米国テキサス州ダラス。
昨日までの3日間は、
なんと最低気温が氷点下だった。
昨日の正午にアメリカン航空で、
成田空港を発った。
日本も冬の天候で、雨模様だった。
14時間のフライトの後、今朝9時に、
ダラス・フォートワース国際空港に到着した段階では摂氏9度。
しかし昼間の最高気温が22度まで上がって一安心。
日ざしはひどく明るいが、
気温は上がらない。
この時期のテキサスでは、珍しい現象だ。
着いたらすぐに、店舗視察。
時間を無駄にしない。
まずウォルマート・スーパーセンター。
そしてサムズ・クラブ。
ウォルマートの二つの業態が、
2層で展開されているショッピングセンター。
自社内競合しないのですか。
成り立つのですか。
よく聞かれる。
成り立たないどころか、
相乗効果が出ている。
ウォルマート・スーパーセンターは、
「コンプリートストア」。
この店だけで生活のほとんどが成り立ってしまう。
サムズは「コンプルメンタリーストア」、
つまり補完店舗。
他の業態と補完し合って生活を支える業態。
だからシナジーが生まれる。
ウォルマートの食品は、
イースター・プロモーション。
イースターはキリスト教の復活祭。
「春分の日の後の最初の満月の次の日曜日」
だから今年は3月31日。
アメリカではこの復活祭にメジャーリーグが開幕して、
小売業のプロモーションも盛り上がる。
衣料品はクリアランスセール。
バルーンを使って、
目立つ。
その後、ホールフーズマーケット。
ダラス地区の旗艦店舗。
ここで昼食。
ホールフーズもイースターには力を入れる。
強い店、いい店は、例外なく、
催事に力を入れる。
その店らしいプロモーションを展開する。
店も素晴らしいが、
デリのランチも素晴らしい。
その後、百貨店第2位のコールズへ。
このジュニアデパートは、
全米百貨店・ディスカウントストア部門で、
5年連続顧客満足度第1位に輝いている。
レディス衣料が強いが、
そのレディスもインナーを最大限強化。
自分の強みをさらに強調し、
しかも最良のベーシックを志向する。
イオンリテールの精鋭たちに、
まず最強のフォーマットを体験してもらう。
次にスーパーマーケットのイノベーションを体現している店で、
食事をし、店づくりを見てもらう。
最後に、非食品大型店舗として、
日本の総合スーパーに示唆を与える店舗を視察してもらう。
この三点が今日の狙い。
ホテルに戻って、
早速、グループ・ディスカッション。
今回の研修会では、
毎日、夕方に討論し、中間総括をする。
それがとてもいい。
ディスカッションが終ったら、
テキサスステーキ。
「トレイル・ダスト」
お疲れ様。
ながいながい一日だった。
それでも、皆元気に、
ステーキを頬張り、
シャイナーボックを飲み干した。
一方、日本では、
昨日の続きのニュースが駆け巡った。
「イオンがダイエーを子会社化」のつづき。
イオン・岡田元也社長、
丸紅・岡田大介常務執行役員、
そしてダイエー・桑原道夫社長が、
三人揃って記者会見。
この記事は日経新聞よりも、
東洋経済オンラインのほうがずっと詳しい。
「イオン、産業再生機構への“恨み節”
ダイエーを子会社化へ、会見詳細を全掲載」
詳細はこのブログの昨日の報告で、
言い尽くされている。
しかし岡田元也さんのコメントが面白い。
ダイエーの経営不振の原因。
「誰が責任者なのかハッキリしなかった」
丸紅との二人三脚は、
意思決定の曖昧さを露呈した。
ダイエーを傘下に入れる意味と意義。
「消費者のために何ができるのか。
ダイエーもずっと考えてきたこと。
この2つが一緒になることで、
さらに現実的に実行しやすくなる」
この後の岡田さんのコメントが大事。
「規模が大きくなるからではなく、
双方の考え方や志が
同じだからということだ」
