安倍晋三首相がアメリカに出発。
明日22日、バラク・オバマ大統領と首脳会談。
環太平洋戦略的経済連携協定、
Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement、
通称TPPに関する対応が焦点の一つ。
太平洋周辺地域の国々の間で、
経済の自由化を目的として、
多角的な経済連携の協定を結ぶ。
それがTPP。
私はワンアジア財団の評議員となっているが、
これはひとつのアジアを目指して活動する財団。
自分だけ、自分の国や地域だけ潤えばいい。
この発想は20世紀に置いてくるべきだ。
「全体最適」こそ、
21世紀のコンセプト。
これがグローバリズムの本質だと思う。
新聞やテレビでTPPのメリット、デメリットが指摘される。
そのほとんどは、自分にとって、自国にとって、
利があるかないかばかり。
アジアや環太平洋、その全体にとって、
最適の状況をつくることが、
アジアや環太平洋の人々全員のメリットになる。
そのために、アジアや環太平洋のリーダーであるわが日本が、
どう行動するか。
それがすべての判断の基準になるものだと思う。
今日は東京・芝。
東京タワーの赤い姿が、
真っ青な空、真っ白な雲に映える。
東京スカイツリーに最高テレビ塔の座は譲ったが、
まだまだ外国人観光客も多い。
なんといっても、
日本人の心の中に占める存在感は、
東京タワーの右に出るものはない。
皆がスカイツリーに目を向けるからかもしれないし、
ノスタルジーと判官びいきによるかもしれないが、
東京タワーを見ると懐かしさがこみあげてくる。
その東京タワーの真向いのビル。
機械振興会館。
6階の会議室で、
商業経営問題研究会の2月例会。
リテール・マネジメント・ラーニング・サークル。
略称RMLC。
今年初めての例会で、
「ネクスト・ステージ・スーパーマーケット」を、
整理し、その成果のまとめ方を議論した。
3時間半、議論は展開される。
真剣そのもの。
折を見て私がまとめ、総括し、意見を集約する。
隣は㈱セイミヤ社長の加藤勝正さん。
議論が終って、
懇親会をしてから、
残ったメンバーで写真。
東京タワーは、
ことのほか美しかった。
今年のRMLCに期待してください。
メンバーの研究成果は、
商人舎ホームページに、
それぞれのブログ・コーナーをつくって、
随時発表していくつもり。
つまりは、このブログの読者がRMLCに、
オーディエンスとして参加できることになる。
これもTPPに対する私の考え方と同じ。
積極的なご参加を歓迎したい。
さて、今日、
ユニーグループ・ホールディングス発足。
チェーンストア業界第3位の純粋持ち株会社。
17社を傘下に置く。
総合スーパーのユニー、
コンビニのサークルKサンクスが核。
第1位のイオン、
第2位のセブン&アイ・ホールディングスに比べて、
注目度はずっと低い。
しかし私は、ずっとそれを、
「ユニーグループの強み」にせよ、と言っている。
会長兼最高経営責任者の前村哲路さんは、
今後3年間で大型店の出店・建て替えに711億円を投じる。
2014年2月期の出店・建て替え計画は、
総合スーパー2店、食品スーパー3店、
それにホームセンター1店。
半数が愛知県内。
これはとても良い政策。
愛知県や中京地区中心のリージョナルチェーンとして、
マルチ業態でそれぞれ充実させ、
全体では国内第3位のリージョナルチェーンとなる。
ここに、ユニーグループの強みが出る。
そのコンビニ事業は、
「屋号の統一」を図る。
日経新聞には書かれていないが、
むしろ統一ロゴは「サンクス」にして、
米国ロイヤルティのサークルKを外したほうが、
利益貢献できるかもしれない。
ここは超リアリズムで行くべきだ。
さてさて、昨日も紹介したが、
日経新聞の連載『日航・稲盛和夫』。
第4回の「これが経営か」も、すごくいい。
日本航空の「経営の要」の月1回の業績報告会。
役員約30人が1人ずつ、
その月の予定、実績、来月の見通しを説明する。
これは他社でも当たり前の光景。
しかし稲盛さんは、一つひとつの報告を聞きながら、
細かい数字がビッシリ書き込まれたA3用紙の報告書を読んで、
次々に質問を繰り出す。
答えられない場合には、
「容赦のない叱責」が飛ぶという。
A3の報告書は毎月80~100枚。
それを驚くべき集中力で読み込み、
他の役員が見逃すような「ほころび」を見つけ出す。
「それにしても、何で
あんな細かい数字を見つけられるのですか」。
稲盛さん、笑いながら答えた。
「おかしなところはな、
向こうから数字が
目に飛び込んでくるんや」
現社長の植木義晴さんは、
パイロット歴34年のキャリア。
植木さんの見解。
「ベテランの域に達したある日、
無数の計器に囲まれたコックピットの中で、
異常な数値は探さなくても
目に飛び込んでくるようになった」
私にも同じ経験がある。
㈱商業界で編集記者12年、編集長12年、
その後、専務取締役、代表取締役社長となったが、
編集長の最後の頃には、
出張校正で印刷所に行くと、
ゲラの間違いが「目に飛び込んでくる」ようになった。
当時私は、
「手かざしで誤植が見つけられる」と、
豪語していた。
今はその職から離れ、
手かざしは利かなくなったが。
稲盛さんの経営数値の「ほころび」の発見、
植木さんのコックピットの異常な数値の発見、
結城の編集長時代の誤植発見。
みな、同じ。
ただし、パイロット出身で「新米社長の植木は
資料を見ても数字が浮かび上がらない。
細かい数字から経営の問題点を言い当てる稲盛を見て思う。
『これが経営か』」
そうです。
これがプロです。
熟練の店長は、
売場を歩くだけで、
異常が目に飛び込んでくる。
これです。
プロフェッショナルの仕事。
2010年2月にJAL会長になった稲盛さん。
まず空港や営業所などの現場を回り、
その後、全子会社の社長約100人と1人1時間ずつ面談した。
朝9時から夕方6時まで。
週末込みの2週間、
ぶっ通しで話を聞いた。
「細部を見なければ全体は見えない」
これが稲盛和夫の50余年の経営者としての「境地」。
「おかしなところは、
向こうから数字が
目に飛び込んでくる」
私たちが目指すのは、
この境地。
数字だけではない。
店舗状態、売場状態、
商品状態、鮮度状態、
働き方状態、などなど。
向こうから目に飛び込んでくるようにならなければいけない。
そしてこれは、
他人に任せていてはいけない。
他人から褒められて喜んでいてもいけない。
自分でできなければ。
そうでなければ、
自分の存在価値がない。
そしてこれが「自分の強み」となる。
〈結城義晴〉