ウォルマートの2012年度第4四半期の決算が発表された。
2012年11月から13年1月末まで。
売上高は1279億ドル。
1ドル100円換算で計算すると、12兆7900億円。
前年同期比3.9%増。
純利益は56億600万ドル、5660億円、
こちらは8.6%のプラス。
米国のスーパーセンター等は、
既存店売上高が1.0%増。
サムズクラブは2.3%増。
海外部門が6.9%増の379億5000万ドル。
海外が稼いだ。
ウォルマートの年間決算は、
1月末日だから、
この後2012年度の全体像が明らかになる。
そして決算が終った直後の「2月は悲惨」の実態も見えてくる。
さて日経BP社の調査。
「第2回ソーシャル活用売上ランキング」。
企業やブランドが、
どれだけソーシャルメディアを活用したか、
そしてそれがどれだけ実際に消費行動につながったか、
その成果の度合いを調査し分析した。
2013年1月8~22日に実施。
ファン数や投稿数、
2万9003人から得たアンケート結果を基に分析。
総合第1位は、ローソン。
第2位はスターバックス、
第3位がユニクロ。
第4位が無印良品、
第5位がケンタッキーフライドチキン。
なるほどと思わせるブランドが並ぶ。
トップのローソンは、
ツイッターを活用して新商品をヒットさせた。
店内調理品「からあげクン」の新商品発売時に、
ファンからの投稿を求めるキャンペーンを実施し、
ファンの友人らに効果的に情報を広めた。
しかしこの調査、意外な実態を示している。
「ソーシャルメディアでの販促活動は
売上げに結びつけにくい」
ソーシャルメディア上で企業の情報に接触した人のうち、
「購入・利用 した」と答えた人の割合は12.6%にとどまった。
これは前回に比べ4ポイント低下。
ソーシャルメディアのファンが飛躍的に拡大される。
しかしそれは相対的に商品購入者の割合を下げている。
実に興味深い分析だ。
もちろんソーシャルメディアのファンの増加は、
商品購入増加に結びつく。
しかしソーシャルメディア・ファンの増加に、
商品購買は当然ながら比例しないし、割合は減る。
これはもっともっと実証すべき課題だし、
忘れてはならないテーゼだ。
さて今日の本題は、
各業態の1月販売月報のまとめ。
まずはいつも通り、百貨店から。
『全国百貨店売上高概況』。
総売上高は5472億3203万円で
既存店前年同月比はプラス0.2%。
2カ月ぶりのプラス。
今年1月は全国的に気温の低下が著しく、
連休などに大雪が重なった。
そのため、客数は減少したと回答した企業が多数。
それでも、初売りや福袋、
冬物セールなどが堅調に推移した結果、
昨対プラスとなった。
地区別では、
大阪プラス3.3%、
神戸プラス5.3%、
広島プラス3.4%、
福岡プラス1.4%と、
西日本が非常に好調。
商品別では、
美術・宝飾・貴金属がプラス6.8%、
身のまわり品プラス3.6%、
化粧品プラス1.2%などが、
今月も引き続き好調。
景気回復への期待感が高まり、
消費マインドが好転していることが
要因として考えられる。
ただし、外国人客は減少。
売上高はマイナス2.8%、
客数マイナス10.1%。
昨年は1月だった中国の春節が
今年は2月にずれたため、
数字の上では影響が大きかった。
次は、『コンビニエンスストア統計調査月報』。
日本フランチャイズチェーン協会発表。
既存店ベースの売上高は、
6534億2500万円。
前年同月比マイナス0.9%。
8カ月連続のマイナス。
逆に全店ベースでみると、
売上高7180億2900万円のプラス4.1%。
こちらは16カ月、プラスが続いている。
コンビニでも客数減が顕著。
既存店前年同月比はマイナス1.9%。
気温の影響、たばこ購入者の減少が要因。
客単価は617.3円でプラス1.0%。
商品別構成比は
日配食品が33.2%、
加工食品が27.3%、
非食品が34.1%、
サービスが5.4%。
客数が減っても売れるものは売れる。
寒い季節はカウンター商材の動きがよくなる。
日本チェーンストア協会からは
『チェーンストア販売統計(月報)』。
総販売額は1兆0688億2318万円。
既存店前年同月比マイナス4.7%。
11カ月連続でマイナス。
前月比はなんとマイナス15.6%と、ふるわず。
部門別では
食料品が6455億5112万円でマイナス3.8%、
衣料品は1223億2403万円でマイナス11.0%、