さらにダイエーの失敗に関して。
「再生機構の当時の方針で、
食品スーパーを中心に再建を進める選択を採った。
当時はやむをえなかったかもしれないが、
もったいなかったと思う」
つまり、総合スーパーも含めて、
違うやり方があったという分析。
「食品市場が盤石とみて、それに注力して、
問題を解決するという戦略は外れてしまった」
その通り。
「今は食品自体が厳しくなっている。
首都圏も例外ではない。
ドラッグストアも厳しい。
タバコに依存しているコンビニエンスストアも非常に厳しい。
それに消費増税が重なる。
考え方を根本から変えないといけない」
ずけずけとモノを言う。
そして決め台詞。
「日本の小売業界に
まったく不足しているのが
イノベーション」
私の主張に酷似している。
「これほど古い店で
平気で営業している小売業は
日本しかない」
「日本で消費者の権利が
初めて認められたのが、
小泉純一郎政権のとき。
米国ではジョン・F・ケネディ大統領の時代だ。
30~40年も遅れている」
これは1962年3月の、
ケネディの「コンシューマー・ドクトリン」を示している。
第一に、安全である権利。
第二に、知らされる権利。
第三に、選択できる権利。
第四に、意見を聞き遂げられる権利。
ケネディはこの4つの消費者の権利を守ることで、
小売りサービス業の地位が築かれていると言った。
「今の状態をみると、小泉政権のときの大きな変化は、
また元に戻っている。大事なのは輸出産業だと」
「日本で誰が消費者を守っていくのか疑問。
ダイエーは早くから主張してきた。
私どもも同じような考え。
誰が消費者のことを考えるのかということを
明確に示していきたい」
もうひとつ、日経新聞『真相深層』より、
「マクドナルド、不振の理由は」。
原田泳幸会長兼社長が言いにくいことを言い、
中村直文編集委員が聞きにくいことを聞いた。
「日本マクドナルドホールディングスの業績がさえない」
記事はこう始まる。
2012年12月期は7期ぶりの経常減益。
既存店売上高は9期ぶりに前年割れ。
今年に入っても既存店は2ケタ減。
原田さんは自ら分析。
「内なる要因が大きかった」
夏に売り出した高価格商品『世界のマック』シリーズが駄目、
主力商品『ビッグマック』『チキンマックナゲット』、
これらの値引きセールをやめたが、
これも駄目。
「失敗の最大の要因は我々の創造力が落ち、
顧客に驚きを提供できなかったこと」
そうかなあ。
マクドナルドは、
顧客を驚かす商売かなあ。
「消費者を動かすのが難しい時代」と原田さん。
「60秒で商品を提供できなかったら無料券を渡すキャンペーン」も、
「そのくらいでは動かない」。
「消費者が『いいね』と思うくらいの販促や商品ではダメで、
『グレート!』とか『ワオ!』というインパクトを与えないと」
これも、そうかなあ。
そこでこれからの作戦。
「当初の戦略は撤回し、
季節限定の新商品を
収益バランスを考えながら投入する」
しかし「100円メニュー」はやめない。
「ディスカウントは商品価値が下がり、
持続的な販売増につながらないためにやめたが、
100円メニューのような底値商品は
お得感を出す上で欠かせない」
さらに「来年の消費増税の準備」。
「税率が8%や10%に上がっても
顧客が購入額を落とさないメニュー価格の策定に動いている」
そして「少なくとも一律には値上げしない」。
消費税分還元セールは法律違反になってしまうが、
税額分を「一律には上げない」という。
税率分は外税できちんと上げて、
本体価格にきっちりした企業姿勢を
示したほうがいいと思う。
みなさんは、いかが?
アメリカにいると、
そんな小手先の戦術は、
顧客からとっくに見透かされていることを、
思い知らされる。
〈結城義晴〉