
それを止めたら、
ただ痩せて枯れていくだけ。
多くの商店街のように。
人という「利他的」霊長類を集めると、
そこには「利他的」な現象が起こる。
自民党が政権に戻る前から、
この現象の予兆が現れていたのだ。
〈結城義晴〉