住関品は2242億5341万円のマイナス4.7%。
どの部門も1月は厳しい結果となったが、
衣料品は二桁のダウン。
そして、『スーパーマーケット販売統計調査』。
三協会合同発表。
日本スーパーマーケット協会、
オール日本スーパーマーケット協会、
新日本スーパーマーケット協会。
今月の発表は、増井徳太郎さん。
新日本スーパーマーケット協会副会長。
「今月はあまり、
声を大にして発表できる結果ではなかった。
総売上高は7972億1350万円で、
既存店前年同月比はマイナス1.7%。
11カ月連続でマイナスだった」
「食品合計は6888億3092万円でマイナス1.5%、
生鮮3部門合計は2636億1006万円でマイナス1.4%。
青果がプラス0.4%で、1046億5061万円、
今月唯一のプラス。
水産は752億4375万円のマイナス3.7%、
畜産が837億1569万円でマイナス1.7%。
惣菜が721億1094万円、マイナス1.3%、
日配は1442億5684万円、マイナス1.6%、
一般食品が2088億5308万円、マイナス1.6%、
非食品が746億0440万円でマイナス3.9%、
最後にその他337億7814万円でマイナス1.7%」
「1月のポイントは初売り、成人の日、受験。
初売りは二極化傾向が見られた。
低価格化が進む一方で、プレミアム商品も売れた」
「成人の日は、
自治体によって式が執り行われる日が異なるため、
ピークが分散した。
また、最近の傾向として、成人の日は
内食よりも外食が多くみられるようになっている」
「受験に関しては、
『合格祈願』パッケージの企画が定番化していて、
これが売れている」
「野菜の相場高は他部門へ影響している。
惣菜部門ではサラダが好調となり、
日配では漬物や野菜飲料が売れた。
一般食品でも乾燥野菜などが好調」
「アベノミクスがガソリン価格上昇に反映している。
ガソリンの値段が上がると、
まとめ買いとワン・ストップ・ショッピングが増える。
つまり、大型店への集客力が上がっている」
今月のゲストスピーカーは
㈱信濃屋食品の代表取締役社長の長井邦雄さん。
信濃屋食品の売上構成は、
酒が50%、食品が50%。
本社が世田谷にあるという土地柄、
顧客は富裕層が多い。
「ハイ・クオリティ・スペシャルティストア」を目指す。
「輸入ワインの売上げは前年比10%アップ。
コンサルティング・セールスを特徴としている。
ワインソムリエ、ワインアドバイザー、利き酒師などが、
各店にいて、毎月勉強会を行っている。
ワインセラーは全店に設置している」
「コンセプトは“ワインと食とのマリアージュ”。
ワインと食の関連販売を強化している。
これが大変好評。
関連販売がけん引となり、
客単価を2割近くアップさせている」
総合スーパーも百貨店も、
食品スーパーマーケットもコンビニも、
全体として、食品の売上げがいいとは言えない。
しかし信濃屋の「ワインと食のマリアージュ」は好調。
さらに信濃屋の新しい提案。
「3月末に旗艦店の『ワイン館』と、
ワイントランクルームの『寺田倉庫』がコラボレーションし、
個人向けのワインセラーを開設する。
新しい生活の提案で、
シナジー効果を期待している」
考えてみるとこれは、
顧客のニーズに対応して出てきた発想ではない。
POSデータをいかに徹底的に分析しても、
「個人ワインセラー」の発想が生まれるわけでもない。
顧客は信濃屋の提案に、
「あー、そうだ」と気づいて、
それに呼応する。
ピーター・ドラッカーの言葉。
「顧客と市場を知っているのはただ一人、顧客本人である。
したがって顧客に聞き、顧客を見、顧客の行動を理解して初めて、
顧客とは誰であり、彼らが何を行い、いかに買い、いかに使い、
何を期待し、何に価値を見出しているかを知ることができる」
しかしドラッカーはこんなこともいう。
「もっとも重要な情報は、顧客ではなく、
非顧客(ノンカスタマー)についてのものである」
「ワインと食のマリアージュ」はだれにでも想像できるものだ。
だからそこではワインソムリエ、ワインアドバイザー、利き酒師が、
さらに勉強を重ねて、他にマネのできないプロとなる。
しかし「個人ワインセラー」はごく一部の現象であるし、
まさにノンカスタマーの情報だ。
顧客の期待と求める価値に向かって、
大胆にチャレンジする姿勢が必要だ。
信濃屋の挑戦を見ていて、
そんなことを感じるものだ。
ではみなさん、良い週末を。
〈結城義晴〉