日経新聞最終面の『私の履歴書』。
今月はオリックス会長の宮内義彦さん。
オリックス㈱は国内最大の総合リース企業。
売上高は1兆円を超える。
意外にも総合商社のサラリーマンから、
企業内起業して、
長らくトップマネジメントの座にある。
こういった人が、
最初からのオーナーよりも、
長続きし、しぶとい。
小売業界でいえば、
アークス社長の横山清さんが、
同じようなキャリアの人だ。
さてその宮内さん、
1994年、経済同友会副代表幹事になって、
規制緩和に取り組む。
はじめは民間経済活動の規制緩和。
1999年、小渕政権の時、
総合規制改革会議議長に任じられ、
直後に小泉純一郎首相が登場。
この時には、社会的規制がテーマ。
そして「規制の岩盤」にぶち当たる。
「社会的規制は経済的規制とちがい、
人びとのくらしを守るために存在する。
だから経済原理を優先させて
ゆるめるのはまかりならん」
猛烈な反対運動。
記者会見で発言。
「遅々として進んでいる」
宮内さんの反骨精神の真骨頂。
私はこういった言い回しが好きだ。
「遅々として進まず」
これが慣用句。
それを引っ繰り返して、
「遅々として進んでいる」
既得権益者たちの必死の反抗に、
慣用句を逆用して、
意外さを出す効果を発揮させている。
私は「マス・カスタマイゼ―ション」を
「特定多数」と表現した。
もちろん慣用的な言い回しは、
「不特定多数」。
そこを「特定」の「多数」と表現することで、
意外性を出す。
しかしこれが21世紀のビジネスにおいて、
中核となるコンセプトだと思う。
さて湯河原での三日目。
第4回商人舎ミドルマネジメント研修会。
会場は、ニューウェルシティ湯河原。
静岡県にあるが、
神奈川県との境目が、
ホテル入り口真ん前の橋の上。
温泉街に川は流れる。
駿河の國と相模の國の境目。
三日目の今日も、
朝一番で理解度テスト。
昨日の怒涛の講義を復習し、
最終チェックに余念がない。
そしてスタート。
濃密な時間。
今回は、筆記式の設問を多くした。
自分で考察して、
自分の言葉で表現する。
その光景を後ろからしずかに見ている。
時間がやってきて、
答案用紙を回収。
空気が和む。
そして私の第1回理解度テスト講評。
中国の「科挙」制度の功罪について話した。
功も大いにあったという話。
今回は前回より、
全体として少し点数は上がった。
最終日の第1講座、第2講座は、
高野保男講師。
テーマは「作業システムの概要」。
レイバースケジューリング・システムの第一人者。
現場での直接指導で、
全国を飛び回っている超売れっ子コンサルタント。
各地の各社で高い実績が上がっている。
パワーポイントやビデオを駆使して、
わかりやすい講義を展開。
高野さんとも次を約して、
固い握手。
高野さんの講義中に、
上田惇生先生ご到着。
上田先生は俳句が好きだとか。
俳句を作るように、
「ドラッカーを訳してきた」
私は上田惇生のドラッカー本の魅力を、
この瞬間に理解した。
最終日第3講座は、
その上田先生の特別記念講演。
ご存知、ドラッカーの分身。
着座して、右手にマイクをもって、
とつとつと語りながらも、
一気呵成に90分。
今でも、1日に多い日で10時間、
少ない日でも2時間、
ドラッカーの原文を読んでいる。
そして必ず新しい発見がある。
その上田先生の今、
いちばん語りたいことを、
存分に語っていただいた。
最後の五つの助言。
第1に、堂々と経営して、
堂々と成果をあげてください。
第2に、仕事を楽しんで下さい。
第3に、そのために、強みを伸ばしなさい。
自分が燃えるものを見つけなさい。
第4に、いつまでも挑戦を続けなさい。
第5に、尊敬する人と仕事をしなさい。
時間をはるかにオーバーしたが、
ここから質疑応答。
「教育担当として、
若い人たちを生き生きわくわくさせるために
必要なことは?」
グッド・クェッション。
上田先生は、虚空を見ながら考え、
一つひとつに丁寧に答えてくださる。
「成果が上がらない時に、
生き生きと仕事してもらうには
どうしたらいいのでしょうか」
そして、「共産主義と資本主義の次に、
マネジメントが重要な時代が来ると見抜いたドラッカー。
その点を丁寧に教えてください」
みんな、自分の質問のように
真剣に答えを待つ。
上田先生が丁寧に、
言葉を選んで答える。
本当にありがたいことだ。
その全員の気持ちを込めて、
スタンディング・オベーション。
盛大な拍手に応えて、
上田先生からの最後の言葉。
「組織に働く者は、
組織の使命が
社会において重要であり、
他のあらゆるものの基盤であるとの
信念をもたなければならない。
この信念がなければ、
いかなる組織といえども、
自信と誇りを失い、
成果をあげる能力を失う」
ありがとうございました。
付き添ってくれた川勝利一さんと、
三人で写真。
川勝さんは、
商人舎エグゼクティブコーディネーター。
上田先生がこの世で、
最も信頼を寄せる人物だ。
上田先生と川勝さんを見送って、
最後の総括講義。
テキストの未説明部分を、
全部おさらいして、
そして総括。
「自ら、変われ!」
私は上田先生の言葉を噛みしめていた。
堂々と成果を上げよう。
仕事を楽しもう。
自分の強みを伸ばし、
燃えるものを見つけよう。
いつまでも挑戦しよう。
尊敬する人と仕事をしよう。
帰途、相模湾の向こうの水平線に、
光が見えた。
今年のミドルマネジメント研修会、
大きな成果を、堂々とあげて、
終了した。
すべての人々に感謝したい。
〈結城義晴〉