結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2013年02月20日(水曜日)

丸紅・国分文也「逆境では楽観」とWalmart流出メール「2月は悲惨」

ほぼ毎朝、毎晩、
長光山妙蓮寺の山門前を通る。
20130220141834.jpg
日蓮宗池上本門寺が本山。

とは言っても、この山門前には、
東京急行東横線妙蓮寺駅の踏切があって、
そこに立って踏切が開くのを待つ間、
門前に掲示してある言葉を読む。
20130220141853.jpg
1週間ごとに変わる標語は、
おそらく住職の達筆によるもの。

今週の言葉はこれ。
20130220141906.jpg
佛法は眼前なれど
機なければ顕れず

仏の道は目の前にあるのに、
機会がなければ意識されない。

メーテルリンクの『青い鳥』のような言葉。

幸せはいつも目の前にあるのに、
それが見えない、感じられない。

この妙蓮寺の言葉、
私流にいくつかに分類できる。

第一は説教型。
第二は運命型。
第三は真理型。

私は第三が好きだ。
真理を語り、それを追求しようという呼びかけ型。

第一の、頭から説教を垂れるタイプは、
はっきり言って嫌いだ。

第二の、運命を語り、
それに従えというのもあまり好きではない。

ということで今日の言葉は、
好きなタイプ。

いかが?

さて、株価は、今日、
日経平均で1万1500円をつけた。
4年5カ月ぶり。

3月には1万2000円の節目が見えたとして、
証券業界は浮足立つ。
『よみがえる日本株』なる本まで出版されて、
前景気をあおる。
著者は日本経済新聞電子版マーケットの記者二人だが、
ご丁寧に「日経平均2万円への道」とサブタイトルがついている。

単行本としては、
一瞬のうちに過ぎていくような息の短いもので、
だから税込600円。
雑誌のような単行本。

私はいつも言う。
虚業が先行し、
実業がそれに続く。

先物取引や株式の市場が失礼ながら「虚業」、
小売りサービス業・消費産業などが「実業」。

実業が成果をあげなければ、
国民の生活は向上しないし、
経済もまわらない。

しかしその実業が大きく変わりつつある。

日経新聞の「けいざいじん」に、
丸紅次期社長の国分文也(こくぶ・ふみや)さんが登場。
私と同じ60歳。

丸紅は現在、総合商社第5位。

その国分さん、
「課長昇進は40代前半」で同期の中で「最後くらい」。
しかし彼のその信条が彼を社長まで押し上げた。
「逆境ではひたすら楽観し、
順調な時には楽観しない」

「状況が悪い時にも逃げず、
先頭に立って部下に背中で見せる」
理想のリーダー像をこう示す。

一方、これも日経新聞の連載『迫真』。
「日航・稲盛和夫」の第3回目。
今週月曜日に始まったが、
毎日、面白い。

2010年に経営破綻した日本航空(JAL)の会長に就任、
現在は名誉会長。
ご存知、京セラ・第2電電(現KDDI)の創業者。

稲盛さんの手腕もあって、
JALの営業利益は2011年3月期に1884億円、
2012年3月期には2049億円に回復。

その稲盛和夫、
「独占は悪」という確信がある。

だから、それに挑む者は、
「負けるはずはない」。

KDDIもJAL再生も同じ。
「失敗するかも、と
考えたことは一度もない」

国分文也の「逆境では楽観」と、
稲盛和夫の「失敗は一度も考えたことがない」。

今の私の心境です。
何よりも信念が支えてくれる。
その信念をまた、
支えてくれるのは真理である。

もうひとつのニュース。
ウォルマートの流出メール騒動。
日経新聞の米州総局編集委員・藤田和明さんのレポート。

先週金曜日の2月15日。
ウォルマートの社内メールの内容が、
アメリカのメディアに流出、一気に市場を駆け巡った。
「ここまでの2月の売上高は
全く悲惨な状況だ」

株価は急落、
一時的に4%の下げ。

メール発信者は財務・物流担当者。
「こんなに悪い出足の月は、
自分の勤めた7年間で見たことがない」

米国ブルームバーグ・コムには、
こんなメールが掲載されている。
ウォルマートUSの上級副社長キャメロン・ジーガーのもの。
“Where are all the customers?
And where’s their money?”

「顧客はいったいどこにいるんだ?
彼らの金はどこにあるんだ?」

「財政の崖」を一応、回避し、
楽観ムードが広がる。

しかしここで大切なのは国分文也、
「順調なときには楽観しない」

ウォルマートの広報談。
「社内情報は正確でなく、
適切な文脈を欠いたり、
個人の意見にすぎなかったりすることがよくある」

明日、2月21日の決算発表で、
全体像とともにコメントが発表されるに違いない。

ウォルマート社内メール騒動の前日の14日、
ナスダック上場のホールフーズ・マーケットの株価も、
10%の急落。

「グレート・ローテーションというよりは、
グレート・ディスコネクトではないか」。

藤田さんは最近の声を紹介する。

グレート・ローテーションとは、
債券から株式への大きな転換。
だから株式が買われる時代が到来した。
強気派はこう、唱える。

しかし慎重派はこれに同意しない。
グレート・ディスコネクトは、
「株価ばかりが、楽観へ振れる大きな乖離(大分断)」

藤田さんは、総括する。
「ウォルマートの流出メール騒ぎは、
そんなほころびの始まりになるか。
少なくとも、いったん要注意のサインが灯った」

これに対して、
私のメールに㈱USEI社長の朝川康誠さんがコメント。
立教大学大学院・結城ゼミの第3期生。

「真に見え隠れしているのは、
『店舗という装置産業の未来』ではないでしょうか」
鋭い指摘だ。

小売業の世界では今まで、
店舗をたくさん持つことが良しとされてきた。
「ネットの侵食でそれらがすべて
『負の遺産』に変わる恐れまで出てきました。
先生の言われる『後発の優位性』であり、
今までのモノの売り方を根本的に変える『ゲームチェンジャー』の登場は、
そう遠くない未来に日本で起きる現象です」

全てが「負の遺産」とはならないと思う。
しかし実業における物の売り方が根本的に変わりつつある。
これは確かだ。

私は、「リアルとネットの融合」こそ、
最終的な到達点であると思う。

なぜならばそれが一番、
顧客にとって便利だから。

これは稲盛和夫の確信と似ている。

〈結城義晴〉

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