「デイリー・テレグラフ」。
The Daily Telegraph
イギリス第1の新聞。
1855年創刊の伝統メディア。
そのインターネット・サイトが、
「ザ・テレグラフ」。
グラハム・ラディック記者が伝えた。
テスコCEOのフィリップ・クラークが、
復活祭の週末のあと、アメリカにやってくる。
その目的は、
フレッシュ&イージーの売却先と合意するため。
フレッシュ&イージー・ネイバーフッド・マーケットは、
テスコのアメリカ侵攻作戦のフォーマット。
2007年11月にスタートしたフォーマットは、
トレーダー・ジョーとアルディを、
足して二つに割ったようなモデル。
現在、カリフォルニア州、ネバダ州、アリゾナ州に、
199店を展開中。
しかし2010年から10数店単位で、
不採算店を閉鎖。
昨年7月、USA本部スタッフ50人をレイオフ。
8月には現場スタッフをリストラ。
これまでの投資額は10億ドル以上だが、
これ以上継続すると泥沼に入るとの判断。
売却先は、
足して2で割ったそのモデルの、
アルディとトレーダー・ジョーのオーナー、
アルブレヒト・ファミリー。
アルディもトレーダー・ジョーも、
店舗面積1万平方フィートで、
フレッシュ&イージーの店舗サイズとほぼ同じ。
アルディなど即、居抜きで活用できる。
私はフレッシュ&イージーに、
ある種の期待を込めていた。
新しいフォーマット開発の意欲と手法には、
特筆すべきものがあった。
しかし米国の小型店は、
アルディとトレーダー・ジョーの両極の優秀モデルによって、
ほぼ勝負の決着をみていたことになる。
ただし実際にテスコが、
このモデルをアメリカで実験したことで、
アメリカには小型店ブームが巻き起こり、
日本にもそれは影響を与えた。
ウォルマートはウォルマート・エクスプレスを、
カルフールもカルフール・エクスプレスを実験して、
世界に「エクスプレスストア」のフォーマットを定着させた。
アメリカでは成功しなかったが、
イギリス国内ではテスコ・エクスプレスが、
確実に機能している。
アメリカの小型店は今後、
アルディとトレーダー・ジョーが、
マークされ続けることになる。
さて昨日のダラス3日目は、
最高気温が27度。
やっとダラスらしくなってきた。
イオンリテールワーカーズユニオン主催、
「流通の未来を自分たちでつくる会」
そのアメリカ版セミナー3日目。
朝8時から、毎日恒例の結城義晴の講義。
今日のテーマは「店舗戦略」。
業種・業態・フォーマットの整理、
ストア・フォーマット論とポジショニング。
最後に大変化を遂げたショッピングセンターの分類を、
再整理して、解説。
この日も2時間びっしりと語った。
講義を終えて、プラノ地区に移動。
好調企業のポジショニング戦略をしっかり視察。
ウォルマート・スーパーセンタープラノ店。
ウォルマートの主力フォーマット。
ウォルマートの売上高は4691億6200ドル。
100円換算で46兆9162億円、伸び率5.0%。
総店舗数1万773店のうち、
スーパーセンターは3158店を展開。
ストアマネジャーのアデルさんにインタビュー。
プラノ店は、2カ月にわたる改装期間中。
それでも、足早に店内をツアーしながら、
丁寧に解説してくれた。
プラノ店の商圏特性や販売の傾向を、
数字をもとに次々に説明してくれる。
極めて優秀な女性だ。
「ウォルマート・プラノ店は、
私の子供のようなもの」
だから1日16時間も店にいることがある。
バックヤードも見せてくれた。
改装中であり、
しかも今週末が復活祭とあって、
在庫があふれかえっていた。
しかしそれでもウォルマートの
アデル店長に感謝。
さらにスーパー・ターゲット。
ウォルマートと同じビジネスモデルのライバル。
ディスカウントストア第2位。
売上高733億0100万ドル(7兆3301億円)
伸び率4.9%。
店舗数は1778。
ウォルマートとは対比的な店づくり、商品戦略。
ウォルマートがマーケット・リーダーなら、
ターゲットはマーケット・チャレンジャー。
ウォルマートがトヨタなら、
ターゲットはホンダ。
ウォルマートが大鵬なら、
ターゲットは柏戸。
互いに高め合いながら、
対比的なマーケティングを展開し、
米国市場を二つに分けている。
次に向かったのはコストコ。
メンバーシップ・ホールセール・クラブ1位。
売上高970億6200万ドル(9兆7062億円)。
伸び率11.5%と変わらず好調。
店舗数598。
ウォルマート・スーパーセンターや、
スーパーターゲットとは異なる業態で、
共存共栄。
しかしウォルマートには目の上のたんこぶ。
コストコ対策はたった一つ。
同じ業態のサムズを進化させること。
そのウォルマートのネイバーフッド・マーケット。
1100坪のスーパーマーケット。
米国内で267店舗を展開する。
スーパーセンターの国内飽和が目前となっている中、
今後、2年で500店まで倍増する計画。
ここではレジ責任者のジョイさんにインタビュー。
さらに店長のチャールズさんに話を聞くことができた。
スーパーセンターのアシスタントマネジャーをしていたが、
こちらではストアマネジャー。
「リーダーシップを発揮して、
アソシエーツにいろいろなことを教えるのが好きだ」
知識商人の典型を見た気がした。
対してセーフウェイのトムサム。
セーフウェイはスーパーマーケット全米2位。
売上高442億0700万ドル(4兆4207億円)
伸び率1.3%。
店舗数は1641店。
この店はセーウェイの新しいフォーマット。
「ニューライフスタイルストア」と称する。
しかし相変わらずクラブカード戦略が、
ロイヤルティマーケティングの域に達していないため、
単なる価格販促に使われていて、
これはウォルマートのエブリデーロープライスによって、
その弱点が際立たされている。
そしてアルバートソン。
売上高39億ドル(3900億円)、伸び率マイナス2.5%。
店舗数205。
かつてのエクセレントカンパニーも、凋落の一途。
しかし、現場は頑張っている。
床はピカピカ、レジの接客もいい。
ただし、イノベーションが全く見えず、
現場の頑張りがむなしく映る。
やって来ているのはラガードと表現する老人顧客ばかり。
最初の戦略が間違って、
イノベーションが起こらなくなると、
いかに現場が頑張っても、
店は衰退していくばかりだ。
この鉄則を思い起こさせられる。
最後は、ホーム・デポ。
ホームセンター全米1位。
売上高747億5400万ドル(7兆4754億円)。
伸び率6.2%。
店舗数2256。
サブプライムローン破たんの影響を、
最も大きく受けた企業。
しかしこちらは、
「ひとつずつ・すこしずつ・いっぽずつ」
復活してきた。
企業は永続的な存在。
ゴーイングコンサーンでなければいけない。
しかしフレッシュ&イージーの例を見るまでもなく、
「フォーマットの死」を決断する時がある。
その意志決定は、
早い方がいい。
これが競争というものだ。
〈結城義晴〉