日経新聞の連載『一目均衡』。
「両利きの経営」を、
編集委員の西條都夫さんが書く。
英語で、Ambidexterity。
ニューヨーク州立大学助教授の入山章栄さんの解説。
知的活動には両極がある。
自分の専門領域を究める「知の深化」、
自らの知の範囲を横に広げ、
多様性を高める「知の探索」。
成功企業は成功体験を持つがゆえに
「深化」に集中しがちだが、
それだけでは行き詰まる。
「シンカ」をどんな言葉に置き換えようと、
専門を掘り下げることに他ならない。
それと対極にあるのが、
横展開する「知の探索」。
「両利き」の人は右手も左手も器用に使う。
同じように「深化と探索をバランスよくこなす」ことが、
イノベーションを生み、企業を成長させるカギ。
それが入山助教授の説。
記事には米国優良企業として
ミネソタ州に本社を置くスリーエム(3M)が紹介される。
売上高は日本円で約3兆円、
営業利益率20%を超える。
手掛ける商品の幅が広すぎて、
既存の業種分類には当てはまらない。
3Mの経営は一見、脈絡はないし、
雑多なビジネスの「寄せ集め」の観がある。
しかし、1本軸が通っている。
「イノベーションの促進」である。
3Mが重視するのは、全売上高のうち、
「発売から5年以内の新製品が占める比率」。
足元の実績は33%だが、
近く40%に高めるのが全社の目標だ。
小売業でいえば、
「店齢」だろうか。
「5年以内の新店や大型改装店が全体の4割」
こんな尺度。
100店あれば、
40店が5年以内。
とすれば、
1年に8店ずつ、
新店や改装店を準備し、
それを実行する。
50店ならばこれが1年に4店舗になるし、
150店ならば、12店になる。
いい目安だ。
全店の平均店舗年齢が、
小学校低学年、高学年だとか、
中学校、高校などと表現するが、
この3Mの考え方は、
現実的だ。
幼稚園・保育園生が3分の1、あるいは4割、
小学校も、中学・高校生も、時には成人もいる。
4割の幼稚園生・保育園生が、
全体のイノベーションを誘引し、
イノベーティブな体質をつくる。
これはいい目安だと思う。
3Mの「新製品5年以内比率」は、
イノベーションの生産性を落とさない効果をもつ。
そのカギを握るものは、
組織に根づいた一種の「緩さ」。
例えば同社の「15%ルール」。
「エンジニアは勤務時間の15%を
自分の好きな研究に使ってよい」
だから開発テーマが、
性急に絞り込まれることもない。
個人に委ねられている。
外山滋比古さん言うところの、
「脱グライダー化」が図られている。
重視する技術領域は一応、決まっている。
「接着」「フィルム」など46の分野。
それが今後も、さらに増えていく。
「異質な技術の掛け合わせから、
思わぬ発見、発明が生まれる」
これはチェーンストアにたとえれば、
商品部バイヤーの「商品開発15%ルール」となろうか。
アメリカのトレーダー・ジョーは、
プライベートブランドの比率がもう、
9割に届くが、そこには、
マーチャンダイザーの「自由度」がある。
例えば、15%の時間は、
自分の好きな商品を探してよろしい。
結語として、記者は書く。
「ゴリゴリした『集中と選択』ではなく、
緩やかな『多様性』こそ
イノベーションを産む母体である」
新聞記者の書きそうなことだ。
それはそれで当たっているかもしれないが、
この話の本質は、
「集中と選択」、
および「緩やかな多様性」の、
Ambidexterityである。
「両利き」である。
「15%ルール」を持つ企業であるからには、
「5年以内の新製品比率」には厳密なはずだ。
それが「両利き経営」の本質であると思う。
もちろん一人ひとりの個性や独自性を活かしつつ。
さて今日から、
商人舎USA研修会ベーシックコース。
ラスベガス1カ所に滞在し、
アメリカ小売業の主だった企業、業態・フォーマットを、
くまなく視察し、原理原則、基礎基本を体得する好評企画。
今年で3回目となる。
横浜ワイキャットを12時15分に出発。
車中でブログを執筆。
今日は、夏のような暑さ、
京都では30度を超すらしいが、
横浜でも朝から、
ぐんぐん気温が上がり、
うだるような暑さ。
横浜ベイエリアもかすんで見える。
今回は、事務局を入れて、
総勢50名。
3日目の朝、
「理解度テスト」を実施する。
それにもかかわらず、
参集してくれた。
勉強熱心な企業ばかりだと期待している。
テスト結果は、
本人の理解度を、
本人に知ってもらうことが第一の目的。
そしてそれが、
一人ひとりの理解度を、
飛躍的に高めることになる。
知識商人が養成される。
私の願い、私の目的。
何をするか、
何をしたかではなく、
何のためにするか、
何のためにしたか。
それがこのbasicコースで、
示されることになる。
全員が定刻前に集合し、
事前ミーティング。
事務局からのガイダンス。
その後、1人1人名前を紹介し、
顔合わせ。
そして30分ほど、私の講義。
テキストは376ページ。
皆、熱心に聞いてくれた。
ミーティングを終わらせて、
最初の記念写真。
では、行ってきます。
3Mに負けないイノベーションを起こしに。
〈結城義晴〉